心理学

発達特性のある子に、周囲の大人ができること 〜遺伝子をひっくり返す〜

発達にデコボコのある子。

苦手なこと、できないことのある子。

この子たちと接する時に、こんなふうに考えるのはいかがでしょうかという提案です。

 

発達デコボコと、苦手なこと

できないこと。

苦手なこと。

ありますよね。

その子によって、どうしたって苦手なことやできないことがある。

あるある〜〜。

 

「普通できるでしょ」ってことができないのが、発達デコボコさんなわけで。

日々、その『苦手』から生じる困りごとに対応しているわけです。

本人も、親御さんも、その他の支援者も。

お疲れ様です。

 

 

僕は基本的に、

できないことはできないので、別の方法を探そうぜ!

というスタンスだ。

 

ほら、忍耐・努力・積み重ねとか、嫌いでサ。

ダメ人間で。

やればできるとかさ。

そうかもしんないけど、そうじゃないかもしれないじゃん。

やってもできないかもしれないしぃー。

そもそも、頑張れないしぃーーーーー。

 

そうじゃなくて、別のやり方とか、環境を変えるとか、そもそも引き受けないとか、もう人にぶん投げちゃうとか、自力で克服しない方法を考える。

頑張りたくないもん。

苦手なことは特に。

 

基本このスタンスなんだけど。

 

ヒトの行動と遺伝子

いつか読んだ書籍に、興味深い記述があって。

遺伝子のオン・オフ

の話だ。

 

僕はこれまで、持って生まれた遺伝子は変わらないのだから、その中で最適な戦略を練ろうと考えてきた。

配られたカードで勝負するしかないのさ。

 

手持ちのカードはこれだ。

不本意だが、持っていないものは持っていない。

その上で、よし、じゃあどのカードをどの順番で切る?

 

そう考えて生きてきた。

 

んだけど、新たな考え方に出会った。

遺伝子のオン・オフだ。

 

 

ヒトの得意・不得意、できる・できないには、遺伝子が大きく関与している。

足が速い子は、足の速い遺伝子を持つ。(ことが多い)

賢い子は、賢い遺伝子を持つ。(ことが多い)

手先が器用な子、容姿の優れた子、絵の上手い子、音楽の才能のある子……。

それぞれ、その才能を持って生まれていることが多いのだ。

 

つまり、物事の好き・嫌いにも、遺伝子は多分に影響を及ぼす。

得意なことって好きになるからね。

 

僕が努力に努力を重ねても、きっと陸上の選手にはなれない。

才能がないし、そもそもかけっこは嫌いだ。

オリンピックに出ているのは、才能を持った上にとんでもない努力を重ねた人たちだ。

僕はどうひっくり返っても短距離の選手にはなれないし、そもそも嫌いなので努力を重ねることもしないだろう。

ハズレ遺伝子が悔やまれる。

 

 

ちなみに、社会的に好ましくない性質も、遺伝子によるところが大きいそうだ。

反社会的な行動(犯罪や暴力等)も、環境より遺伝らしい。

 

そういうのって、親の育て方とか環境のせいだと思うじゃん?

違って。

持って生まれた遺伝子の影響が大きいそうだ。

ソースはごめん、失念したけど、そんな一卵性双生児の実験があった。

 

 

つまり。

ヒトの行動や性質が、遺伝子に大きく影響されるのは、間違いない。

それが得意なのも、苦手なのも、遺伝子のせいだ。

僕が怠惰で頑張れないのも、遺伝子のせい。

キリンの首が長いのも、郵便ポストが赤いのも、すべて遺伝子だ。

 

僕らは遺伝子に振り回されている。

振り回されまくっている。

よかった、僕のせいじゃないんだ。

 

遺伝子のオン・オフ

もう少し遺伝子の話が続くけど、お付き合いください。

 

このようにヒトの行動に影響を及ぼしまくっている遺伝子だが。

実は、現れているものが全てじゃないらしい。

持っているがなりを潜めている遺伝子が、相当数あるらしいのだ。

 

この遺伝子たちは、出番をじっと待っている。

ある遺伝子は、一定の年齢が来ると働き出す。

別の遺伝子は、環境の変化で表在化する。

 

遺伝子って、

  • 持っている
  • 持っていない

の二択ではなく。

 

第3の選択肢、

  • 持っているが眠っている

が存在するらしいのだ。

それも、相当数あるらしい。

 

 

そう言われると、思い当たるフシがある。

それまでダメダメだったのに、ある時急に成績が上がる子がいる。

苦手なスポーツ、コツを掴むとスルスル上達する。

突然、生活態度が「ちゃんと」する。

手先は不器用なのに、なんかやたら注射がうまい。

 

あるでしょ?

あるよね?

 

僕自身の経験でも、思い当たりまくる。

たとえば、冗談みたいに苦手だったダンスが、ある時急にお手本レベルに上達した経験を持つ。

 

運動会のダンス、もう下手すぎてさ、毎回拷問みたいだったのに。

大学の頃、カラオケで松浦亜弥を踊りまくり、ダンスの才能が開花した。

あの瞬間、僕の持つ『ダンス』の遺伝子がオンになったのだ。

ありがとうあやや。

その後、このダンススキルが役立つ機会は特にないけどありがとうあやや。

 

他にも色々ある。

僕は、ある時急に、整理整頓ができるようになった。

僕は、ある時急に、天然パーマになった。

僕は、ある時急に、クロールが泳げるようになった。

僕は、ある時急に、やたらネガティブになった。

そしてある時急に、またポジティブに戻った。

 

人生において、『苦手』がひっくり返る瞬間があった。

個性や性格だと思っていた特徴が、くるんとひっくり返った。

 

 

認めざるを得ない。

遺伝子には第3の選択肢、

  • 持っているが眠っている

が存在する。

それも、相当数。

 

これは、以前からさまざまな書籍で指摘されていた内容だ。

僕の耳にも届いていた。

書物の乱読を続けていると、さまざまな分野の、さまざまな専門家が、同様の主張をしていることに気づく。

 

認めざるを得ない。

遺伝子には、オン・オフがある。

 

発達デコボコの子に

考えてみると、これは希望だ。

 

発達デコボコの子。

環境にうまく馴染めない子。

遺伝子をうまいことひっくり返せれば、相当に生きやすくなるんじゃね?

 

 

持っていないものは持っていない。

これはどう頑張ってもムリだ。

でも、持っていて今はオフになっているなら、うまいことオンに導けるかもしれない。

環境に合わせて有利にひっくり返せるなら、これは希望だ。

 

これってつまり、「社会性を身につける」ってヤツじゃないか。

選べるなら「社会的に好ましい面」をオンにしていった方が、いろいろと都合がいい。

 

 

また僕自身の例で恐縮だけど、僕は生まれてこの方、超弩級のネクラだと自負していた。

小さい頃からずっと。

疑う余地なくネクラ。

井戸の底の貞子の方がまだ明るいんじゃないかってレベル。

 

でも最近、自ら進んで雑談をするようになった。

人に話しかけるようになった。

すると、明るく振る舞うのも、案外悪くない。

いや、心地よいかもしれない。

 

もしかしたら、僕、ちょっと明るい遺伝子も持っていたのかもしれない。

オフになっていただけで。

 

これに連鎖し、これまで人前での発表など絶対にムリだったのだが、そうでもないかもしれないと思うに至った。

人前に出るの、そこまで嫌じゃないかも?

ちょっと勉強会とか、やっちゃう?

 

これも遺伝子のオン・オフのなせる技だろう。

一つオンになると、隣り合った遺伝子もオンになることがある。

まるでオセロのように。

 

遺伝子をひっくり返す

遺伝子は、あるときひっくり返ることがある。

ならば、社会に適応するよう、うまくひっくり返せないだろうか。

そもそも持っていない遺伝子はムリだが、持っていてオフになっているだけならば。

試してみる価値はありそうだ。

 

年齢で発現するような遺伝子はコントロールできない。

しかし置かれた環境や本人の気づきで発現するタイプのそれなら、ある程度コントロールが可能だろう。

 

遺伝子を、ひっくり返す。

※ひっくり返せるものは。持っていないものはムリです。

 

 

でも自分が、何の遺伝子を持っていて、どれはもっていないのかはわからない。

「持っていない遺伝子」と「持っているがオフ状態の遺伝子」は、そのままでは見分けがつかない。

これを探す作業を、子どものうちにできると良いと思った。

 

子どもって、失敗のダメージが小さいからさ。

大人になって失敗すると大変だけど、子どもはそこまでじゃないから。

子どものうちに、持っている遺伝子を探せると良いと思った。

 

もちろん、大人になっても探せるんだけど。

子どものうちは、周囲の大人が手伝える。

色々提案したり、試したり、少し負荷をかけてみたり、環境を変えたり。

 

 

本質的には、もちろん子供が自分で見つけていくものだ。

大人はお手伝いしかできないし、基本骨拾い係

ドアノブは子どもの側にしかないんだけど。

 

でも、ちょっとだけお手伝いするなら。

子供が冒険に出るお手伝い。

ドアを開けるお手伝い。

この、遺伝子持っている/持っていないの選別作業は、アリだと思う。

 

そもそも持っていなければ、その子の怠惰のせいじゃないから自己肯定感を下げなくて済むし。

持っていてうまくひっくり返せたなら、超有用な成功体験となる。

 

そういえば療育ってこんな活動よね。

社会的に適した行動を発現させる。

教えて、やらせてみる。

できれば超褒めるし、どうしてもできなければ代替手段を考える。

理にかなった活動だよなぁ。

 

 

「その子を変える」わけじゃない。

無理やり捻じ曲げるんじゃない。

「玉」は変えない。

 

そうじゃなくて、もともと持っている能力を、最大限に活かす。

この考え方。

 

この子はこの子なんだけど。

苦手や困ったことに直面したとき、実は、

持っているのにオフになっている能力がある。

それも相当数。

そう考える。

 

うまくひっくり返せれば、飛躍的に生きやすくなるだろう。

「ある」と「ない」の間に、「あるけどオフ」の選択肢。

その子はその子のままで、一番有利な面を前面に出す。

有用だと思う。

POSTED COMMENT

  1. まぼ より:

    わーい!新しいブログありがとうございます。
    親とは欲張りなもので、途中まで読んで、「じゃあ社会的に好ましい面をオンにしたいんだけど?!それを教えてくれい」と先走っていたところ、しっかりと書いてありました。
    苦手だった雑談しかり、人前で話すことしかり。成功体験をつむことで、「これをした方が自分は心地よい」と学習する。次からもやってみる。の繰り返しで成長するんですね。逆にこっぴどく恥をかくような経験をすればトラウマになっちゃったり。
    失敗しても安心して帰ってこれて、元気を充電できる基地でありたいなと思いました。

  2. YUN より:

    泣ける。めっちゃ新しい視点に嬉しくなりました。一個出来ないからって親のワタシが勝手に絶望していた暗い閉鎖的な子育てに、希望の光が、、。ありがとうございます。
    同じく、井戸の底の貞子の方がまだ陽キャに見えるぜまじ根暗族の1人より⭐︎

  3. 匿名 より:

    いつもありがとうございます!
    何だかとても、期待の持てる話題、ありがとうございます!
    以前の先生の記事「子どもの成長がみえないとき」の、「発達特性のある子は階段が大きい」という話を思い出しました。「成長がみえないとき」に、無理はさせずにでも加減しながら頑張らせてみて、が、ほんとに手探りで悩ましく親の精神力も鍛えられますが、開き直って育児の面白さも(たまに)感じたり感じなかったり。(たいていは大人気なくキレたりブレたりしています、、、。)

    今小学校高学年ですが、幼児期に比べると「こりゃ無理(無い)だな」とか「これは、いつか出来るようになるような微かな気配(あるけどオフ)」とか、少し予想出来るようになってきたように思います。外れることもありますが。

    何で急にオンになるんですかね?
    神経回路のでき方が独特なのか??刈り込みの話も関係あるんでしょうか?興味は尽きません。
    これからも楽しみにしています♪

  4. タケノコ より:

    今朝もしかしてなりを潜めている遺伝子が、オンになった!?

    中3娘ですが、毎度お馴染みのドタバタな朝、時間ないのにヘアアイロンを使いはじめ、いつも上手くいかず一人でキーーーッとなって火傷したりしてたのが、落ち着いてストレートとカールを使い分け思い通りにいった様子。「いい感じ。昔はなんであんなに不器用だったんだろう。」なんて言ったりして満足気でした。

    とにかく手先が不器用でwiscでも処理速度が極端に低く、これはもう努力でどうにかなるものじゃないんだなと諦めてました。娘にもできないのは仕方がないから、人に助けてもらうようにするんだよ、などと言ってきました。このことは間違いではないと思う一方、こうやってこの子には出来ないと私が決めつけ、娘を洗脳してきたのかも・・・と怖くなりました。

  5. 杉母 より:

    とても面白い見解に興味津々です。実は我が子にも思い当たる事がありまして。
     学習障害で読み書きに難がありまして、学校の勉強もできない方でした。しかし何かで読んだんですが、学習障害で読字障害の人は目で入ってきた情報を脳で処理するところに難ありって感じですが、その代わりに耳で入ってきた情報を脳で処理する部分が活性化すると書いてありまして。これが遺伝子レベルの事かはわかりませんが。なんで息子に「ノートは書かなくていい。先生はわかってくれてるから。その代わり先生の話をよく聞いて、頭の中に入れ込むイメージで授業を聞いてこい!」って言ってからなんとかなり勉強ができるように。テストはほぼほぼ80点以上。もちろん家で勉強なんて宿題以外はしません。びっくりです。国語も文章問題はほぼ解けてるんです。見事に漢字だけ解けないんですが。朝学校に行く前に必ず『あなたは聞いただけで勉強した事が頭に入る天才なんだからしっかり先生の話を聞いてきて!』と言い聞かせてます。しかし実は理科だけテストの点数が悪いので理由を聞くて、息子の小学校では理科の先生だけ専門の先生が行うらしいのですが、その先生が年配の方で何を喋っているか聞き取れないらしく。そういう弊害があるのかって思いましたが。これが遺伝子をオンしたのかはわかりませんが、子供の無限の可能性を引き出せたのかなと思ったら嬉しくて。コメントしちゃいました。

  6. 匿名 より:

    いつもすごく考えさせられるブログをありがとうございます。

    社会性になじんで、普通に生きる事がかっこ悪いと
    思っている我が子。

    どうしたらいいか?
    逆に変わってる事を楽しんでいるのか?
    変わっているから普通でなくいい、普通でいない方が
    自分に都合がいいと思っているのか。

    困っています

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