心理学

自分が損をしてでも、相手に得はさせない

相談を受けた。

 

兄弟で、または友達間で。

 

相手のズルが許せない。

 

自分も悪いのに、執拗に相手を責める。

自分が不利になってさえ、頑なに相手を引きずり落とそうとする。

 

ちょ、性格悪くないですか?

人より先に、自分のことじゃない?

 

心理実験

こんな実験がある。

あなたならどうするか、ちょっと考えてみてください。

 

 

 

 

ここに10万円あります。

あなたと小林さん(誰?)とで山分けをします。

 

小林さんは、金額の設定権を持っています。

いくらずつ分けるかは、小林さんが決めます。

 

あなたは、拒否権を持ちます。

小林さんの設定金額に、「Yes」もしくは「No」が言えます。

Yesなら、小林さんの提示通りの金額をもらえます。

Noならお互いにゼロです。

 

さて。

 

小林「私が7万円、あなたが3万円です。」

 

質問です。

あなたの答えはYesですか?

Noですか?

 

じゃあ、

小林「私が9万円、あなたが1万円です。」

ではどうでしょうか。

 

 

 

 

有名な心理実験らしい。

あなたの答えはどうでしたか?

おそらく、取り分1万円でYesと答えた人は少なかったと思われる。

 

合理的に考えれば、

9万円:1万円

だろうが、

9万9990円:10円

だろうが、受諾した方があなたはおトクなのだ。

ゼロよりも、1円でももらった方がおトク。

 

でも、実際はそうはならない。

拒否する。

そう。

 

相手がズルいから。

 

 

自分が損をしてでも、不公平な提案にはNoと言う。

こんな心理が、人には働くようだ。

 

自分が損をしてでも、相手のズルは許さない!

 

そういうことだ。

 

こんな子がいました。

不登校の子。

の、妹。

 

女の子
女の子
お姉ちゃんが行かないなら、私も学校に行かない!

 

姉が自宅でゲーム三昧なのが「ズルい」らしい。

 

この子個人で考えると、どう考えても学校に行った方がおトクだ。

この子は学校に適応している。

勉強面でもコミュニケーション面でも、学校に行って経験を積む方が良い。

家で姉妹ゲンカしてイライラ過ごすより、姉と距離を取るためにも外に出る方が、精神衛生上もよいのだが。

 

女の子
女の子
お姉ちゃんだけズルい!

 

頑として首を縦に振らない。

 

 

はたまた、こんな子。

 

男の子
男の子
弟が謝るまで僕は絶対に謝らない。

 

自分に非があるのはわかっている。

サクッと謝っちゃったほうが、どう考えてもおトク。

意地を張ったところで、余計に親に怒られるだけなのだが。

 

男の子
男の子
僕が9悪くても、弟も1悪いんだから。

弟も謝るべきだ!

 

謝れない。

自分だけ謝罪するなんて、弟が「ズルい」。

 

 

このような相談を受ける機会がある。

きっと他にも、相談に上がらない程度の「ズルい」が日常にあふれていると予想する。

おもちゃを買う買わない、どっちが叩く叩かない、何を食べる食べない、先にケンカを売った売らない……。

 

どっちでもいいんだけど。

ってゆーか、人のことより自分のことでしょ。(怒)

 

親御さんはほとほと疲れてしまう。

 

ズルが許せない

親御さんの気持ち、よくわかる。

困るし、イライラする。

 

でも、こういうことなんです。

 

相手のズルが許せない。

 

これだけ。

純粋な気持ち。

自分の非がとか得がとか、そういうことじゃないのだ。

 

人間には、どうしたってこの心理が働く。

なんて理不尽なと思うけどさ。

ヒトにはこの性質がある。

知っておくと、少し心が穏やかになるかもしれません。

 

 

しかもですね。

冒頭の心理実験。

日本人は、Noを出す割合が高いらしい。

他の国と比べて。

相手の提示を、ちょっとやそっとじゃ受諾しないのだ。

 

7万と3万?

いーじゃん、タダで3万貰えるんだから。

おいしいお寿司でも食べたらハッピーじゃん?

 

いえいえ、そうは問屋が卸さない。

相手が7万も取るなんて、納得できない。

 

自分をバカにしている!

尊厳を守るためにも、7万は絶対に渡さない!

 

そう考えるのが日本人らしい。

遺伝子?

風習?

わからんけど。

興味深い話だ。

 

 

自分が損をしてでも、相手を引き摺り下ろそうとする。

日本人は性格が悪い?

そう思いますか?

 

実験には続きがあってですね。

 

小林さん(日本人)の提示する分配は、こうだ。

小林「私が6万円、あなたが4万円です。」

 

↑せいぜいこのくらい。

日本人は、控えめな配分を示す。

5万と5万にする人も多いんだって。

 

一方、外国人は。

スティーブ「オレが8万円、ユーは2万円だぜ!」

↑このくらいふっかけてくるらしい。

※傾向の話です。みんながみんなそうではありません。

 

 

極端な金額差は、自分同様相手も拒否すると考えるのか、日本人は弱気の提示。

自分だったら受け入れるので相手もそうだと思うのか、外国人は強気の提示。

 

日本人は性格がいい?

むしろ悪い?

一周回って性格がいい?

わかんないけどさ。

 

 

まぁ、おそらく民族性の違いだろう。

文化というか。

 

日本人は集団を重んじる。

みんなで協力して、社会を維持・発展させてきた。

特定の個人が抜きん出ることを善しとしない。

パンダとサルとバナナの話 〜個を優先するか、集団を優先するか〜自分以外の人の感覚はわからない。 思考もわからない。 https://hattatsu-kids.com/?p=2587 ...

 

特に、一人だけ「ズルい」とか、めっちゃイヤ。

みんな頑張ってるのに、一人だけタダノリとか。

 

許せない!

 

そんな民族性が、この心理実験に反映されるのだろう。

興味深いですね。

 

兄弟を分けて考える

だもんで。

子どもが理不尽に相手の足を引っ張る主張をしてきたときは、

 

母
おっ、日本的だな。

 

と思ってもらえれば。

 

非合理的だけどさ。

日本的な「集団」「社会」の考え方が身についているとも言える。

じゃあ、今後の社会適応も良さそうだ。

そう考えると、イライラも少しおさまりません?

 

 

いずれにしても、ヒトには「相手のズルが許せない」と考える性質がある。

子どもは特に、「そうは言ってもアナタの問題でしょう」が通じない。

我を通すと結局損をするんだけど、子どもは経験が足りない。

やっぱり、相手のズルを許せない気持ちが先行する。

 

だもんで、兄弟は分けた方がいいと思う。

トラブルがあったとき、この子はこの子、その子はその子で分けて考える。

両方を同時に納得させるのは、至難の技だ。

 

 

別々に話を聞く。

 

母
あなたはそう思ったのね。

 

魔法の言葉を添えて。

 

どうせ辻褄は合わないので。

両方を同時に納得させるとか、ムリなので。

 

個人個人で、「あなたはそう考えた」という事実にフォーカスし、そこを承認する。

これだと、嘘はついていないからね。

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「〇〇がズルい」という主張。

この真の意図は、

自分が損をしている

だ。

 

自分は頑張ってるんだよ。

見て(褒めて)くれよぅ。

ってことだ。

 

その、『損(と本人は思っている部分)』にフォーカスし、拾ってやる。

ニーズを満たす鍵はここのように思える。

POSTED COMMENT

  1. 匿名 より:

    冒頭のクイズ、わたしはもらえるならYES派でした。相手に決定権がある中、1円でもくれるなんてありがたやーでした。
    よっぽど貧乏性なのかしら…たしかに掘り下げて考えると、わたしがそういう…なんていうか、
    ナメられる事に慣れているのかも〜

    それか反対に、逆の立場だったら1円しかあげないよー、って腹の中では考えているからか!?

  2. しろ より:

    うわーうわー、もううちの話そのまんまです。
    中2の息子、8才も離れてるのに妹が許せなくて許せなくて。
    きっかけを作っているのはほぼ息子なのに、それに応戦した妹の行動に非難轟々、あげく暴言…。
    自分の機嫌がいいときは、ベタベタ構いたがるんですが…。
    テレビを一緒に見ていて、理不尽な人の話題が出たりすると、それはもうたいそうな口撃が始まるので、ズルが許せないのは妹に限ったことではないんでしょうね。
    でも、本人の気持ちに余裕があるときだと、妹がわがままを言っても(普段ならキレ始めるパターンのときでも)なんとかうまく伝わるように妹を説得してみたり、お互いの妥協案
    探してみたりと、本人なりに模索しているような面も見られるんですが…。
    そうは言っても、“自分のこと棚にあげすぎだろーー!”“少しは年令考慮しろーー!”と心の中で叫ぶ日々です(*_*)

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