発達障害

【ADHD】学校から投薬を勧められた。

 

学校の先生から投薬を勧められた

という主訴で受診される方がいる。

 

親御さんが投薬に積極的で薬が欲しくて受診しました! ってケースは、多くない。(もちろんあるけど)

割合的には、

 

母
学校から勧められたけど、果たしてどんなもんなの?

そもそもウチの子投薬レベル?

 

ってことの方が多い。

 

この辺りについて、僕の視点から見えることを書く。

 

薬を飲めば解決?

非常に申し訳ないのだけど、学校の先生の中には、

薬を飲めばすべて解決

と思われている方が一定数いらっしゃるようだ。

 

責めてない!

先生は医療の専門家じゃないんで、誤解はしょうがない。

 

実際、薬が著効することがある。

先生にはそんな経験があるのだろう。

だから勧めるのでしょう。

 

 

だた、僕の立場から言うとですね。

 

薬は万能じゃない

です。

 

全然、万能じゃないです。

全てを解決する魔法の薬など存在しない。

 

ADHDの薬

投薬を勧められるのは、大抵ADHDタイプの子だ。

ADHDには薬がある。

どんな薬かというと、僕は

ブレーキを強化する薬

と説明している。

 

ADHDは、気になることがあると衝動的に動いてしまう。

その時に、ちょっとブレーキをかける。

 

アレ?

今これやっていいんだっけ?

 

この「ちょっとの時間」を作るのが、ADHDの薬。

 

だから、

後から振り返るとやるべきことはちゃんと分かってるんだけど、その瞬間はブラックホールに消えてしまう

って子にはよく効く。

 

そもそも行動を改める気がない

って子には、あまり効かない。

ADHDの薬って、ぶっちゃけどのくらい効くの?ADHDには薬がある。 症状である、多動、衝動性、不注意。 これらを抑える薬。 これって、ぶっちゃけどうなの?...

 

そして。

ちゃんと効いたとしても(ADHDの薬はちゃんと効くことが多いです。いい薬だと思います。)、

万能ではない

です。

 

飲んだから、問題行動がゼロになるかというと、そんなわけはない。

衝動性が強いときはやっぱりやらかすし。

イライラしているベースがあるときとか、普段と違うイレギュラーなときもダメだ。

 

10回中7回はブレーキがかけられても、3回はやっぱりやっちまう。

そんな薬。

万能薬じゃない。

 

学校では効きやすい

学校の先生は、積極的に受診と投薬を勧める傾向にある。

でも、期待される効果と実際のそれには乖離があるように思う。

 

実際、学校の先生の話を聞く機会があるんだけど。

やっぱ過剰に期待されてるんだよね、ADHDの薬。

万能薬的な扱いをされてる。

 

 

じゃあ、なぜこんなに期待されているかというと。

実際によく効いた経験があるから

でしょう。

 

思うにね。

もちろん実際の薬の効果もあるけど、

  1. 環境要因
  2. 本人要因

の二つもめちゃくちゃ大きい気がしている。

 

説明する。

 

①環境要因

投薬すると、先生の目が変わるんですよ。

 

まぁ、言っちゃえばプラセボなんですけど。

「薬を飲んだからこの子は大丈夫なはず」

「行動が変わるはず」

という思いが先生の中で生じる。

すると、ちょっとした好ましい行動を大きく評価するようになるわけです。

 

授業を聞いている!

薬を飲んだからだ!!!

 

それまでも、授業を聞いていた瞬間はあった。

でも、スルーされていた。

それが、「今日は薬を飲んでいる」という思いがあると、拾い上げられる率が高くなる。

 

なんか、いつもより授業に集中している気がする!

 

実際、投薬後の評価で聞くのだ。

「〇〇(薬)を開始し、翌日から行動が落ち着きました」と。

〇〇は正直……1日ではそんなに効果は……。

 

なんだけど、先生からの評価は上々。

まぁ、良いことです。

 

 

多分ね。

先生の思い込みと、それによって対応が軟化したためと思われる。

 

良い行動は、褒められることが増える。

悪い行動は、叱られることが減る。

 

「薬を飲んでいる」という先入観から、好ましい行動は拾い上げられることが増える。

「薬を飲んでいる」という先入観から、適さない行動はスルーされることが増える。

 

先生の対応が軟化する。

で、結局児に合った環境になったものと想像する。

 

②本人要因

これもぶっちゃけ、プラセボ入ってるんだけど。

 

先生や周りの大人だけでなく、本人も、「薬を飲んだから自分は大丈夫なハズ」という思いを持つ。

すると、ブレーキが効きやすくなるのだ。

 

 

ADHDの衝動性は、一般的に、10歳前後で鳴りをひそめる。

10歳頃から、自力でブレーキをかけることが増えるのだ。

失敗してもいいから、嘘はつかないでほしい小学生の子。 百歩譲って、失敗はいい。 やらかすのもわかる。 トラブルもしょうがない。 ...

 

なので、薬を飲まなくても、問題行動は自然に減ってくる。

実際、小児期にADHDと診断された人の8割は、大人になると診断を外れる。らしい。

 

薬を飲むと、この自前のブレーキが強化される。

薬自体ブレーキを強化するものなんだけど、自前のブレーキも強化されるのだ。

「薬を飲んだんだから、自分は出来る」という思いによって。

 

 

こう思う根拠はですね。

ADHDの薬、家より学校でよく効くケースが多い!

のです。

 

投薬後の効果の評価で、こんなふうに聞くケースが多い。

 

母
学校ではとてもよく効いているそうです。

家での行動はあまり変化ないですが。

 

薬にもよるけど、家でも学校でも効果はあって然るべきだ。

場所によってそこまで大きく変わるのは不自然だろう。

 

なぜ差がでるか?

学校は本人が気を付ける場所だから

だろう。

 

 

一般に、ADHDの不適切な行動は、学校(外の社会)で先に減る。

家は後。

最後が兄弟間と相場が決まっていてですね。

 

想像するに、「薬を飲んだから大丈夫!」というブレーキは、家より学校で発揮されやすいのだろう。

本人が、学校でより気を付けるから。

結果、学校での行動に大きな変化が出る。

家は気が抜けるので、あまり注意せず、行動もあまり変化しない。

 

コレ、薬効もあるが本人の意思も大きいと、僕は思う。

純粋な薬効なら、本人の意思に関係なく効果が出るはずだ。

なので学校の先生は「非常に有効」と評価し、親御さんは「あまり効果なし」と評価する傾向にあるのだろう。

 

まとめ

以上より、

薬は効くけど万能じゃない。

学校側が期待するほどの効果はないかもしれない。

と思います。

 

薬は、本人のために飲むものだ。

学校や親のためではない。

しっかり納得して、本人にプラスになると判断した上で開始したい。

POSTED COMMENT

  1. 匿名 より:

    いつもありがとうございます!!
    診断の有無、診断名、投薬の有無に関わらず、その子をよく見て、その子に合った対応をしてもらえたら(もちろん、可能な範囲で)、そんなことにはならない気がするのだけどな、、、という心の声が。。(T . T)
    よかった例があるからこそ、というのも重々理解しつつ、副作用もない訳ではない薬を学校が勧めるのも、ちょっとモヤモヤします。

    10歳で〜
    も、とても興味深いです!
    小児喘息とちょっと似てるような?
    子供のうちだけのタイプと、大人になっても特性が残るタイプで、別のことが起きてるのでしょうか??

    これからも楽しみにしています♪

  2. しろ より:

    まじかっ!そうなんですかっ!?
    不適切な行動が減るのは、学校→家→兄弟間と相場が決まっているとな!?
    いろいろと落ち着いてきている中2の息子ですが、年長の妹への態度がひどすぎてかれこれ2〜3年悩んでいます。
    年の差があるので、もう少し優しくてもいいんじゃないだろうかと思うのですが、どこかのモラハラダンナか、そのへんのチンピラか、というくらい言葉の暴力がひどいです(T_T)。
    5才児の話なんて、筋も通ってなければ理不尽なことばかりですが、“てめぇ”“クソガキ”“調子乗ってんじゃねーぞ”を枕詞に徹底的に口撃します。
    日常的に言われている妹本人の精神状態も心配ですし、聞いている私も気持ちが落ちていきます…。
    ただ機嫌がいいときはとてもいいお兄ちゃんで、妹が聞き分けのないことを言っても大人の対応でうまく納めてくれることもあるし、一緒によく遊んでくれるのです。
    そのギャップが激しすぎるのと、短時間でポンポン変わるので、こちらの気持ちがついていけません。
    でも学校でのトラブルが減ってきたように、家での親子バトルが減ってきたように、ここもいつかは落ち着くんでしょうか。
    大人になる頃には診断が外れるくらい、困り事がなくなるはず…と呪文のように自分に言い聞かせてがんばります(T_T)
    (本題と若干ズレたコメントになってしまいすみません。)

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