心理学

喋らない子の内面世界

子どもの言っていることは、その子を理解するのに大いに参考になる。

その子は、今、少なくともそれを思っている。

 

どうでも良さそうな内容も、その子の思考のフォーカスであり。

無茶苦茶な主張も、その子の理解ではそうなのだ。

 

なんだけど。

 

喋ってくれる子はいいんだよ。

喋らない子が、困るんだよ。

 

受診に乗り気じゃない子

発達外来では、受診に乗り気でないお子さんを多々みかける。

自分は来たくなかったけど、親に無理やり連れてこられて……的な子ね。

 

それな。

気持ちはわかる。

行きたくないよな。

別に相談したくないし。

子どもだもんで、自分の考えを、まだ人に相談する段階までまとめられずにいる。

平たく言うと、自分でも自分の気持ちがヨクワカンナイ。

 

そして、なんか出てきたこのオッサン(僕)。

誰だし。

悩み相談ってさ、なんか優しそうなおねーさんとかさ、人生悟ったおじーちゃん的な人にするもんじゃないの?

なにこのモジャモジャ(僕)。

コレジャナイ感。

髪のモジャモジャ加減が、なんかミャクミャク様に見えてきた。

 

どーでもいいけど、ミャクミャク様って「ミャクミャク様」って発音するんだね。

僕ずっと「ミャクミャク様」だと思ってた。

 

子どもからのお手紙

閑話休題。

とまあ、そんなふうに「受診したくない」と感じている子は多い。

顔に書いてある。

 

歓迎されないモジャモジャは、子どもの様子を探り探り話を進めるのだけれど。

コレ聞いて大丈夫かな? とか。

今日はこのくらいで切り上げないと、これ以上は辛いかな、とかさ。

 

先日、子どもからお手紙をもらった。

まさに上述のような子。

病院なんて来たくねーしお前に相談したいことなんてないんだよこのミャクミャク様が! と顔に書いてあるような子。

 

せんせい

いつも私の話を聞いてくれてありがとう。

せんせいは何が好きですか?

私はスティッチが大好きです。

(かわいいイラストを添えて)

 

……おぉ?

……………おぉお?

 

この子、診察中いつも「別に?」の沢尻エリカみたいな顔してる、あの子だよね?

僕と一切目を合わせない。

何を聞いても、何も答えてくれない。

ウンともスンとも言ってくれない、たまに「スン」とか言えば場が和むのに、それもない。

一方的な質問攻めになっちゃって、これ以上は悪いような気がしてきちゃうあの子、よな?

 

なんか、僕、嫌われてなかったみたい。

色々聞いちゃったけど、案外悪くなかったらしい。

むしろ喜んでいた様子。

不登校で一人で過ごす時間が長いから、「自分に興味を持ってくれる他者」って貴重な存在だった。らしい。

お手紙に大小さまざまなハートが飛び交っており。

結構ね、素直に嬉しい。

僕のやってきたことには意味があったようだ。

 

なんだよもぅ。

言ってよもぅ。

「思春期の娘との距離感を掴みあぐねるお父さん」みたいな、変なキョドリ方しちゃったじゃん。

 

豊かな内面世界

喋ってくれない子。

実は、豊かな内面世界を持っていることがある。

 

カラフルに彩られたお手紙をもらい、初めて気付く。

診察中、間が持たずに(飽きて騒ぎ始めてしまう)絵を描かせると、その豊かな内面世界に驚く。

描画系の心理検査(HTPやバウムテスト)の結果を見て、びっくりする。

 

この子、内面はこんなに豊かなんだ。

喋らないだけで。

 

 

喋らないけど、外からは見えないけど、豊かな内面を持つ子がいる。

色々考えて、心がクルクル動いている。

こちらの問いかけに、色とりどりに反応している。

見えないけど。

 

ホント、人の心はわからない。

自分以外の人の心の中って、分からないものだ。

 

僕らは言葉で表現するのが「普通」と考えてしまいがちだけど。

でも、そうじゃない子もいる。

言葉以外のツールでこそ、うまく表現できる子もいるのだ。

 

 

喋る子は、発言内容はきっとその子の心の中にある。

「そう思ってる」のは、きっとそう。

でも喋らない子は、喋らないからって心の中が空っぽとは限らない。

※本気で「何もない」から喋らない子もいる。でも、そうじゃない子もいる。

 

自分の思いを表現するツールが、「言葉」じゃない子がいる。

喋ってくれない子ってわかりにくいんだけどさ。

別のツールをうまく使って欲しい。

周囲の大人が、気付いて促せると良い。

その子の世界が外部と共有できるようになる。

とてもステキ。

 

改めて、人って、人の心って、全然わからんもんだなぁと思う。

だから臨床は面白い。

POSTED COMMENT

  1. ポッチャマ より:

    小学校支援員で2年生のキッズを担当中です。場面緘黙の男子についてます。
    しゃべらないから周りのクラスメイトに始めは不思議ちゃんだし興味あるな、状態。今はやんちゃな子供達にからかわれ、平均的な子供達からはいない人扱い。
    最近やっと小児精神科でASDの診断がおりたとこ。親御さんがまだクラスメイトに伝えないでくれと言うので先生達もうまくカバーしてます。だんだん限界ですが。
    その子はよく休日に何をしたかをノートをちぎって書いてくれます。おじいちゃんのいえ、どようび、とまる。など。
    先週はくらす、いじめ、いや。☓。と書いてあり担任に伝える事もできました。
    親御さんは何とか声がでるように必死ですが今はこんなやり取りも素敵ですよね。
    だいぶちぎった紙も増えてきました。
    私が返事を書いた紙達がお道具箱でグチャグチャに大量に溜まっていたのは笑いました。

  2. こまめ より:

    言葉としてこちらに発しないだけで、その子の内面世界、その子の思考は頭と心に広がっているんですよね。本当はたくさん話したい子が、言葉選びが拙くて伝わらなかった経験を何度かしてしまい、怖くてしゃべれなくなることもあるなと思います。または、言葉にしてることは氷山の一角で、本当に伝えたい気持ちや内容はもっと沢山あったり出ている言葉とは異なることも、、

    「その子を見ること」本当にむずかしいなと思います。否定しないで待つことをもっともっとできるようになりたいなあ。
    今回も素敵な記事をありがとうございます!

  3. こまさん より:

    いつも記事楽しみに読んでいます。ありがとうございます。

    その患児さんにとって先生のような存在、自分のことを知ろうとフォーカスあてて優しく色々と聞いてくれる方の存在は自己肯定感にも繋がる気がします。

    言語化が難しかったり恥ずかしかったり自信なくて、最後に発する勇気出なかったりする場合もあったり⋯でも心の中は色彩豊かな子も多くいそうですね。

    ミャクミャク様のくだり〜最初「!!?」でしたが
    アクセントのことでしょか?
    思わずググりましたヨ笑 だとすれば

    関西「ミャクミャク」→→
    関東「ミャクミャク」↑↓

    関西派の自分は何の躊躇もなく→→で言うてたけど
    関東のを聞いて「!!」
    府知事は正式?に→→にしましょかwと報道で。

    個人的には初めビジュアルにウォォ。。となりましたが、ミャクミャク様、愛されマスコットになってますね

  4. 匿名 より:

    いつも学校ではこれを言ったら相手がどう思うか、変に思われないか、相手を傷つけないか、などなど…そんなことが頭いっぱいで安心してしゃべることができなくなっちゃってるんでしょうね
    安心して話していい相手だと分かれば自分から話すんですね
    そりゃ誰だって自分のことしゃべりたいですよね、聞いてほしいですよね、無条件に受け入れてもらえるならなおさら

  5. 匿名 より:

    更新ありがとうございます!

    うちに喋らない子います。
    あまりに喋らないので、言語能力がとても低いと思われ、本人に聞こえてるのにネガティブな話を私にしてくる専門家が時にいて悲しいです。
    と言っておきながら自分自身も、問いかけたことに返答がないのに怒ってしまったりするので、人のことは言えませんが、、、。

    すごーーーく待っていると、ぽつりと返事があることもあるので、頭の中でじっくり考えてるのかな、と思います。(待っててもそれっきり、もよくありますが。。)
    そして、ものすごく豊かな内面世界を持っています。普通なんてどうでも良いから、それを尊重してあげたいな、という気持ちと、とは言え日常生活では多数派に通じやすいことも大事だし、との間の葛藤の毎日です。

    今回の記事を読んで、少なくとも親は、彼のペースを大切にして、内面世界を尊重したいな、と改めて思いました。

    ミャクミャク、そんな発音もあるんですね。確かに。ワンワンはだいぶ前に卒業してしまったので、今はモジャモジャが好きです♪

  6. パディントン より:

    P先生はモジャモジャ…?気になりつつ拝読しました。
    ミャクミャクの発音も。『脈々』とは違うということかしら…笑

    スティッチ大好きな子供さんからのお手紙の話、可愛くて…。
    普段は話さないんだけどお手紙で気持ちを伝えてくれるなんて、嬉しいですよね。
    先生が一生懸命話しかけてくださるから、お子さんの方も嬉しかったんだろうなあ…と想像します。

    私も、話すことはあまり得意ではありません。小さい頃は特にそうでした。
    絵を描くのが好きだったので、しょっちゅう描いてましたが、自分の気持ちをうまく言葉にできないから、絵を描いてたんだろうなあ…と思います。

  7. オノマトペ より:

    娘はすごくどうでもいいことは喋ります。
    一見コミュ力高くみられます(HSP)。
    でも自分の深い気持ち、本当の気持ちを言語化するのは苦手です。
    そして絵が大好きで絵は色彩感覚が繊細で彩り豊か。
    こんな世界があるのだと思います。
    一見喋れる子でもきっとそういうことなのでしょうね。。
    P先生いつもありがとうございます!!

  8. CUSU より:

    うちの長男もこれです!学校の事とか自分の気持ちとか。。
    聞くと首を傾げて『うーーん、、、、わかんない』

    母親には話したくないのか!と思っていたけど、
    いろいろ考えてるし、聴いちゃいけないわけじゃなかったんですね。

    16歳になり、やっと学校の事とか話せるようになってきてます。
    サリーアンも中2では、ASDの子の解答でしたが、高1になったらちゃんとできたし。

    ゆっくりでも、その子なりの社会性が育つんですね。
    このブログで、勉強し続けてよかったです。

    いつもありがとうございます

  9. たま より:

    更新ありがとうございます。
    やはり先生の文章は素敵だなあ
    大好きです!!

  10. カヤネズミ より:

    言語化力や語彙力の高い大人であってさえ、心の全てを言葉に翻訳できるわけではないですものね。理解しているつもりでもつい、言葉=心の全容みたいな受け取り方をしてしまいがちです。

    いつもためになるお話をありがとうございます。

  11. はるまるま より:

    結局、P先生が勘違いしていた「ミャクミャク様」のイントネーションも、正解のそれも全く伝わらん!!笑

    いつもブログありがとうございまーす!

  12. とれもろ より:

    うちの娘がまさにそれです!
    お姉ちゃんとケンカして、ひと言も発さず慌てて折り紙と鉛筆を持ち、お姉ちゃんの名前を書いて上からグチャグチャ!とやるタイプです笑
    庭に出てポッピングをやったことを、今ここで直接喋れば良いのに、また折り紙に鉛筆でササッと書いて渡されます^^
    ニッコニコの絵付きで笑
    喋れないわけじゃないけど、テレパシーを使え!と文句を言われてしまうので、母はテレパシーの練習中です( *´艸`)

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