発達障害

ASDの世界 〜世界はこんなふうに見えている〜

前回、ADHDの世界観について書いた。

こんなふうに見えているんじゃないかと思う。

ADHDの世界 〜世界はこんなふうに見えている〜ADHDの子が、こんなことを言った。 情報って、誰も見ていないテレビだった。 ん? どゆこと?...

 

 

次は、ASD。

 

ASDの世界

ADHDの世界。

  • 脳内BCG
  • 脳内会議
  • 脳内マジカルバナナ

などなど、ADHDの世界を表す表現は多い。

 

上記は聴覚的なもので、視覚的な表現だと

  • 暗闇の懐中電灯
  • 誰も見ていないテレビ ←NEW!

とか。

 

これに対し、ASDの世界を表現する言葉って少ないように思う。

  • こだわり
  • コミュニケーション困難
  • 社会性の障害

のように、1個1個の独立した症状で語られることが多い。

まとまらないというか。

 

ASDの根本ってこうだから

こんな症状が生じる

という、包括的な表現ってあまりお目にかからない。

 

なので、今日の話は完全に僕の仮説。

個人的に、ASDってこういうことじゃないかなーと思っている話。

勝手に思っているだけなんだけど。

興味があれば。

 

 

 

 

ADHDの世界観モデルとして、この絵を出した。↓

テレビがたくさんついていて、でも1個しか見ていないってモデル。

 

これに対比させるなら、ASDはこうだ。↓

 

どデカいテレビが一つ。

画面がめっちゃ大きくて、写っている範囲がめっちゃ広い。

視界に収まりきらない。

ASDは、ADHDとは違った意味で情報過多だ。

 

 

もっというと、こう。↓

 

ASD、ウォーリー説。(↑見えないけど、ウォーリーの絵です)

どでかい画面に、細かーーーーーく記載されたイラスト。

目がチカチカするぜ。

 

さて質問です。

あなたの視界がこうだった場合、あなたはどうやって情報を処理しますか?

 

生まれてこのかた、ずっとこんな視界だったら。

画面、全部見える?

処理、できる?

 

僕だったら、全然ムリ。

 

情報過多で、処理できない。

じゃあどうするか。

僕だったら、

①パッと目に付く場所だけを見る

かな。

あと、

②特定の物をメルクマークに、全体像を把握しようと試みる。

だろうか。

 

↑コレ!

コレがASDの視点じゃないかと、個人的には思っていて。

 

ASD、ウォーリー仮説

僕、以前からASDウォーリー説を推していて。

ASD、全部見えちゃってるんじゃないか説。

見えすぎちゃってるんじゃないか説。

 

情報に傾斜がつかず、あらゆるものが平等に見えちゃう。

全部拾っちゃう。

 

  1. すべてが等しく目に入る。
  2. 情報量が多すぎて、逆に鈍麻する。

↑コレがASDの情報処理なんじゃないかと。

ASDの困りごとって、ここに起因するんじゃないかって。

あくまで仮説です。

【自他境界シリーズ②】自他境界によって見える世界が違う前回の続き。 https://hattatsu-kids.com/?p=5469 あくまで僕の趣味であり、主観です。...

 

興味の偏り:過敏と鈍麻

全部見ちゃうと、メモリがパンクする。

そりゃそうだ。

情報多すぎる。

 

だもんで、

  • ある特定の部分ばかり目に入るようになり(過敏)、
  • 他は見えなくなる(鈍麻)。

これがいわゆるASDの『興味の偏り』じゃないかと。

 

これが、

こう。

 

ウォーリーしか見えない。

それ以外は、見えるんだけど見えない。

白い暗闇。

見えるところはやたら見えて、他はお留守。

 

人によって、見える場所は変わる。

  • 電車
  • 数字
  • クルクル回るもの
  • 特定のあの子

色々だが、そればかりが目に入り、あとは見えない。

情報のオーバーフローで、脳が自動的に情報をシャットアウトするのだろう。

 

だから興味関心に偏りが生じるし。

全体像が見えないので、コミュニケーションエラーが起きる。

見えない部分を脳内で勝手に補うと、ありもしない作り話を作っちゃったり。(←いわゆる『認知の歪み』ってやつ)

 

こだわり:ルール化・ルーチン化

ASDに見られる『こだわり』についても、このモデルで説明できる。

 

全部の情報をちゃんと見ようとすると、明らかにメモリがパンクだ。

人間の脳には限界がある。(ちなみに、ASDの中に一握り、全部の情報をありのまま記憶できちゃう人がいるようです。)(脳って不思議だ。)

 

だもんで、ある特定の部位を指標に、全体像を把握する。

全部は把握できないから、ある一部を確認することで、「世界はいつも通り」と認識する。

この「ある一部」が、『こだわり』として表出される。

 

指標がちょっとでも変わっちゃうと、わけわかんなくなる。

世界の秩序が崩壊する。

不安がハンパない。

これが『こだわり』。

 

 

人によって、何を指標にするか、つまり何にこだわるかは変わる。

  • いつもの道
  • いつもの服
  • いつもの儀式
  • おしっこはトイレ、うんちはオムツにする
  • 園の周りを3周してから保育園に入る

などなど。

 

対象はいろいろだけど、総じて、ココがずれると世界の全てが崩れるように感じる。

いつもの道を通るから、いつもの場所なのだ。

別の道を通ったら、もうそれは別の場所で、超怖いのだ。

 

大袈裟だと思うじゃん?

でも、ASD児にとってはそうだ。

世界が全部、足元から崩れ去るような不安に襲われる。

 

なので、絶対的にこだわる。

ルール化、ルーチン化。

超大事。

そうすることで世界を把握し、安心を得る。

 

コミュニケーション:自分と他者の区別

コミュニケーションについても、そういうことだろうと思う。

 

全部が等しく見えちゃうもんで、「自分」と「他者」の区別が曖昧。

むしろ、ほぼ識別せずに生活している。

 

自分とかあなたとか、どっちでもよくね?

 

そこに「ある」。

ただそれだけだ。

 

自分もあなたも、等しく「たくさんある中の一つ」。

ウォーリー、おじさん、子ども、兵隊、人、人、人、人……。

そこに傾斜をつけない。

意味づけをしない。

 

なんなら、人でも帽子でも靴でも、ただそこに「ある」だけ。

同一平面。

ウォーリーがここで帽子を落として、この障害物を避けてこっちに歩いて……みたいな物語をつけないというか。

 

ウォーリー:いる

帽子:ある

それだけ。

 

伝わるかな?

「ウォーリーを探したらクリア!」「帽子は見つけても無視でよい」みたいな意味づけをしない。

ウォーリーはいるし、帽子もある。

ただそれだけ。

同一平面。

 

 

なので、便利なものを、ただ使う。(クレーン現象)

欲求を叶えるのに、便利な手がそこにあった。

じゃあ使うだけだ。

 

自分とか親とか他人とか、ナニソレおいしいの?(人見知りしない)

誰が味方で誰が大事とか、そういった意味づけをしない。

 

 

感情的な関係性より、事実の中で生きている。

そこにそれが「ある」という事実。

「こう働きかけると、こう動く」という事実。

事実を拾い集めながら生きている。

 

 

説明が難しい。

伝わります?

 

これで例えると、定型発達の視野は、

  1. いい感じの大きさのテレビに、
  2. いい感じの量の情報が、
  3. エピソード付きで(意味づけされて)紹介される

って感じ。

 

特定の情報を、意味や解釈とともに映し出すイメージ。

ワイドショーや情報番組的な。

 

かたや、ASDは、監視カメラ。

あるものをそのまま、意味づけせず、取捨選択せず、全部映し出している感じ。

 

だもんで、ASDからすると定型発達の視野が意味不明。

  • なんでそんな編集されてんの?
  • なんでそんな意図付けが?
  • どうしてここを切り取ろうと思ったの?
  • なんでこっちの情報は気にしなくていいの?

 

定型の考える『普通』がわからない。

普通そう考えるでしょ? って言われても、全く理解不能。

 

まとめ

こんな感じじゃないかなーと、勝手に思っている。

 

もちろんこれは僕の勝手な解釈であって。

全然違うかもしれないし。

人によって、特性の強さによっても変わってくるだろう。

 

とりあえず、

ASDはADHDと違った意味で情報過多

ってのは、そうなんだろうなーと思っている。

だからASDにしろADHDにしろ、とても疲れやすい。

POSTED COMMENT

  1. 匿名 より:

    前回のADHD、今回のASDとすごく分かりやすい記事をありがとうございます!
    ADHDは勇者(強いんだけど今の世の中では発揮できない)という説に納得したのですが、ASDはいつの時代かの何かの役に立つんでしょうか…(T_T)

  2. もやもや より:

    先生とても分かりやすかったです。
    うちの息子は高知能ASD,ADHDと診断されてますが、これはでっかい画面がいくつかある、と思って良いのでしょうか?
    息子の言動は私には理解不能なことばかりです。

  3. 匿名 より:

    初コメントです!
    いつも先生の記事で私の頭のなかを整理することができて、とても助かっています。
    小4ASDの息子の感情の動きや行動をみては、なんで?どうして??と原因を考えてばかりだったのですが、以前のウォーリー、そして玉の話あたりから、やっとそのままの息子をみるってことができるようになりました。
    今回のウォーリーはまたインパクト大でした!!
    世界がこんな風に感じられる子に対して、安易に自分の価値観を元に、いろいろ言っちゃいけないなーって改めて思いました。

    これからも楽しみにしています!

  4. きなきな より:

    P先生、おつかれさまです。
    私も脳内BCGに目が釘付けになってしまいました!
    BCGなら私の解釈が違うな、どうしよう、私すごい間違えちゃってた!
    と混乱し昨日は一旦読むのをやめました。
    一晩置いて今朝恐る恐る前回の記事を読んで
    あぁ良かった、間違ってなかった私と安心しました。
    安心すると同時に「先生、外来忙しかったのかな」「冬なのにプール熱も流行ってるから忙しいよね」などなど、どんどん妄想が暴走。頭ちょっと休めます私。改めて私は休みながら生きるといいんだなぁと痛感しました。

  5. はるまるま より:

    ADHDの世界の復習する枠内の”脳内BCG”を二度見してしまいました。笑
    BGMじゃなくて注射だったの??💉と確かめに一つ前の元記事を見に行ってしまいました。笑

    そして『ASDの世界』待ってました〜!
    嬉しい記事です。

    特性の話題で出てくるこだわりという言葉は頑固のようなマイナスイメージのように聞こえてしまうときがありますが、

    >全部は把握できないから、ある一部を確認することで、「世界はいつも通り」と認識する。

    という先生の仮説を読んで、ある一部の確認めっちゃ大事なことじゃん!!!!
    と思えました。

    自閉症の息子が普段どんな風に感じているのか、行動はどんな気持ちからきているものなのか思いを馳せたいと思います。

  6. オノマトペ より:

    いつもありがとうございます!
    大変わかりやすいです!
    ひとつ疑問なのですが、ASD、ADHD両方の場合、どのようなテレビなのだろう…と思いました。時に大画面で時にたくさんのテレビなのでしょうか?ウォーリーのテレビが沢山とか…?(疲れ過ぎます)

  7. 匿名 より:

    今日の記事、自分だわ〜と思ってめちゃ面白かった。先生ありがとう。

  8. あかね より:

    いつも、大変わかりやすい説明をありがとうございます!

    我が家の7歳息子は、ADHDとASD両方あるのですが、どちらの分析も頷けました。

    四六時中、「疲れたー」「疲れたー」と、言ってるのですが、納得できました。
    これは疲れますね(⁠・⁠o⁠・⁠;⁠)

  9. 匿名 より:

    説明、わかりやすいです(^^)
    小学生の息子が、良い時(コミニュケーション取れる時)と悪い時(外から何か言っても、入る感じがない時)の差が大きいです。開店中と閉店中、みたいな感じです。
    情報過多(特にネガティブな)の時には閉店しがちです。
    巨大なウォーリーだったら、確かに、「無理、終了」となるのかも。
    本人に扱える量と質で経験値を上げるしかなさそう?と、改めて納得しました。
    これからも楽しみにしています!

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