発達障害

ADHDの世界 〜世界はこんなふうに見えている〜

ADHDの子が、こんなことを言った。

 

情報って、誰も見ていないテレビだった。

 

ん?

どゆこと?

 

ADHDとマジカルバナナ

ADHDの子。

薬を開始したら、僕は本人に直接効果を聞くことにしている。

 

どのような効果があったか。

飲む前と飲んだあとで、世界の見え方がどう変わったか。

 

よく聞くのは、

  • 集中できる。
  • 世界が静かになった。
  • 脳内BGMが止まる。
  • 脳内マジカルバナナが止まる。

↑こんな感じだ。

 

ADHDって、一人でずっと脳内マジカルバナナをしているらしい。

マジカルバナナ。

知ってます?

マジカル頭脳パワー。

坂東英二。

 

マジカルバナナ

バナナといったら黄色

黄色と言ったらおしっこ

おしっこwwwwwウケるwwwww

そういえばおしっこいきたいな。

いや、でもトイレ寒いよな。

寒いかな?

いやマジ寒いんだけど、ちょっと、教室の窓閉まってる?

あ、校庭で6年生が体育やってる。

↑こんな感じで連想が止まらない。

 

授業中、ずっとマジカルバナナ。

一人で。

自分対自分。

延々決着がつかない。

 

当然授業は聞いておらず、先生に叱られるわけだが。

 

誰も見ていないテレビ

さてさて。

先日薬を開始したこの子。

 

投薬して、世界はどう変わった?

 

この子の答えが興味深かった。

 

男の子
男の子
自分はマジカルバナナじゃなくて。

これまで脳内に、常に映像が流れていた。

 

男の子
男の子
誰も見ていないテレビがずっとついていて。

それが止まった。

 

ほぅ。

興味深い。

 

どうやら、視覚有意のタイプのようだ。

音や言語ではなく、映像が流れるタイプ。

 

 

つまり、いろいろな情報は入っていた。

映像として流れていた。

でもキャッチできず、ただ流れていただけ。

情報の垂れ流し。

まさに、「誰も見ていないテレビ」。

 

なるほどねー。

 

授業も、宿題も、お母さんの小言もやるべき作業も。

必要な情報は、情報としては入っていた。

でも、誰も見ていないテレビのように、ただ流れているだけだった、と。

 

なるほどなー。

 

たくさんのテレビ

例えるならこうだ。

 

ADHDって、目の前にたくさんのテレビがある。

でも、基本的に一つの画面しか見られない。

 

こんな感じ。↓

 

画面はたくさんある。

必要な情報は、一応、入っている。

でも、注視できる画面は一つ。

それ以外の情報は、見事にスルーされるのだ。

 

ある画面を見て、衝動的に別の画面に気を取られて、また別の画面に気が散って。

目に付く映像があると、ついそちらを見てしまう。

ピカピカする映像とか、派手な場面なんかは絶対見ちゃう。

つまり、刺激があるとそっちに気を取られる。

 

 

見るべき画面が定まらない。

大事な情報も映し出されてはいるんだけど。

 

全然見てない。

 

情報は、入ってるんだよ?

入ってはいるだけど。

 

見ちゃいねぇ。

 

特に、地味な映像を見続けるとか、一番の鬼門。

退屈な授業より、窓の外や後ろの掲示物、ハナクソ食べてるあの子に目が行く。

刺激を求めて脳内マジカルバナナしちゃう。

そういう仕様だ。

 

 

だから、何度言っても、指示を出しても、ただ流れているだけ。

聞いちゃいない。

  • 聞こえてるんだけど(情報としては入っているんだけど)、
  • 聞こえていない(脳がキャッチしていない)。

 

だから、できない。

衝動的だし、ミスも多い。

同じ失敗を繰り返す。

 

そういうことなんだなぁ。

 

脳のスペック:情報キャッチの特徴

ADHDは、情報の処理の方法に特徴がある。

 

情報は入る。

入るんだけど、キャッチできない。

 

ADHDの情報処理は、「懐中電灯で暗闇を照らすよう」と表現される。

『ここ』しか見えていない。

照らす場所が変われば、今度は『そこ』しか見えていない。

必要な情報がキャッチできない。

 

長所でもあるんだけどね。

  • 次々画面を切り替える力。
  • 全然違う場所に興味を飛ばす力。
  • 一度ロックオンすると、そこだけを見続ける力。(過集中)

 

時代が時代なら、最強だった。

狩りとか開拓とか、超強そうじゃん?

あとは冒険や戦闘なんかも強そうだ。

 

 

でも今は、平和な時代なので。

そのスペックを持て余す。

 

いわば、魔王のいない時代に生まれちゃった勇者。

いや、強いんだよ?

強いんだけどさ?

発揮する場所がないじゃん?

 

やたら高いその能力は、今の時代ではマイナスとなる場面が多い。

不遇だ。

 

 

ADHDは、世界をこう見ている。↓

満遍なく情報をキャッチすることが困難。

気になる画面があったら、それを見ちゃうし。

一個に見入っちゃうと、他はお留守だ。

 

  • 急に変なことを言い出す。
  • 全体像が見えない。
  • 強い刺激に飛びつく。
  • すぐ飽きる。
  • 忍耐力がない。
  • 落ち着かない。
  • かと思うと、一度どハマりするとそこしか見なかったりする。(過集中)

 

このように理解すると、ADHDの行動原理がわかりやすいんじゃないかと。

わざとじゃないのよ。

『そこ』しか見えないの。

そういう脳のスペックなの。

 

時代が時代なら、最強の勇者だったんだけどなぁ。

魔王、どっかにいませんかね?

フリーレンが倒しちゃいました?

POSTED COMMENT

  1. ふりーれん より:

    逆に定型発達の人は世界はどう見えているのでしょうか?

    3〜4年程前、長男が不登校になり、のちにASDの診断をもらい。その頃によく拝見させて頂いており、とても勉強になっていました。
    今日、ほんと数年ぶりにまたこちらのブログに辿り着き。
    色々あって、私(母)ADHDかなぁ。と思う事があり。
    子供の頃とかを思い出すと、当てはまることが多々あり。
    ほんと、逆にみんな(大半の人)は世界はどー見えてるの?と疑問に思いました。

  2. とくめい3 より:

    先生、今回もありがとうございます!
    自分の状態を言語化できるお子さん、すばらしいですね♪

    大人のわたしは、映画エブエブを観ながら
    「あ、この感じわたしの頭の中と一緒だ~」と思いました。(役所のデスクとこから、まさに)

    他の人はマジカルバナナしてないんですね、その状態がまず分からない。

    あと、すぐ忘れちゃうところは、
    「ファインディング・ドリー」を観て
    「あ~これわたし!そうなのよ、悪気無いのに忘れちゃうの」と、違う観点で泣きながら見てしまいました(笑)

  3. 匿名 より:

    いつもありがとうございます!
    他の方も書かれていましたが、私の感想も、「え!みんなマジカルバナナ流れてないの!??」です笑
    家族全員、マジカルバナナだから、そりゃ散らかりっぱなし、万年遅刻から抜け出せないわけですね、、

  4. きなきな より:

    P先生、おつかれさまです。
    今回のブログ、いつも以上に分かりやすかったです!
    先生のブログのお陰で、私自身が何十年も抱えてきた生き辛さの正体が分かりました。
    息子が不登校でうんぬんかん、夫がADHDでうんぬんかんとコメント欄で語ってきましたが、私自身がADHDでした。私も脳内マジカルバナナ状態だし、誰も見ないテレビがついています。
    先生のブログと息子たちの不登校で、私はかなり生きやすくなりました。
    色々背負ってた荷物が半分以下になりました。私だけでなく、夫もかなり丸くなったんです。
    夫はいつスタッフさんからパワハラだと言われても仕方のないほどの独裁者ぶりを醸し出しておりましたが、怒りの沸点が高くなりました。
    夫婦揃ってADHDなら、そりゃ息子たちはしんどいですよね。
    己を知るって大切ですね。これまで自分を知ることが怖かったけど、自分って結構いいやん!って思えるようになりました。
    ホントにホントに先生のお陰です。

  5. すずらん より:

    つい最近我が家のADHD息子に「キミは旧石器時代とかに生まれてれば間違いなく英雄った‼️」と話していたところでした。

    生まれた時から活性度が高く、動きまくり、身体能力も身体も強い。しかも集中したらすごい❗️
    小6息子に「あなたは最強-♪」と替え歌歌ってウザがられた母です(笑)

  6. 女子の母 より:

    そうですかー、ADHDの方はそんなふうに見えていて、そんなふうに思考しているのですねー。
    ご本人も、さぞかし疲れますよね。

    いつもガチャガチャしてる娘は、
    抑肝散加陳皮半夏を飲むと、スーッと落ち着いて、「あー、なんだか気持ちいいー。楽になったー。眠たいー。」って言うんですよね。
    はじめて飲ませた時は、こちらもビックリしました。
    娘が生まれて以来、とにかくエネルギーに溢れてチョロチョロして落ち着きがなく、私はどちらかというと神経過敏なので、ずーっとハラハライライラが止まらなかったのですが、
    娘が抑肝散加陳皮半夏を飲んで15分くらいしたら、部屋の気温が5度くらい下がったかと思うくらいスーッと空気が変わって、私の呼吸が楽になって。。。
    抑肝散は子供の疳の虫に、古来から 母子同飲 だったといいますが、当たっていると思います。

    頭の中の要らないテレビが上手く消せるように、先生のような方に相談できると楽になりますね。

  7. 匿名 より:

    !!
    私、講義中や研修会中、はたまた学会中に気になるワードを捉えて、そこから頭の中で想像を広げる癖があります。そして、自分ならどう発展させるかなと想像して楽しみます。私って最後まで人の話を聞きづらいし、ADHDっぽいな?と思っていました。
    が、私の脳内マジカルバナナは本題からはあまりそれない。これ、うちの旦那じゃん!!と思いました。
    旦那にこの記事の内容を伝えたら、「みんなは違うの?」と言っていました。
    うちの旦那、幸せそうです。

  8. より:

    面白ー!分かりやすー!フリーレンほぼ毎週泣くー!

    わざとじゃなくて本当にそういう仕様なんだなって腑に落ちました、なんと秀逸な表現!

  9. 匿名 より:

    P先生、記事とは関係ないのですが、もしよかったら記事にしていただきたいです。
    娘が発達凸凹と境界知能です。
    正直、発達障害だけだったら本人の強みに働きかければ将来的に仕事もできるし予後は良い感じがしますが(人によるとは思いますが)、境界知能だと、本人にとって得意なことでも、全体から見たら平均下・・・どまりな気がして、来年から就学だけど、どう支援していけばいいのかな、と悩んでいます。
    二次障害をおこさないようにしたいのですが、学校でお友達よりも基本出来ない、という立ち位置でこれから過ごすようになりますよね(これ私だったらしんどい!)。
    むりやり人の倍勉強時間を持つといっても無理があるし。
    もっと境界知能のこともブログに書いていただけるととっても嬉しいです^^
    先生にとってよい一日になりますように!

  10. ぷりん より:

    まさにこれ!
    そして優先順位が付けられないから
    一番大事なことは頭に残らない。
    話を聞いてないと思っていたけれど
    単に大事なことがどれか判断できてないのかも
    と最近は思ってます。
    とにかく大人になって困るのは間違いない!

  11. 杉母 より:

    下の方にある□の枠の中の事全てにおいて息子が当てはまります。笑っちゃうくらいに。大学受験が始まって、思い切ってコンサータを服用させてもらいました。どうな感じかと聞くと、『集中できる!』ざわざわ感が少なくなった感じとか?しかし、不安障害があるもんで気持ちがおちた時は、そちらに集中してしまうとかで、これまた難しい。副作用もあるので薬の量を今検討している感じです。今回改めてADHDについて再認識させてもらいました。時代が時代だったら息子は最強だったのかな。想像すらできなせんが(笑)

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