発達障害

どうやったら「普通」になる?

発達に特性のある子。

困りごとを抱えた子。

 

投薬を提案する。

飲むと、少し困りごとが減るかもしれない。

 

療育や通級を提案する。

そこで対処法を学べるかもしれない。

 

 

この子は、こう答える。

 

それしたら、普通になる?

 

こんな子がいました

ADHDの子。

ASDもあるから、こだわりや認知のゆがみもある。

 

怒りっぽく攻撃的。

両親も接し方に苦慮している。

親子でドンパチを繰り返し、二次障害的に余計に反抗的になっている。

 

 

ある時、宿題をしていたら、机上に置いたハズの消しゴムが見当たらない。

 

男の子
男の子
あれっ、おかしいな。

ココに置いたはずなのに。

 

机の上を見るが、やっぱり見当たらない。

 

焦ってノートをひっくり返す。

教科書をどかす。

見つからない。

男の子はパニック。

 

あれっ、あれっ。

絶対にココに置いたのに!

 

何度見ても、そこに消しゴムの姿はない。

 

 

そこへ、母登場。

 

母
消しゴムなら、机の下に落ちてるよ。

 

すんなり解決。

同じところばかり探さずちょっと視点を変えるといいよ、なーんて軽くアドバイス。

 

と、ここまでは良かったのだが。

 

次の瞬間、男の子、大激怒。

 

男の子
男の子
なんだよ、俺をバカにしてるのかっ⁉︎

 

自分にできないことが、他の人にはいとも簡単にできる。

当たり前のことが、自分にはできない。

みんなにはできて、自分にはできない。

 

なんでだっ!

 

ダメな自分への自己否定が、怒りになって噴出。

この子は怒りが外に向くタイプ。

もう怒る怒る。

 

ダメな自分を見せつけられ、さらに自分の不得手な部分、気にしている部分を指摘された。

その刹那、自分の全てを否定されたと感じたのだろう。

まさに瞬間湯沸かし器。

話し合う余裕などなく、烈火の如く怒り出した。

 

こうなると、もう手がつけられない……。

 

 

こんな感じのトラブルが、日常茶飯事とのこと。

あまりに理不尽な怒りのため、両親は厳しく諭そうとする。

考え方を正そうとする。

でも、言えば言うほど、この子は反発する。

 

親子喧嘩の一つ一つが傷となる。

この子の自己肯定感、自己効力感を奪っていく。

 

自信がないもんだから、また次に不得手なことに出会ったり何か言われた時に、さらに怒る。

で、厳しく叱られ、輪をかけて反発。

負のスパイラル。

 

 

医療として、投薬を提案する。

薬の力で失敗を減らせば、トラブルが減るかもしれない。

自信も回復するかもしれない。

 

その時の男の子の返答が、上記冒頭のものだった。

 

男の子
男の子
それ飲むと、普通になるのかよ。

消しゴムがすぐ見つかるようになる?

他の人と同じように、怒られなくなる?

 

もちろん、そんなわけはない。

特性は軽減されても、全てなくなることはない。

 

男の子
男の子
じゃ、飲まねーよ!!!!!

 

「普通の人に、おれはなる!」

無理なのだ。

特性は「ある」。

 

特性はなくならない。

一般的な病気のように、「治る」類のものではない。

 

 

でも、特性をなくしたいと願う人は多い。

本人も、親御さんも。

そこから離れられない人も多い。

 

この特性は「治る」のか。

どうしたら「普通の人」になるのか。

 

普通の人、つまり定型発達が、唯一の解決策と思い込む人は少なくない。

どうやったらそれに「なれる」のか。

発達障害が「治る」のか。

 

 

そんな方法はない。

当たり前だ。

存在しないのだ。

 

男の子
男の子
定型発達に、おれはなる!

 

無理なのだ。

 

女の子
女の子
普通の女の子に戻ります。

 

マイクは置けないのである。

 

 

特性はなくならない。

「ある」のだ。

今も「ある」し、今後一生「ある」。

 

これがいいとか悪いとかの、感情論はここでは置いておいて。

でも、現実問題そうなのだ。

なくすことはできない。

絶対に「ある」。

 

 

この事実を、事実として受け入れること。

発達障害の受容における、最大のハードルはここだろう。

 

普通、認めたくない。

  • いつかは治るんじゃないか。
  • 療育をすれば。
  • 薬を飲めば。
  • 大人になれば。
  • 隣のクラスの〇〇君と比べれば。
  • 支援級の子たちほどではないから。
  • この程度なら「普通」でしょ。
  • まだ小さいし。
  • 男の子だし。
  • 早生まれだし。

そんなふうに思う気持ちは、よくわかる。

 

でも、違うんだ。

その子には「ある」。

あなたには「ある」のだ。

 

 

「普通の人になる」という幻想は捨てるしかない。

そこからしか始まらない。

 

普通にはなれない。

特性は「ある」のだ。

※何をもって「普通」とするかはここでは言及しない。

 

配られたカードで勝負するっきゃないのさ。

スヌーピー

 

 

このカードがいいか悪いかは、置いておいて。

とりあえず、手元のカードで勝負するしかないのだ。

それしかない。

 

まとめ

僕は、発達障害が生きていく道があることを知っている。

少数派には少数派のやり方があることを知っている。

数の暴力で。

立場的に、いろんな人の人生を垣間見せていただいて。

 

だから、発達障害を悲観的に受け取らない。

 

 

でも一般の人には、やっぱりまだまだハードルが高いのだろう。

世間的な発達特性への理解は、まだそこまで至っていない。

 

ちょっと特殊な立場にいる僕の意見。

届くと、役に立つ人もいると思う。

 

普通にはなれない。

なる必要もない。

 

あなたはあなたのままで、生きていく場所が、きっとある。

POSTED COMMENT

  1. あみ より:

    普通にはなれない。
    なる必要もない。

    先生の言葉に泣きました。
    いま中学生の息子が不登校になっており、
    親子で、世界から孤立した気分でしたが、
    今夜は、すこし安らかな気分で、
    眠れそうです。

  2. tamago より:

    私自身に刺さりまくりました(泣)
    自分が子どもだったときは、おおらかな時代だったので不注意でも忘れっぽくてもそんなことで注意されなかったし、なんなら学校の先生のほうが特性豊かな個性派が多かったので「怪我するなよー」くらいなもんだった。

    自分が母になり、子ども達が集団に馴染めず療育やら支援級それでも「みんなと同じように」を目指すことを求められ、私自身の特性にも気が付き、「正しいことばかりを目指して」とても苦しかった。

    子どもが不登校になって、見えない窮屈な線路から降りられたような気がしてホッとした。反面、母親として甘すぎると責められているように思う時期もあり辛かった。

    いつからこんなに窮屈な大人になってしまったのだろう。私に余裕がなくなると、結局子どもも不安定になる。私が私のままで生きられる場所で生きていければ、子ども達にもそのままで大丈夫ってメッセージが伝わるかな。

    私のままで生きられる場所、どこだろう。まずはそれを見つけていきたいです。

  3. らいおん より:

    「普通になりたい」って不登校なりたての頃、息子もよく言ってました。昨年の入学以来、1年以上完全不登校継続中です。
    HSC気質だし腹括って待つしかないと覚悟を決めて、でも一緒に居すぎるとなんだかんだ口出しちゃうからと、つい最近、フルタイムで事務の仕事を始めました。書類の整理ができない外回りのオジサンたちにどうやったら最低限の整頓をしてもらえるか考えるうちに、ADHDの特性を知り…。「あれ?うちの子、ADD(不注意型)の要素強くない?」と初めて気づきました。多動じゃないし、そこまで困ったことなかったので考えもせず、今更の衝撃でした。
    通学に1時間かかる進学校に入学して、皆が普通にできてることが自分には難しいと、本人は一足先に感じての冒頭発言だったのかもしれませんね…。
    HSCを知って半年、私の思い込みで間違った寄り添い方をしてきたのかもと反省しています。玉の観察って難しいですね〜(^_^;)
    HSC気質のADHD濃いめ(?)グレー男子。本人を傷つけることなく、この先の困りごと対処をそれとなく身につけてもらうには、どんなやり方があるだろう?と、新たなミッション見つけちゃった気分ですw
    まだまだ隠れキャラいるかもですが、週末限定でゆっくり、こっそり、フォローしていきたいなぁと思います。

  4. HAL より:

    あなたはあなたのままで、生きていく場所が、きっとある。

    …朝から読んで、泣きました(笑)

    本当にタイムリーな話しすぎて。
    中2息子、周りの子から言われて自分でもあれ?オレそうなのかな…と、いま苦しいところにいます。

    親からの話はまわりくどくなりすぎて、
    息子には違う風にとられてしまったり。

    伝えたいことは先生の言葉と同じなんですがねぇ、どうやったらうまく伝わるかなぁ

  5. ピンポン より:

    P先生いつも楽しいブログをありがとうございます。
    最後の一文、心から共感します。
    この記事、いつか我が子が自分の困り感をはっきり自覚して「普通の人に、俺はなる!」的なことを言い出したらそのまま伝えたいです。
    【世間や誰かの普通】ではなくて、特性も困り事も不得手も得意も【自分の普通】として大切にしてほしいと。
    我が子に配られたカードはちょっと他の人よりクセが強いけど、それが生きる場所もあるんだと親としても視野は広く持っていたいです。

  6. まままま より:

    最後の一文に私も感動しました。
    特性ありありのかわいい3歳の息子も、私も、自分のままで生きていける場所がきっとあるのですよね。
    先生、いつも楽しいブログを書いてくれてありがとう。

  7. はるひなち より:

    最後の一文で泣きました

    中1の長男、ADHDで不登校、5教科合計110点でも困った感一切無し!
    逆に全く授業を受けず休み時間に教科書読んだだけで、国語と数学が共に35点や!と自慢してきて、元不登校の高1長女と爆笑しました

    その時その時で何とかしていくのがADHDなのでしょうかね?(笑)

    「あなたはあなたのままで、生きていく場所が、きっとある。」ほんと、その通りですよね

    勉強が必要だと思う時が来たら、この子はやるんだろなぁと、気長にヤル気スイッチが入るのを待ちます

  8. しろ より:

    消しゴムのくだり、全く同じことが2〜3日前に目の前で繰り広げられてました(笑)。
    全部我が家の話かな?と思うくらい当てはまり過ぎて…(T_T)。
    息子本人の気持ちはとても複雑なようで、一見受け入れているような態度もあるけど、実際は普通になりたい願望も見え隠れするので、見ているとせつなくなります。
    大人の視点からと子どもの視点では見えている物も違うし、将来への見通しも違うし、本人が受け入れるってすごく難しいですよね。。。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です