心理学

今まで通りやってほしい

あのさー。

もう、3年生じゃん?

 

歯磨きくらい自分でやろうよ。

 

赤ちゃんじゃないんだからさー。

 

こんな子がいました。

喘息で通院中の子。

 

あ、僕、普通の小児科医なのね。

発達とかメンタルの専属じゃないの。

 

一般外来や病棟業務もやっている。

メンタル専属と思われがちだけど。

なんなら精神科医と思われたりするからね。

 

ちげーから!

精神科じゃなくて、小児科だから!

得意な手技は腰椎穿刺ですっ!

 

だもんで喘息とかアトピーとかアレルギー疾患の定期通院も、フツーにやっているんだけど。

 

 

でさ。

喘息って慢性疾患だから、ある程度の年齢になったら自分で薬の管理をさせたいわけよ。

アトピーだって、プレ思春期頃から自分で軟膏を塗らせたいわけ。

 

何が足りない?

残薬はどのくらいある?

そろそろ自分で管理しようね。

 

すると……。

 

男の子
男の子
絶対ヤダ!

今まで通りお母さんにやってほしい!

 

おっと。

完全拒否ですわ。

 

 

この子は喘息で定期通院中なんだけど、ちょっとこだわりがあって、コミュニケーションが取りづらかったりしていた。

案の定、薬の自己管理を提案したら、完全拒否ときたもんだ。

 

 

多分ね。

変えたくないんだと思う。

 

今まで、薬剤の管理は当たり前にお母さんがやってくれた。

お風呂上がりに軟膏を塗るのも、ずっとお母さんの役目だ。

幼児期、いや乳児期からずっと。

それが当たり前で。

 

それを、急に自分で⁉︎

何言っちゃってるの絶対ヤダよ!

 

おそらく、変化を嫌う性質があるのだ。

今まで通りが安心・安全。

守備範囲外のことは、やりたくない。

「いつも通り」が非常に大切。

 

 

加えて、自分でやって失敗するのが怖い。

薬の管理を失敗して、病気が悪化したら困る。

 

毎日自分で薬を飲める?

忘れたらどうしよう。

薬が途中で足りなくなったら?

そのせいで発作が起きて、入院したらどうしよう!

 

失敗が怖い。

自信が持てない。

不安の強い性格も重なっている。

 

となると、結論は一つだ。

 

男の子
男の子
今まで通りお母さんがやって!!!

 

この一点張り。

 

変化を嫌う

変化を嫌う性質を持つ子っている。

今まで通りが安心・安全。

 

薬は、いつまでたっても散剤。

錠剤はトライしたくない。

学校の準備は、今後もずっとお母さんがやるべきだし。

レストランの注文は一択、『お子様ランチ』。

 

いつもと同じがいい。

挑戦しない、したくない。

人に依存し続けたい。

で、失敗したら「お母さんのせい!」。

 

 

親御さんがこれまでずっとやってあげており、子どもは今こうなっている。

おっと、責めてないですよ。

そうする理由があったのは、容易に想像がつく。

 

これがいいことか悪いことか、正直僕にはわからない。

なんでもやってあげるのは、その子の特性に合わせた親御さんの対応だろう。

全然理解できるし、そうなって然るべきだ。

 

良い面は、子どもの情緒が安定する。

悪い面は、年齢相応の挑戦を奪う。

いずれにしても先に子どもの特性ありきで、それに親御さんが対応した結果だ。

 

 

幼い頃から、やってもらうのが当たり前で。

他の子はある程度の年齢になったら「自分で!」が出てくるんだけど、この子は出なかった。

結果、本人に委ねるタイミングが見えず、疑うことなく当たり前に同じケアが続く。

親御さんにとっても、それが「当たり前」になっていく。

 

ある時、ふと気づく。

 

母
アレ?

私はいつまでこの子の歯磨きをやってあげるのかしら?

 

周囲の子たちはとっくに独り立ちしている。

親御さんが不安になり、ある時突然突っぱねる。

 

母
もうやらないよ。

今日から自分でやって!

 

すると案の定、

 

男の子
男の子
いやだ!

お母さんがやれ!!!

 

かんしゃく、パニック、大爆発。

 

 

変化を嫌うのだ。

にわかには理解しづらいけど。

この子は変化を嫌う性質だ。

 

怖い。

変化が怖い。

未知の世界はとっても怖い。

 

自分で自分の歯を磨くなんて、そんな簡単なことで大袈裟な。

 

そう思うでしょ?

でも、この子にとっては世界がひっくり返るくらい怖い。

こんな「小さなトライ」がめっちゃ怖い。

 

手放す準備を

この、「変化を嫌う性質」。

これには、ある程度早めに気づいた方がよいように思う。

 

あぁこの子は変化したくないんだなと分かれば、計画が立てられる。

今やってあげているこのケアは、何年後まで続けるのか。

どの段階で手放すか。

先を見据えてケアできるとよい。

 

 

変化を嫌う子だ。

急に手を離すと、恐怖でパニックになる。

 

母
3年生からは自分で歯磨きしてね。

 

前もって予告しておくとスムーズ。

 

母
送り迎えするのは今年だけで、来年からは自分一人で習い事に行くのよ。

 

先の見通しを示す。

よく言われることだけど、やっぱり効果は絶大だ。

 

 

変化を嫌う子には、この作業が必要。

他の子は勝手に自立するかもだが、この子はそうじゃない。

いつまでも同じが安心・安全。

 

そうすると、子どもって絶対に赤ちゃんからのスタートなので、ケアされる前提が継続してしまう。

「赤ちゃん扱い」がベースとなる。

赤ちゃんからずっとそうなので、親子ともに違和感を抱きづらい。

気づいた時には「過保護」で「異常な状態」になっていることも。

 

まとめ

 

変化を嫌うのは、生まれ持った特性。

 

親が甘やかしたからそうなったわけじゃない。

元々の子どもの特性に、親御さんが対応したに過ぎない。

 

でも、この特性を持つ子には、早めに気づいた方がよいように思う。

少し先回りして、手を離す準備をする必要がある。

じゃないと、パニックになるからね。

 

どこまでやってあげて、どこからは本人に委ねるのか。

失敗を怖がるこの子に、どうやって失敗の経験を積ませるか。

大事な視点だと思う。

POSTED COMMENT

  1. さもん より:

    初めてコメントします!
    1年以上前に先生のブログを知って、全ての記事を読み漁り、本当に助けられています。
    いつもありがとうございます!
    小3と小1の息子たちが不登校です。

    小1の次男に、
    『何才になったら、うんちのあとに自分でお尻ふいてみる?』と聞いてみました。

    『んー10さいになったら!』と答えてくれました〜。
    ちゃんと考えて答えてくれたことに感動しましたー!
    ゆっくりゆっくり次男のペースで見通しをつけていきたいと思います♪

  2. とくめい より:

    うんうん、そうですよね

    アトピーの軟膏を自分でやる!と言ってきても、本人に塗らせると家のあちこちまでベタベタでシミシミに…
    それを母の方がイヤで、やっちゃいます。
    他の諸々もそんな感じで

    そーゆーとこやぞ、ですね。反省。

    失敗がなによりもコワイ息子
    母も特性持ちなので
    おおらかな心で、少しずつやっていきます。

    いつもヒントになるブログ、ありがとうございます!

  3. しろ より:

    とてもよくわかります。
    あとうちの子の場合ですが、時間の猶予があることも大事なんだなーと感じます。
    最初はあくまで予告(提案)、だいたい反発されますが“今すぐじゃないんだけどね”“君が納得できたときでいいよ”と言葉を添えておいて、その後もちょこちょこ話題に出しつつ、少しずつ反発が小さくなって本人が「ま、いっか」という気持ちになるのを待つ感じ…。
    まあそんなに綿密に進められることばかりではなく、バトルになることもよくありますが…(苦笑)。

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