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脱輪走行のススメ

今日の話は、思っきしブログ。

医療からの観点じゃなくて、個人の感想。

小児科医Pとしてじゃなくて、パ・ヨンジョン(スゲーばったもん感!)(イニシャルPの日本人名が思いつかなくて)個人としての話ね。

 

「合わない」人たち

学校や社会にうまく適応できない人って、僕を含めたくさんいる。

外来でも話を聞くし、ブログのコメントももらうし、パ・ヨンジョンとして生活していても実感する。

 

いるよね。

特性があってどーしてもはみ出しちゃう人とか。

「ま、いっか」ができず、あちこちで壁に当たっちゃう人とか。

僕もそうだし。

ソツなくフワッと生きていける人がうらやましいような、でもそうでもないような。

 

 

でね。

この人たち、どうしても「合わない」わけだけれど。

環境に「合わない」。

だから合理的配慮ってやつを求める。

  • 書字が苦手だから宿題を減らしてください。
  • 不注意がひどいので個別に声かけをおなしゃす。
  • カッとなったときにクールダウンできる場所を整えてください。

こんな感じ。

 

でも、当たり前だけど『最適化』は難しい。

ある程度の配慮はできても、「ぴったりフィット!」は難しいわけです。

やっぱどこかしら不適応を起こしちゃうのね。

 

例えば僕だと、やっぱりどーしても事務作業がダメだったり。

マルチタスクが苦手で、診察中にPHS (僕の病院では医療用PHSを使っている)が鳴るとウガーーーーーッってなったり。(表には出さないけど、心の中ではテンパってる)

疲れやすく、夕方にはポンコツモードになっている自覚があるし。

 

 

こんな時に。

適応しようと頑張りすぎるから、しんどいんじゃね?

ダメならダメのままなんとかするって選択肢ないの?

とか、思うわけです。

 

どういうこと?

説明する。

 

車輪の外し方

最近の話題に、さんぽセルってのがあるらしい。

重すぎるランドセルを、キャリーバッグ化するアレね。

 

この話を聞いて思い出したんだけど、不登校とか登校しぶりの子で、行きたくない理由が「ランドセルが重いから」って子は一定数いるのだ。

割と聞く話なんですよ。

だからさんぽセルの発想は素晴らしいと僕は思うんだけど。

 

でね。

これまでこんなツールはなかったわけで。(今でもまだ普及はしてないか)

重いランドセルに耐える

or

いっそ学校に行かない

の二択になることが、ままあった。

相談されるんです。

 

男の子
男の子
ランドセルが重いから、学校に行かないよ!

 

 

僕は思う。

置き勉すればいいんじゃないかと。

 

ね。

それで解決じゃん?

でも、こう返される。

 

男の子
男の子
置き勉は禁止で、持ち帰らなきゃいけないの!

 

それな。

 

禁止でも置き勉するという選択肢はどう?

 

 

というのもですね。

何を隠そう、小児科医Pことパ・ヨンジョン少年は、小学校時代ずっと置き勉してた!

 

もちろん禁止ですよ。

置き勉禁止。

日本全国、小学校なんてそんなもん。

 

でも、置いてた。

 

だって、重いんだもん!

 

まぁクズですわ。

 

 

ルールを破っているので、当たり前だけど風当たりは強い。

 

女の子
女の子
Pくんの机、掃除で運ぶとき重いんだけどっ。

 

叱られたもん。

女子に。

いや、チェ・ホンマンに。(チェ・ジウじゃないの?)(チェ・ホンマンに叱られたらめっちゃコワイんですけど)(秒で土下座する)

 

ルールを逸脱したのだ。

それなりに風当たりは強い。

でも、それを承知で逸脱する道もあると、僕は思う。

 

僕は、文句を言われることは承知で置き勉していた。

そりゃ文句言われるわ。

だって僕が悪いし。

 

でも結局、ブツクサ言われながらも「アイツはそういうしょーもないやつ」扱いが成立し、次第に何も言われなくなった。

先生も見てみぬふりしてくれた。

 

 

別にルールを破ることを推奨するわけじゃないけど、こんな選択肢もあるんじゃない? と、僕は思う。

重いランドセルを背負う

or

学校に行かない

の極端な二択じゃなくてさ。

 

置き勉して学校に行く

という選択肢も、アリだと思うんだ。

 

レールを外れてもいいんじゃない? ってこと。

脱輪しようぜ。

脱輪しながら、でもレールに沿って走り続ける。

それで目的地に早くラクにつくなら、選択肢としてアリじゃないかと。

 

第3の選択肢

他のことでもそう。

  • 叱られるのを承知で、宿題をやらない。
  • 校則は、ヤンキーの陰に隠れてこっそり破る。
  • 延滞料金を承知で、DVD返さない。

 

もちろん上記のような例が、いつでも有効とは限らない。

でも、時と場合と状況によってはベターな選択肢となり得る。

 

ベストじゃなくても、その時取れる比較的よさげな選択肢、つまりベターを選ぶ。

これは非常に攻守のバランスが良い。

ガツっと守らず、でもガツっとはみ出ず、ちょうど良く脱線するスキルって人生に役立つと思う。

 

 

ひろゆきが「自分は遅刻する」って公言してるのとかね。

もちろん遅刻はダメだし風当たりも強いだろうけど、でもそれで彼が納得し、良いパフォーマンスができるなら、全然アリだと思う。

 

遅刻はダメ。

だけど、アリ。

 

遅刻に否定的な人から、文句言われたり仕事をふってもらえなかったりのリスクはあるだろう。

でも「遅刻の可能性があるから仕事を受けない」となる方が、結局大きな損失だと思うんだよね。

彼のパフォーマンスが『ゼロ』になるわけだから。

 

 

もちろん、人に迷惑をかけないように、遅刻しない仕事(個人で完結する仕事とか)を選ぶのもアリだ。

これは、①レールを離れて別の道を行く選択肢ね。

 

それから、「自分は遅刻しやすい」という特性を理解し、遅刻しないようめっっっっっちゃ気をつけるという選択肢もアリ。

②努力してレールに乗っかる選択肢ね。

 

そこに第3の選択肢、「遅刻はするけど仕事も続ける」を加えても良いと思うんだよ。

③脱輪しながら走り続ける選択肢

 

上2つのどっちかを選ばないと! って思うと、しんどくなるから。

「どちらも選ばない」、つまり脱輪しながら走り続けるって、どうでしょう。

という提案。

 

 

外来でよく聞く例だと、遅刻や早退で登校するとみんなの目が気になるから、

フルで出席する

or

完全不登校

とか。

正直もったいないと思う。

 

気持ちはわかるけど、

遅刻や早退で好奇の目にさらされながら登校する

という選択肢を、もっと積極的に選んでも良いように思う。

 

注目されるのを承知で学校に行く。

ある程度は目立っちゃうけど、そのうち「そういうヤツ」になるし、他の人は案外その子のことを気にしてないし。

 

全か無か、ゼロか100かじゃなくて、脱輪しながら進むのもアリじゃない?

動けなくなって立ち止まる(不登校)のが悪いこととは思わないけど、進めるなら進んだ方が、少なくとも経験値は手に入るわけで。

 

レールには乗れない、でも全くの荒野を行くのもハードルが高い。

じゃあ、もちろん立ち止まるのも選択肢だけど、脱輪走行もアリだと思うんだ。

自分のために、その子のために、どっちがおトクでしょうか。

 

まとめ

脱輪走行は、当たり前だけど風当たりが強い。

脱輪してるんだもん。

ガタガタするし、走りやすくはないだろう。

 

でも、

レールには乗れない。

かといって、全く別の道を模索するのも険しい。

となったとき、第三の選択肢、つまり脱輪走行を考えてよいと僕は思う。

 

 

ちなみに、大人になるとこの脱輪走行、めっちゃやりやすかったりする。

学生さん、特に義務教育時代は大変だけど。

 

僕は事務仕事は人に頼むし、ポンコツになる前に適宜休みをとる。

PHSはしょーがないから心を落ち着かせて取るけど、すげー気をつけているから周囲からは「電話対応が丁寧な人」と思われているようだ。

脱輪しても、案外走れるもんニダ。

POSTED COMMENT

  1. 迷える母羊 より:

    診察に時間がかかってしまい、主治医に何度もPHSの着信があり、

    それ急ぎですか?

    まだ診察中なので・・・

    って状態にさせてしまい。その度に主治医からは謝罪され、こちらが謝罪しなきゃいけないのに・・・
    って心苦しくなった事があります。

    鳴るとテンパりますよね。

    昔、1人で対応してるのに電話が3回線あり、電話対応中なのに電話が・・・
    テンパるにも程があるって事態になった事がありました。

    脱線せず動ける脱輪ならマシですね。

  2. りりー より:

    小学生の息子(LD疑い)がいます。
    親も思えば、脱輪走行で生きてきて、仕事も出来ていないです。
    ただ、学校だけではなく、息子は様々な環境(公園、複数の習い事)で色々な顔があることを知り、いかに1つの場所に拘らないかが大切だと知りました。
    親子共に、ペリーにとらわれる必要がなくなり、最近生きやすくなりました。
    ブログでそんなことを思いました。

  3. すずらん より:

    先生、我が家の小5息子(ADHD+LD)も絶賛、脱輪走行中です。

    宿題免除、予定書くのも免除、学校にはいろいろ配慮してもらってもやはり学校は行きたい所にはならないようで…
    母子登校や別室登校もしていましたが、高学年の男子らしくなり母さんと一緒はイヤになり(笑)

    毎日、全部行くのはさっさと諦めて昼休み終わったら帰ってくるか3時間目から行くかと本人と相談しながら登校にしています。

    私は仕事なので遅刻の時は自分で登校しているのですがたまに3時間目に行く❗️と言って言ってない「行く行く詐欺」に合います(笑)

    仕事の昼休みにスマホを確認すると学校からの着信がある時は詐欺被害にあってるのですぐに息子のいる自宅に電話する私。

    でもそんな時も給食大好きな息子のために給食を取っておいてくれる先生、そしてそれを5時間目に優雅に職員室で食べる息子なのでこの先もなんとかなる❗️と信じています。

  4. より:

    パ・ヨンジョン!!
    まさに今のうちの現状にジャストフィットな話題で感謝ダヨ!!
    完璧主義者の小2娘は、きっと完全不登校か完全登校しか選ばないだろうなぁと思ってたし、オルタナティブスクールの情報も仕入れて撒いていたけど、毎週担任の先生がコミュニケーションをとりに家までお話に来てくれて信頼関係を結べたお陰か、脱輪走行の試運転中。
    周りの目が気になるセンサービンビンのhscがよく頑張ってるなぁと母泣きそう。
    もちろん「ずるい」と言うお友達の声も聞こえるけど、事前に責める意味はなく単純に羨ましくてそう言う子がきっといるだろうと話していたからか「そうだよねぇ」と対応していた娘を心から尊敬する。皆休みたい時に休めたらいいのにね。
    「皆やってるんだから私だけやらないなんてダメ」と自分で自分を縛って結果潰れてしまったけど、不登校してはみ出してみたお陰で何かしら新しく気付いた事があるんだろうなぁと思います。
    数ヶ月前の当時は死に方を知っていたら死んでいただろうなぁってくらい壮絶でしたが。
    まだ他の子への注意を自分事として捉えてしまって縮こまってたり、課題はたくさんあるのだけど、きっと最終的には大丈夫。
    優しい世界が子供に勇気をくれるのだなぁと、子供って優しさを食べて成長する生き物だなと痛感しました。
    子供のためにまず家庭を優しい世界にして、疲れたご両親にも優しい世界が全国各所にあって、皆様がそこを見つけて辿り着ける事を願っています。

  5. 名無し より:

    素敵な記事をありがとうございます。泣けてきました。決して学校に馴染めているわけではないけれど、アイツはそんなやつと言われながら高校生活を続けている息子です。これからも応援よろしくお願いします。

  6. しろ より:

    アリだと思います!
    どうしても100-0思考な息子は“そんなやり方はダメだ!”、“みんなと違うやり方なんて…”となりがちですが(汗)。
    もう少し大きくなって自由度が増えたときに、“これしんどいな”→“他のやり方ないかな”→“ちょっとみんなと工程は違うけど結果は似たようなものが出せるな”みたいな思考回路が使えるといいなぁと思って、日々コツコツと種を蒔いています。
    『こういうやり方もあるね』『大学生くらいになると他のやり方でもOKになるよ』『こっちのやり方はどう?』などなど。
    すんなり受け入れてくれるときと、そうでないときとありますが、今すぐ受け入れられなくても、いつかふと思い出してくれるときがあったらな〜くらいの気持ちで接しています(笑)。

  7. 匿名母 より:

    ヨン様
    うちの、凸凹なしIQ高めHSC風味の小6不登校ニ年目娘、脱輪走行の才能が壊滅的にないようなのです。自分にも他人にも学校にも毒舌で、プライド高く恥をかくのが大嫌いで、お家大好きで、判断はなんでも0か100。
    こういう子に、脱輪せいと言っても100倍ぐらい反論されてしまうのですがどうしたら…?
    思春期だし、前頭葉が成熟したら多少マシになるのでしょうか。

  8. ゆきあき より:

    いつも、楽しく拝見させていただいてます。
    不登校気味の小学校6年生の息子ですが、やっと最近になって脱輪走行できるようになりました。
    不登校のなり始めは、遅刻するのは絶対イヤだったのに。
    今では、朝の体調や時間割(学習障害あり)に合わせて、自分から計画的に遅刻して行くようになりました。

    クラスのお友達にも、そういう奴と認識されたようです。

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