起立性調節障害

注射は絶っっっ対にイヤッ!

起立性調節障害、通称OD (オーディー)。

この疾患概念は広く認知されている様子。

「起立性調節障害だと思います」という主訴で受診される方は珍しくない。

 

で。

僕は診断をつける前に、他の病気の除外のため血液検査を提案する。

 

すると。

 

女の子
女の子
絶っっっ対にイヤッ!!!!!

 

他の病気の可能性

起立性調節障害。

朝起きられない病気。

 

なんだけど、他にもめまいやふらつき、倦怠感、頭痛、腹痛、食欲不振など、様々な症状を呈するわけです。

問診で「この子はODでよさそうだなー」というアタリはつくが、例えば貧血や甲状腺機能異常など、別の病気の可能性も否定はできない。

これを見逃したくないわけで。

 

 

まずはスクリーニングの採血をしましょうと提案するんだけど、上記のごとく断固拒否されることが少なくない。

 

女の子
女の子
絶対にイヤだ注射なんてアリエナイ今すぐ帰る!!!

 

こんな極端な拒否に合う。

 

親御さんは大抵、検査を望む。

 

母
アンタいい歳して注射が怖いなんて甘えたこと言ってるんじゃないわよ!

どこが痛いとかめまいふらつきとか、散々心配をかけておいて!

ちゃんと検査しなさい!

 

診察室で親子喧嘩が始まる。

 

感覚過敏

OD症状で受診されるお子さん。

大抵「いい歳」だ。

8歳〜15歳くらいがボリュームゾーンでしょうか。

注射で泣き叫ぶ年齢ではない。

 

んだけど、ODっぽい子に採血を提案して、すんなり了承するケースの方が少ない。

大抵渋る。

大激怒したり、この世の終わりの如くさめざめ泣いたり。

 

なぜ?

 

感覚過敏があるのだと思う。

 

 

典型的なODの子って、いわゆる「いい子」だ。

マジメないい子。

親や先生に反抗せず、規則を守り、優等生なタイプ。

にも関わらず、採血はものっっっすごい渋る。

 

ギャップがすごい。

 

他のことはなんでも頑張る(そりゃもう必要以上に)のに、なぜ採血だけは頑張れないのか。

痛いからです。

そう、痛いから。

そんな理由?

 

感覚過敏があるのだと思う。

痛みが、人の100倍くらいに感じる。

針を刺される恐怖もものすごい。

 

 

平均的な人の捉え方が

「注射はまー痛いけど、我慢できない程じゃないし、サクッとやっちまうか」

くらいだとしたら、上記の子たちは

「うぎゃー!!! あの痛みに耐えるなんてムリムリムリムリ!

あの尖った針が自分の皮膚を貫いて……想像しただけでムリ!

無駄無駄無駄無駄ァ!

そこにシビれる憧れるぅ!」

くらい。

なんかもう、ワケわかんないけどとにかく拒否っ! って感じ。

 

ODと感覚過敏とHSC

診療をしていると、ODの子の感覚過敏合併率が異様に高いことに気づく。

同じ年頃の別の疾患で受診した人と比較し、注射拒否率があまりに高い。

 

多分、大抵の子がHSCなんだと思う。

それか、ASD (自閉スペクトラム症)。

 

感覚過敏といえば、HSCとASDだ。

痛みに非常に敏感。

つまり、ODを発症する子の多くが、ベースにHSCやASDを持っているのだと思われる。

※HSCタイプの方が多いように思う。

※ADHDタイプもODを発症することがあるが、採血はあまり渋らない印象。

 

無理強いしない(僕は)

採血はした方がいいけど、本人が断固拒否している。

さてどうする?

 

僕は無理強いしないことにしている。

他の病気の可能性があることは本人に伝え、症状が増悪したらその時は検査しましょうと約束する。

無理やり採血しない。

 

理由はふたつ。

 

ひとつ目。

今後の受診につなげる事を優先したいから。

 

無理やり採血したら、「病院なんてもう金輪際行かないっ!」となることが容易に予想される。

せっかく病院という外部機関にSOSを出してくれたのに、何もできずに途切れることになってしまう。

だから、「多分ODでいいと思う」という暫定診断を与え、「じゃあこれからどうするか一緒に考えよう」と言う。

これが安心に繋がり、事態が好転していくことは少なくない。

 

 

理由ふたつ目。

そのうち治るから。

 

上記の通り、「悪化したら採血する」と宣言しておく。

実際そのつもりでいるんだけど、大抵の子は初診の頃が症状のマックスで、以降軽快していくのだ。

 

診断されると安心するのだろう。

調子が悪いのは病気のせいだ自分が悪いんじゃないんだ、って。

すると、OD症状も軽快していく。

 

採血の拒絶はHSCタイプの子に多い。

HSCだ。

HSCですよ?

「貧血とか甲状腺機能低下とか、もしかしたら白血病とかの怖ーい病気の可能性がある」とか言われ、気にならないハズがない。

もし体調がどんどん悪化するなら、不安に耐えきれずに自ら検査を希望するはずだ。

 

僕はそんな見込みのもと採血を保留にしている。

でも実際は、多くのケースで体調が良くなっちゃうんだけどね。

※もちろん症状が悪化するなら本人がどれだけ渋っても強制執行です。

 

まとめ

ってことで。

OD症状を訴える子は、感覚過敏を合併していることが多い。

つまりODの子には、もともと「そうなる気質」があった可能性が高い。

そうなる気質って、HSCとかASDとか。

 

HSCだからいろんなことが気になって、心労に耐えきれず、でも弱音も吐けず、身体症状(OD症状)を発症した、と。

つまり、そういうことだ。

 

ODは不登校の合併率もとても高いんだけど、これもそういうことだと思っている。

 

もともとそういう子だった

 

育て方とか環境とかの問題じゃない。

もともと繊細な気質を持った子だから、ODになり、不登校になったと考える方が自然だ。

 

だから、「いい歳して注射がイヤなんて恥ずかしい!」とか言わないであげてほしいなーと。

本気でめっちゃイヤなんだろうし、本人も気にしてるだろうし(空気を読む子でしょう?)。

ね?

POSTED COMMENT

  1. てりー より:

    毎年インフルエンザの時期になると、テレビのニュースなどで予防注射を打つ場面が映しだされる。あれが嫌だマジで嫌だ、痛い、本当に痛いのではないのだけど、何というか、痛いときの嫌な気持ちだけがよみがえるというか。。
    なんであんな場面を放送するのかばかじゃないのか、と思っていたけど、他の人は他人の注射を見ても痛くないらしい
    注射は今でも苦手、痛いであろうという予期不安で押しつぶされそうになる、いい年なので、注射しましょうといわれたら、平静なふりをして、はい、と言うが
    本当は走って逃げたいという気持ちと戦っている

  2. すー より:

    HSCが注射が怖すぎて暴れ回ったり、泣き止まなかったり。これも感覚過敏だったんですねー!!納得しました。予防接種毎回押さえ込みに、こちらが数日前から憂鬱になります。

     薬の味が敏感すぎて飲めないのも過敏なんでしょうか?
     幼稚園児ですが、あのてこのてで、薬を飲ませようとしますかバレてしまい、早く錠剤が飲める歳になってほしいなと願うばかりです。 
     

  3. hibachi より:

    そこにシビれる憧れるぅ
    ジョジョですね笑

    なるほどです。小三男子ですが、極端に注射が嫌いです。でも、虫歯の治療はできるんですよ… なぜかしら…

  4. ゆっぴ より:

    ただの世間話です
    私の子供はコロナで予定調和が狂い、学校再開後2学期の行事目白押しなどんどん後ろから押される感じに耐えられず、10月から不登校、全部が爆発し、先日ASDと診断された小4男児です
    私はもともときっちりかっちり、責任感が強く完璧主義、普通はとかみんなはタイプの人間で、子供には辛い思いをさせてきたなぁと思いました
    小さい頃からこの子は違うと今まで3回園なり学校なり相談してきましたが、気にしすぎだよとスルーしてきてしまいました
    なので子供には遅くなって申し訳なかったけど、今回診断がついて本当によかったと思っています
    私は先生の「周りは敵ばかりじゃない、世の中は優しい」「ベストじゃなくてベターを選ぶ」の話が大好きです ほんとそれな!なんです 私にとっても息子にとっても
    勉強どうなっちゃうんだろうとか、え?そんな所につまづいちゃうの?とか思ってしまうことはまだありますが、結局のところ、ここがわかってないので生きづらそうです 逆に言うとここさえ分かってくれれば大丈夫な気がしています
    息子にも、案外大丈夫な世の中を早く見せてあげたいです

  5. まぼ より:

    もうすぐ小6の男子ですが 注射を全力で拒否するため、必要な予防接種までも全部は打てていません‥。小さい頃は泣いていても抱えて連れて行けましたが、身体も大きくなりそのようなこともできないので困り果てています。将来何か大きな病気の疑いが出てきた時、採血すら拒否するようでは治るものも治らないですよね。成長するにつれて痛みへの不安感が薄まればいいのですが。

  6. うるこ より:

    注射もですが、インフルエンザとかの検査の鼻ぐりぐりだったり、歯医者だったり、ホントに拒否がすごいです。
    いい歳(13歳)なのに、歯医者でグタグタして、歯医者さんに呆れ顔されたんですが、これ読んで欲しいです涙
    とりあえずインフルエンザになっても、病院には行かないし自力で治すそうです。
    ムシ歯にならないように、毎日ちゃんと歯磨きしてます笑笑

  7. 匿名希望 より:

     すごく懐かしい、ほっこりしちゃいました^_^。
    昔小学生の時、校内のインフルエンザの予防接種で泣きわめいてました。P先生のブログを読んでいて、今思えばあれもHSCの一つの表れだったんだろうなと、先日思い返したところです。

     自分の場合は感覚過敏より、この先に起こる事への不安だったのかなと思ってます。打たれるまではすごく怖かったけど、打たれた時にはそうでもなかったので。散々大声で泣いて、泣き続けた疲労と、友達の前でみっともない所を見せてしまった気恥ずかしさ、ゆっくりと宥めて下さる学校の先生に対する申し訳なさ等が恐怖に打ち勝って初めて、やっと納得して、注射を打ってもらっていました。

     生きてたら色々怪我して痛みにも慣れるし(いきなりした怪我の痛みに対するリアクションは人並みでした)、前にした予防接種の時の痛みも覚えていて、余分な想像力を働かせなくなって無駄に怯える事も無くなるので、泣いたのは小学生まででしたが。中学3年の男の子で、自分で納得して病院に予防接種に来たのに、結局怖くて、先生に「他の患者さん待たせる事になるから、診察時間の終わりまで考えて」と言われ、最後に黙って注射を受けた子の話も聞いたことあります。子供には時々ある話ですよね。大人の職場の健康診断の採血で大騒ぎする人は普通いないし。
     あれが感覚過敏だったとすると私は人より強い痛みを乗り越えた勇者だったのかも^_^。
     冗談はさておき、学習能力があれば、いつかは自分で納得するし、乗り越えられる事も多い。たまたま今いる集団の中で遅くても、気にする事はないと思います(私は軽度の偏食以外の感覚過敏は見た事がないのですが、本格的な感覚過敏のある方は注射針お辛いでしょうね)。

     いずれにせよ、P先生がされている様に、避けられる採血や注射はやめてくださると、楽になりますよね。注射の針の痛みに対する不安だけでなく、痛いことをされるのに逃げられない、列の中で徐々に進んでいく無力な自分、という状況に対する恐怖も大きかったので(当時は気が付かなかったんですが、HSCではない普通の小学生は、ここまで自分を客観視しないんでしょうねえ)。

     自分が嫌がる事はしないでくれた、と言う安心感は、信頼の第一歩ですものね。

      
     
     

     

  8. 匿名希望 より:

     すごく懐かしい、ほっこりしちゃいました^_^。
    昔小学生の時、校内のインフルエンザの予防接種で泣きわめいてました。P先生のブログを読んでいて、今思えばあれもHSCの一つの表れだったんだろうなと、先日思い返したところです。

     自分の場合は感覚過敏より、この先に起こる事への不安だったのかなと思ってます。打たれるまではすごく怖かったけど、打たれた時にはそうでもなかったので。散々大声で泣いて、泣き続けた疲労と、友達の前でみっともない所を見せてしまった気恥ずかしさ、ゆっくりと宥めて下さる学校の先生に対する申し訳なさ等が恐怖に打ち勝って初めて、やっと納得して、注射を打ってもらっていました。

     生きてたら色々怪我して痛みにも慣れるし(いきなりした怪我の痛みに対するリアクションは人並みでした)、前にした予防接種の時の痛みも覚えていて、余分な想像力を働かせなくなって無駄に怯える事も無くなるので、泣いたのは小学生まででしたが。中学3年の男の子で、自分で納得して病院に予防接種に来たのに、結局怖くて、先生に「他の患者さん待たせる事になるから、診察時間の終わりまで考えて」と言われ、最後に黙って注射を受けた子の話も聞いたことあります。子供には時々ある話ですよね。大人の職場の健康診断の採血で大騒ぎする人は普通いないし。
     あれが感覚過敏だったとすると私は人より強い痛みを乗り越えた勇者だったのかも^_^。
     冗談はさておき、学習能力があれば、いつかは自分で納得するし、乗り越えられる事も多い。たまたま今いる集団の中で遅くても、気にする事はないと思います(私は軽度の偏食以外の感覚過敏は見た事がないのですが、本格的な感覚過敏のある方は注射針お辛いでしょうね)。

     いずれにせよ、P先生がされている様に、避けられる採血や注射はやめてくださると、楽になりますよね。注射の針の痛みに対する不安だけでなく、痛いことをされるのに逃げられない、列の中で徐々に進んでいく無力な自分、という状況に対する恐怖も大きかったので(当時は気が付かなかったんですが、HSCではない普通の小学生は、ここまで自分を客観視しないんでしょうねえ)。

     自分が嫌がる事はしないでくれた、と言う安心感は、信頼の第一歩ですものね。

      
     
     

     

  9. ut より:

    P先生
    優しいお話をありがとうございます。
    感覚過敏の人、痛みを感じる能力が100倍なんて辛すぎますね!
    嬉しい時も100倍感じれたら良いですよね。

    私、歯医者さんに行くと怖い気持ちが増大し、心拍数が上がります(笑)

    • まい より:

      この方のコメントを読ませて頂いて、嬉しいことも100倍あれば良いと書かれていて、そういえば、嬉しいこと楽しいこと等のポジティブな感情も強く感じるのかなと疑問に思いました。どうなのでしょうか…?

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