「発達障害を診断する検査を受けるよう、学校から言われて受診しました」
こう言われることはよくある。
果たして、そんな検査があるのか。
今日は病院でできる検査の話。
上述の検査とは、おそらくWISC (ウィスク)のことだろうと思う。
ごく一般的な、小児用の知能検査だ。
ちなみに大人用はWAIS。
いわゆるIQ (アイキュー)を測る検査。
IQとは、その年齢の子供たちの平均を100とし、それより上か下か数字で示したもの。
ほとんどの人が80〜120の範囲に収まる。
- 言葉に関する知識と理解
- 法則性を見つけ出す課題
- 短期記憶
- すばやく正確に処理する能力
などいくつかの項目を見て、総合的なIQを算出する。
のだけれど。
この検査、結果の解釈の仕方に注意が必要だ。
検査が見ているのは、あくまで「その日その時点での課題に対するパフォーマンス」でしかない。
やる気がなければ当然下がる。
緊張していたり、寝不足だったり、色々な要素が影響する。
よって細かい数字に意味はない。
IQ100と、IQ105に、大した差異はない。
そして、「数字がいくつだったら発達障害です」というものではない。
同じ自閉症でも、WISC結果はバラバラだ。
ADHDでもそうだ。
高い人も、低い人もいる。
なーんだ。
じゃあ検査しても意味ないじゃん。
なんのために検査するの?
検査の目的は、大きく二つ。
①知的評価
まず一つ目。
知的な遅れがないか判断する。
上記の通り、ほとんどの人はIQ80から120の間に入る。
70台くらいだと、学校の授業についていくのがちょっと難しくなる。
1年生が、3年生の教室にいる感じ。
その場合は、勉強の方法を工夫するより、その子にあった環境に行くほうがよい。
具体的には少人数の、通級や支援級などだ。
「授業を聞いていない」「漢字が覚えられない」などの一見ADHDや学習障害に見えるような症状も、実は知的な遅れによるものの可能性がある。
②デコボコを見る
二つ目。
その子の中での凸凹をみる。
これは有用で、その子の中で得意な分野と苦手な分野がわかる。
短期記憶が弱いので、指示は一つずつ端的に
とか
言葉で説明するより絵や写真を見せた方が理解しやすい
とか言えたりする。
そして、同一の子の同一の日の検査での凸凹なので、信憑性が高い。
IQ的には標準でも、中身をみると得意不得意に大きな差があることは、かなりよくある。
周囲からは理解されづらい弱点が、数字で出る意味は大きい。
例えば、知的には高いのに授業中にノートを取らないし宿題もやらない子。
『処理速度』の項目が極端に低い可能性がある。
理解はしているが、黒板をただ書き写すという単純作業が苦手だし意味を見出せない。
宿題も、単なる漢字の書き取りなんかは絶対にしない。
でも創作的な課題だと、しっかり取り組める。
こういった子には、板書は免除(写真撮影OKにする)、宿題は量を減らすなど、現実的に負荷を減らしてあげられる。
すると、しんどかった学校が割と楽しくなる。
いきいき通学し始める。
苦手を克服することは非常に難しいので、得意を伸ばしてあげたほうがよい。
さぼってノートをとらないわけではなく、その子にとって非常に苦痛で苦手な分野なのだ、と先生にも説明しやすい。
どうです?
検査を受けたくなってきましたか?
現状、この検査もなかなか受けられず待ち時間が生じているようだ。
発達外来は6ヶ月待ちだけど、検査は1年待ちなんてこともあるよう。
他にも田中ビネーとか新版K式とか検査の種類はいくつかあって、それぞれ役割がちょっとずつ異なる。
発達障害かもしれないからまず検査、ではなく、何が知りたくてどんな検査をするのか見極めていただけると、不要な検査が減ると思う。