発達障害

自閉スペクトラム症の一番困るところ

自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD )

対人関係がニガテ。

強いこだわりを持つ。

行動や興味が限定的。

あとは言葉が遅れたり、かんしゃくを起こしたり、同じ動きを繰り返す、感覚過敏や知的障害があったり……。

そんな子たち。

 

これは生まれつきの脳機能の特性で、育て方や環境によるものではない。

 

人に興味がない

そんな特性があるので、まぁ色々困ることが出てくるんだけど。

発達『障害』と名がつく通り、社会で困ることが出てくる。

 

周囲が困り、ひいては自分も困る。

社会適応の困難がある。

街中でかんしゃくを起こす、こだわりが強い、不登校、コミュニケーションが取れない、グレーが許容できない、二次障害による反抗的な態度とかうつとかチックとか諸々……。

 

 

色々困る点はあると思うんだけど、この子たちの特徴の根っこは「人に興味がない(薄い)」ってことだと思っている。

 

人に興味がないから、言葉が遅れる。

言葉って、相手に何か伝えようという気持ちから出発するから。

 

相手の気持ちを考えられない(「相手の気持ち」という概念がない)ので、気になったおもちゃがあれば取っちゃうし、行間が読めず言葉を文字通りに受け取る。

クレーン現象なんかも『人』という概念が薄いからだろう。

お母さん(人)にお願いして袋を開けてもらうんじゃなくて、母の手というモノを袋に持っていって開けようとする。(母の手は、なんでも出来る便利なモノという認識)

オウム返しも、「相手(人)が自分(人)に質問している」という感覚が持てないためだと思う。

 

人に興味がない分、「対象物」に興味の全てが向く。

好きなものをずっと眺めていたい。

クルクル回るタイヤ、自動で動くエレベーターや自動ドア、水の流れる様子、走る電車、気に入ったアニメのワンシーン……。

それが世界の全てで、「次の人が待ってるから順番を替わろう」とか「お母さんは興味なくて飽きてるからほどほどで切り上げよう」とかいう発想はない。

人を待たせている、困らせているという感覚がないのだ。

自分に興味がない

ASDの、一番困るところ。

人に興味がないところ。

なんだけど、中でも特に自分に興味がない点だと僕は思っている。

自分も「人」だからね。

(快・不快の感覚には敏感です。目的を伴う意思とか、社会性とか、そういったものに興味がないのです。)

 

人がどうでも興味ないし、自分がどう思っているかも興味ない。

これが困る。

 

「あなたはどうしたいの?」

「どんな人で、何が好き?」

 

その質問が通用しない。

本人がどうしたいのか分からない。

すると、周囲のサポートが非常に難しくなる。

本人がどうしたいか分からなければ、どうやって手伝えばいいかも分からない。

これが困る。

 

「自分」の連続性

一般に、嫌なことやめんどうなことを頑張る理由として、『社会の中の自分』という意識が占める割合って大きいと思う。

 

どゆこと?

 

例えば、勉強イヤですよね?

学生時代、イヤでしたよね?

でも、いやいやながらある程度がんばった。

なぜか?

 

「勉強できない自分では恥ずかしい」(つまり、人からどう見られるか)

とか

「今頑張れば将来いい会社に入ってウハウハ」(つまり、今の自分が未来に連続するという意識)

とか、そんな理由じゃなかったですか?

 

セルフブランディング、とでもいいましょうか。

  • 自分ってこんな人で、コミュニティーの中でこんな立ち位置です。
  • こんな自分が、自分のままあと70年くらい生きます。

そんな意識があるから、嫌なことを頑張るわけです。

自分がどんな人か周囲は評価してるし、自分のまま何年も先まで人生は続いていく。

そう考えると、今はちょっと我慢した方がお得という打算が働くわけだ。

 

僕の場合

僕はASDタイプだと思っている。

診断レベルではないけれど、そこそこの特性を持つ。

だからなのか、「連続性」という概念は薄い気がしている。

 

例えば、何か目標があったときに、そこに向かってコツコツ努力することが非常にニガテ。

『今』が『未来』につながる感覚が薄くて、目の前のラクを選びがち。

「締め切りまであと1週間あるから、どこかでやればいいや」

そう考えて課題(お金の振り込みとか、何かの手続きとか、退院サマリーとか)を先送りにした結果、その課題はブラックホールに吸い込まれ、つまり完全に忘れ去って、あとで大目玉を食らった経験が何度もある。

 

目の前のことに過剰に集中して、見えないことはお留守になっちゃう。

「未来の自分が困る」という意識が薄いんだと思う。

その自覚があるから、忘れちゃヤバイものはさっさと終わらせるよう心掛けてはいるんだけど、それでもしばしばやらかすけど。

『同時処理』といえば聞こえはいいけど、それにしてもあまりにも「コツコツ地道に」が出来ない。

レンガから? 設計図から?目の前に「橋を作る」というタスクがあったとする。 よし、橋を作りましょう。 その時、『まず』どうしますか? ...

 

僕よりもっとしっかりASD特性がある子の場合、突き詰めると「先のことなどどうでもいい。今、この場が全て!」になっていくと思う。

(ルーチン化して毎日同じように、は訓練すれば出来るんだけど、その先どうなるかという意識はないと思う。)

この子たちに先を見据えた支援をするって、すごく難しいと思う。

 

まとめ

(自分を含む)人に興味がない

これがASDの特性の根っこで、かつ一番困っちゃう点だと、僕は思っている。

他人相手の対応なら、ソーシャルスキルトレーニングでなんとかなる場面は多い。

ソーシャルスキルトレーニング:

困る場面を想定し、前もって正解を用意しておくこと。「こんなときはこうする」と練習しておく。すると同じ場面に遭遇した時に「ここ、ゼミでやったところだ!」と正しい行動が取れる。

 

でも、「あなたはどうしたいの?」については、周囲が手助けすることが難しい。

本人が自覚していない場合、どうしても誘導尋問になりがち。

さらに「未来のあなたがどうなっていたいか」となると、もう壊滅的。

 

そんな子に、どう支援するか。

本人の意思がわかんないんだけどどうしたら?

次回その辺を書く。

POSTED COMMENT

  1. ピンポン より:

    いつもブログを拝見しています。コメントするのは2回目でしょうか。
    ASDの困るところ…今、まさに我が家の3歳児のことですか?先生うちのこと隠しカメラで見てるんじゃないか?ってくらい、

    「人(自分を含む)人に興味がない。」「興味がない分、「対象物」に興味の全てが向く。」

    ⬆️これそのまんまです(笑)
    好きなモノへのこだわりが強くて、会話も基本オウム返し。例えば夫が帰ってきて「ただいま」と言うと、「お帰りなさい」とはならずにそのまま「ただいまー」と返してます。教えてもなかなか直らないのは「お帰りなさい」と「ただいま」の関係、つまり家に帰ってきた人と、迎える自分に興味が薄い(無い?)ということかなあと、記事を読んでまたASDの不思議に腕組みしてしまいました(笑)

    次回の支援の方策も、とても興味深いです。

    • pediatrician-p より:

      あぁ、隠しカメラは3台、リビングとキッチンと寝室に設置してます。
      嘘です。怖いです。

      オウム返しはキャッチボールの感覚が薄いんでしょうね。
      聞かれている、答える、という関係性の感覚が薄いんだと思います。

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