起立性調節障害、通称OD (オーディー)。
これを読んでいる皆さんは、この病名を聞いたことがあるだろうか。
知っている方が半数を超えると予想する。
結構認知度の高い疾患だ。
ではどんな病気? と聞かれると、
「えっ……、朝起きられなくて、なんか学校に行けなかったり、とりあえず朝起きられない病気?」
上記のような理解の方が多いでしょうか。
うん、正解です。
とりあえず『朝起きられない病気』という理解でよろしいかと思う。
そこに付随してなんやかんやの症状が出る。
それで良いのだが、せっかくこのブログを読んでくださったので、病気の成り立ちや病態生理なんかを理解し、明朝からの戦い(お子さんを起こすとか起こさないとか自分で起きるとか起きないとかそういったゴタゴタ)に備えていただければ思う。
病気の大元は、『自律神経』という神経系の乱れだ。
人間には、
- がんばるスイッチ(交感神経)
- リラックススイッチ(副交感神経)
の二つがある。
学校や仕事などがんばる時にはがんばるスイッチが入りアクティブに動き、自宅で休むときはリラックススイッチが入りゆっくり休息する。
この状態が心身ともに健康。
しかしこのバランスが崩れる。
特に小学校高学年〜中学生くらいの思春期、身体も心もぐっと大きくなる時期に、神経がついていかず、バランスを崩す。
朝は本来がんばるスイッチが入り、睡眠から覚醒に移行するのだが、これができない。
リラックス優位なので、頭は起きているのだが、身体は寝ている状態。
大人でもものすごく眠いときに無理やり起きるって辛いでしょう?
子育て期のお母さんが、子供を寝かしつけて自分も一緒に気持ちよく寝落ち。
あ、でも皿洗いと風呂掃除、明日の準備もあるから起きなくちゃ。。。
まじつらたん。。。
起立性調節障害の子供は、毎日があの状態なのだ。
と考えると分かっていただけるでしょうか。
とにかく起きられない。
わかっちゃいるけど起きられないのだ。
そして、午前中調子が悪い。
午後からようやくがんばるスイッチが入り、元気になる。
夕方くらいから絶好調で、今の自分ならなんでもできそう! と思う。
やる気がみなぎって、勉強なんてしてみたり。
「お母さん、明日は学校に行ける気がするよ」
なんて言ってみたり。
夜になるとバイタリティーに溢れ、音楽を聴いたり、漫画を読んだり。
あれこれしているうちに、夜が更け、寝る時間が遅くなる。
案の定翌朝起きられない……。
これが典型的な起立性調節障害。
自宅では元気なので、親から見るとサボりだとか怠けているとか思う。
少なくとも体調が悪いようには見えない。
朝、無理やりにでも起こそうと思うけど、不機嫌マックス、テコでも布団から出ない。
本人はダルい、眠い、調子が悪い……などと青白い顔で訴える。
昨夜の様子とはまるで別人だ。
はてさて、一体どうしたら……?
解決策はひとつ。
がんばるスイッチとリラックススイッチのバランスをとること。
具体的には規則正しい生活。
夜はリラックス、朝はがんばるように人間の身体は作られている。
できる限り同じ時間に寝起きし、朝は日の光を浴びて、日中は身体を動かす。
寝る前はスマホを切って部屋を暗くし、リラックスしている間に眠りに落ちる。
これが理想。
その上で、血圧を上げること。
起立性調節障害の患児は血圧が下がりやすくなることが多い。
水分と塩分をしっかりとるという、高齢者と逆の推奨がなされる。
脚を上げて寝るとか弾性ストッキング(手術用のきっつい靴下)を履いて寝るのも良いらしい。
上半身に血を集めるためだ。
立ちくらみがあればすぐにしゃがむか横にならないと気を失うので要注意。
症状が重い場合は薬も併用する。
メトリジンとかリズミックとか、
血圧を上げたり、頑張りすぎた心臓を休ませたり、なんやかんやする。
ここまですれば、大抵の起立性調節障害はかなり良くなる。
と、言いたいところだが、実際そうではないのだ。
これで軽快するのは、僕の外来では10人に1人もいない感触。
次回その理由を説明したい。