起立性調節障害、通称OD (オーディー)。
昨日の記事で、その症状と成り立ち、一般的な治療について説明した。
でも、治療してもなかなかよくならないという話。
うちの子なんかオーディーっぽい。
受診して検査して診断された。
病気のせいで朝起きられなかったのね!
原因が分かって良かったわ!
じゃあ生活リズム、次に薬物療法、あれ全然治らない。
それどころか悪化しているじゃない!!
こんな感じ。
純粋な起立性調節障害であれば、軽いものは環境調整、中等症以上でも薬物療法でかなり良くなる。
少なくとも学校生活に支障がない程度にはコントロール可能だ。
しかし、背景にメンタルの要素が絡んでいるとそうはいかない。
問題となってくるケースの多くが思春期の精神不安定。
これが厄介。
いやなことがあったり、ストレスが溜まると症状が強く出る。
土日や長期休暇は症状が軽くなるのが特徴だ。
精神的に辛いことがあると、それを引き金に自律神経のバランスを崩す。
理屈はこうだ。
しんどいときはリラックスできるわけがない。
自分の中で処理しきれないストレスがかかると、常にがんばるスイッチ(交感神経)が優位になる。
心が休まる時間がなく、夜はなかなか寝付けない。
心身ともに消耗しているので、いったん寝たら(副交感神経優位になったら)起きられない。
頭痛、腹痛もよくある随伴症状だ。
消化器官はリラックスしているときに働く。
狩りの最中に便意を催したら大変だし、緊張する発表の最中はおなかがすかない。
ストレスを抱えているとリラックスする時間がなく、お腹が動かない。
すると便秘になったり、一気に出そうとして下痢になったり。
『過敏性腸症候群』というやつだ。
他にも動悸、疲れやすい、立ちくらみ、めまいなど。
乗り物酔いも多く、満員電車で通学している子なんてしょっちゅう気分が悪くなって途中下車を余儀なくされる。
こんな状態で、皆勤賞を目指すのは難しい。
必然的に遅刻や欠席が増える。
すると、「こんなに休んでしまって勉強が遅れる」「友達はどう思うか」などと心配事が増す。
親にはサボりとみなされ、ダメな子扱いされる。
学校でもストレス、自宅でもストレス。
さらに体調が悪くなる……。
実際、ここまで来て初めて受診するケースが多い。
学校生活が送れているうちは、病院には来ない。
それが病気だと気づかないからだ。
みんな朝は眠いし、それでも頑張って登校している、と思っている。
みんなこんなもので、自分は特別ではないと思っている。
症状が悪化し学校に行けなくなってきて初めて、アレ? と思う。
それで受診するのだが、環境調整してもメトリジンを飲んでも、効果を感じない。
当然だ。
問題はストレスフルな生活なのだから、
そのストレスを軽減しないことにはラチがあかない。
そして起立性調節障害の子供にとって、病気が治る方が都合が悪いことがままある。
ストレスに耐えられなくなって病気になったのに、治ってしまったら元のストレスフルな生活に戻らないといけない。
体調が悪ければ、これを理由にストレスから逃げられる。
治ってもらっちゃ困るのだ。
『疾病利得』という。
しかし、当の本人はこれに気づいておらず、「体調が良くなれば元どおりに登校できる。登校したい。」と本気で思っているからタチが悪い。
裏を返せば、「しんどいから休みます!」と言えない子がこの病気にかかるのだ。
真面目ないい子が非常に多い。
お気づきの通り、HSCとの合併もとても多い。
身体を治したいという割に、夜なかなか寝なかったり、薬を飲まなかったり、矛盾した行動をとることが多いのでこっそり注目してみてほしい。
ひとつ確かなことは、この状態になっている、つまりその子にとっての限界を超えてしまっているということ。
なのでまずはゆっくり休むことをおすすめしている。
そして「本当に学校に行きたい」のか、「行くべき・行かなきゃと思っている」のかを、本人にじっくり考えてもらう。
大抵『行くべき』と強く思っているだけで、本音は『行きたくない』のだけれど。
本人が『行きたくない』と自覚すれば、次の作戦が立てられる。
時間をかけて、自分と向き合ってもらうしかない。
最後に。
親の対応はどうすればいいかよく聞かれるので、
あくまで僕個人のおすすめだが、以下に書いておく。
朝は決まった時間に声をかけ、カーテンを開ける(日の光を浴びて体内時計をリセットする)。
無理やり引っ張って起こすと一日中体調最悪になるのでNGだ。
その後も何度か声をかけるのか、あとは放っておいてほしいのか、本人の機嫌が良い夕方にでも確認し、その通りにしてほしい。
本人が「調子が悪い」というのは本当だ、嘘ではない。
仮病扱いせず訴えを認めてほしい。
その上で今日は学校に行くのか休むのか、本人に決めさせてほしい。
夜は、そろそろ寝ないと翌日がつらいよと声をかけてほしい。
その上ですぐに寝るかどうか、見て欲しい。
早めにベッドに入って休もうとするなら(実際には眠れなくても)、前向きに病気を治そうとしている証拠。
良い方向に向かっているのでこのまま見守ってよい。
「わかっている」と言いながら全然寝ないなら、治そうとしていない証拠。
治ったら困るのはなぜか、紐解く作業が必要となる。