心理学

「やれば出来る子」のやる気スイッチ

「この子、やればできるんですけど……」

 

子供の勉強の悩みを抱える親御さんからよく言われる。

受験生なのに勉強しないとか、宿題に手をつけないとか、授業を聞いていないとか。

 

「頭は悪くないんです。やればできるハズなんですが……」

 

さて、この子のやる気スイッチはどこにあるのでしょう。

 

 

やれば出来る子。

そうなのだと思う。

きちんと取り組めば、人並み(もしくはそれ以上)の能力はある。

やらないからできないだけ。

 

その通りだ。

 

ではどうしたらやるのか。

いつになったらやる気スイッチが入る?

 

 

 

 

僕だったら、逆に考えてみる。

じゃあなんでやらないのか。

やらない理由を取り除けばやるはずで。

 

 

答えは簡単で、

 

やりたくないから。

 

これに尽きる。

 

 

 

やる気がないわけです。

やらなきゃとは思うけど、やらない。

子供の行動原理なんて単純で、やりたきゃやるし、やりたくなけりゃやらない。

 

 

口では言いますよ?

「今からやろうと思ってたのにー」

 

でもコレ、本音を読み解くと

「今からやらなきゃいけないことは理解しているが断じてやりたくない!(ビシッ)」

だ。

 

 

『やる』のは、才能だ。

やればできる。

でもやらないならできないに決まっている。

やれないなら『やる』才能がない。

反対に能力が低くても『やる』才能があれば、チカラはついていく。

 

 

 

なぜやらないのかを考える。

やりたくないからだ。

なぜか?

僕の外来ではいくつかパターンが決まっているように思える。

 

 

勉強を望んでいない

まず一つ目。

勉強を望んでいないから。

 

 

中学受験の子に多いのだけど、親に言われてなんとなく受験勉強を開始した。

でもその学校に心から入学したいかと言われると、そうでもない。

あまり深く考えていない。

どんなメリットがあるのか、合格するとその先どうなるのか、よくわからないし。

 

 

ただ、勉強をやめる勇気もない。

親の言う通りに受験した方が安心な気がする。

心(と家庭)の平穏のために、なんとなく勉強するポーズは取っているが、気持ちは勉強に向かない。

 

 

この場合、本人のやる気のなさを見越して受験をやめる提案をしても、

「それはやだ! がんばる!」

と答えることが圧倒的。

本人の希望ならばと塾を続けるが、やっぱりやる気は出ない。

お金と時間ばっかりかかり、成績は上がらない。

 

 

「やる気がないならもう受験やめなさい!」

「いやだ! 受験する!」

 

 

本人も、勉強したくないという気持ちに気づいていない。

「しなくちゃいけない」と「したい」の区別がついていない。

受験しておけば安心。

そこで思考停止している。

当然やる気が出るわけがない。

 

 

能力のデコボコ

もう一つのパターン、能力の凸凹。

 

 

ADHDとかASDとかギフテッドとかの子に多かったりする。

課題によってこなす能力に差がある。

WISCをとるとかなりデコボコしている。

 

 

興味にも差がある。

興味があれば集中して、人並み以上のものを完成させる。

でも興味がないとまるでダメ。

努力の持続を要する単純作業がダメな子もいるし、「江戸時代の芸能文化ついて調べてレポート3枚にまとめましょう」みたいな創作的な学習がダメな子もいる。

 

 

能力の凸凹がある子にとって、学校の課題は苦痛を伴うものが多い。

やりたくないものでも無理やりやらされる。

学校では我慢してみんなに合わせざるを得ない。

 

そんな経験を積むうち、勉強全般に嫌気がさす。

どんな課題か見るのも嫌。

内容を把握するのもめんどくさい。

 

 

 

これではやる気は出ない。

本来どんな子にも知的好奇心ってあって、学ぶって楽しいはずなのに。

新しいことを知るって楽しいはずなのに。

 

 

 

じゃあどうするか。

やる気になるのを待つしかない。

 

 

やる気にさせる方法?

そんなのない。

やる気なんて本人の内側から湧いてくるのを待つしかないのだ。

 

 

「勉強しないといけない」「学歴が大事」と親が刷り込めば刷り込むほど、子の不安を煽る。

不安だから受験するだけで、本当はどんな学校に行き何を勉強したいのか、考える余地がなくなる。

一旦リセットし、「受験した先」を想像させるしかない。

その学校でどんな生活を送りたいか、その先どんな大人になりたいか。

 

 

自分の人生なので、真剣に考えない子はいない。

目標が定まれば超特急で進んでいく。

 

 

 

興味に偏りのある子には、『勉強とは嫌なことを我慢して耐え続けるものである』という先入観を植えつけないことが重要だと思う。

 

何度も書いているが、得意を伸ばすのが得策だと思う。

苦手の底上げより、得意を伸ばす。

全教科まんべんなく学ぶより、好きな科目に特化し、勉強って楽しいと思ってもらう方が得策だろう。

自己肯定感も上がるし。

 

 

もともと知的好奇心の旺盛な子だ。

いつか興味のある分野を深く学びたいと思う時期がくる。

必要ならそこから苦手の克服を頑張るだろう。

 

 

『やる気』のバネは恐ろしく強い。

このバネなしに苦手を克服するのは、普通の人には酷だと思う。

 

そして興味深いことに、その気になれば苦手分野でもそれなりに良い結果を出す。

能力的にはかなり苦手のはずでも、だ。

だから「この子は○○が苦手」「△△は無理」とレッテルを貼らなくてよいと思う。

 

 

いかがでしょうか。

お子さんのやる気スイッチ、見つかりそうですか?

POSTED COMMENT

  1. リース より:

    依然このコラムでコメントさせていただきました。中学受験で進学校へ行きましたが、全く勉強せず、留年しても勉強せず辿り着いたのが先生のコラムでした。
    全く勉強はしないのですが、女の子からチョコレートを36個貰い、留年してるのに文化祭の司会をするような子で、学校を楽しんでいましたが、学力不足で退学となりました。しかし、退学以降、自ら進学したい大学を決め、超特急で勉強し始めました。どこかのコラムでも書かれていましたが、そうと決めたら、学習の遅れを取り戻すのも早く、現在浪人生と共に予備校で勉強しております。
    ありがとうございました。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です