起立性調節障害。
みなさんご存知、朝起きられない病気。
これは身体の病気なのか、精神的なものが原因なのか。
どっちだと思います?
僕は両方の意見を聞いたことがある。
「身体の病気だからあなたは悪くないよ派」と
「心の病気だからゆっくり向き合ってね派」。
どっちが正しいの?
僕なりの意見を書いてみたい。
結論から言うと、心と身体の両方が重なって発症していると考えている。
僕に限らず、そう考えている医者や保護者が多数派だろう。
僕は初診でまずその割合を探ることにしている。
心と身体、どっちがどの程度響いているのか。
純粋なからだの病気の子
たまーにいる、100%身体の子。
メンタル的な要素は何もない、『純粋な』起立性調節障害。
珍しいけど一定数いる。
この子たちは、迷わず身体疾患だ。
思春期に身体がぐっと大きくなり、自律神経が追いつかずにバランスを崩すのが原因。
交感神経のスイッチが入らないせいで、血圧が下がってふらふら、心臓がドキドキして疲れやすい。
心臓・血管系の病気で異論ないと思う。
そのうち自然に治りますと説明している。(あとメトリジンがよく効く)
こころが関与している子
そうではない、メンタルが絡んでくる子。
こちらが大多数。
この子たちには丁寧な問診が必要となる。
起立性調節障害のみでは、遅刻は多くても、頻回な欠席は理屈に合わない。
朝調子が悪く、午後からは元気になる病気だ。
調子がよくなってから遅刻で登校するはず。
キーワードはコレ。
遅刻すると周囲の目が気になって気まずいので、いっそのことお休みした方が気がラク。
でもお休みすると翌日の登校のハードルが上がり、さらに朝起きられない。
そのままズルズルお休みが増える。
こんなセリフが出てきたら、メンタルの関与を強く疑う。
他にも休日は朝から元気とか、夏休みは症状がないとか。
精神的な関与を強く疑う。
こんな子にどう説明するか。
まず、「起立性調節障害は身体疾患である」と言い切ることにしている(理由は後述)。
身体の病気なのであなたは悪くない、サボりでないことも分かっている、と。
その上で、ここまで症状が悪化する子は精神的な理由が絡んでいることが多いと伝える。
何か思い当たるストレスなどありますか? と。
すると、ポツリポツリと話してくれる。
大抵は学校がストレスなのだ。
ストレスがかかると起立性調節障害の症状が悪化する。
症状が悪化すると、登校のハードルが上がり、よりストレスがかかる。
この循環を断ち切るために、学校のストレスを減らしていきましょう、と言っている。(メトリジン効かないし)
正直ここ(頻回な欠席)までくると、精神的な要素が原因の大部分を占める思う。
でも身体疾患と言い切る。
理由は、病気のせいにした方がうまくいくことが多いから。
起立性調節障害になるような子は、根が真面目ないい子であることが非常に多い。
学校を休みがちな自分を責めている。
ちゃんとしなきゃいけないのに、できない自分。
自分で自分を責める。
自己肯定感が下がっている。
なので、身体の病気だから君は悪くない! と言い切る。
医者が身体の病気って言ってた。
じゃあそうなのだろう。
『身体の病気』のお墨付きがもらえると、ほっとする子が多いようだ。
※ちなみに病気というお墨付きに甘えて一時的に症状が悪化することがある。知っておいてほしい。
同時に、親御さんに向けても言っている。
親御さんから見ると、サボりとか怠け、甘えのように感じることがある。
夕方すごく元気そうで、明日は行けると思った。
なのに行けない。
土日は症状なく元気。
なのに、週明けからまた起きられない……。
親御さんは元気な我が子を目の前で見ている。
学校から逃げて仮病を使っているのではという思いが出てきておかしくない。
学校から逃げているのは間違いないので半分正解なのだけれど、
親御さんにそう思ってもらっちゃ困るので、「身体の病気です」と言い切ることにしている。
だから家でゆっくり休ませてあげてほしい、と。
自宅で親に責められると、子供は居場所がなくなる。
ただでさえ学校から逃げているのだ。
家でも追いやられたら、この子の居場所はどこになるのだろう。
自宅ではゆっくり甘やかしてほしい。
甘え癖がつかない?
ノーだ。
起立性調節障害は、もともと真面目な子に発症する。
サボり続けるのは子供自身が耐えられない。
自宅が安全基地になれば、そのうち自分の足で立ち上がる。
これ幸いとダラダラし続けられるような子は、そもそも起立性調節障害にならない。
そんな思惑があって言っている。
「起立性調節障害は身体の病気です」と。
心と身体とが重なっているけど、身体疾患です。
だから朝起きられないその子を、認めてあげてください。
本当に起きられないし、調子が悪いのも本当。
ウソじゃない。
親御さんが信じてあげてください。
自宅に居場所を確保することが何よりの治療だと、僕は思っている。