発達障害

スタートは「困る」

相談したいことは何ですか?

何に困ってますか?

それに対して、具体的にどうしたいですか?

 

初診で聞くこと。

ここがスタート地点。

 

何に困っていますか?

前回の話で、質問をいただいた。↓

個性か、障害かこの子には、特性がある。 この特性は、個性なのか。 それとも障害か。 その答えははっきり出ている。 ...

 

本人が困っていない場合は、どうなりますか?

 

特性はある。(ように見える)

でも、困っているのは周りだけで。

本人はちっとも困っていない。(ように見える)

 

さて。

これねー。

聞かれると、僕は正直困ってしまいまして。

 

と、いうのもですね。

これ、実にいろんなパターンを見てきているから。

 

  • 本当に困っていない。(幼さゆえ)
  • 本当に困っていない。(経験不足)
  • 本当に困っていない。(知的障害で)
  • 本当に困っていない。(ASDで)

 

もしくは、

 

  • 本当は困っている。(言わないだけで)
  • 本当は困っている。(言えないだけで)
  • 本当は困っている。(でも向き合いたくない)
  • 本当は困っている。(でも次の瞬間には忘れる)

 

さて、その子はどれでしょう。

挙げた以外にも可能性はあるかも。

その子は一体、どんな状態でしょうか。

 

 

僕の経験だけでも、実にいろいろなパターンがあるのだ。

ASDや知的障害は一般に、周囲からの期待を認識しづらい。

それで延々「困らない」ってケースは存在する。

または、親の転ばぬ先の杖で、「そもそも困る場面に出くわさない」という場合もある。

困る前にやってあげちゃうのね。

 

もしくは、実際には困っているんだけど、極端思考ゆえに認められないとか。

普通じゃなきゃいけない、自分は普通なハズと強く強く握りしめている子。

これまでの経験から大人に伝えることを諦め、「別に」の一言で片付けちゃう子もいるし。

困り感を自分でうまくキャッチできなかったり、キャッチしても伝える語彙がなかったり。

 

さらに、実際全然困っていないのに、親御さんの期待が高すぎて「困るに決まっている!!!」と暴走しているケースも。

  • コレができないと人生詰む。
  • 今できないなら一生できない。
  • 普通ここまでは出来るハズ!

親御さんの感覚が世間一般と乖離しているケースね。

 

さて。

その子はなぜ「困らない」のか。

「困らない」と表現するのか。

ケースバイケースすぎて何とも言えないというのが正直なところで。

 

困るから工夫する

本人は困っていなくとも、特性から明らかに社会で不和を起こすなら、その人にはきっと発達障害があるのでしょう。

でも、これ、支援激ムズ

 

困っちゃうよね。

本人は困ってないんだから。

 

ちょっとアンタ、そーゆーとこ気ぃつけーや。

 

言ったところで響かない。

だって、困ってないもの。

 

 

大人だと、こんなケースはさほど多くはないものと予想する。

周りが明らかに困っちゃっているなら、本人も多少なりとも居心地が悪いハズで。

じゃあ、困るハズ。

 

でも、子どもだと起こり得る。

周りは困っても、本人は困らない状態が。

 

 

周りが推測するしかない。

なぜ困らないのか。

じゃあ時期を待つのか、経験を積ませるのか。

はたまた、ある程度押した方が良さそうか。

 

子どもの支援は難しい。

当事者本人が、文字通り「子ども」だから。

 

 

診断レベルか否かはさて置き、この子には特性がある。

だから困りごとが出てくる。

じゃあ、工夫が必要となる。

 

何度も書いているが、特性自体には、別に良いも悪いもなくて。

一つのことの、良い面が出るか悪い面が出るかの話で。

悪い面が出るなら、その場面をうまく避ける方がいい。

これが「工夫する」ってことだ。

 

特性があるなら、それに応じた工夫が必要だ。

人一倍頑張るのか。

避けるのか。

人に頼んだり便利グッズを使ったり環境を整えたりして、負荷を減らすのも良い。

 

でも、困らないことには工夫はできない。

 

困ってないことを工夫する

 

無理だ。

世の中の偉大な発明だって、困るから出てきたのだ。

必要は発明の母である。

困るから、必要だから、人類は工夫を重ね、さまざまな便利グッズや新たな仕組みを生み出してきた。

って、ドクターストーンに書いてあった。(少年ジャンプは僕のバイブル)

 

精度高く、「何に困る?」

困りごとがスタートだ。

 

何に困る?

どんな場面で?

原因は、どう考える?

じゃあ、ここからどうする?

 

困りごとを、精度高く知ることだ。

そこからしかスタートしない。

 

んだけど、それが難しいんだよねー。

外来でも、初診で必ず聞くんだけど。

 

相談したいことは何ですか?

何に困ってますか?

それに対して、具体的にどうしたいですか?

 

大人でも、うまく出てこないことがある。

親御さんが、

 

母
なんか、昔から、フワッと困ったような……?

 

母
困ってるような……?

いや、こんなもんで普通のような……?

 

母
受診を勧められて来たんだけど、ハテ、別に困っていない……?

 

先生に聞いても、

 

先生
先生
数ヶ月前は困ったけど、今は別にそうでもないような……?

 

先生
先生
今は別にいいけど、また以前の状態に戻ったら心配で……?

 

わかるよ。

非常にわかるよ。

気持ちは非常にわかるけど、こんな感じで相談されても、僕もなかなかうまく案を出すことができなかったりする。

困りごとがはっきりしないと、解決策も提示できない。

 

 

何に困りますか?

 

精度高く知ることだ。

そして、仮定を立てること。

 

  • なぜ困るのか。
  • じゃあどうするか。
  • そのために不足する資源なり環境なり情報なりは何か。

ここまでまとめていただけると、相談が非常にスムーズだ。

 

 

もし、本人が困らないのであれば。

  • その子は、なぜ困らないのか。
  • 実際困るハズなら、それをどう認識させるか。

子どもの場合、ここからのスタートとなることもある。

 

大人だとなかなかないだろうね。

困った自覚のある人しか、受診や相談をしないから。

 

 

その特性と生きていくのは、子ども本人だ。

周囲だけが騒いでもダメで。

自覚してもらう必要がある。

ゴールは、本人が自分の特性をよく知り、社会の中で生き生き活躍すること。

 

その為には、子どもの詳細な観察が欠かせないし。

子どもってたいてい喋らないから、大人が仮説を立ててやってみるより他ないと思う。

 

 

僕は、子どもの心が見えないのが困る。

透けて見えればいいのにと思う。

POSTED COMMENT

  1. まゆ より:

    質問の答えありがとうございます!
    我が子は、本当は困っている(でも向き合いたくない)かなぁ。
    障害とか特性とかウザイ!みんなこだわりくらいあるでしょ!と言われたことがあります。
    それはそうだけど。
    でも学校はしんどくて行けないし、外はすぐに疲れるし、決まった洋服しか着れないし…日常生活に支障があるんだけどな。受診も嫌がっていて行きません。
    本人が自覚して、自分の特性をよく知り社会で生きていく。ほんとそれですよね。
    いつかはそうなっていくのかな~(-_-;)

  2. とくめい より:

    本当は困っている。(でも次の瞬間には忘れる)

    先生、まさにこれです!
    本人が「専門家と話をしたい」と騒ぐので、予約の取れない発達外来にやっとのことで予約をしました。
    そして1ヶ月半後の受診日…

    当日ドクターの質問には
    「いまは何も困っていない」
    …はい、診察終了!

    母、腰が抜けました。
    そしてきっとまた騒ぐのも分かっているのです。

    中2男子、成長や自覚を待つにはなかなか親が耐えきれません(ToT)

    いつも分かりやすいお話、ありがとうございます!

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