ADHDには治療薬がある。
コンサータ、ストラテラ、インチュニブ。
ざっくり、行動にブレーキをかける薬。
ADHD (特に多動性、衝動性が強いタイプの子)は、思いついたらすぐに行動に移す特性がある。
これにブレーキをかけ、「今これをやっても大丈夫かな?」と考える時間を作る。
すると好ましくない行動が減る、という理屈。
ADHDの子は、やってはいけないことを頭では理解している。
あとで確認すると、「やっちまった」と思う。
分かってはいる。
でもその時その瞬間は、「やってみたい!」が勝つ。
この特性により、叱られることがどうしても増える。
自己肯定感が低下する、自暴自棄になる、などのときに薬を使う。
好ましくない行動は特性のせいで、子供は悪くない。
授業の邪魔をしようとか、友達にいじわるしようと思っているわけではない。
でも周囲からは誤解され、「悪い子」のレッテルを貼られてしまう。
それを避けるために薬を使う。
薬を使うと、集団生活への適応が良くなる。
投薬は子供自身の自己肯定感を傷つけないためであって、周囲の大人が扱いやすくするためではない。
そう。
これらの薬は周囲のためでは断じてない。
ここ重要。
近年、この薬が有名になってきたのか、投薬するよう学校から言われて受診する患者さんがちらほらいる。
「コンサータを出してもらうよう言われました」と具体的な薬の名前を出してきたり。
きっと投薬によって適応がよくなった児童の経験があるのだろう。
※余談だがこのコンサータ、最近処方がとっても面倒になりました。出してくれる医者はずいぶん減ったと思う。
僕は、投薬の前にまず環境調整だと思っている。
そもそもADHDの多動性、衝動性は、治す必要があるのか。
ADHDの子たちは、あちこちにアンテナを張り巡らせ、エネルギッシュに動く。
アイデアが次々に湧いてくる。
好奇心旺盛で、新しいものを創造する能力に長ける。
なので大人になって大成する人も多いようだ。
エネルギッシュにたくさんの仕事をこなすため、出世し、社長や役員など高い地位に就く。
学校の校長先生にも多いらしい。
かの有名なトーマス・エジソンもADHDだったのではないかと言われる。
旺盛な好奇心が、素晴らしい発明の数々(電球とか)を生み出したとすると、
なんとも夢のある話ではないか。
僕なんかは新しく何かを創造できるタイプではないので、素直に尊敬する。
ADHDの好奇心が文明を発展させてきたと言っても過言ではないのでは。
ADHDは科学文明を推し進める!
とまあ大きく言ったが、実際にADHDの好奇心は財産だと思う。
僕の外来にも面白いアイデアをポンポン出すADHDの子が通っている。
授業はあまり聞いておらず、耳に入った単語やノートの落書きから想像の世界を膨らませている。
これ、止めますか?
僕はその必要はないと思っている。
授業中に消しゴムに鉛筆を刺してなにやらオブジェを作っているけれど、別にいいのでは。
授業中に走り回る、挙手せずに発言する、順番が守れない、衝動的に手が出るとか、そんな行動で周囲との軋轢が生じている場合は投薬対象だと思う。
でも迷惑をかけず(かけても許容範囲内で)、彼の世界に没頭しているのであれば、まぁ許容でよいと思う。
先生は気になるだろう。
明らかに授業に集中せず、手いたずら(手遊び)に夢中な生徒。
でも、許してあげてほしい。
まずは環境調整だ。
- 他の生徒の様子が見えないよう一番前の席にする。
- 指示は簡潔に一つずつ、できれば口頭指示より図で示すほうがわかりやすい。
- 指示の内容が理解できているかを個別に確認する。
これらの工夫でなんとかなる子は多い。
もちろん先生のご苦労もよくわかる。
落ち着かない子が1人いると他の子の気も散るし、
授業中に遊んでいる子がいれば全体の士気も下がる。
先生は一人なので、その子にかかりきりになるわけにいかないし。
改善する薬があるなら使ってほしい!
ですよね。
わかります。
僕が先生の立場でも、そう思う。
でも僕はあいにく教師ではないので、まずは環境調整をと言うことが多い。
学校に電話することもあるし、病院まで出向いてくださる先生も。
多くの学校では、病院のアドバイスを持ち帰り、いろいろ工夫してくれる。
先生たちもどうしていいかわからず困っていたのだ。
それでうまくいくと良いが、問題点が浮き彫りになることも多い。
「環境調整で授業中の離席は激減しましたが、休み時間に友達を叩いてしまうのが困ります。そのせいで周囲から乱暴な子とみなされ、距離を置かれています。本人も寂しそうにしょんぼりしています。」
それなら薬を試してみましょう、となる。
実のところ、ADHDの本人はあまり「困り感」を感じていないことが多い。
明らかにうまくいかず本人もふてくされているのに、困っているかと問うと「別に」と返されることが多い。
でも実際困っているのだろう。
投薬すると「怒られることが減った」「学校が楽しくなった」と言ってくれる。
僕は『本人が困ったら』を投薬の基準としているが、その本人が自覚していないことがままある。
そこはやっぱり周囲の大人にみてもらいたい。
具体的には先生と親御さんだ。
まず投薬、の前に
まず観察と環境調整。
学校の様子は診察室からは見えないので、よろしくお願いします。
いつも分かり易い記事、ありがとうございます。
コンサータ、インチュニブ、本人が飲める最大量まで増やされました。
それでも、離席あり。
担任には環境調整もして頂き、席も一番前。個別に声掛けもして頂き。
親も、できるだけサポートしてるつもりです。
教科書、ノート出さない。
連絡帳、書いて来ない。
宿題だけは帰宅後、直ぐに取り掛かる。範囲を暗記してる。
内ばきは履かない。小2でまだ毎日お漏らし…
薬って、飲むと効果が有るんですよね?
親は実感していませんが…担任は良くなってきたと。
効果が無い子って居るのでしょうか?