心理学

いつかは必ずぶち当たる

思春期くらいのお子さんで、

「急に言うことを聞かなくなり、家で暴れています!

 今までは素直ないい子だったのになぜ……」

的な訴えで受診される親御さんは多い。

「暴れている」のところは、

「不登校になった」でも「全く勉強しなくなった」でも「ゲーム依存と課金」でも「不良になり補導された」でもなんでもよい。

要は今までなんの問題もなかった子が、急に豹変して扱いづらくなったという訴えだ。

なぜこうなるのか、また親御さんはどう接したらよいか、思うところがあったので書いてみる。

僕の患者さんのボリュームゾーンは思春期なので、上記のような訴えも必然的に思春期の子に多い。

のだが、幼稚園〜小学校低学年の子にも同じようなことがある。

「こだわりが強すぎて扱いづらい」

「納得するまでテコでも動かない」

といった感じ。

発達障害ではなく、その子の特性として上記のような子は結構いる。(知的に高いことが多い。頭がいいから反抗できるんだと思う。)

そして、患者さんの兄弟や親戚、または親御さん自身の話で、大人になってから爆発する方のことを聞く機会もある。

「神童が就職して挫折し、手がつけられなくなった」

「完全に引きこもり」

「結婚したがモラハラがひどい」

とか。

思うにこういった方々は、いつかどこかで必ず壁にぶち当たったのだと思う。

世の中には、

世間の流れに抗わずにふんわりとその一生を終える人と、

納得できないとどうしても先に進めない人といるようだ。

爆発するのは後者だろう。

そしてこれは生まれつきの気質で、「どこかで必ずぶち当たる運命」だったのではないだろうか。

一度(二度三度?)爆発することで、自分と世間の折り合いをつけ、順応していく。

そして爆発した人たちの話を総合すると、年齢が小さければ小さいほど扱いやすいように思う。

僕の外来に来る思春期の子たちは、それまで素直に親の言うことを聞いてきた。

親の方もあれこれ期待をかけてきたし、子どもも応えてきた。

それが中学生くらいで爆発する。

身体も大きく口も達者になっているし、インパクトが大きい。

おとなしかった子が大声を発し壁に穴を開ける。

一体どうしちゃったの⁉︎ となる。

仮にこの子が幼稚園くらいの頃にすでに爆発していたら、親御さんも

「この子は納得しないと動かないから親があれこれ言うのはやめよう」

と早々に察していたと思われる。

そもそも、親のやり方に不満を待たずふんわり流されていけるタイプではなかった。

過度の期待をしたり、親の理想を押し付けることもなかったのではないだろうか。

子どもも急に切れたのではなく、長年の親の無理解に耐えかねて爆発したのだろう。

早めに芽を摘めば、ここまでの大爆発にはならなかったろうと思う。

ってことは。

大人になって爆発したら、もっと被害が大きかっただろう。

実際に話を聞くと、年齢が上がるほど大変なようだ。

大人の引きこもりは子どもの不登校と異なり、予後が悪いと聞く。

なかなか社会復帰できない。

それまで学歴に依存し自分を保っていた人が、就職後に初めての挫折を経験すると、もう立ち直れない。

人を見下し怒鳴り散らすことでしか自分を保てなくなってしまう。

うん。

思春期でよかった。

今でよかったね、って話。

大暴れしている思春期のお子さんを持つ親御さんのご苦労は、想像するだけで目眩がするほどだが、でも今でよかった。

どこかで必ずぶち当たった壁だ。

親の手元にいる、子どもの時分でよかったと思う。

じゃあ、そんな子に対して親はどう接するか。

話を聞いてあげてください。

「素直だったあの子に戻すにはどうすれば・・・」

それは無理だ。

今の爆発している姿が本来のその子だ。

「素直なあの子」は、自分の気持ちに蓋をして演じていただけの姿だ。

その子にはその子の考えがある。

自分の物差しがある。

何を考え、どうしたいのか。

聞いてあげてほしいと思う。

この「聞いてあげる・分かってあげる」ができる最後の機会が、思春期だと思う。

ここを過ぎると子どもは親に期待しなくなる。

 どーせ言っても無駄だし。

 でも分かって欲しかったのに・・・。

「親に認めてもらえなかった」というモヤモヤを抱えて生きていくしかなくなる。

するとその後の人生、とっっっても生きづらくなるようだ。

「親にも認めてもらえなかったのに、それ以外の人に認めてもらうなんてマジ無理ゲー」と思う。

「親にも認めてもらえない自分には、なんの価値もない」と思う。

『自己肯定感の低下』ってやつ。

ホント、今でよかった。

今ならまだ間に合う。

爆発するのは、親に分かってもらいたいからだ。

不安な気持ちを受け止めてもらいたいのだ、他でもない親に。

爆発してくれた我が子にありがとうとつぶやき、ゆっくり話を聞いてみてはいかがでしょうか。

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