親子関係

わからんちんなお父さん 〜「何を言っても無駄なのでもういいですっ!」となる前に〜

このブログを読んでいる方は、そのほとんどが女性だ。

つまり、お母さん。

お父さんは出てこないの?

 

外来でも、お子さんと一緒に受診されるのはお母さんが多い。

受診されたお母さんに、「お父さんはどのようにお考えですか?」と質問すると、

 

母
まったくもってワカランチンです。

 

母
どうせ言っても聞かないので、もう諦めました。

 

母
自分の狭い価値観で子供を怒鳴りつけて、ホント腹立つ!

 

ってな感じにおっしゃられることがとても多い。

 

今日は、「お父さん何考えてるの?」って話。

 

お父さんと小児科受診

一昔前は、小児科受診といえばお母さんだった。

喘息の定期受診も、発熱の緊急受診も、予防接種の計画を立てて実際に打ちに行くのも、ほぼお母さん。

小児科がやっている平日の昼間はお父さんは仕事に行っているので、それが自然だったのだろう。

 

しかし昨今、共働き世帯の増加によるものか、ハタマタ令和のお父さんの意識改革か、お父さんが受診にいらっしゃることが普通になっている。

結構いらっしゃいますよ、お父さん。

初めての予防接種に両親で来院される様子なんか見ると、僕も自然と頬がほころぶ。

 

 

で。

発達外来にいらっしゃるのも、もちろんお母さんが多い。

のだけれど、実はお父さんも結構いらっしゃる。

 

メインはお母さんでも、予定が合う日は両親揃って来てくれたり。

「病院で話を聞いてきなさい!」とお母さんに引っ張ってこられた様子だったり。

「病院の先生がアナタの意見を聞きたいって」というテイで説得されていたり。

夫婦で話し合ってもラチがあかないので「じゃあ第三者の立ち会いのある病院で!」となったり。

 

あと、フツーに保護者として、当事者意識を持って当たり前に受診してくれるお父さんもいる。

お父さんもちゃんと「保護者」ですから。

 

「わからんちん」の正体

で。

お父さんたちの話を聞くと、みなさんよく考えていらっしゃることに気がつく。

 

もちろん人間なので、考え方に偏りがあったり、偏見があったり、知識不足だったりはする。

でもそれはお母さんも同じ。

ってゆーか、僕も含めて人間みんなそんなもんでしょ。

少なくともそこに性差は感じない。

 

とりあえずお母さんがおっしゃるほど「まったく考えていない」お父さんは、まずお目にかからないわけです。

かなりよく考えていらっしゃる、というのが僕の感想だ。

※もちろんある程度考えてくれているお父さんしか病院へは来ないのだろうけど。まったく興味を示さないお父さんは、わざわざ有給をとって受診しないのは承知。

 

でね。

事前情報として、

 

母
まったくもってワカランチンです。

何を言ってもムダですよ。

 

と聞いていたお父さんが、果たしてその通りだったってことは、正直あまりない。

考えているんですよ。

「お父さんなりに」考えている。

 

母
普段何も見ていない、何もわかっていないお父さんの考えなんて、全然違うに決まってる!

浅はかだ!

 

それがですね。

僕みたいな第三者から見ると、結構的を得ているんです。

 

待って!

もちろん、常日頃からお子さんとガッツリ向き合っているお母さんの意見が的外れって言ってるわけじゃないです。

 

どっちも合ってる。

 

そう、どちらも正しいと思うことが多いのだ。

 

例えば。

母:この子は書字が苦手だ。だから、たくさん書かなくてもいいけど、最低限の練習はさせよう。例えば「理科」なら「り」だけ書くとか。最低限、あとから見て分かるようにしておく。そうすれば学校に対する苦手意識が軽減するはず。

 

父:この子は書字が苦手だ。だから、書かなくていい。板書や宿題は免除してもらって、代わりに自宅でタブレット教材をやらせよう。将来的にはパソコンで代用できるので、無理させる必要はない。

 

例えば。

母:この子はADHDだ。だから投薬をして、叱られる機会を減らしてあげたい。母として、特性のせいだと頭ではわかっていても、今までの積み重ねもありどうしても強く言ってしまう。このままでは親子関係にヒビが入る。それが最悪だ。

 

父:この子はADHDだ。でも、大人の都合で投薬するのは反対。特性を特性として理解し、大人が行動を改めるべきだ。悪いのはこの子ではなく、叱りつけてしまう大人だ。大人のためにこの子が副作用のリスクを背負って服薬するのはおかしい。

こんな感じ。

どっちも正論で、どっちも正解なのだ。

 

どちらも正解。

でも、方法論としては真逆の意見。

だからお互い「わからんちん」と思っている。

こんなケースをよく目にする。

 

分かり合えないことを分かり合う

このようなケース、つまり両親とも子供のことをしっかり考えているご家庭でも、多くはお互いの意見を把握していない。

 

「あの人は何も考えていない」

「自分の思う通りに決め付けている」

 

お互い、そう思っている。

 

話し合っていないのだ。

言ってもムダだと思って、お互いに意見を引っ込めているのかもしれない。

実際お父さんと話すと、

「僕はこう思うんですけど、妻の方がいろいろ考え、こだわってやっているので。

僕は口を出さないようにしているんです。」

とおっしゃることは非常に多い。

 

そんなお父さんをお母さんから見ると、

「何も考えてない!」

となるのだと思う。

 

 

話してみるといいですよ。

「自分はこう思う」を押し付けずに、「あなたはどう思っているの?」と。

「あなたの意見が聞きたい、あなたの助けが必要なの」って。

 

男性はヒーロー願望がある人が多いから、頼られると頑張ってくれる。

「あなたの考えを教えてほしい」と言われて悪い気はしないはず。

ケンカ腰にならず、冷静に話してくれると思う。

それが無理なら第三者を交えて話す方法もあるし。

 

 

そして。

意見の不一致は想定内だ。

お互いによく考えているからこそ、意見が割れるときがある。

分かり合えないこともあるだろう。

 

だが、別によい。

お互いに意見が違うのは、悪いことではない。

分かり合えないことを分かり合えばよい。

 

あの人は、この点を大事にしているからAという方法をとるのね。

でも私はこっちの方が優先順位が高いと思うから、方法Bを選ぶ。

 

それでいいと思う。

方法が夫婦で一致しなくても、全然いいと思うんだ。

そこに理解と納得があれば。

お互いの主張を尊重できていれば、分かり合えなくても別によい。

 

 

母
それだと子供が混乱しません?

 

子供にとっても、別に不都合はないと思う。

 

お父さんはAと言う。

でもお母さんはBと言う。

 

それで良くない?

そんなことで子供は混乱しないよ。

彼ら、その辺よく見てうまく使い分けてるよ?

自分のトクなように。

 

少なくともお互いがいがみ合って、否定し合う姿を見せるより、ずっといい。

そして両親の異なる価値観を見て、その子なりの価値観を作り上げていくと思うんだ。

※もちろん物理的にどちらか一方の方法を選ばざるを得ない場面はある。その時はお互い話し合って、納得の上意見を統一してほしい。

 

まとめ

その「わからんちん」のお父さん、もしかしたら「わからんちん」じゃないかもしれませんよ。

案外考えてるかも。

話してみる価値ありです。

信じられないかもしれないけど、僕の臨床上の感触ではそうです。

POSTED COMMENT

  1. 匿名希望 より:

     夫は、良かれと思っての行動ではありますが、色々子供に押し付けがましいです。一つ一つは将来役に立つかも知れないけれど、子供が今やりたいわけではない事ばかりで、子供のストレスマックス。

     でも、ある意味私が夫が仕事をするという役割を果たす事ばかり評価していたから、夫も子供に役割を果たす事を期待するという面があるのでしょう。
     パパのおかげで○○ができたね、と子供達にはよく言っていましたが、これは裏を返せば、ちゃんと仕事をする良い父親である事を評価していたという事(私もある程度は仕事してますが、メインの収入は夫)。

     私は子供が生まれてから、子供が喜ぶのが一番嬉しいと思って来た結果、独身時代にやりたかった事を今思い出しても、やりたくもなんともなくなってしまいました。同様に、夫も家族のために働く事に時間を費やして収入はある程度増えても贅沢もせず、本当は独身時代にやりたかった事に、あまり心が動かなくなったのでしょう。それで余計に、子供が社会の中で役割を果たすかどうかが、気になるようになった。

     それに気がついてから、夫が見ているYouTubeを私が覗き込んで明るいコメントをしたり、一緒にホームセンターをブラブラし、これをどう使えば家の中が便利になるかと夫が言うのに相槌をうったりして、夫の何かをやってみたい気持ちを育てる様にしています。
     
     最近は夫も手を動かす事が増え、子供に対する押し付けがましさが、少し減ってきたような気がします。夫なりに子供を観察して考えた結果でもあると思っています。
     

  2. 匿名 より:

    違っても良い。でもペリーが来た時どうやって戦うのか?
    我が家は娘が不登校になった時、娘よりも学校よりも、引きずってでも行かせたい夫の扱いに一番苦労しました。自分が行かせたいくせに妻に引きずらせる。ペリーと交渉するのも全部妻。
    私が言いなりになるのをやめて不登校確定、諦める形で受け入れた彼ですが、気づいたのは夫も特性濃いのかなぁということ。人と話すことが苦手で極力避ける(店員さんとかも逃げる)
    でも格下の妻には詭弁を振るう。違う意見に直ぐにキレる。
    先生の診察室で聞かれるような前向きな意見の相違ではなくてですね、「黙れ!頭悪っ!」とかそんな言葉しか返ってこない。
    直らないんだろうなぁ。手は尽くしたつもりだけど疲れました。その情熱を全部娘に傾けたい。
    本当はペリーには父親が出た方が効くって百も承知ですが、私は一人で戦う方が楽です。

  3. 小鳥達のお母さん より:

    子供達が小さい頃、子供を見ててねと言うと見てるだけ。
    娘達の担任の名前も知らず、本当に父親?と思っていましたが、次女が不登校になった時は1番の理解者でした。学校への復帰ばかりを考えて、悩んだり娘を罵倒したりする私とは真逆で、「学校って行かなきゃ駄目かな~」と主人は言っていました。その時はその呑気な言葉に腹も立ち、どうせ子供の事を真剣に考えていないのよ!とさえ思っていましたが、あれから4年。あの時苦しかった娘の支えは主人の方だったと、今は感謝しています。

  4. きほ より:

    うちのことを話されているのかと思うくらい、我が家の状況でした。
    夫は仕事人間なので有給とって通院したのは検査結果のときだけ、かつ全く私と考え方が真逆で、私がやってることは発達の本で書いているし、病院の先生も太鼓判なのになぜ夫だけが違うことをするのか…。解せぬ。こどもが困るじゃないか。と諦め半分怒りモードでした。

    違っていてもいいんだ!こども困らないんだ!ということを知って目からウロコです。もちろん、いろんな意見があるのは承知で、うちの子は困るかもしれない、けど違っていてもよい という意見があると知って肩から力が抜けました。こどものことで視野が狭くなってしまうので、小児科の先生の考え方のブログがあるということは私の支えです。
    いつもありがとうございます。

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