比べない子育て。
「他の子と比較せずその子だけを見ましょう」
説得力がある。
その通り、我が子に集中しましょう!
もちろんそうだ。
でも、これだけでは足りないと、ぼくは思う。
比較してナンボだ。
めっちゃ比べてこうぜ! という話。
昨日ママ友の子供と比べるなって言ったばかりなのに、どういうこと⁉︎
まぁ聞いてください。
比べない子育てでは、ちょっと足りない。
我が子をよく見るのはとても大切だと思う。
だけど、それだけでは足りない。
お子さんは、今までもそしてこれからも、人の輪の中で生きますよね。
人と関わって生きるはず。
無人島でひとりで生活するわけではないでしょう。
だったら、他の人とどこが違うか、どんな特徴があるか、知っておいたほうがよい。
人の輪の中で居場所を見つけるために。
例えば。
「この子は書字が苦手なので、板書は免除してください」
どのレベルで苦手なのか。
字が汚い小学生なんてゴマンといる。
練習させた方がいいのか、本格的に書字障害のレベルなのか。
これって他の子供と比較しないと、わかりようがない。
「恥ずかしがり屋なので、人前での発表が苦手です」
みんなの前で発表するのが得意な子の方が少ないはずだ。
でもやってみた方がいいのか、トラウマになるレベルなのか、場面緘黙(家では喋るけど学校では喋らない子)か。
本人はどう思っているのか。
背中を押してほしいのか、やるくらいなら死ぬ! のか。
親御さんは、育児のプロではない。
その子(と数人の兄弟)しか育てていない。
だからこそ、他の子としっかり比較してほしい。
気になるその特徴、よくいるレベルなのか極端な外れ値なのか。
どうやって比べるか。
まずは病気を知ってほしい。
発達障害、HSC (病気ではないが)、起立性調節、知的障害、学習障害など。
それってどんな子?
典型的な症状を知ってほしい。
その上で、我が子にはどんな特徴があるかよく見る。
当てはまるところと、当てはまらないところとあるはずだ。
病気を知ると、見えてくる。
この子はどんな特徴がある?
比較してほしい。
これがわかると、有効な対策を立てられる。
具体的にどのくらいの配慮が必要か。
どんなことに困っているか。
本人はどんなふうにしたいのか。
親御さんにはプロデューサーになってほしい。
本人は、自分のことなので見えづらい。
その子のウリは何? 弱点は?
合う環境を探してほしい。
最悪なのが、狭い世界で比較すること。
「友達の○○ちゃんは、もうこんなことができるらしい」
「ママ友に聞くと、みんなこういう風に勉強しているみたい」
これはダメ。
狭い。狭すぎる。
数人と比較しても意味がない。
○○ちゃんとうちの子、どっちが平均に近くどっちが外れにいるか?
分かりようがない。
身近な数人がそうだからといって、クラスのみんながそうではないし、ましてや全国的な標準ではない。
もっと大規模に比べる。
『ちゃんと』比べる。
難しいと思うので、先生や医療機関、発達相談などプロの意見を聞くといい。
彼らは多数の子供たちをみている。
発達の検査を受けてみるのもよい。
その子がどのくらいの位置にいるのか、どんな場所だと合いそうか、よいアドバイスをくれるはずだ。
全体を知った上で初めて、我が子をつぶさに観察できる。
子供だけを見ていると『我が子が標準』になってしまう。
気持ちはすごくよくわかる。
わかるのだが、これでは他の人に伝わらない。
もったいない。
定型発達と比べてどうなのか、発達障害の特徴がどのくらいあるのか。
広い視野で見てみてほしい。
全体像を把握して初めて、我が子の位置が理解できる。
シロクマがハワイより北極で生きる方を選んだからといって、
だれがシロクマを責めますか。(『西の魔女が死んだ』)
有名な言葉だと思う。
僕も好きな言葉だ。
その人に合う場所で生きていけばよいという意味。
これに例えると、シロクマがたくさんのマレーグマと一緒にハワイで暮らしている感じ。
↑これがマレーグマ
でも、自分はマレーグマではなくシロクマだと、どうやって言えるのか。
暑がりの、ちょっと色白のマレーグマかもしれない。
マレーグマとシロクマ、両方の特徴を知る必要がある。
まず『シロクマという白いクマがいて、北極に住んでいる』という事実を知らないと、どうしようもない。
隣のマレーグマと、
「ねぇ、ちょっとココ暑くない? 僕しんどいんだけど」
「まぁ今は夏だから、ちょっと暑いかな」
「えー、かなり暑いよ。ふらふらする」
「大げさだなぁ。みんな我慢しているんだよ」
「そうかぁ。僕は忍耐が足りないんだな。もっとがんばろう」
こんな感じ。
北極に行くという選択肢が思い浮かばない。
「それにしても、暑い……」
比べていこう。
ガンガン比べていこう。
変なこと、違和感を感じること。
それには理由があるはずだ。
比較して、理由を明確にしていこう。
配慮や対策は、その上に成り立つ。
狭い世界ではなく、大規模に、『ちゃんと』比べる。
自ずと我が子の立ち位置が見えてくるはずだ。