2歳女児です。
2歳半で喋ることばは「バナナ」「わんわん」程度。ママやパパも言いません。
大人の言うことは理解している様子ですが、なにしろ言葉が遅くて心配で……。
同じくらいの歳の子はもう結構ぺらぺらしゃべっています。
ママ友は個人差だから心配ないよとは言うのですが、来年は入園なので心配です。
お子さんがお母さんを呼ぶ時はどうしていますか?
おもちゃを取って、のどが渇いた、などお子さんの要求をお母さんに伝える方法は?
でも私はずっと一緒にいるので、なんとなく理解できる感じです
2歳頃、言葉が遅いことはよくある。
早い子はすでに流暢に喋っているので、不安になって受診される親御さんは多い。
プレ幼稚園などが始まり他のお子さんと比較して急に心配になることも。
言葉が遅い原因として、ざっくり以下の4つを考える。
- 耳が聞こえない
- 知的にゆっくり
- 自閉スペクトラム
- そのうち喋る
一つずつ見ていこう。
①耳が聞こえない
これは早めになんとかした方がよい。
2歳で気づくのは遅すぎるが、大抵は乳児期に分かっているはず。
ドアをバタンと閉めてもびっくりしない、見えないところから呼んでも反応しない、遠くの救急車の音や、テレビから流れる音楽に反応しない、など。
乳児健診でも意識して確認している項目だ。
最近では出産した病院でAABRという新生児の聴力検査が行われていることも多い。
自治体から助成が出るようになっている。
なので、この年齢で問題になってくることはあまりないはずだ。
②知的にゆっくり
年齢は2歳だが、発達的には1歳相当の場合など。
発達全体がゆっくりの場合、ぺらぺら喋ることは難しい。
その場合は大人の言うことも理解していないはずで、簡単な指示(例えばゴミを捨ててきて、おもちゃを持ってきて、など)にも従えない。
手先や全身運動の発達も遅れていることが多く、1歳半を過ぎても歩かなければ一度相談した方がよいだろう。
注意して欲しいのは、1点気になることがあっても、すなわち発達が遅れているわけではないということ。
ハイハイはすごく遅かったがすんなり歩くなど、正常発達の子にもバラエティーがある。
一つ一つのできるできないに過度に注目せず、全体的な知的発達をみる必要がある。
この辺はぜひ専門家(医師や保健師など)に相談してほしい。
③自閉スペクトラム
自閉症の特徴として、人にあまり興味を持たないことが挙げられる。
言葉というのはコミュニケーションのためのツールである。
そのコミュニケーションを取る意欲がない場合、言葉の発達は遅れる。
養育者である両親にさえ、自分の気持ちを伝えるとか親が何を言っているのか理解するといったやりとりをする意識が低いのだ。
彼らは、自分の興味のあることを人に伝える意欲が低い。
他児のように自慢のおもちゃを「お母さんみてみて!」と騒いだり、自分に注目を向けることが少ない。
母の「みて、ちょうちょが飛んでいるねぇ」「ここにワンワンがいたね」といった声掛けにもあまり興味を示さない。
一人の世界で黙々と遊んでいることが多い。
身近にいる母は、自分の要求を叶えるためのツール。
自分では届かない場所のおもちゃを取るために、長くて器用で便利な『母の手』をとって、その場所へ持っていく。
これをクレーン現象といい、自閉症児に特徴的な行動だ。
自閉傾向がある児の場合、その後の言語発達はケースバイケース。
だが、彼/彼女なりに言葉が増えていくことが多い。
発達が進み、自分以外の人への興味が強まってくると、言葉が増えてくる。
言葉で伝えられることが増えると、かんしゃくも少しずつ減ってくる。
④そのうち喋る
上の①〜③のどれにも当てはまらない場合、「まあそのうち喋るでしょう」ということになる。
前述の通り、2歳頃に言葉が遅いことはよくある。
特に男児に多いように思う。
この場合、周囲の大人の話に興味を持ってよく聞いており、理解もしている。
本人は喋らなくても母の言葉をひとつひとつインプットしており、溜めて溜めて3歳すぎに堰を切ったように喋り出す。
そりゃあもう、「うるさいから少し黙って」と言うくらい。
言葉が遅くて心配したことなんて嘘みたいに。
今回の2歳の子は、診察室でも僕の様子、見慣れない病院の風景に興味を持って、うろうろ歩き回って聴診器や丸椅子をいたずらしてみたり、僕と目があってサッと母親の影に隠れたり。
発達は問題なさそうな様子だったため、数ヶ月後に言葉が増えたか確認する方針とした。
ただ一つアドバイスしたことがある。
保育園などに行かず自宅で保育している児の場合、養育者(多くは母親)と以心伝心となり、喋らなくてもコミュニケーションが取れてしまうことがある。
のどが乾いた頃に勝手に水が出てくるし、瓶のフタが開かなければ母が察して開けてくれる。
言わなくても要求が伝わるので、喋る必要がないのだ。
悪いことではないのだが、言葉の発達という面では停滞してしまう。
なのでこのお母さんには、こう伝えた。
「お子さんの要求がわかっても、あえて言葉にさせてください。『バナナ』と言われたら、バナナがどうしたの? 食べたいの? バナナ食べたいって言うのよ、といった具合に。
靴がうまく履けずに困っていても、お母さんからは手を出さず、お子さんからのSOSを待ってください。ん!ん!という要求には、あぁ、靴が履けないから手伝って欲しいのね。手伝ってって言ってみて、と。
そして3歳で幼稚園に入ると、先生や友達は言葉で言わないと分かってくれないので、いやでも喋らざるを得なくなります。すると言葉が爆発的に増えますよ」