不登校

私立中学の不登校が少ない理由 〜私立と公立、どっちを選ぶ?〜

僕、考えたこともなかったんだけど。

私立中学って不登校が少ないそうだ。

公立の方が多いんだって。

 

へー、そうなんだ。

 

ってことは、私立の方が優れている?

良い教育の賜物?

 

考えてみる。

 

私立中学の不登校

診察で、こんなことを言われた。

 

母
ウチの子は、私立に行かせようと思います。

私立は不登校が少ないです。

つまり、いじめや落ちこぼれなどが起きにくい環境なのだと思います。

 

へー、そうなんだ。

私立って不登校が少ないんだ。

知らんかった。

 

僕の患者さんでは、私立中の不登校の子も結構いるけどなぁ。

調べてみる。

 

不登校の割合

  • 公立中学 6.3%
  • 私立中学 2.9%

(中学生全体 6.0%)

令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について

 

ホントだ!

確かに、私立は不登校が少ない!

 

 

ちなみに私立小学校も少ないらしい。

不登校の割合

  • 公立小学校 1.7%
  • 私立小学校 0.7%

(小学生全体 1.7%)

 

へー。

やっぱ私立は不登校が少ないんだなぁ。

勉強になった。

 

 

では、公立と私立でなぜ差が出るのか。

考えてみる。

 

お母さんの言う通り、私立の教育が優れているのか?

外来で話を聞く限り、そうとも言い切れないように思うけどなー。

公立も私立も一長一短あるように思うけれど。

【受験】公立 or 私立【どうする?】定期的に聞かれる質問。 発達障害がある。 能力にデコボコがある。 興味に偏りがある。 ...

 

公立ならではの合わなさ、私立ならではの合わなさ、どっちも聞く。

そりゃそうだ。

どんな場所も、人によって合う合わないはあるハズだ。

じゃあなぜ不登校率に大きな差が出るのか、考えてみた。

 

受験して入っている

まず、私立の特徴として、「受験している」という事実がある。

公立中は、受験がない。

私立中は、受験が必要。

ここで不登校率に差が出るんじゃないかと。

 

受験してるってことは、入るまでに努力してるってことだ。

私立中の子は、小学校時代、それぞれ頑張って勉強したハズ。

その上で入った中学。

行かないの、ハードル高い。

 

その観点で言うと、公立は、ノー勉で入れる。

義務教育だもんで、自動的に全員入れる。

特に努力していない。

行かないの、ハードル低い。

 

 

過去の努力がもったいなくて、不登校に踏み切れない子は一定数いるだろう。

あれだけ頑張ったんだからもうちょっとがんばろうと考えてしまいがち。

サンクコストってヤツだ。

 

サンクコスト

すでに支払ってしまい、取り返すことのできない金銭的・時間的・労力的なコストのこと。

トラブルがあっても「これだけ費用、時間、労力をかけて立ち上げたんだから、簡単に引き下がれない。追加でがんばろう」と考えがち。

 

その学校を選んでいる

また、私立中学はその性質上、生徒は絶対にその学校を選択している。

 

私立に進んだ子。

第一希望の子もいるだろう。

希望する学校に落ちて、不本意ながらそこに進学した子もいるだろう。

 

でも、その子にだって公立中の選択肢はあった。

志望校に落ちた子だって、公立とその私立を天秤にかけた。

その上で私立を選んだのだ。

 

だから、絶対に選んでいる。

その学校を、自分(および親)で選択しているのだ。

 

 

かたや公立中。

もちろん、選択してそこの中学に行った子もいる。

でも、選択の余地なしで進学した子も大勢いる。

 

むしろそっちが多数派。

「家庭的に中学受験の選択肢がなくて」って子が大半だろう。

 

公立中は、特に選んでいない子が大半なのだ。

自動的に決まってた。

そこの学区だから。

なんか勝手に振り分けられてた。

 

僕はそうだったし(地元の公立中学出身)、周囲もたいていそうだった。

特に選んでない。

そこ一択だった。

 

 

この差はありそうだ。

人間、自分で選ぶって大事。

自分で選んだ場所なら、トラブルがあっても納得できたりする。

でも特に選んでいないのなら、ブーイングだ。

 

選んでいない人ほど文句を言う。

これは学校に限らず、様々な物事に当てはまる。

 

なので、少なからず自分で選択した私立中の方が、不登校率が低そうだ。

 

でもこれが一番の理由

上記2つの理由から、私立中は不登校が少ないものと考える。

教育内容の良し悪しとは関係なく、

  1. サンクコスト
  2. 納得感

の2点から不登校を踏みとどまる子はいると思う。

 

でも。

一番大きい理由は、きっとコレ。

 

 

転校するから。

 

 

……ねぇ?

考えてみたらそうでしょ?

 

私立中の子が、不登校になりました。

全然学校に行けていません。

出席日数が足りず、内部進学も絶望的です。

 

どうしますか?

 

公立中に転校するわなー。

 

学費高いもん。

続ける意味ないじゃん。

 

 

実際、私立中で不登校になり、公立に転籍する子は多い。

行ってないんだもん。

学費の安い公立にする。

すると当然私立の不登校率は下がるし、公立のそれは上がる。

 

考えてみたら当然じゃね?

 

そしてコレって、教育内容の良し悪しと全く関係がない。

学費とシステムの問題だ。

 

 

そう考えると、私立の中でも不登校率の高い学校って、むしろ良い学校なのかもしれないと思う。

不登校になっても籍を置き続ける子が多いってことだ。

よっぽど魅力があるのだろう。

 

「今は行けていないけど学費を払い続け(籍を置き続け)、将来的にぜひこの学校に戻りたい」と思わせる何かがあるってこと。

よほどステキな学校なんじゃないかと。

 

まとめ

私立中学の不登校率は低い。

でもそれは、イコール私立が優れているってわけではないと思う。

 

仕組み上、どうしても私立の不登校率は低くなりがちだ。

公立の不登校は増えがち。

 

転校するから。

 

 

やっぱり、私立にも公立にも一長一短ある。

全員に最適な学校なんて、存在しない。

「不登校が少ない環境はみんなに合う」ってわけじゃない

その子にはどんな環境が合うか、でしかない。

当然の話だ。

 

不登校率が低い=良い学校

なんて安易な話ではないように思う。

 

 

もちろん、公立が良いわけでもない。

私立の中でも、不登校率が高い方がなんだ、低いとどうだって話でもない。

 

その子には、何が合うか

でしかない。

目先の数字に振り回されず、きちんと見極めていきたい。

 

 

ってことで冒頭のお母さん。

学校説明会なり学校見学に行って、実際に見てくることを僕はお勧めしますヨ。

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