何かしらの「困ったこと」がある子。
友達との喧嘩が絶えないとか、勉強についていけないとか、不登校になったとか、極端に苦手なことがあるとか。
この子たちとどう接するかを考えるのが、僕の仕事。
目の前のこの子には、未来がある。
将来は宇宙飛行士になるかもしれないし、アイドルかもだし、総理大臣かも。
未来のこの子が楽しく笑って暮らせるように、今撒けるタネは何か。
親御さんと一緒に考えるのが僕の仕事。
その中で、僕が一番恐れていること。
心底怖いと思っていることーーー。
正解はないけど、失敗はある
子供の接し方に正解はない。
と、僕は思う。
強いて言うなら、今までその子を仔細に観察してきた親御さんの考えが、最も正解に近いだろう。
少なくとも「みんなにベストフィット!」みたいな方法はない。
「〇〇したらうまくいきます」「これをしたら〇〇が治る!」みたいな、万人に当てはまる方法なんてあるわけがないと思っていて。
だから、まずは親御さんの思うようにやってみればよい。
それが一番勝率が高い。
でも。
正解はないけど、失敗はあると個人的には思っている。
そう、二次障害を起こすこと。
特性はなんとかなるけど、二次障害は厳しい。
僕の患者さんでも、こじれているケースって特性そのものの問題じゃない。
めっちゃ二次障害。
圧倒的に二次障害。
先生に心ない言葉をかけられた経験から学校が怖くなった。
おどおどビクビク振る舞うのでさらに誤解されやすく、傷つく言葉をかけられやすい。
過剰適応で頑張って頑張って頑張った挙句、ある時糸が切れた。
不登校で鬱々として過ごし、何も楽しくない。
学校に適応できず家庭でも居場所がなく、現実から逃げるためゲーム依存に。
依存症の症状でなおさら現実を見られなくなり、さらにゲームに逃げる悪循環。
特性が理解されず叱られ続けた経験から暴力的に。
「どうせオレが悪いんだろ!」と暴言・暴力・反抗を繰り返し、さらに叱られ続ける。
……などなど、いくらでも例示できそうだけど。
要するに「それ持って生まれた特性じゃないよね。後天的な要因でそうなったよね。」ってやつ。
これが厄介。
これが怖い。
二次障害を起こさないことが最優先
ぶっちゃけ、特性自体ってそこまで困らないことが多い。
それよりも困るのは二次障害。
これはめっちゃ困る。
マジで困る。
発達障害当事者の話をテレビや本で見聞きする機会がある。
みんな口を揃えて言う。
「二次障害がしんどい」と。
- 発達特性よりも、鬱がしんどい。
- 強迫性障害で日常生活がままならない。
- 自傷をやめたい、やめられない。
- ひきこもって社会から孤立し不安。
これが怖い。
マジ、これだけは避けたい。
そう思って診療している。
できなくていい、二次障害さえ起きなければ。
できますよ、二次障害さえ起きなければ。
こと左様にマジで怖い。
本当、マジ怖い。(語彙力)
極端な対応になることも
発達特性のある子に、何をやらせ、何をやらせないか、その線引きは非常に難しい。
挑戦する機会は奪わないように、でも二次障害は起こさないように。
試行錯誤しながらやっていくしかないと思っていて。
失敗しても良い。
一度や二度の失敗で二次障害まっしぐら! ってことはないと思うので、探り探りやるしかないと思うのだけど。
完全にケースバイケースなので、お子さんをよく見て、時には専門家の力も借りて、やってみてほしい。
その試行錯誤の末に、極端な対応になることがよくある。
ハタから見ると極端、でもこの子にはこれで合ってる! ってこと。
例えば、ADHDの子の持ち物チェック。
ADHDは忘れ物、なくしものが非常に多い。
計画を立てて物事を進めるのが苦手なので、「今はテレビを見て、○時になったら宿題をやる」とかの段取りができない。
見ている親御さんがイライラし、厳しく叱責しちゃう場合。
僕の提案する対応は、
A案:親が全てやる
B案:子供に全て任せる
のいずれか。
だって、「年齢相応にまずは自力でやらせて、最後に親が忘れ物チェック」が出来ないんだもん。
待てど暮らせど自分からはやらないんだもん。
じゃあ、「子供の時分は全部親がやっちゃう!」でもいいと思う。
もしくは「全て自己責任で、親はノータッチ」でも良い。
極端でしょ?
でも、中庸な方法を取ろうとしてうまくいかず、親子関係が崩れるよりずっと良い。
A案:親がカンペキに準備して笑って過ごす
B案:忘れ物があっても気にせず笑って過ごす
この方が、ずっとずっと良いと思う。
ペリーに負けるな!
気にしないでほしい。
だって、この子にはこの子に合うやり方がある。
目標は一つ。
『二次障害を起こさない』。
そのためには、「変な対応」になることもままある。
大丈夫、それでいい。
人とは違う子どもを育てるなら、
人とは違う親にならなければなりません
(エレイン・N・アーロン)
※エイレン・N・アーロン:HSCの概念を提唱したエラい先生
普通じゃなくていい。
普通にこだわって二次障害を起こすくらいなら、『ヘンな子育て』で上等。
この子の持っている可能性を潰さないこと。
未来の幸せのタネを撒くこと。
親御さんなり僕たちなり、周囲の大人にできることって、それだけだ。
そう、僕は思っている。
花を咲かせるのは本人の仕事だ。