診察室で聞く。
学校は楽しい?
おっ、いいねー。
何が楽しい?
好きな教科は?
ん?
じゃあ、勉強じゃなくて友達?
何して遊ぶのが好き?
(学校楽しいって言ったやん……。)
僕、撃沈。
好きなゲームの話は、あんなに饒舌にしてくれるのに。
診察で、話題を振る。
こちらが黙っていても自分から喋ってくれる患児は少ない。
だからこちらから話題を振り、話を引き出し、困りごとを見定めるのがプロの技なのだが。
って。
書いてて、ヒドい嘘だと思った。
僕コミュ障だし空気読めないし、人の話を上手に聞くスキルが皆無なんだけども。
とにかく、喋ってくれなきゃ始まんねぇ! ってんで、話題を振ってみる。
まず、当たり障りのない学校の話から。
そしたら。
冒頭の感じ。
もうね。
「無」だね。
返事、なにもないの。
もうさ。
あれだよね。
話しかけたの、ただのしかばねだったかな? って。
それくらい返事がない。
国語と算数だと、どっちが好き?
どっちも嫌いなら、それでもいいし。
図工や体育かな?
うぉい!!!
学校好きって言ったじゃねーかっ。
どこをどんなふうに好きか、ちっとも伝わってこないよ!
話やすい話題(学校)から話させて、気まずい進路や家族の話につなげていく僕の作戦が台無しだよ。
こういうこと、ある。
本人が、困り事があると言った。
言ったよね?
言ったのに、内容を聞くと「……」だ。
内容がないよう。
内容がないよう。 (よしっ)
これ。
困ります。
話してくれないのが一番困る。
言ってくれなきゃわからない。
気持ちを察する?
できるわけねーじゃん。
僕ぞ?
程度にもよるけど、このタイプ、僕はASDを疑う。
返事がない。
自分が行方不明。
↑この類の質問が、とにかく苦手。
もう、「無」。
どう答えていいかわからない。
だって「無」だから。
ないものは、膨らますこともできない。
ゼロになにを掛けてもゼロってもんで。
以前書いたんだけど。
一般的な人の視野が、こうだとする。↓
自分(ウォーリー)の周りはよく見え、遠ざかるほど見えにくくなる。
だとすると、ASDはこう。↓
自他境界の弱さゆえ、「自分」と「それ以外」の区別がなく、全部くっきり見えすぎる。
こうなると、自分が行方不明。
リアルウォーリーを探せ状態。
なんだけど、でもこんなにも鮮明に世界が見えると、疲れてしまう。
情報量が多過ぎて、脳が処理しきれない。
なので、こう。↓
周囲の情報を消す。
『過敏』と『鈍麻』って、実は同じもので。
過敏は、行きすぎると麻痺する。
多すぎる情報量は、感覚が麻痺して「見えなく」なる。
なので、ASDは周囲が見えづらくなる。
見えているのに、見えない。
という、僕の仮説。
ーーーーーここまでおさらいーーーーー
で、こっから新しい話。
上の図の、自分しか見えない状態。
ASDでも、ここまで視野が狭いと、ほとんどコミュニケーションが取れないと思われる。
自分以外が「無」な状態だ。↓
でも、実際僕のところにくるASDは、ここまでじゃない人が多くて。
まだらに、部分部分はよく見えている。
という仮説。
↓こんな感じ。
なので、見える部分はやたら見えている。
上図だと、
は、よく見える。
ここのみ、ここばっかり、よく見えている。
この人に、見えていない部分の話を振る。
シャベルが落ちていたのはどこでしょう。
踏まれている人がいたよね。
このようになると考えられる。
そう。
コレです。
冒頭の、聞いても「無」な子。
この状態の子。
こういうことだと思われる。
ちなみに、聞いても答えない子には、ASDの他にHSCの可能性も考えられる。
こっちは「無」じゃなくて、むしろ情報が多すぎるんだけど、だからこそ答えられない。
この状態。↓
見え過ぎて、逆にどう答えるのが的確か考えあぐねている状態。
情報が多過ぎて、うまくまとめられないでいる。
なんだけど、この両者は客観的に判別しづらい。
「考え過ぎて答えられない」のか、はたまた「無」なのか。
どっちにしろ、答えてくれなければ、こちらは判別のしようがない。
聞いても答えない子。
オープンクエスチョンはともかく、答えやすいようにクローズドクエスチョンにしたのに、それでも答えない。
YesともNoとも、そのどちらでもないとも、なーんにも言わない。
そこは「ない」可能性がある。
あと何が不満(不安)なの。
やるの? やらないの?
わかってる?
とても大事なことを尋ねる。
なのに、うんともすんとも答えない。
「ない」可能性はありませんか?
ないなら、答えられない。
そりゃそうだ。
ないならないで、「ない」と言って欲しいけど。
でも、「ない」という自覚も「ない」。
だって「ない」んだもん。
ないものを相対評価とか、できっこない。
こんな子には、「ある」部分にフォーカスしてしゃべってもらう他ないんだけど。
あ、「ある」部分については、非常に饒舌なことが多いです。
好きな電車とか、アニメとか、ビルの構造とか、戦国武将とかね。
この辺の興味の偏り、まさにASDですね。
「ある」部分から少しずつ、「ない」けど「社会的に必要」な事柄にフォーカスさせていくしかないんだけど。
でも。
必要な内容ほど、喋ってくれないよう。 (よしっ)
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うわあぁー。ウォーリーの絵を使った説明がわかりやすかったです。ASDの見え方がよくわかりました!
P先生、天才ですね。いやほんとよくわかりました。
うちの中2息子はきっと最後の絵のように全部見えまくって情報過多なんだろうなと思いました。そりゃ疲れますよね。
なるほど、ないんですね。
やっと腑に落ちました。
一つの話題に固執していたかと思ったら、別の話題を持ち出すので視野が広いと息子のことを思ってたんですが、他の話題のことはサッパリなことにあらためて気付きました。
ないものはないんですね…。
雑談していたら社会的に視野が広がると思ってたんですが、違うんですね。
ないものはない。
しかも直接必要じゃないところが広がっていきます。
もっと前から息子に合った子育てしたかったです。
正にうちの娘っこです!ドンピシャです!
ちなみに病名としては、やっぱりASDと付いてます。場面(選択)緘黙なんですけど、たぶんしゃべれないのではなくて、先生が仰るように情報量が多過ぎて返事が出来ないだけな気がします。
我が家の中3男子が、よくこうなりました。今もなるかもしれません。でも、面白いもので、最近は
「俺にはそこまではわからない」
「みんなが思っている以上に俺は何もわからない」
「俺は自分のこと(気持ち)がわからない」
と言うようになりました。そう、はっきりと言われてしまうと、
「お、おぅ」
「わからないんだね。じゃぁわかりそうなところから行こうか」
となります。が、そうは言っても
「なんでわからないんだよ!自分のことでしょ!」
ってなりますけど(汗)
さらに興味深いのは、自分の気持ちは分からないのに、周りで起こっていることの状況判断は的確で、周囲に出すアドバイスは絶妙だったりします。そんな姿を見ると「自分のこともわかる」と母が勘違いし、再び「なんで自分のことが分からないのーーー」と押し問答になります。
自分のことはわからないけど、周囲の状況判断は出来るっていうこと、あるんですね。未だに慣れません。
不注意型のADHDと診断された小学4年生の子供がいます。
前回のテストの見直しをしないこと、今回の問い掛けに無になること、まさにコレ!という感じです。
テストはそれなりに点数は取れています。
ほぼケアレスミスか、文章問題を適当に読んで回答している感じ。
文字は雑で読めないぐらい。(筆圧が弱いのもあるかも)
宿題でそれらのミスをやり直しさせるのに毎日苦労して、一時期は親子関係が悪化。
今は担任とも相談して、なんとか取り組んでいます。
困り事ほど「なんで?」の問いに答えが返ってきません。
理解したいので聞き出したいのですが、「なんで?」という問いかけに答えるのは難しいようです。
何でもいいので答えがあれば、コミュニケーションも取りやすくなると思うのですが…
わかりみしかありません。
息子がそんな感じでうんともすんとも言わない子でした。
高校生になってやっとこだわりの強さゆえか、口で希望を言うようになりました。
そうなったらそうなったで彼の考え方がなかなか親とは真逆すぎる考え方で理解するのが大変です。