親子関係

先に子どもにわがままを

やっぱり、子どもが先だ。

大人が後。

これが大原則。

 

子どものワガママ、屁理屈

宿題をするように言ったら、

 

女の子
女の子
今やろうと思ったのに、やる気がなくなった。

 

 

生活態度を注意したら、

 

男の子
男の子
お母さんだって夜更かししてるときあるじゃん。

 

 

大人目線だと、「そういうことじゃねーよ」「今その話してねーよ」「屁理屈言うな」とツッコミたくなる事案。

ありますよね。

 

悪いのは明らかに子どもなのに、棚に上げてブーブー。

聞いている大人はイライラ。

あるじゃん?

 

僕も日々、こんな相談ともグチともつかない話を聞いているんだけど。

 

 

これに対する僕のスタンスは一貫している。

 

とにかく聞いたげて

 

そう。

むちゃくちゃなのは分かる。

理不尽なのもよく分かる。

その上で、とにかく聞いてあげて欲しい。

 

聞き流していいから。

聞いているフリでいいから。

 

これが、僕からのアドバイス。

 

こんな子がいました。

問題行動の絶えない子。

暴言・暴力・物を壊す。

しかも、めっちゃ自分勝手で理不尽な理由。

 

怒り出したら手が付けられない。

烈火の如く怒り狂う。

 

 

ほとほと手を焼いたお母さんが、相談に来た。

 

母
何度言っても聞きません。

とにかく暴言や暴力はやめてって、口酸っぱく言ってるのに。

 

 

しかもさ。

キレる理由が、自分の散らかしたものを片付けるよう言われたとか、弟が楽しく遊んでいる声が気に入らないとか。

超・絶・理・不・尽。

 

先日は、家のお金を盗んでゲーセンに行ったって。

ちょ、それはアカンわ。

 

 

両親大激怒、本人盛大に逆切れの、まさに地獄絵図。

上を下への大騒ぎ。

通報されなかったのが奇跡。

 

母
ここだけの話、あの子がいなければよかったと思います。

あの子さえいなければ、家族みんな平和に暮らせるのに。

 

おぅ……。

辛辣な話ではあるが、分かる。

理解できる内容だ。

 

 

この子の考えていることがわからない、さながら宇宙人のようだとご両親。

話が通じないし、言動が理解できないと。

 

次の受診時に、代わりに僕が聞いてみる。

 

なぜそれをやったの?

今振り返ってみて、どうすれば良かったと思う?

 

責めるニュアンスを出さないように、言葉を選んで慎重に。

あ、大人の言う「なんで」は叱責の意味を持つことが多い。

子どもは警戒する。

そうじゃなくて、純粋に理由を知りたいというニュアンスで尋ねてみる。

 

すると、彼は答えてくれた。

素直ないい子なのよ。

問題行動のある子って、実際会ってみると非常に素直ないい子が多い。

 

男の子
男の子
ゲームしたいけどお金がないから盗った。

 

以上。

盗んだ理由は、それ以上でもそれ以下でもないと。

親がムカつくから困らせてやろうとか、そういった意図は一切ないと。

 

 

男の子
男の子
そりゃ盗っちゃダメなのは分かってるけどさ。

自分ごとと思えないんだよね。

「盗っちゃダメ」って知識はあるけど、実感はないというか。

 

家のお金を盗むことに罪悪感はない、と。

またやると思う、と。

 

 

さて。

この子の心理、どう読み解きましょうか。

 

自分が行方不明

「サイコパスですかっ⁉︎」と、親御さん。

共感能力の欠如。

人の気持ちがわからない。

 

もちろんその可能性もあるけど、僕は違うと思う。

この子には、サイコパス的な自他境界の強さはない。

むしろ、自他境界が非常に脆く、危なっかしく見える。

 

この子はすでにASD+ADHDと診断されている。

これまでのエピソードや本人の性格と併せて、僕はこう思う。

 

①衝動性

②思考の固さ

 

 

まず、お金を盗んだのは衝動性だろう。

ゲームをしたいけど、お金がない。

だから盗んだ。

以上。

 

ADHD特性からくる、衝動性からの行動。

非常にシンプル。

 

 

そして、「盗んじゃいけないんだけど自分ごとじゃない」というのは、きっと思考の固さだ。

この子の両親はしつけに厳しく、幼少期から社会のルールを厳しく教えてきた。

 

  • 人を叩いてはいけない
  • 遅刻はいけない
  • 勉強するべき
  • 忘れ物はしない

 

こんなのが、ルールとしてはガッチリ入っていた。

この子は自他境界が弱く、言われたことがそのまま入ってきがち。

 

でも、感覚が伴っていなかった。

「そういうもん」という知識だけが入っていたというか。

なぜダメか本質は理解していないが、「とにかくダメ」と。

 

理解が表面的で、融通や応用が効かない。

そう、ASD特性ですね。

 

 

毎回厳しく叱られる。

「これが正解」というルールが押し付けられる。

すると、どこか他人事のような理解になるのは想像できる。

 

よくわからんけど絶対ダメ、と。

それ以上でも、以下でもない、と。

 

 

だから今、理解はしていても、実感が伴わない。

「分かっちゃいるけど他人事」だ。

自分ごととしてどう感じ、どう解釈するかの視点が、すっぽり抜けている。

ASDの特徴、「自分が行方不明」だ。

【ASDの】自分が行方不明【困るところ】ASDは、人と自分の境界が薄い。 だから人の気持ちが分からないし、空気が読めない。 かと思ったら、周囲に共鳴して自分...

 

子どもが先!

話を聞いてあげて欲しかった。

幼少期から、この子の理不尽な主張や屁理屈を。

 

幼さ故の、短絡的で浅い思考。

聞くに耐えないのは分かる。

 

でも、これをぶつけることで、子どもは本質を掴んでいく。

 

まず最初に、自分の思いをぶつける必要がある。

出し切ってから、人の話を聞いたり、客観視して総合的に考える。

いつだってこの順だ。

 

 

子どもは、主観の塊だ。

いきなり客観的な理解なんて、できるわけがない。

主観を外(他の人や社会)にぶつけることで、客観的な視点を得ていく。

 

経験が必要なのだ。

すっ飛ばして本質を掴むことはできない。

 

 

だから、「子どもが先」だ。

子どものワガママや屁理屈が先。

 

親として、大人として、伝えたいしつけやルールがあると思う。

子どもが間違った行動をしているなら、是正したいと考えるだろう。

 

だけど、子どもが先。

 

すこぶる理不尽な、子どもの主張が先だ。

大人は、子どもの屁理屈のあとだ。

 

 

いつもこの順番。

いつだってこの順番。

 

お説教をぐっとこらえて、まず聞いてやってほしい。

聞き流していいから。

とにかく吐き出させないと、正論は入らない。

入っても、実感の伴わない表面的な理解にとどまるように、この子を見ていて思った。

 

 

理不尽なのは分かっている。

ムカつくのも分かる。

 

でも、やっぱり子どもが先なのだ。

本質を理解させたいなら、いや本質を理解するためには、無茶苦茶な主観が先なのだ。

POSTED COMMENT

  1. あさみ より:

    先生の、エピソードや性格からこう思うっていうところが本当にすごいと思いました。
    診断をつけて薬を出すだけでなく、先生は本当にこの子のことを考えて分析して。
    親でもなかなかできなくて、先生のブログで当てはまりそうなところを参考にさせていただいています。

    衝動性とか思考の固さとか、分かっていてもなかなか自分でコントロールできるものじゃないですよね。
    たくさん失敗したり、ものすごく時間はかかるかもしれませんが、自分の色んなことに気づいたり考えたりできるようになるんじゃないかなって思います。

  2. ようこババ より:

    いつも拝見させて頂いております。
    現在ASD傾向で不登校2年9ヶ月小5男子、同居の孫。

    「とにかく雑談が大事」というp先生の言葉を信じて、常に暴言癇癪に耐え、話を聞いてきました。1年ほど前から癇癪が徐々に無くなり、先日いきなりこんな話をしてきました。

    「自分がゲームがうまくいかないからって、ババを呼んでゲームを見せてグチって、、

    自分は、なってなかったわ。
    もうやめるわ。
    ババに悪かった。

    前から気づいていたんだけど、気づかんふりしてた。
    でも、もうやめる。」

    驚きでした。
    こんなことを考えられるようになってきたんだ。

    2年前はこちらがいくら正論を言っても、全く入っていかなかった孫が、自分からこんな考えが出来るようになるなんて、、

    実際は次の日
    「前言撤回するわ、やっぱり無理」と笑いながら言うので、
    「そりゃそうじゃろ。いいよ。グチりんさい。」と。

    でも今までの延々と続く愚痴は無くなり、ごく短かったり、機嫌のいい何気ない会話が圧倒的に多くなりました。

    それだけでなく、ゲームとユーチューブだけの毎日から、勉強に対しても自分からやってみようとしたり、前向きな言動が見られるようになりました。

    まだまだ不登校は続きそうですが、癇癪暴言が減っただけでも、こちらのストレスは全く違います。

    p先生を信じてやってきて本当によかった。
    いつも子どもの味方で、親にも優しくて、p先生に沢山救われてきました。

    本当にありがとうございました。
    これからもよろしくお願いいたします。

  3. 晴れたらいいね より:

    とても共感しながら読みました。
    6年近く先生のブログを読ませてもらっています。

    我が子達はASD、不登校になりたての高学年の長女、この度のブログのような園児の長男を抱え、ガチガチに「こうせねば、ああせねば!」「あれはダメこれはダメ」と親の思いに沿わせようと躍起になっていた時期に先生のブログに出会いました。

    以前にも何度も「あなたはそう思うのね」というフレーズが出てきましたよ…ね?
    それを胸に、特に長男への対応は、理不尽でも100%衝動的にやったろ?ってわかっていても、まず彼の言い分を聞くことを実践すると、怒ってばかりの頃は話そうとすると大荒れ、聞く耳なんてもつものか!状態だったのが、荒れそうになりかけても
    「どうした?」と聞くとポツリポツリと話せるようになってきています。

    勿論、年齢が上がり語彙が増えた、感情を自分で抑えられるようなった、彼が成長してくれたおかげ。

    でも、その根っこには先生のブログの言葉がある、そう思っています。

    今彼は高学年、中学生高校生になったらどう変わるかはわかりませんが、話を聞く姿勢は忘れずにいようと思っています、今は。

    今も,娘や息子と笑いながら読んで勉強させてもらっています。

  4. たこやき より:

    はじめてコメントさせていただきます。「知識はあるけど、実感がない」納得出来た気がします。

    我が子は一見しっかりしている(ように見える)何がいけなくて、どうするのがよいか言えるんです。ただ自分の行動には当てはめられない。地獄絵図はなんども有り通報も何度もありました。
    私は当時、あの理不尽な理屈に寄り添う余裕も思考ももっていませんでした。
    22才になり大人になってますが、まだ自分が行方不明のまま危なっかしく衝動的に動き攻撃的な発言をして社会からこぼれそうです。

    成人して社会的には自己決定できるようになった危なっかしい子へどうサポートするか。
    事案があったらぜひ聞いてみたいと思っています。

  5. さかん より:

    子供が私を執拗に責めてくる出来事があり
    (実にくだらない食べ物を巡る問題)
    こちらの堪忍袋の緒が切れ、近くにあったキッチンタイマーを子供の頭に投げつけてしまった。
    子供の主張を優先させるべきと頭では理解していても理性が追いつかない。私は虐待母です。

  6. ゆきあき より:

    先生、今回のお話で私の迷いがなくなりそうです。
    まずは、吐き出さないと正論は入らない。
    息子の愚痴タイムが始まったら、忘れず頭に入れて話を聞こうと思います。

  7. ut より:

    P先生

    こんにちは。
    本課題、私にとっては実行、激ムズです。
    が、是非取り組んでみたいです!

    ちなみに、どの辺で、子供の話を聞ききれた!と感じれるのでしょうか。

    また、機会があれば教えて下さい。

    いつも、為になる話をありがとうございます。
    \(^-^)/

  8. こま より:

    私も同じくです、

    返す返すも…P先生のブログに書かれていること、もっともっともーっと早くに知っていたらなぁと。。うちは思春期の子供達ですが、まだまだ未熟、向き合う時にぜひとも参考にします!いつもありがとうございます

  9. なつ より:

    10年前にこれを知ってたらなぁ…
    今からでも遅くないと思いたい。

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