心理学

子どもの引きこもりと認知のゆがみ

コメントをいただいた。

 

P先生は小児科医ということで、中高生よりももっと低年齢の子を診る方が多いかもしれませんが、中高生の引きこもりについてまたよければ見解を伺いたいです。

引きこもってしまってから1番どうすればいいのか。初めは快適に引きこもらせてあげた方がいいかと思って見守ってきましたが年単位になってくるとやはり親も焦ります。

あ、決して先生が小児科医なのに高校生などの大人年齢に近い子のこと聞いて、ウケを狙ってるわけではありません笑笑

 

ありがとうございます。

 

これねー。

ウケを狙ってるわけじゃない、切実な悩みなのは分かるけど。

 

正直わからんのですよ。

なぜなら、引きこもりだから。

 

病院に来ねーから。

実際来てくれないことには、話も聞けないし、わかりようがない。

ってことで、分からんのです。(笑)

 

 

でもね。

本人が来なくても、親御さんの話を聞く機会は結構あって。

基本引きこもりだけど、病院には来てくれる子もいて。

そんな情報から、引きこもりの心理について考察することはよくある。

 

なので、あくまで考察、推察です。

間違っている可能性はめっちゃあるので、違ったらそっ閉じしてください。

 

認知のゆがみ

引きこもりの心理を考えるにあたり、絶対的に

認知のゆがみ

はあると思うんだよ。

 

そう、この話、引きこもりについての話がしたくて、前回あえて認知のゆがみについて言及した。

ここにつながるわけ。

認知のゆがみ今まであえて書かなかったけど、めっちゃ大事な視点。 認知のゆがみ これについて書いてみようと思う。 認知の...

 

ヒトは基本的に、ヒトを求める。

 

人間は社会生活を営む生物である。

なので、これが前提。

これは良いですよね。

 

 

で。

引きこもりはこの大原則に反しているわけだ。

人を拒絶している。

 

ここに至るには、

そもそもヒトを求めない

求めるけど補って余りある障壁が存在する

のどちらかであるはずで。

ヒトを求めないのも、超越する障壁があるのも、いずれにしても「認知のゆがみ」だよなーと思う。

 

引きこもりの心理には、必ず「認知のゆがみ」が横たわる。

僕はそう予想する。

 

ゆがみの成り立ち

そもそもなぜ認知がゆがむかというと。

 

  1. 持って生まれた性質
  2. 後天的な経験

の二つが関わるだろう。

 

もともと不安が強いとか発達障害とかめちゃ頑固とか、認知がゆがみやすい土壌があって。

ドジョウがあって。

そこに、環境要因やなんかのトラブルとかが関与して、『ゆがみ』が形成される。

 

 

どちらがどの程度影響しているかは、人によるだろう。

ここをじっくり見極めることが重要。

 

はて、このヘンな矢印(行動)の出どころである玉は、果たしてどのように形成され、どんな形や色をしているのか。

↑ココをじっくり見てほしいのだ。

 

認知がゆがむ、矢印がゆがむ原因は、

  1. 持って生まれた性質
  2. 後天的な経験

の二つ。

 

その人、どっちがどの程度?

 

低年齢のトラブル

小児科に来る患者さんとか、質問にあったような低年齢で引きこもりの人とか。

  1. 持って生まれた性質

の関与が大きいと推測される。

 

基本、引きこもりって大部分が社会人経験のある人なんだって。

学校を出て、社会に出て、そのあと挫折した人。

学生時代から不登校でそのまま引きこもりに、って人は少ない。らしい。

 

すると、子どものうちから引きこもった人は、社会でのトラブルや環境要因の関与が、比較的少ないと予想される。

トラブる前に引きこもったわけだから。

生まれ持った性質によるところが大きいだろう。

 

経験より、土壌。

ドジョウ。

 

 

実際他の疾患でも、小児患者は生まれ持った特性の関与が大きいように思う。

小児には、パーソナリティ障害やトラウマ的な人は少なく、発達障害や強すぎる不安的な人が多い。

 

精神科(成人)は生育歴や環境、トラウマなんかを重要視すると思うけど。

小児は、やっぱり生まれつきの要素が大きいのよ。

だから僕は、発達障害や不安の強さ(いずれも生まれつき)に言及することが多い。

 

 

そう考えると、中高生の引きこもりは

本人要素

が強いんじゃないかと。

 

生まれ持った性質や特性から認知がゆがみ、引きこもっていると考えるのが妥当と思われる。

 

昔の引きこもり

僕ね。

引きこもりを無理やり追い出したらどうなるか、考えることがあるんだ。

 

もちろん絶対にやらないけどね!

空想するだけね。

 

家族は引っ越し家に一人、水道もガスも止まり、食糧もじきに尽きる。

こうなったら引きこもりは動くのか?

仕事を始め、または生活保護を申請し、生活を立て直すのか?

と。

 

もちろん、そうする人もいると思う。

必要に駆られて社会復帰する人もいるだろう。

 

でも、そのまま動けずに亡くなってしまう人も、結構いるんじゃないかって。

「動けない」ってそれくらい強い力だと僕は予想する。(個人的な見解です)

 

 

でね。

昔を想像してみてください。

昔々、その日生きるか死ぬかの時代には、きっと引きこもりはいなかった。

狩りに出ないと死んじゃうような時代には、引きこもりは存在しないと予想する。

引きこもりようがない。

 

全員が働かなくてもなんとかなる現代だからこそ、引きこもりが成立するのだ。

いい時代といえば、今はいい時代だ。

 

 

つまり、昔は引きこもりがいなかった理由って、

出ざるを得なかったから

だと思うんだよねー。

 

外に出ないといけない。

ご飯ない。

幼少期からそんな環境。

じゃあ、認知の歪んだ人だって、仕方なく外に出た。

 

昔から、認知のゆがんだ人、独特な『玉』の人、発達に特性を持つ人は一定数いたわけで。

でも、出ないという選択肢がなかった。

 

 

するとどうでしょう。

経験値が増える

のです。

 

ヒトは、社会生活を営む生き物だ。

外に出れば必然的に人と関わる。

自動的に、経験が増える。

経験が増えるってつまり、歪んだ認知に気づき、修正する機会を得るってことだ。

 

そう。

認知のゆがみの修正には、経験を要する。

 

自分はこう思うけど、案外そうじゃないらしい

 

という感覚は、経験から手に入る。

正論を教え込むより、実際に経験する方が、ずっと学習効率が良い。

百聞は一見に如かずだ。

 

安全な範囲で経験を積む

認知のゆがみを直す、というと語弊があるが、社会に適応させるためには、圧倒的に経験だと思う。

知識で知っていても納得できない。

実際やってみて初めて納得できる。

 

もちろん今の時代は、

 

昔の人
昔の人
マンモスが来たから狩りじゃー! 

 

なんてできない。

強制的に経験させることはできない。

すでに引きこもっている人には、その人に合った規模の社会経験をしてもらう他ないのだけど。

 

 

例えば上記のように、基本引きこもりだけど病院には来てくれる人がいる。

最初は渋っていた通院も、なんか嫌なことされたり言われたり聞かれたりする場所じゃないとわかると、続けて来てくれたりする。

 

そのように、安全な範囲を増やす。

散歩、買い物、適応指導教室、習い事、地域の集まり……などなど、安全地帯(ワインレッド)を徐々に増やしていく。

そうやって、経験を増やす。

 

↑ココ。

これしかない。

 

 

どんなふうに認知がゆがみ、どこが壁なのかは、マジで人による。

だから丁寧に見極めつつ。

 

実際、引きこもりとは言っても、必要な外出はできる人が多いらしい。

歯医者は行くとか。

案外、行ける場所があったりするみたいだ。

 

まったく外出できない人なら、家庭でのコミュニケーションを大事にする。

家庭って最小単位の社会だからね。

家庭の中で、安心安全な居場所を構築する。

そうやって、可能な範囲で少しずつ経験を増やしていくしかないのだろうなーと。

 

まとめ

 

引きこもりは、多分認知がゆがんでいる。

低年齢だと、経験より生まれ持った特性からのゆがみが大きそう。

安全な範囲で経験を積む。

 

そんな感じです。

 

認知がゆがんでいると、どんな正論も入らない。

まず特有のゆがんだ世界を表出させ(魔法の言葉:あなたはそう思うんだね)、注意のお部屋を開けて、経験から少しずつ矢印を調整していく。

※玉は変えなくてよいです。あくまで矢印の調整です。

ということです。

 

 

ここから余談だけど。

 

認知って、想像よりずっとゆがんでいてですね。

同じものを見ているんだからそんなことないでしょって思うじゃん?

マジで、全然ゆがんでて。

 

例えば、僕の青年期の世界観はこうだ。↓

僕、腐った死体。

駆逐されるだけの生き物。

他の人たちはみんな、崇高な使命を持った勇者。

 

「ごめんなさいごめんなさい生まれてきてすみません」

 

そう唱え続けていた。

この圧倒的に絶望な世界で、どうサバイブするか。

世界の隅の隅でいいからどうやって存在を許可してもらうかを必死で考えていた。

マジ独り相撲。

 

今思うと笑っちゃうけど。

世界って実際こう↓なのにね。

優しいのに。

 

前提条件がまるっきり間違っていたわけだ。

じゃあ、いくらもあがいても、一向に事態は好転しない。

そもそもスタートから全部間違ってるんだから。

 

でも僕の腐った目(腐った死体だもんで)には、世界はこう見えていた。

そして怖いのは、このおかしさに自分では一切気づかないことだ。

※僕の場合、先天的な特性に加え、後天的な経験もあってここまで歪んだ。

 

これが、認知のゆがみってやつです。

非常に怖いです。

POSTED COMMENT

  1. 匿名 より:

    「世界は優しい、正解は楽しい」
    じゃなくて
    「世界は優しい、世界は楽しい」
    でした。失礼しました。

  2. 匿名 より:

    P先生、引きこもりに関して、認知の歪みに関して書いて下さり、ありがとうございます。
    私自身(母)は、15歳の時に太宰治の著書の中で「生まれてすみません」がとてもスッキリ心に浸透したので、特性や凸凹のある人間だと思います。でも、経験によって生かされ生きていると感じます。

    そして・・・私の息子17歳、2年以上も引きこもりです。どこにも所属してません。
    経験が圧倒的に不足しているというところが怖いです。
    家族とのコミュニケーションも、自信がありません。
    家族内での会話はありますが、私がイライラしたり焦ったりという側面も持っているのでそれは本人もバシバシ伝わってると思います。
    ただ、外には出れませんが、定期的な第三者さんとの関り昨年から持てて、続けています。心理士さんとのZOOM面談(雑談)、心療内科の往診、ひきこもり経験者とのZOOM面談(雑談)・・・見た目には全く変化や進展がないのですが、焦ったらいけないですね。
    世界は優しい、正解は楽しい、そう感じてくれる日がくるまで、まずは母親の私自身が優しい気持ちにならないといけないな~・・と、反省しつつ、拝読しました。

  3. 時々みてます より:

    「認知のゆがみ」って流行り言葉ですか。
    「発達障がい」も30年前は聞かなかった言葉です。

    なんでこんなマイナスな言葉を使うんでしょうね。
    たかが言葉ですが、その影響力はすごいものがあります。

    認知の「ゆがみ」っていうけど、ひとりひとりが感じることに正解なんてないはずですよね。

    先生に言ってるわけではないけど、この業界のかたたちのセンスのないなんの責任ももたないようなネーミングづけが不安を煽ってる気がしてなりません。もしかしたらそれ狙いの商法か?

    どうにかならないのか!と切に思います。

  4. ももちゃん より:

    P先生、いつも参考になるお話、ありがとうございます。うちの子供も、高2から不登校のASDです。認知歪みまくりです。小学生の時に、いつも揚げ足とられて、からかわれ、学校嫌いになりつつも、学校にはいっていました。私も学校は行かないといけないと休ませなかったです。絶対失敗しないように常に完璧にしないとと、ヘトヘトになりながらの登校を続け、高校で更に勉強のストレス、人間関係につまづき、うつ病になりました。( ノД`)… 精神科を受診してはじめて、発達障害と言われました。
    もっと早くP先生のブログ、知りたかったです。うつ病になるくらいなら、学校なんていかなくても良かったです。本人が卒業したいとかなり無理して登校していて、私も登校することを応援してしまいました。
    認知が歪んでいるので、本人にとっては世界は怖いところなんですね。私の思う学校の嫌さとレベルが違ってたんですね。
    学校を休んで、うつ病の薬を飲んでもなかなか良くならないため、大学病院で「認知行動療法」を受けています。誰でも魔法のように良くなるわけではないし、向き不向きがあるらしいのですが、認知の歪みを修正する心理療法です。時間とお金かかりますし、できるところが少ないですが、P先生のブログは情報を求めている方が多いので、コメントさせていただきました。
    ほんとに親もしんどいですね(ToT)

  5. uni より:

    余談、泣けました。

    私も若い頃は、自分の周りは私を攻撃してくるもの、自分は価値のないもの、友人に対しても私になんて誘われても嬉しくないだろう、なんて歪んでました。
    40代半ばになって、世界は優しいって感じることが増えてきました。

    我が子は発達障害を抱えていますが、子供には、世界は優しいんだ、周りはあなたの味方だよって感じてほしいです。

    いつも心に響くお話、ありがとうございます。

  6. まぼ より:

    P先生こんにちは。認知のゆがみと引きこもり。とても求めていた内容でした。ありがとうございます。

    中学生の息子は不登校3年で、ほぼ引きこもりです。南海トラフ地震、ウクライナ戦争や気候変動など、彼にとって世の中は怖いことばかりです。家は安心安全なんだそうです。

    認知が歪んできたことについて自覚があるらしく、「前は平気だったのに、色々だめになった‥」と言います。
    経験を増やして世界は怖くないんだと思ってほしいけれど、外に出ないのでなかなか経験が増えないのですが、根気よくフォローしていきたいです。

    ところで、「くさったしたい」って物哀しいけれどなんかかわいいので、好きなキャラでした。

  7. Hibachi より:

    いつも為になるお話しをありがとうございます。
    娘が不登校になってから毎回先生のブログを参考にさせていただいてます。
    娘も認知の歪みがありました。コンビニにも通院もとにかく人の目が怖く移動はタクシーが基本でした。おっしゃる通り、先ずは少しずつ外出できる先を増やしていきました。
    ベランダ、夜の散歩、コンビニ、本屋、病院、適応指導教室、学校の別室、本人は相当な勇気が必要だったと思います。
    学校、敵室以外はいつも私が同伴でした。
    そんな娘も高校生となりなんとか1年がすぎ、4月には二年生となります。
    初めは1人で電車に乗る事さえ心配でした。
    当然、認知の歪みはすぐに変わらず、色々ありました。動き出してはまた沈んでの繰り返しで、相当苦労しました。思い起こしてもこの1年間は今までで1番きつかったです。
    やっと娘も学校生活に慣れてはきました。
    が、未だ綱渡り感は拭えません。
    早く安全地帯で悲しみにさよならしたいものです。
    長々と失礼しました。先生のブログが書籍化される事を心待ちにしています。

  8. ふう より:

    経験から少しずつ矢印を調整していく…

    「少しずつ…」
    ついつい欲が出てしまう私にぴったりなお言葉を
    ありがとうございます。

    不登校歴1年半の娘(中2)
    昨年の春は登校にチャレンジして3か月で息切れ。
    秋からフリースペースと週1回の登校を自分で始めましたが…
    この3月は「行くよ」と言いながらも基本お家の日々。

    様々な経験で娘は確かに変わってきているけど、ここへきてのストップ?足踏み?
    「楽しい」「やりたい」「行くよ」
    って言うのに、実際は行かないのはなんで?
    本人が1番もどかしいんだろうなって、
    頭では分かるけれど、母はつい「そのまま進んで」と
    想像してしまいます。

    でも…止まっているように見えても
    少しずつ矢印を調整して
    きっとまた一歩を出しますね。
    自分のタイミングで歩き出すんですね。

    ちょっと気持ちが落ち着きました。
    p先生、いつもありがとうございます

  9. より:

    P先生の青年期の世界観、最初見た目で笑って「ごめんなさいごめんなさい生まれてきてすみません」でなんかギュッてなりました。
    私も娘が不登校になってから自分を振り返ると(生まれた時からちゃんと人間なのに)ずっと必死に『普通』を把握してはみ出さないようにして人間のふりして生きちゃってたなって気が付きました。私の親や親戚は今もそうして生きてます…傍若無人に見えて、私の周りの大人は実は自信なかったんだなーと。
    大人ってこんなに楽しいんだよ、人生ってこんなに自由なんだよ、ママみたいになりたいでしょ?って胸張って言えるよう、今自分が楽しみながらついでに娘に楽しんでる背中見せつけ中です(*´Д`*)
    P先生、生まれてきて、こうしてブログ書いて、助けて貰ってありがとうございます(*´▽`*)

  10. まが玉 より:

    子ども2人も強い不安の土壌があり、低学年から不登校、もはや中学生です。
    私自身も不安が強く社交不安障害のようでした。長引く子どもの引きこもりで、不安もストレスも最大値、どう頑張っても、自信が持てず認知も歪んだままの、引きこもり主婦です。

    先生のおっしゃる通り、私自身また少しずつ経験しなおし、社会性を取り戻さねばと思っています。
    本当に経験しかないと思います。

  11. S より:

    タメになるお話をいつもありがとうございます。

    大学生の息子は元引きこもりです。認知のゆがみについても納得で、息子の気持ちが少し理解できました。自分では気づけなかったのですね。

    今は少しずつ経験の中でゆがみが修正されている気がします。何より、先生という生き方のお手本のお陰で、未来は明るく思えます。ありがとうございます!

  12. しろ より:

    先生の世界観が、優しい世界に変わって本当によかったです。
    そのおかげでこのブログが生まれ、たくさんの人が救われることになり、先生はモテモテになり…。
    ドラクエより壮大な物語です(笑)。

    認知のゆがみは経験によって…というところ、何度もうなずきながら激しく同意です。
    息子は、その経験のおかげで成長しているなぁと実感しています。

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