発達障害

苦手なことはやらなくていい?

先日こんなことがあった。

 

ASDとADHDの合併の小学生。

書字がとにかく苦手。

そもそも書くことに興味がない。

 

男の子
男の子
 書く意味がわかんない!

 

さらにさらに、今までの学校生活で書くことを強要されてきた。

ほら、小学校ってひらがなの書取りから始まり、漢字とか板書とか作文とか、とにかく書く作業が多いじゃないですか。

やる気がないと叱られ、綺麗に書けと叱られ、やっとこさ書いても止めガーはらいガー句読点ガー。

 

やっても文句!

やらなくても文句!

 

男の子
男の子
書くのはイヤだ!

僕は絶対にやらないよ!

 

知的には高い子で、知的好奇心も強い。

将来的にはパソコンだろうし、とりあえず書かなくていいんじゃない? と僕はアドバイスしたわけだ。

宿題は減らして、なんなら書取り系は免除でどう?

板書も、写真撮れば?

 

いいよいいよ、書けなくても将来どうとでもなるよ!

 

これは間違いなく僕の本心。

苦手なら別の方法で補えばいいし、得意なことを伸ばせばいいと思っている。

 

 

この子がね。

 

母
学校の先生が、余力ありそうだからって、少しずつ字を書かせているんです。

最初は嫌がったけど、2、3文字書いたら先生が花マルくれて。

もちろん他の子と同じ量ではないけど、ちょっとずつ書くようになって。

本人も嬉しそうです。

 

 

あら素晴らしい!

 

 

と同時に、僕はちょっと反省した。

僕の言う通り書く機会を与えなかったら、この子はずっと書けないままだったのではないか。

本当は書く能力があるのに、僕が潰してしまっていたんじゃないか。

 

やらなくていい?

デコボコのある子を支援するとき、必ずといっていいほどぶち当たる。

 

苦手なコレ、やらせる? やらせない?

 

僕は、回避させる傾向が強い自覚がある。

比較して学校の先生は、頑張らせる傾向が強いでしょうか。

 

どっちが正解?

 

もちろん正解なんてない。

ケースバイケースで、何を狙ってどう考えるかが大事なのはご理解いただけると思うんだけど。

 

 

僕が回避を選ぶ理由。

すぐ逃げる理由。

 

僕は基本的にすぐ逃げる人間でして。

人生、逃げ続けてここまで来た感じ。

前世はぐれメタルだったんだと思う。(やめて! 会心の一撃を狙わないで!)

だから性格はあると思うんだけど。

 

僕の外来に来る人たちは、たいていすごく頑張っている。

頑張れるラインを超えて頑張っている人が多いのだ。

それでもうまくいかない(上手に頑張れない)から病院に来るわけで。

そんな人に「もっと頑張れ」とは言いづらい。

 

だから、とりあえず頑張らなくていいんじゃない? と思う。

実際、「とりあえずやらない」という選択肢は有用だ。

一旦放り投げて、あとでまた考えれば良い。

 

いつかは頑張る必要がある

その上で。

子どもが「やらなくていいんだワーイワーイ」となってしまうことも、ままあると感じていた。

 

男の子
男の子
僕は書かなくていいんだ、特別だから。

 

と同級生に言い放ったり。

 

男の子
男の子
ビョーキ(起立性調節障害)だから、学校に行かなくてもいいって特別に許可されてるの。

 

と開き直ったり。

 

 

もちろん休むのはいいんだけど、それを言いふらすのは違うなーとは感じていた。

自分(と、無理を強要する大人)を説得する材料にしてほしかったんであって。

SNSで呟いちゃうのは、そうじゃない。

印籠にしちゃうのはちょっと違うと感じていた。

 

できないこと、苦手なことは、一旦手放してよいと思っている。

でもそれは、金輪際やりません! ってことじゃない。

「その時」が来たら、動き始めてくれればよい。

 

近くの支援者へ

つまり、僕の考えはこうだ。

 

壁にぶち当たったらとりあえず手放す。

休む選択はいつだってベターだ。

これ以上悪化させないためにも、とりあえず休む。

 

それはそうなんだけど、ここで止まってもらっちゃ困る。

あくまで応急処置ね。

 

子供も、「自分だけみんなと同じようにできない」って状況で、居心地がいいわけがないし。

可能ならみんなと同じようにやりたいに決まってる。

 

 

そしたら、どうするか。

  • みんなと同じにできるよう頑張る

のか、

  • 別の方法を考える(書字ならキーボード入力にするとか)

のか。

 

どちらを選ぶ?

 

その子の自己肯定感や実際の能力、精神状態などを、近くの支援者が見て、一緒に考えてほしい。

親御さんや学校の先生ね。

どっちの方法がよさそう?

 

僕は数ヶ月に一度、診察室で会うだけ。

わからないんだよ。

 

具体的な、細かなところは僕にはわからない。

  • 運動会の練習に参加させるか否か
  • 宿題の分量をどうするか
  • 漢字を1回でも書かせるべきか
  • 友達とのトラブルにすぐ大人が介入するか少し様子を見るか
  • 音楽は見学?
  • プール、どうする?

この辺のさじ加減は、診察室では分からないんだ。

普段のその子が見られる、近くの大人にお願いしたいと思う。

 

 

苦手な場面だけど、ちょっと背中を押してもよさそう?

 

 

クラスの雰囲気とか、大いに関係ありそう。

クラスや先生が変わると、押せる範囲が大幅に変わることも多い。

 

無理そうならやめるという逃げ道は確保しながら。

うまいこと背中を押す。

すると、その子の世界が大きく広がる。

 

男の子
男の子
絶対にイヤだと思ってたけど、案外できた!

 

この経験は大きい。

今後別の壁に当たったときに、この経験が生きてくる。

 

まとめ

壁に当たったら、とりあえず休む。

様子をみたり、能力を評価したり、作戦を練ったり。

そして、ここぞという時に支援者が背中を押す。

 

このやり方が攻守最強かなーと僕は思っている。

 

子どもは発達する。

できることが増えていく。

無理だと思ったことが、いつの間にか、案外できる。

そんな様子が見られると、僕はとても嬉しい。

POSTED COMMENT

  1. くろこぶたん より:

    ASDの小二次男がまさに書字はほんと苦手で、現在進行形で夏休みの宿題の漢字ドリルとにらめっこしてます。ほんとドリルにらめっこ状態で鉛筆もノートも足元に転がってます。
    できないならやらなくても良い。読めればとりあえず良い。
    させるのにほとほと疲れて本当にそう思うのですが、タイミング(本人すらわからない)さえあえば数ページ進みます。
    その上本人はやろうと思っているんです。なので「やらなくて良い」と言っても「やる」と言います。
    言うだけでやっぱり転がってます。
    ちょっと背中を押すのも押し方が難しくて、私が言うと暴れるので、もう私自身が暴れるスイッチなんだと自覚があります。
    誰がどうやって背中を押すのか。
    夫は家におらず同居の両親はASD否定を通り越して人格否定。
    長男や三男はあきれるしからかうばかり。
    通ってる療育ではトレーニング中に少し書き取りの時間(宿題持参OK)を取るのですが1ページも進めれる時間はありません。
    放デイを検討してますが空きがなく。
    長男や三男は7月中にあっさりと宿題を終わらせたから余計に気になってしまうんだと思います。
    最終的に宿題が終わらなくてももう良いんです。日常の宿題ができないんで、夏休みだからと言ってできるわけがないんです。
    ただ夏休みが終わるまでに終わるとも思えない宿題(まだ小二なのでかなり少ない)を眺めながら親子共にイライラしながら過ごすのを考えたら、あとひと月気が重いです。
    ・・・とグチでした。失礼しました。

  2. 匿名希望 より:

     時期的に、夏休みの宿題に悩む親御さんに向けた話でもあるのかな、と思いました。いつもありがとうございます。
     杓子定規に逃げるなと言う態度を取る教師に悩んだ経験からすると、P先生の「とりあえず逃げる」は、お子さんの事を真剣に考えられた結果だと思います。
     医師ができると押し付けて、やっぱりダメで、子供が医師に不信感を持って病院に行かなくなると、子供を支えるのは家族だけになってしまうので。

  3. 匿名 より:

    夏休みに突入。トラブル抱える子が多いんでしょうね。
    入院が必要な状況になったのですが、満床で入院待ちも居る状態。
    休みという休息期間は実は休息にならないのかも。

    やめたら悪化はしないから、とりあえずやめる。逃げる。
    悪化したら責任生じるけど、そのままなら責任生じないから、医師の立場が逃げを進めるのは当然かな?って思います。

    あきらかに愚痴です。

  4. あさみ より:

    「苦手なことは無理しなくていい」と頭では分かっているのに、やっぱり心配して少しでもできるようにと余計なことして反省する…を繰り返してしまう母です。

    先日も体操教室の短期教室に行かせてしまいました。
    途中で、表情を見てダメだと感じて途中でやめさせました。
    診断される前は多分そのまま無理やりさせてましたが、私も少しは成長しました。
    「お金、もったいないよね。ごめん。」と謝る息子に「いいのいいの、○○の気持ちの方が大事だからね。」と言いつつまた反省しました。

    今回のブログも、とても参考になりました。
    ありがとうございます。

  5. ぽんぽん より:

    今、同じようなことが起こっています。2年間不登校。体力もなくなり、勉強も遅れ、中学生になって少し動いてみたけれど、即挫折。頑張ってみたい気持ちはあり、自分から家庭訪問、放課後登校色々試したけれど、約束する度にプレッシャーで押しつぶされて、1回は必ずドタキャン。その後に罪悪感を背負ってなんとかやる。そんなことの繰り返し。嫌なんだよな〜ということだけがわかる。でも、家での生活は、掃除したり、ご飯をつくったり、昼夜逆転リズムを治そうとしたり自分なりに頑張っていて、機嫌がよい。何とかしたいんだなと感じていたところに、通信制高校に行ってバイトをしたい、でも、オンライン授業は無理と言い出し。先生と相談し、将来を考えた時に、オンライン面談は必須。担任の先生とzoomで話ができるようになることを目標にしました。とはいえ、1対1で話すことすら無理。先生を前にすると、先生の質問に、小さな声で私に向かってこたえ、私が大きな声で復唱するというコミュニケーション方法。オンラインでの会話に向けて、まずは、先生と話をすることに慣れることが先。勉強の遅れを気にしていたこともあって、夏休みに週1~2回私と一緒に学校に通い、小5の算数から先生に教えてもらいに行くことになりました。まだ1回ですが、やっぱり直前になると嫌がり、遅刻してなんとか行った感じですが、優しく教えてもらえ、教えてもらえたらわかった!できた!という体験をして、帰りがけには自分から漢字ドリルと計算ドリルをやってくると言い出しました。そして、2回目に向けて、自分から机に向かって宿題をやっています!中1男子が小学生の漢字ドリルをちょっとやったというだけなのですが、感動しすぎて息子には平静を装い、こっそり先生に電話をして喜びを分かち合いました。やる気と、2回目に行けるかどうかは別の話だということも共有しながら。学校にはマイナス面を伝えることが多かったので、先生も「ルンルン🎵で過ごせます!次、来られなくても何回でも待つよ」と息子のプレッシャーや特性を理解してくれています。夏休みの目標は、先生に慣れること。次行くのも嫌がり、悩み、前向きになったり、動けなくなったり大変だとは思いますが、息子の中で小さな成功体験が後々大事になってくると思っています。欲張り過ぎずにここぞという時には、助けてもらいながら背中を押しています。

  6. いけちの母 より:

    息子にどう対応するか迷った時は、先生のブログを読んでいつも参考にさせて頂いています。

    壁にぶつかった時はとりあえず手放して休みつつ作戦を練る→気持ちが切り替わったら、できそうなことはうまく背中を押してみる、ですね‼︎
    先生のお話はわかりやすく、いつもすっと入って来ます。
    いつも本当にありがとうございます。

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