不登校

不登校の理由って聞く? 聞かない?

子どもが不登校になった。

 

どうしましょ?

 

なぜ不登校になったのか、何がイヤなのか。

理由を聞いてみる。

だってそれがわからないと、解決のしようがないもの。

 

そうなんだけど、でもーーーーー。

 

不登校の『理由』

僕の外来には不登校の子がたくさん来る。

僕個人としては、不登校の理由は初診のときに必ず聞くようにしている。

 

文科省とかから不登校の理由の統計的なものも出ているし、そのような想定で聞いてみるわけだ。

こんなやつですね。↓

 

いろんな答えがある。

  • 先生がイヤだった
  • 部活でトラブル
  • 給食が怖い
  • 行く意味がわかんない
  • つまんないから
  • 朝起きられなくて
  • 頭痛が
  • 学校が怖い
  • むしろ人間が怖い
  • よくわかんない
  • なんとなく
  • 行かないと決めている

 

まぁ出るわ出るわ、多種多様の答えがある。

理解できるものから、首をひねるものまで。

 

男の子
男の子
〇〇くんが△△って言ってね、それで先生が■■くんを怒ったの。

でもそれは別にいいんだけど、□□ちゃんが給食のときに大声を出して、そしたらママが⭐︎⭐︎って言って、ちょっとだけイヤだなって思って。

そして今日のお昼はマクドナルドだよ!

 

みたいな、独自の理論展開すぎて情報が処理しきれず、五条悟の術式展開をくらったような状態になることもしばしば。(大量の情報を与えられると何もできなくなりパンクする) (無量空処だね!)

 

ちなみにこんな理由を、上記のような統計だとどこに分類するのか、個人的には気になるところ。

 

 

僕は、不登校の理由を一応聞いている。

でも鵜呑みにはしない。

 

なぜか。

 

一筋縄ではいかない不登校の理由

理由は聞くのだけど、「あぁそうなのね」とそのまま受け取ることはしない。

 

だって言葉通り受け取ってよいのなら、かなりの不登校が解決できる道理になる。

先生がイヤなら別室登校とか、給食がしんどいなら給食は食べないとか。

できるじゃん?

でも、それじゃ解決しないでしょ?

 

理由が明確なら解決できる。

でも不登校って、そんな単純なものじゃない。

 

不登校って、『コレ』という理由のないことが圧倒的に多い。

色々な要素が複雑に絡み合っている。

その子の特性とか、知的レベルとか、周りの人間との相性とか、学校教育システムとか、家庭環境とか。

 

イヤな理由がある→だから行かない

 

これなら分かりやすい。

理由を取り除けば行ける道理だ。

 

でも、実際はそうじゃない。

 

僕は、子供(や親御さん)の語る不登校の理由って、最後の一滴だと思っている。

 

きっと、それまでにコップの水がいっぱいになっていた。

なみなみ注がれた水に、最後の一滴となるトラブルが滴った。

それで溢れて不登校に。

 

このモデルが実際に近いように思う。

 

だから問題の本質は、ナミナミになった理由だと思っていて。

表面張力の限界まで張りつめた水面。

この子は限界スレスレで頑張ってたってことだ。

そこに至ったのには『理由』があると思っており、こっちが本質的な『不登校の理由』だと考える。

※余談だが、「溢れないように頑張れ」とコップを大きくさせることは、僕は本末転倒だと思う。問題を先延ばしにしても、いつか必ず溢れる。早めに溢れてよかった。注水量が多すぎるのか、排水が詰まっているのか、はたまたコップじゃなくてお猪口なのか。早く気づく方がメンテナンスしやすい。

 

それでも『理由』を聞く理由

だから割と話半分というか、まに受けずに聞いているフシがある。

「この子(ご両親)はそういう解釈なんだなー」って。

 

その人がそう思うなら、その人の中では真実。

 

↑これも真なりと思っているので、この人の解釈はこうでありこれが問題だと認識しているのねフムフムというフラットな姿勢では聞いている。(ちゃんと聞いてはいるよ!)

 

でも、だからと言って

問題の本質はココだ!(ビシッ)

とは思っていないのである。

 

じゃあなんで聞くか。

  1. 解釈モデルからそうなった背景を推察する
  2. その人の中の真実を把握したい

この2つの理由。

 

① 解釈モデルからそうなった背景を推察する

目の前の子と僕とは、初対面だ。(初診だからね)

生育歴も性格も知らないし、ましてや学校という集団の場でどのように行動しどう見られているか、まったくもってわからない。

 

でも、人間というのは情報の宝庫だ。

そこにいるだけで、視線、喋り方、呼吸、ふるまいなんかから、多くの情報を発している。

言葉だけじゃないのだ、情報は。

って約束のネバーランドのシスターが言ってた。(僕のバイブルは少年ジャンプ) (大事なことは全部ジャンプから学んだ) (好きな言葉は「切り札は先に見せるな、見せるならさらに奥の手を持て」by蔵馬)

 

その子がどんな子で、どんな考え方をして、なぜそう解釈したか。

その糸を手繰り寄せ、コップがナミナミになった理由を推察している。

 

もちろん、精度はスゲー低いけどね!

なんたって初対面だからね!

 

でも例えば、「行く意味がわかんない」って言っている子の背景。

  • この子は頭がよくて授業に出なくても勉強が理解できる上、友達との会話も楽しくない(周囲の程度が低い)ばかりか悪口のオンパレードで気分も悪い。
  • でもその会話に合わせないと空気が悪くなるのも理解できるから気を張って、でも疲れるばかりで得るものは何もなくて。
  • 先生もこの子を優等生と思って褒めたり頼ったりするだけで、表面的な部分しか見てないし。

とかあったりするのかなーと想像する。

「行く意味がわかんない」という解釈モデルとこの子の立ち居振る舞い、喋り方から、その背景を予想するのだ。

 

こんな作業、僕は結構好きで。

この子は知的に高そうだ、特に言語能力は高そうだなーと予想し、果たしてIQが120くらいあると、心の中で小さくガッツポーズをする。

ここまで情報が揃うと、じゃあこのあとどうしていくのが良さそうか、対策も立てやすい。

 

② その人の中の真実を把握したい

その人が言うのだから、その人の中では真実なのだ。

これは疑いようがない。

本人が言うんだからそうなんでしょ。

 

いくら客観的な視点で話しても、相手の中での真実と異なれば、聞き入れてもらえないわけで。

 

相手がどんな風に現状を見て、どんな考え方で過ごしているか。

これは大事な情報だ。

 

明らかにヘンな解釈をしているとしても、それがヘンになった理由を考えるとっかかりになるし。

ASDで認知のゆがみがあるのかなとか、家庭環境から余裕がないのかなとか。

 

要領を得た回答が得られない場合も多い。

その場合でも、いろんな理由がごっちゃになって自分でも混乱しているのかなとか、そもそも置かれた現状を把握できていない可能性とか、考えることはある。

 

この辺は「①背景を推察する」に通じる部分ですね。

 

まとめ

以上が、僕が不登校の理由を聞く理由。

でも本質はもっと深いところ、コップがナミナミになった理由にあると思っている。

(生育環境とか、特性とか、知的レベルとか、認知の歪みとか、他者との関係とか諸々ね)

 

僕は「不登校の理由」から本質に関する想像を膨らませるわけだけど、当然ながら精度は低い。

なんたって初対面だから!

 

普段から接している親御さんはもっと仔細な観察ができると思うので、「学校の何がイヤか」「その発言の背景にはどんな思いがあるのか」「どんな風に状況を認知しているか」よく観察していただけると有用かと思う。

分からねえことにルールを探す、そのクッソ地道な努力を『科学』って呼んでるだけだ。by千空

 

POSTED COMMENT

  1. カナカナ より:

    p先生、蔵馬の名セリフ、「切り札は先に見せるな・・・」の名シーン私も大好きです。小6の頃に「飛影と結婚したい」とかポエムってたノートを一つ上の姉に見られて馬鹿にされて悔しくて泣いたのを覚えてます。
    黒歴史です(T ^ T)

    飛影が好きだったのが黒歴史じゃなくて、自分が好きな物を堂々と「私が好きなのを馬鹿にすんな、ぶっ殺すぞ」って言えなかったのが黒歴史です。

    不登校中の息子が好きなゲームやアニメや
    美少女キャラを絶対に茶化したりしないと決めています。親子仲はすごく良好です。

    不登校の原因は初期の頃はコロコロ変わってた気がします。

    今は、ASDの息子は種族が違うと思っています。例えばですが、クラスの大多数が人懐こい、ルールに従う「犬族」なのに
    息子は気まぐれ(に見える)「猫族」なんですよね〜。

    犬族の楽しみの中に入っていくには本人がかなり過剰適応しないといけないと分かりました。

    だから今は日当たりが良い、静かな別室でのんびり過ごしています。

  2. みかん より:

    先生、いつもわかりやすいブログありがとうございます。

    記事とはずれるんですが、場面緘黙症の小学生との接し方について教えていただきたいです。
    仕事柄、放課後小学生のお子さんたちと接しているのですが、場面緘黙症の子に対してどのようにしたらいいかよくわかりません。

    何かを聞くときは、はい、いいえの選択肢にするのですが、答えることは勿論、頷くこともできません。
    私との関係性が薄いせいもあると思うのですが、その子と楽しく遊びたいなと思っています。やはり、距離感が縮まらないと難しいのでしょうか?

    いろんな記事を読んでみたのですが、ピンとくるものがなく…
    ヒントを頂けると嬉しいです。

  3. ut より:

    P先生
    なるほど話、今回も楽しく拝見しました!

    最近、娘が「学校イヤイヤ病」を発動し、月曜日がキライとなりました。(REBECCA)
    これは寄り添うチャンス☆と、話を聞きながら1ヶ月‥
    心のモヤモヤを少しずつ放出したあと、担任の先生のお力も借りながら、明るい顔で学校へ戻って行きました。

    人間の回復力、すごーいと感心した次第です。そして、親としての立居振舞の力を下さるP先生、ありがとうございます!

    先生のブログが大好きです◉‿◉

  4. むいむい より:

    例が、我が家に似ているため驚きました。
     共働きで目をかける時間が少なく、子どもの発言をタイムリーに聞けないことが原因かと考えたり、子どもの特性で遅かれ早かれそうなったのかなと思ってみたり。確かに家庭環境な難ありかもと考える時もあります。
     今は、教育支援センターに通うことで生きる意味を考えているので、本人なりの将来を見つけられたらと思っています。
     我が子は、ASDなのかなと思うこともありましたが、いろいろな文献を読むとギフテッドに似てるなと(仕事から)。
     例題の子には、どのようなアドバイスをしているのか参考までに知りたいです。
     毎回、わかりやすく、とても参考にしています。ブログを楽しみにしています。

  5. 匿名 より:

    アセスメントって感性と観察力がいるんですよね。
    あとは、寄り添いたい、大好きと思う気持ち。

  6. しのぶ より:

    とてもお医者さん感の高い記事をありがとうございます!こういったのも、ゆるい感じのも、P先生の記事はすべて読みやすくイメージもしやすく書かれてあって参考になります\(^o^)/

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