親子関係

「褒めるところがないんですけど」

「お前のブログ、子供を褒めることについて書いてないのな」

「褒めることの重要性をわかってないんじゃね?」

 

いくつかコメントをいただいたので(ありがとうございます)、「褒めること」について書いてみる。

 

褒めてください

お子さんを褒めてあげてください。

いや、めっちゃ言ってるよ。

外来ではめっちゃ言ってる。

1日10回、太陽祈りを捧げながら言ってる。(診察室には窓ないんだけど)

「お子さんを褒めてあげてください」

 

でも!

でも、でもさ!

おかーさま方すぐ言うじゃん。

褒めるところがないんですって。

 

 

気持ちは分かる。

子供が問題行動を起こしているから受診しているわけで。

好ましい行動ばかりとっていれば、そりゃどんなお母さんだって褒めるし、受診する必要もないし。

受診してるってことは、お母さんから見て問題行動ばかりだから連れてきてるわけで。

子供が自ら受診を希望することって少なくて、大抵は親御さんの不安から受診される。

ってことは、「褒めるところがない」状態なわけだ。

 

褒め方

僕個人的にはどんな子でも褒めるところはあると思うんだけど。

 

褒め方にはコツというか、気を付けることがあると思う。

ここを褒めてほしくて、そしてこれはどの子でも持っているものだ。

 

その子の意図した行動を褒める

 

その子は、どう考えてその行動を起こした?

親御さんの物差しじゃなくて、子供の意図したこと。

ここを褒めてあげてほしいのだ。

 

とくに思春期は、ものすごく複雑に考えた結果その行動をとっていたりする。

その思考過程をちゃんと確認して、認めてほしいのだ。

表面上の行動だけで判断するんじゃなくて。

 

 

不登校の子が学校に行ったことを褒めるんじゃない。

いろいろ考えて学校に行くという選択をし、さらに実際に行動したことを褒めてあげてほしい。

 

心から納得して自分のために登校したのなら、もちろん褒めてあげてほしい。

でも大抵そうじゃない。

とりあえず試しに行動してみた、って感じのことが多い。

1回行ってみて、どんなもんかまた作戦を立てようと思った。

なのに親御さんに「学校に行ったのねすごいわすごいわさすがだわこれで安心!」とか言われちゃった。

 

すごく言いづらい。

「いや、今日はとりあえず様子見で、明日からはまた当面行かないよ……?」

 

 

比較するのは、周囲ではなく過去のその子。

以前より考えが深くなり、行動も変容しているはず。

評価するのは、結果じゃなくて過程。

どう考えて、どのくらい頑張った?

 

母の物差し

正直、問題行動を起こしているお子さんを上手に褒められるなら、こんなブログを読む必要はないと思う。

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それぐらい「褒める」って効果絶大でですね。

 

でも、大抵の親御さんはそうじゃない。

どうしても母の物差しで考えてしまう。

 

「不登校は悪いこと」

「友達と喧嘩をするのは悪いこと」

「宿題やらないのは悪いこと」

「授業に参加できないのは悪いこと」

「片付け出来ないのは悪いこと」

 

子供がなぜその行動をしたのかに目が行かない。

母から見て、(一般的に) (普通は) (常識的に)悪い(と思われる)ことに気を取られてしまう。

これじゃあ褒められない。

 

無理やり褒めてもトンチンカンな感じになって、子供も混乱するだろう。

「分かってもらえない感じ」「勝手に決めつけられる感じ」が蓄積していく。

 

そして「母の思う良い子」と合致した時ばかり褒めると、条件付きの愛情として子供は受け取る。

良い子にしてれば愛してもらえる、って。

 

一見悪い部分を褒めることも

褒めるって難しい。

どこをどう褒めるか、テンプレはなくて、本当にケースバイケースだ。

 

外来で見ていて、一般的には悪い行動を「褒めてください」と言うこともよくある。

例えば。

  • 不安に押しつぶされ、自傷までしつつ半ば強迫的に登校を続けていた子が、「今日は気分が乗らないから学校休む」と言った時。
  • 過剰適応で良い子すぎた子が、初めて先生に口答えしたとき。
  • ケンカの理由を聞いたら、四の五の屁理屈(に聞こえる彼なりの考えや理屈)を話してくれたとき。

 

こういった部分を褒めるのはなかなかハードルが高いと思う。

でも、ぜひぜひ褒めてあげてほしい。

めっちゃ褒めてあげてほしい。

 

わかります?

彼/彼女なりの意図があるんです。

こう考えたから、こうした。

その考えを認め、行動を褒めてあげてほしい。

 

でも、こういったことは家庭内からは見えづらいことが多いようだ。

親子だと距離が近すぎて、

  • 学校を休んだ
  • 先生に口答えした
  • ケンカした挙句、叱られて屁理屈を言った

という悪い行動しか見えない。

で、「褒めるところがないんです」となる。

 

だから、僕らみたいな第三者をうまく使ってほしい。

近すぎて見えないものも、外からみるとよく分かる。

 

このブログの意図

「なんでもいいからとにかく褒めてください」って、なかなか難しい。

お母さんだって人間だ。

褒める理由に納得していないとストレスがたまるでしょう?

無理に褒められた子供も、その違和感を敏感に感じとるし。

 

だから、ブログを書いている。

子供の行動の意図、隠れた気持ち、その後の見通し。

僕に見える部分を書いている。

褒める理由を、理屈で説明するよう心掛けているつもり。(僕の文章は崩壊していて非常に読みづらいんだけど) (説明も下手だし) (あと容姿も性格も悪いし) (本当に申し訳ない)

 

親御さんが納得して心穏やかに過ごすこと。

普通、常識、一般、そんな親御さんの物差しを手放し、子供をそのまま受け入れること。

お子さんを褒めるには、大前提としてこれらが必要。

そしてこの前提さえゲットできれば、もう問題は解決したようなものだと思っている。

 

だから。

褒めるのはすごく大事なんだけど、褒めるまえの助走としてブログを読んでいただければ本望です。

POSTED COMMENT

  1. あさひ より:

    いつも楽しみに拝見しています。

    褒め方って難しいです。
    経過を褒めらた経験が、少ない50代。

    そして 日本人って 結果を誉める人が多い。
    褒める文化でなく謙遜する文化。

    結果を褒められる事が多かった息子でした。
    結果を意識しプレッシャーになったり
    結果が出ないものに挑戦しなかったり、人の目を気にしたり。。。

    もっと 取り組んでいる経過を意識的に褒めたり、楽しんだりすると良かったと反省しています。

    先生にお願いです。
    娘が境界域の子供です。現在中学生ですが、
    学力、人間関係、学校の規則などに疲れ果て
    過敏性腸症候群、起立性調節障害になり
    学校は、放課後登校中です。

    3ヶ月 友達、規則、勉強と頑張ってきました。

    彼女の学び方をし楽しく過ごせたらいいと思っています。

    色々調べて娘が どう感じるのか理解してきましたが、

    ブログに 境界域の子供の感じ方 物事のとらえかた、サポートの方法、どうすると生きやすいのかを書いていただけませんか。

    お願いします。

  2. あさみ より:

    読みづらくないです。分かりやすいです!

    タイトルを見て褒めるところあるし息子には関係ないのかな…と思ったのですが、読んでよかったです!!

  3. kon より:

    療育を通じて、褒めて育てたつもりでした。
    でも、息子にその言葉は違うと言われ続け、息子は19歳。
    先生のブログを拝見して、息子の言う意味がようやくわかりました。息子にとってトンチンカンな褒め方、私の物差しで褒めていました。
    失敗しました。でも、大学生の息子もまだまだ発展途上!息子が変わるんじゃなくて、わたしが変わります。ブログを書いてくださり、ありがとうございました。

  4. Jinbei より:

    いつも更新を楽しみにしています。
    日頃の業務もお忙しいでしょうに、わかりやすく読みやすいブログをありがとうございます。

    リクエストの記事なのですが、発達に不安がある子供は早期発見・早期療養が今のセオリーと感じています。
    民間の放課後デイサービスや療育機関が増えていますが、療育についての先生のお考えを書いて頂けると参考になります。

  5. 迷える子羊 より:

    いつもブログ拝見させて頂いてます。
    「誉めるところがない」とても参考になりました。
    先生は親の気持ちもしっかり受け止めてくださっていて大きく頷きながら読ませて頂きました。
    先生の言われる《第三者を上手く使って!》っとのコメントもすごく共感しているんですが、その様場所となかなか繋がれないでいます。

    高2男子、発達障害は少なからずあるだろうなぁ~表情や言っている事は病的でない。できれば訪問して子供と話して貰える様な機関。どう探せばいいんでしょうね。

    本人が考えて行動出来た事を誉める!誉める!よく観察して実行したいと思います。

  6. 匿名 より:

    いつもブログ楽しみです。
    先生は性格も容姿もきっとかなりの男前ではないかと思っています。

    私の友人にも子どもが褒めることころが無いって人がいますが謙遜しているのかと思っていました。凄く魅力的な方なのに、いつも子ども含め自分を卑下していて不思議です。なんでなの?わからない。

  7. tamago より:

    先生の外来はどこなのか。とっても気になり、近くにこういう先生が居てくれたらどんなに心強いかと思いながら読ませていただいていました。
    でも、外来で話てもらうよりこうしてエッセンスを公開してくださることで何度でも染み込むまで自分のペースで読み込めることに気付きました。

    自分自身視覚優位で、ワーキングメモリが少ないので文字で残っていてくれることはとても有り難いです。

    3兄妹揃って小1で不登校になり(今年遂に末っ子が不登校デビュー)、身内からヤイヤイ言われノイローゼになっていましたが、先生のラジバンダリに救われています。いつもありがとうございます!!!

  8. ゆんゆん より:

    いつも楽しく読ませてもらっています。

    子どもにかかる仕事をしています。

    イヤイヤに差し掛かった子、自我が出始め子、
    今まで赤ちゃんで大人のお世話されるがままだった子が、やりたいことがわかり行動し始めた子、
    そういう子のそういう部分が見られたら
    ワクワクします。
    自分を見つけたなって。

    そこで、子どもと話合い???をして
    時々、ホント時々ですが、通じ合った時
    グッとその子の心と近づいた感じがします。

    でも、そこを受け入れず
    わがままになった!こう育てなきゃ!
    と、力で抑える大人も少なからず。

    こういう頃から、子どもと大人の気持ちの温度差が出るのかなと
    先生の記事を読んで思いました。
    と、

  9. うな より:

    褒め方、どんなところを褒めるか、大変参考になりました。
    普段、いかに自分が結果だけを褒めているかを痛感しました。
    今朝、出かけるのを渋った息子に
    「俺は行きたくないけど、お母さんはその方がいいでしょ」
    と言われ
    「お母さんに怒られないために行くならやめなさい」
    と言ってしまいましたが、
    「気が向かないのに、お母さんのために行こうとしてくれるなんて頑張ってるね」
    と言ってあげられる方がいいんでしょうね。
    なかなか直ぐには出来ないと思いますが、
    心掛けてみようと思います。

  10. にもちー より:

    いつも心に共感の嵐をまき起こしながら、読ませていただいています。教師をやっていますが、教師が変わらなくてはと思うことばかりです。不安なお母さん達の支えになれるよう、頑張ります!

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