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中学受験、やっぱりやめる?

受験シーズンが近づいてきましたね。

特に任意の受験となる中学受験。

「結局受験するの? しないの? どっちなの⁉︎」

と詰め寄られている小学6年生が散見される。

 

母
この時期なのに全然勉強しないんです。

受験、させたほうがいいですか?

それともやめさせるべきでしょうか?

 

そんなことを聞かれることも多い。

 

中学受験のメリット

僕自身、中学受験の経験がなくて恐縮なのだが。

※僕は公立中学→偏差値50台の公立高校の出身。

 

でも、エリートに中学受験経験者が多いことは知ってる。

大学では、周囲は中学受験経験者ばかり。(地方出身者は県立高校の方がレベルが高かったりするらしいが、首都圏出身者は私立ばかりだった)

就職後も、医者は大体私立中学の出身。

他の業界でもきっと同様なのだろう。

学歴のあるエリートは、中学受験経験者が多いものと思う。

 

じゃあ受験しといた方が将来の夢が広がりまくりんぐ!

 

そう、なんだと思う。

 

じゃあじゃあ、受験できる経済力と環境があるならぜひ受験をするべき!

 

正論だと思う。

んだけど……。

 

発達外来から見た景色

僕は発達外来で仕事をしている。

ここに来るのは受験戦争から弾かれた子や、名門中学にうまく馴染めなかった子だ。

 

しんどそうですよ?

めっちゃしんどそう。

 

うまく流れに乗れればいいんだと思う。

環境に適応してそのまま流されていけば、よい学力とよい学歴とよい学友が得られるのだと思う。

周囲の名門校出身者を見ていると、そのことを誇りに思っている様子がよく分かる。

人生の勲章として自信になるし、実際よい経験を積んでいるようだし、また現実的に高い収入を得ている。

それは素晴らしいと思う。

 

よく分からん無名高校から医学部に、そして医者の世界に入り込む大変さは身をもって知っている。

他の生徒たちと同質の経験、同質の学習を積んでいれば不要だったろう苦労に直面した場面は多かった。

だから、うまく乗れればこれほど良いことはない。

明らかに有利だし楽だ。

僕も開成中学に成りすまし登校したいもん。

 

 

私立中学を受験するメリットは大きい。

それは、絶対そうだと思う。

 

でも。

うまく乗れなかった場合。

あぶれてしまった場合。

そのことをちゃんと考えておいたほうがいいと、発達外来からの景色を見ると痛感させられる。

 

うまくいかなかった場合

どうしても一定数出てしまう。

うまく馴染めない子。

 

塾のピリピリした雰囲気に圧倒されて、それだけで疲れ切っちゃうとか。

勉強のモチベーションが維持できず、遊んでしまうとか。

ギリギリで滑り込んで入学したものの、その後の勉強についていけずに劣等感に苛まれるとか。

 

います。

いっぱいいます。

僕の居住地が比較的ハイソなのかもしれないが、それにしてもたくさん受診される。

受験や進学関連で心身のバランスを崩す子。

勉強に限界を感じ、「勉強ができない自分には価値がない」と自分を全否定してしまう子。

いっぱいいます。

 

 

受験は、うまくいけばすごく良い。

でも、うまくいかなかったときのリスクも大きいと思う。

周囲の生徒も同質な子たちの集まりなので、自分だけ異質な行動は取りづらい。

つまり、私立中学をやめて公立中に移るとか、怖くてできない。

レールから外れると人生が終わるように思えてしまう。

 

また、あれだけ頑張って受験勉強した上で掴んだ入学だ。

今更手放せない。

学校をやめたら、遊びも友達も犠牲にして勉強を頑張った小学生の自分を否定することになってしまう。

怖い。

だから今の環境が合わないと分かっていても、捨てられずにしがみついてしまう。

サンクコストってやつ。

 

こと左様に、受験するとルート変更が難しくなるように感じている。

 

僕の意見

受験は素敵だと思う。

社会的な成功への、かなり効率のよい近道だ。

 

でも、受験するなら逃げ道を準備して

 

うまく行かなかった場合、上手に逃げられるように先回りして準備しておくべきだと思う。

受験はハイリスク・ハイリターンだと思っている。

うまくいけばリターンは大きいが、うまくいかなかったときのリスクもバカでかい。

合わない子もいる。

たまたま偶然、いじめの標的になってしまう子もいる。

 

受験は素敵だけど、自己肯定感をボロボロに下げてまですることじゃないと思う。

受験は素晴らしいけど、親子関係を悪化させてまで取り組む事柄じゃないと思う。

ダメだった時にどうするかは前もって考えておくことをおすすめする。

 

 

受験ってすごいストレスだ。

そのストレスに耐えられる子もいれば、耐えられない子ももちろんいる。

だって小学6年生、まだまだコドモだ。

それで人生が決まるわけじゃない。

 

ダメなら逃げる。

さっさとコップを溢れさせる。

僕は自分の人生の選択でそう心がけているが、こと中学受験となると本人の意思での受験って少ないだろうし(多かれ少なかれ親の意見で受験すると思う)、尚更だと思う。

POSTED COMMENT

  1. にったん より:

    P先生こんにちは!

    私も低学年のASD傾向のあるHSCな息子の受験について考えていたところでした。
    IQが高く勉強は得意のようなのですが、物を無くしたり話をちゃんと聞いてなかったり、姿勢が悪かったり、失敗したり注意されると異常に落ち込んでしまったり…そんな子です。

    なんとなく巷にあふれる情報だと、特性のある子供達は公立中学の仕組みに合わないとか、私立中学に入れていい仲間や先生に出会えました、というような、発達障害は私立中学が最適解みたいな情報が多いように思います。

    でも失敗してしまったり、受験勉強が本人にとって耐えられないストレスになってしまう可能性ももちろんありますよね。
    どんなに下調べして本人に合ってると思って入学しても、学校が合わない可能性だって確かにありますね。

    成功事例ばかり参考にしないで、色々な可能性を含めて考えていかないとな~と思いました。

  2. ともこ より:

    P先生の、親に詰め寄られるって表現がほんとにリアルですね。
    中学生になったからこそ息子達は思春期反抗期兄さん達ですが
    小学生の時って本当に親大好き、気に入られたい、褒められたいの気持ちが強くて
    随分無理したんだと思います。特に長男。真面目。帯状疱疹でました。
    次男は長男に負けてはいけないプレッシャー。
    二人とも入学後は部活ばかりで受験した意味が全くありませんが、まあいいか。
    合格者のパイは限られてる、勝つか負けるかとかいって尻叩いてた私も
    すっかりボケボケ、パートもモチベーション上がらずウダウダ文句いってる
    つまらんおばさんになりました。
    まあ何も望みません、最近の悲しいニュースに中年はやられやすく、
    ただただ生きててくれたらいいやと思います。
    パートはやめて宝クジかいます。

  3. ラスク より:

    私の個人的な考えですが、ASD傾向の息子、娘は小さい時に努力させなくて良かったかな?
    と思います。信念が強いので自分で決めたことにはまっしぐらに努力すると思います。

  4. あさみ より:

    低学年のASDの息子を中学受験させるかずっと悩んでいます。
    興味深い記事ありがとうございます。

    宿題が多いとか、土曜日も授業があると聞くと、面倒くさがりの息子はもし入学できてもその後しんどいんじゃないかな…と心配しています。
    その子に合う環境を…と言っても、通ってみないと分からないことが沢山あるし、たしかにリスクが大きいなと感じました。

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