発達外来の初診。
これまでの経緯を聞くと、すでに他の医療機関で診断がつけられている子がいる。
珍しくなくてさ。
結構いるのよ。
10年以上前に診断されてそのままにしてましたって人もいれば、割と最近まで他院に通っていて転医って形の人も。
で。
中には、前医の診断に納得していない方もいらっしゃったりする。
なんか、簡単に診断された。
そんな短時間で診断ってつくもんなの⁉︎
短時間で診断名がわかるのか
検査もなしで。
そんな短時間で、ウチの子の何がわかるっていうの?
おぉぅ……。
はたまた、
普段の様子と全然違ったんです。
でも、診断がついちゃうんですね……。
そうでしたか……。
他院での診断については、僕からは口を出さない方針にしている。
特に親御さんが納得していない様子なら、肯定も否定もしないでおく。
でも……大声では言えないけど……。
大抵のケースで、僕もその診断に同意なんだけどね。
閑話休題。
本題に戻ろう。
今日のお題は、「医者は30分やそこらの診察で発達障害がわかるのか否か」だ。
結論から言おう。
結構わかる。
分かることは結構多い。
30分で?
そう、初対面の30分で。
※もちろん、正式な診断にはこれまでの経過の詳細な確認や他の疾患の除外が必要です。今回の話は正しく診断基準に沿ってってことじゃなくて、「感覚的にわかるのか」についてです。
もっというと、5分で分かる。
いや、3分で分かることも。
というのは、発達外来じゃない、一般診察のときですね。
風邪とか風邪とか、風邪とかの受診ね。
勘違いしている人も多そうだけど、僕、フツーの小児科医だからね。
発達専門じゃない。
風邪とか喘息とか便秘も見てて、予防接種や健診もしてて、むしろコッチが本業。
ましてや、精神科医じゃないからね。
よく勘違いされるけど。
コロナ検査の綿棒を鼻に入れるの、得意だから。
そして、子どもに泣かれてるから!!!
で、ですね。
その「一般小児科の診療」で、発達障害が分かることが結構ある。
感覚的にね。
たった数分のやりとりで。
特徴的な話し方から、「あ、この子はASDだな」となることがある。
明らかに多動で、「ADHDでしょうね」と思うことがある。
鼻腔検査や採血など痛みを伴う処置のとき、その反応でピンと来ることもある。
言わないけどね。
今日、この子は風邪の診療で来ているのだ。
聞かれなければ特に指摘はしない。
患者さん側から相談されなければ、発達については特にコメントしない。
僕はね。
患者さんにも「知らない権利」ってあるから。
病気について知る権利もあるし、希望がなければ知らないままでいる権利も当然あると思っている。
で。
結構分かるのだ。
短時間で。
一言二言のやりとりで。
「この子は」と思うことがある。
喋っている内容は至極マトモだ。
普通の人が聞くとなんとも思わないか、むしろ年齢よりしっかりしていると思われるかもしれない。
でも、僕には分かる。
たくさんの発達障害の子を見ているからこそだろう。
うまく言語化できないけど、なんていうか、特徴があるのだ。
これは、巷でよく言われる「発達障害の喋り方」とは異なる。
抑揚は普通で、感情も乗っている。
甲高い声とか特定のワードを繰り返すとかではない。
こちらの質問の意図にも合っている。
空気を読むとか、ニュアンス、間、行間とか、よく言われるけどさ。
こんなの、単なる風邪の受診で入ってきようがないし。
ADHDで言われる、まとまりがない、一方的、話が飛ぶとか、そういうことでもない。
ちゃんとキャッチボールできている。
だけど、なんか分かるんだ。
「何が」と言われると難しいんだけど。
今日はどうしましたか?
↑これだけ。
ホント、これだけのやり取りなんだよ。
でも、分かる。
ピンと来る。
という感覚が、僕にはあるのだ。
なので、他の先生にもあるのだろうと思う。
僕だけの特殊能力ではないハズだ。
むしろ僕なんて、その辺りの観察力とかキャッチ能力は、平均よりだいぶ低いと思われる。
鈍感で察せないタイプだもんで。
わからない子もいる
じゃあ、みんな分かるのかというと、そうでもない。
わからない子も当然いる。
これは、特性の濃い薄いにあまり寄らないように思う。
そこまで特性が濃くなくても、わかる子もいる。
話を聞くとしっかり特性がありそうなのに、ある程度話しても全然分からない子もいる。
不思議なんだけど。
わかりにくい子の診断は大変だ。
診察室での本人とのやり取りには、まるで違和感がない。
なんだけど、園や学校では困っているらしい。
どんなシチュエーションでどう困るのか。
その言動は、どんな特性に由来するのか。
丁寧に紐解いていく必要がある。
正直、目の前のこの子がそんな状態になるなんて全く想像がつかないってことも。
分かりづらい子は分かりづらい。
診察室の様子からは分からないけれど、そんなふうに困るならASD(ADHD)なんでしょうね
ってなる。
そういうケースも結構ある。
だから、みんながみんなわかるわけじゃない。
この辺の感覚は言語化が難しい。
でも、
- わかる子はわかるし、
- わからない子は分からない。
そうなんだよ。
説明が難しいけれど。
まとめ
発達障害の子は、初見かつ短時間でも結構分かる。
他院で、短時間で検査もなしに(そもそも発達障害を診断する検査って存在しないんだけど)診断がついたってケースを耳にする。
患者さんが不信感を持つのも無理はない。
でも、実際結構わかる。
僕はそう思う。
そして、反対にサッパリ分からない子もいる。
誰に相談しても「この子は大丈夫よー」と言われ、支援に繋がれないという話も聞く。
分かりづらい子は分かりづらいのも、また真なり。