発達障害の診断がつくと、ショックはあるだろうが、支援はしやすい。
周囲の目から見て明確な特徴や困りごとがあれば、支援する方向で満場一致だ。
これは分かりやすい。
でも、そこまででもない人。
気になる部分はあるけど、そこまででもないような、でも困るような……って人。
中途半端な人。
こんな人への支援って、実はとても難しい。
こんな子がいました
不定愁訴で受診した子。
朝起きられない、倦怠感、頭痛、腹痛、めまい、ふらつき……。
こういう主訴の子って僕の外来には多くて、まあフツーに自律神経失調の症状なわけです。
で。
学校がある日は明らかに調子が悪い。
土日は元気。
夏休みなんて絶好調!
明らかに学校がストレス源なわけだ。
特に人間関係が密になってくると調子を崩す様子。
でも、本人に自覚がない。
ハタから見れば、友達関係がストレスになっているのは明白だ。
でも自覚できない。
本人は、全ての元凶は体調不良だと思っている。
学校行きたい?
行かなきゃ?
本当に行きたい?
きっと行きたくないのだ。
「行かなきゃ」と思っているだけで。
そう、この子はASDタイプ。
でも、バリバリの自閉ってわけじゃない。
普通にコミュニケーションが取れるし、友達も作れる。
でも、ツーカーとは行かない。
なんかしんどい。
本音では友達関係をあまり望んでいない。
ASDだから、人に興味が薄い。
でも、そんな自分に気づけない。(自分にも興味が薄いから)
中途半端な人。
この子は中途半端なASD (自閉スペクトラム症)。
これが困る。
この子は、いわゆるフツーの学校生活ではストレスが大きく、身体症状に出てしまう。
フツーに学校生活を送るのは難しい。
じゃあ支援して転校、月1回の登校頻度にするかというと、それは過剰。
それなりに友達関係を築ける子だ。
うーん……。
これ、難しい。
周囲の支援の仕方が。
案の定、親御さんも学校側も、医療者も困ってしまっている。
※もちろん本人の自覚や自助努力も難しい
他の特性も同じ
中途半端なADHDも困ると思う。
離席して叱られるほどではない。
大きなトラブルを起こすわけじゃない。
でも、ぼーっとして授業を全然聞いていないとか。
知的に境界域の子も困る。
授業は理解していない。
でも決まった課題や単純作業はそれなりにできる。
指名されたら、なんとなくの雰囲気で50点の答えを言う。
成績も、壊滅的ってほどではない。
支援されず、ま、いっかで流されてしまう。
正規分布
知的障害とか発達障害って、「この線を超えたら異常です」と区切れる類の性質ではない。
濃い、薄いのグラデーションになっている。
平均的な人が一番多く、外れ値(特徴が強い)に行くほど人数が少ない。
こんな感じ。
0(平均)が一番多くて、裾野に行くほど人数が少ない。
正規分布という。
例えばこの図で、-2から2までを『正常』と決めたとする。
この中に95.4%の人が入る。
つまり『異常』とされるのは4.6%だ。
この子たちはわかりやすく支援の対象になるだろう。
問題は、1.9とか-1.8とかの、「ギリギリ正常」な人。
あと一歩で異常だけど、「ギリギリ正常」。
この子たちがフツーに物事をこなせるかというと、正直かなりしんどい。
そして注目してほしいのが、上の図で、例えば-2.2の人と-1.8の人、どっちが多いですか?
そう、「ギリギリ異常」の人より「ギリギリ正常」の人の方がずっと多いのだ。
さらに言うと「明らかに異常」の人ってかなり少ないことが分かる。
IQは正規分布するので、例えばIQ75(ギリギリ正常)の人とIQ 65(ギリギリ異常)の人だと、前者がずっと多い。
IQ65ならおそらく支援対象だが、IQ75だと支援が受けられるか微妙なところだ。
同様に、自閉スペクトラム症やADHDについても、「グレーゾーン」と言われる子。
特徴を10段階として、6〜8くらいの子って、実はかなり多い。
この子たちも支援からこぼれることが多い。
じゃあどうする?
それな。
難しいよな。
明らかにダメなわけじゃないので、周囲は「普通の人」として接する。
「普通の人」として「普通の結果」を出すことを期待される。
でも、その期待には答えられない。
そして明らかにダメなわけじゃないので、支援の対象としてみられるでもない。
努力不足とか、たるんでるとか、不思議ちゃんとか言われたりする。
この辺は教育界でも話題になっているというウワサを聞いた。
令和コソコソ噂話で。
支援からこぼれてしまう子。
具体的にどうしたら良いのか僕に良い策はないんだけど、中途半端な人って、確実に支援が必要な人と比較し、かなりたくさんいます。
そしてかなり(場合によっては明らかに要支援の人より強く)生きづらいです。
知っておいて損はないと思う。