Categories: 発達障害

空気を読む前に……

ASDの子。

「空気が読めない」というのはよく聞く特徴で。

 

 

相手は嫌がっているのに、本人は冗談のつもりでしつこくしたみたいです。

 

とか。

 

トラブルがあって、もう相手は気にせず喋ってくれるのに、うちの子は妙によそよそしくて。

 

とかさ。

 

「前回はダメでも、今回は空気的になんとなく許される」というのが理解できないみたいです。

 

とかね。

 

 

お疲れ様です。

 

空気が読めない

ASDの子。

今回は、それなりに特性はあり、でも言えばわかる子を想定している。

 

環境調整や本人の成長で、トラブルはだいぶ減る。

困るパターンはだいたい決まってくるので、先回りして手を打つ。

本人も今までのやらかしに懲りて、もうトラブルは起こしたくないわけで。

(失敗体験から自信を失っている子も多い)

 

なんだけど。

 

イレギュラー対応は、どうしても苦手。

突発的、偶発的なトラブルとか。

急に想定外のことをされたり言われたり。

今の時期は特に、イベント(運動会、学芸会など)で疲れてたり、逆にテンションが上がってたりするし。

 

 

こんなときにトラブルって起きる。

 

テンションが上がって楽しくなっちゃって、強気にしつこく絡んだり。

急な予定変更についていけず、固まったり、時にはキレたり。

疲れから、相手の何気ない一言を悪く取り、「悪口を言われた!」と必要以上に怒っちゃったりさ。

 

 

僕はこれ、しょうがないと思うんだよね。

この手のトラブルは、最後まで残る。

 

先読みできるトラブルは減ってくるんだけど。

最後まで残るのが、イレギュラーなトラブルだ。

 

しょーがない。

これはもう、対処できない。

「お疲れ様案件」だと、僕は思う。

「お疲れ様です。」ブログを書いていると、どうしても結論が「お疲れ様です」になるときがある。 僕のスタンスとして、可能な限り対応策を提...

 

お疲れ様案件

でね。

受診時の相談事として、このようなトラブル、つまり「お疲れ様案件」を持ってくる親御さんがいる。

 

もうね。

めっちゃしっかりしてるのよ。

 

トラブル事例に「お疲れ様案件」ばかりが並ぶってことは、それ以外の対処可能なものはすでに対処できているってことだ。

僕に言える、

「こんな仕組みをつくったら?」

「こんな意図だったと予想できるから、じゃあこうしたら?」

的な話は、すでに親御さんが実践済み。

 

この親御さんが持ってくる案件は、もう僕には対処できない。

僕に言えることなど何もない。

 

それは予測できないし、仕方ない。

もう事故ですよ。

お疲れ様です。

↑これだけ。

答えられない質問って、こんなの。外来では、基本的に患者さんの「困りごと」を聞いている。 医学的な観点から、トラブルの理由を推測し、対処法を...

 

 

でさ。

しっかりした親御さんなので、こう言うわけです。

 

でも、そうは言っても周囲をこの子に合わせるわけにもいかないし、今後も同様のトラブルが起きますよね?

今回の出来事を次につなげたいのですが。

 

つまり、もう少し空気が読めるようにしたいですってこと。

イレギュラーは、今後も絶対に起こるわけで。

もうちょっと空気を読んで、トラブルを避けていきたい。

この子のためにも、周囲のためにも。

 

 

これな。

でも、僕は非常に難しいと思う。

 

だって特性だもん!

 

ASDなのだ。

空気は読めない。

もう、『仕様』だ。

しょーがない。

 

ASDに空気を読めというのは、犬に喋れというような、ヒトにエラ呼吸しろというような、カピバラにヒトを噛むなというようなものだ。

噛むときゃ噛むよね。

だって、カピバラだもん。

(余談だけど、僕は子どもの頃、動物園でペリカンに噛まれたことがある)(なかなかレアな体験だと思う)(でも、ペリカンって歯がなくてさ)(痛くないんだよね)

 

空気が読めなくても……

でさ。

じゃあどうするかって、コレが大事になってくると思うんだよ。

 

ゴメンてへぺろ⭐︎

 

これができるかできないかで、事態は大きく変わる。

人の話を聞く力 〜愛されキャラのススメ〜ASD、もしくはADHDの子。 特性のせいでトラブルが起きることってあると思う。 ないに越したことはないんだけど、まぁあるよ...

 

空気を読むのは、実際問題難しい。

だって、ASDだもん。

イレギュラーなシチュエーションは特に、最高難易度だ。

 

でも、やらかしたときに

 

ゴメンてへぺろ⭐︎

 

ができる子は強い。

 

やらかした事実は変わらないんだけど、周囲に与える印象が大きく異なる。

ひいては、自身へのダメージが全然違ってくる。

 

愛されキャラとして確立している子は、多少のやらかしは大目に見てもらえる。

むしろ愛されポイントとなり、周囲のしっかりした子が世話を焼いてくれたり。

※こんな子、実際に結構いる。周囲の子が自発的にお世話してくれるの。親御さんは「こんなんでいいのかしら……」と言うけど、僕的にはめっちゃ「いい」! その子が築いた人間関係なので、自信を持ってお世話してもらえば良いと思います。裏山。

 

反対に、やらかしたときに必要以上に落ち込んだり、もしくは反射的に逆ギレしちゃったりする子。

これはやらかしのダメージが膨れ上がる。

 

気持ちはわかるんだけどさ。

「またやっちゃった、自分はダメだ」って落ち込み、いじけるのも。

責められたと思って反射的に攻撃に転じるのも。

よく分かるんだけどさ。

 

でも、『損』よな。

 

ごめんごめんてへぺろ⭐︎ が圧倒的にお得。

 

まとめ

ASDが空気を読むのは難しい。

だって、ASDだもん。

 

自分と、相手と、状況とを客観的に、俯瞰的に判断する必要がある。

それ、めっちゃ苦手な部分。

僕自身ASDなのでよく分かる。

 

これを克服するより、やらかしたときに「ゴメンてへぺろ⭐︎」をできるようにする方が、ずっとハードルが低い。

  • 「またやらかしちゃった? ごめんね」
  • 「わざと(いやがらせ)じゃないんだ」
  • 「よかったら、何が間違ってたか(あなたがどう思ったか)教えてくれる?」

空気を読むより、こっちがずっと現実的。

こっちが先だ。

 

このためには、

自分は空気が読めない。

だからやらかす。

を、特性としてしっかり把握しておく必要がある。

 

で、これは特性なので、自分が悪いわけじゃない。

特性は特性として、自分には良さがあるし、自分は自分で良い。

 

↑自己肯定感が高い子は、ココを認められる。

※低いと、空気が読めない事実を認められないか、認めても拗ねていじける。

すると、素直に「ゴメンゴメンてへぺろ⭐︎」が可能となる。

 

周囲の大人にできるのは、空気を読むトレーニングより、「ゴメンてへぺろ⭐︎」を教えること。

そのための土台となる自己肯定感を育むことなのだろう。

僕自身も日々、ここを目指して訓練中だ。

pediatrician-p

View Comments

  • 「よかったら、何が間違ってたか(あなたがどう思ったか)教えてくれる?」
    
     すごく大事な一言ですね。冒頭の「よかったら」だけで、相手を尊重しようとする気持ち、相手の決めるべき事は相手にゆだねようという気持ちが伝わります。(あやまった、相手を尊重しながらそうやって聞けただけで100点で、相手がどう受け止めるかまで自分が背負うとしんどい)。ごめんテヘペロが通用するかどうかは、最終的には相手が決める事ですが、しないよりは、いい結果になることが多いはず。

     私が子供の頃、もし、何回嫌だと言っても理解せずに繰り返す子が周りにいたら、わざわざ理由の説明なんて、しなかったと思います。言わなくてもわかるはずのことをわからない、嫌だという言葉すら入っていかない様な相手に、理由を聞く耳があるかなんて思わない。無言でさりげなく離れるの一択しかなかったでしょうね。それ以上のトラブルが怖いから。
     今は私は、相手に何が見えていないからこう考えるんだろうと考察して、相手にわかる言葉で伝えようとする姿勢をそれなりに持っているつもりですが、今振り返ると、それが身についたのは、就職して、知識の量もこれまでの人生も全く違う、様々な相手と対話する様になってからですね。
     ちゃんと聞いて自分で考える姿勢があるかどうかは、自分で示さないと相手に伝わらない、と改めて思いました。
     理由がわからないと、相手のルールの発動条件が分からないので、もし学習能力があっても、学習の機会を得られない(相手が答える気があるかどうかは相手の問題です。今忙しい子、理由を説明するのが苦手な子、そこまでその子に関わる気がない子、中には聞いた事を重ねてバカにする様な意地悪な子もいるでしょうが、世の中にはいろんな人がいるので。誰にでも受け入れられる事が目的ではなく、いつか誰かに受け入れられるのが目的だと私は思います)。

     まあここまで複雑な事はできなくても、誰かから嫌とかもうしないでほしいと言われた事はその相手に対して繰り返さない、ができるだけでもトラブルは激減すると私は思います。誰かにとって耐えられなくても、ほかの誰かにとってはそうでもない事もあるので。

  • いつも、本当に助けていただいています。
    ありがとうございます。
    私本人が、あれこれ特性あると思っています。

    ちょうどこの記事を読んだすぐ後に、近所のお母さんに会い、一瞬の立ち話で聞かれた質問(雑談レベル)に、質問の内容を取り違え(赤いカバンを見せながら「赤は好き?」と聞かれたら「赤いかばんは持ってないしあまり買おうと思わないけど、赤い色自体は好き!」と答えちゃったみたいな感じ)、さらに家に帰ってから、(あ〜、カバンのこと聞かれた訳じゃないのか、、)と気付き、思わず『さっきは質問とり違えちゃった、そう言うことじゃないですね。ごめんなさい。』とLINEしそうになって、(いや、これLINEするほどじゃないだろう。ん?する必要があるのか??)としばし考えてしまったくらいの(してません!)、空気・行間の読めなさです、、。

    空気を読むトレーニングより、「ゴメンてへぺろ⭐︎」を教えること。

    めちゃくちゃ納得しました!!
    そもそも私が空気読めないから、教えようもないのですが、無駄なところにエネルギーを使ってどんよりなるより、ご機嫌に過ごして愛される方がお互いハッピーですよね。
    心がけます(^^)

  • いつも先生のブログに助けられています。分かりやすくて、時々クスッと笑えるボケを入れてくださって。ほんと、いつも読むのを楽しみにしています。
    さて
    我が家のASD息子は今、中1です。
    小学生のときよりは、かなり対人トラブルは減り、トラブルの対応も少しうまくなったかな、と思うところはありますが、
    先生のおっしゃる通り、イレギュラーなトラブル時の対応は、やはり、めっちゃ難しいようです。
    ただ、そういうトラブルのあと、
    「あっ、いま僕の対応、悪かったな(汗)」と気づくことも多く、
    「ごめんなさい」と謝れるのですが、
    相手が「いいよ」と言うまで、
    「ごめんなさい、ごめんなさい、本当にごめんなさい」と、ずーっと謝ってしまうんです。
    そうすると、謝られる相手の方も、「もう何回も謝らなくていいし!(怒)」と、また怒りが再燃してしまったり…。
    「ごめんね、てへぺろ☆」できるようになって欲しいです。
    てへぺろ☆、は出来なくても、せめて「ごめんね、ほんとにごめんね。」ぐらいで終われたら良いんですけどね…。

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