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子どもの心の観察の仕方 〜小児科医Pの場合〜

母
子どもの思いがよくわかりません。

大事なことほど喋ってくれないし。

例えば先生は、どうやって子どもの心を観察していますか?

 

こんな質問を受けた。

子どもの観察の仕方。

本質的すぎて、聞かれることは逆に少ない。

 

もちろん正解なんてないんだけど。

需要あるか分からないけど、「僕の場合」を書いてみる。

 

いろんな方法がある

子どもの心の中を知りたい。

なぜ不登校なのか、勉強に対してどう考えているのか、何が不満なのか、今後どうしたいのか。

本人をよーーーく観察するしかないんだけど。

でも、具体的にどうやって?

 

いろんな意見があると思う。

どれが正解ってわけでもないので、合う方法を実践していただければ。

どの方法でも、結局同じところに行き着くだろうし。

 

 

ある人から聞いたのは、こんな方法。

 

ある人
ある人
子どもに何か(言葉や行動)投げかけてみるんだよ。

返ってきた反応をみて、なぜそうなったのか推理する。

反応から心のありようを推測する感じかな。

 

ほぅ、興味深い。

割とスタンダードな方法でしょうか。

僕も推理・推察は大好き。

よく実践している。

 

 

これの長所は「推理」で。

なぜそうなったのかの理屈がわかれば、別の場面でも応用が効く。

例えば、不登校の理由がわかれば、反抗的な態度を取る理由も紐づいてきたり。

 

逆に短所は、これもまた「推理」で。

推理はあくまでも推理なので、間違っているかもしれない。

外れた推理のまま突き進むとおかしなことになるし、子どもからの信頼も失いそうだ。

 

パズル方式

僕は個人的に「推理」って好きなんだけど、自分の推理には自信が持てない。

体は大人、頭脳は子ども! だ。(逆コナンくん)

もう少し精度を上げたい。

 

だもんで、僕の方法は「パズル方式」だ。

 

何ソレ?

 

子どもの言動から、パズルのピースを埋めていく。

小さなピースをたくさん集めることで、その子の全体像を把握する。

 

 

普段の子どもの行動を観察する。

例えば、いつも寝坊助なのに今日は早く起きてきた。

 

母
 今日は早く起きたんだね。

気持ちいいね。

 

お母さんが声をかける。

 

子どもはまんざらでもない様子だ。

口元が緩み、嬉しそうに見える。

 

じゃあきっと、早く起きると本人も嬉しいのだろう。

頑なに「早く起きたら負けだ。絶対に早起きなんてするもんか!」と思っているわけではなさそうだ。

 

すると、

生活リズムが乱れがちだけど、ちゃんと起きられると本人も嬉しい

というピースが手に入る。

 

これはきっと正しいピースだ。

子どもの様子を見て得た情報なので、きっと正しい。

 

 

そんな感じで、子どもの言葉や行動から、「これはきっと正しい」と思うピースを集めていく。

ゲームの感想は誰かと共有したい。

妹にお菓子を譲る優しい心がある。

音楽を聴いているときに声をかけられると不快。

勉強は気が向かないけど、英語だけは趣味としてやっている。

不登校だけど友達の様子や学校のイベントは気になる。

こんな感じ。

 

できれば、

優しい気持ちで → 妹にお菓子をくれた

みたいな、本人の意図がわかる行動を拾い上げたい。

映画を中断されたのが嫌で → すごく怒った

とかね。

 

 

もちろん、もっと直接的に拾ってもよい。

 

男の子
男の子
先生がムカつく!

先生がムカつく。

 

男の子
男の子
天気が悪い日は頭が痛い。

天気が悪い日は頭が痛い。

 

子どもの発する言葉をそのまま、オウム返ししつつ拾うこともよくある。

だってこれ、絶対合ってるじゃん?

※余談だけど、これが僕にとって魔法の言葉=「あなたはそう思うんだね」 です。

 

 

こういった日常の些細な行動や言葉から、その子を構成するピースを拾っていく。

小さなピースを集めて嵌める、パズルのイメージを持っている。

 

するとだんだん、全体像が見えてくる。

多少ピースが足りなくても(喋ってくれなくても)、全体像がわかるくらいの解像度にはなりそうだ。

 

医療のやり方

僕がこの方法を取るのは、医療のやり方と同様だからだろう。

 

病気の診断って、

このデータならこの病気!(ドンッ)

ってイメージがあると思うけど、そうでもなくて。

 

検査でドドンと診断することって、実はあんまり多くない。

こと日常診療では、いきなりドンズバを狙った検査を行うことは少なくて。

 

症状、身体所見、エピソード、本人の解釈などからピースをはめていき、ボヤッと「この病気かなー」と当たりをつける。

パズルのピースを集めて。

最後に検査で確認する。

 

所見や症状からはウサギっぽいけど、もしかしたらネコかも。

検査で長い耳が見えたから、ウサギで確定!

 

こんな感じで進めることが多い。

全てがクッキリハッキリ分からなくても、病歴や所見からボヤッと全体像を見ていく。

 

同じイメージなんだろうね。

心の分野でも、僕は小さなピースを集めて全体像を見ているんだ。

 

 

推理は間違えることがある。

特に僕なんか、体は大人、頭脳は子ども、精神年齢は5歳だから。

だから、推理は心の中で勝手にするに止める。(推理好きなのよ)

自分の推理より、「ここは合ってる」と思える小さなピースを信頼するよう意識している。

 

周辺から埋める

この時注意するのが。

ど真ん中のピースは、そうそう出てこない

ってこと。

 

男の子
男の子
 自分は勉強が苦手で、失敗して笑われるのが怖くて学校にいけません。

でもこのままでは先が不安なので、通信教育を受けていいですか?

 

とか、

 

男の子
男の子

今後はA高校か、無理そうならB高校に進学し、そのあとは大学で経済学を学び、社会に出たいと思っています。

 

とか、大人の知りたいド真ん中のピースをいきなり提供してくることは、ほぼないだろう。

 

出てくるピースは周辺からだ。

本質に関係ない、枠に近い部分から。

 

 

それでいい。

まずはここを埋める。

実際のパズルでも、端っこが一番簡単じゃん?

同じイメージを持っている。

わかりやすい端っこから埋める。

 

母
端っこなんてどーでもいいんです。

私が知りたいのは真ん中の核心の部分。

 

気持ちはわかるが、焦らず端っこから始める。(僕はね)

一見ムダに見える所から。

そうすることで、だんだん核心に近づく

 

 

周辺が埋まると子供は、

「端っこについては、親は理解してくれている」

という安心感を持つ。

 

すると次に、そのちょっと内側のピースを、子ども自ら提供してくる。

一番外側が分かってもらえたなら、もう少し内側も分かってもらえるだろうと考える。

理解してくれる人には、次の情報を出してくるはずだ。

理解されずに傷つくリスクが低いから。

すると、さらに内側へ。

 

こうして、次第に核心付近のピースをポロポロ落とし始める。

こうなればしめたもので。

全部は埋まらなくても、大枠で『その子の全体像』がわかるって寸法だ。

 

 

そう。

大事なのは、「絶対に合ってる端っこのピースを集める」こと。

これにより、子ども自身に核心のピースを出させるのだ。

 

さすがにコレは合ってるでしょってカードを切りまくって、

  • あなたのことを見ているよ
  • 味方だよ

って表現していく感じ。

 

まとめ

『正解』は、本人の中にしかないと、僕は思う。

「この子、何考えてるのかしら」

その答えは、本人にしかない。

 

本人が表現しやすいように、外側のピースからパズルを埋めていくイメージで、僕は情報収集している。

あくまで僕のやり方なので、参考までに。

POSTED COMMENT

  1. ピンポン@ASD年中男児育て中 より:

    P先生、いつもありがとうございます。
    パズル方式、とてもわかり易かったです。
    発達に不安を感じ始めた頃、子の特性についてこうなのか、ああなのかと想像して推理しているうちに、気がつけば自分が不眠に陥るくらい追い詰められた時期がありました。
    夫から、「自分の子はこうあってほしい」みたいに理想や傲りが根っこにあって、子のありのままの姿を否定しているのでは?という一言で、とにかく何がこの子を笑顔(夢中)にさせて、何がダメ(癇癪、硬直など)かを見るようになった経緯があります。まだ言葉が出なくて本人の好き嫌い、快不快でのピース集めでしたが、この子はこういう子なんだと理解するには十分でした。そこからは受容も早かった気がします。
    事実に則して見守ることがきっと大切だったと勝手に理解しています。

    現在、自治体の療育を利用していますが、相談の場では親や子の困り感を聞いてはくれても、こういうパズル形式のような具体的な対応って聞けないのが残念です。医療との違いでしょうか。

  2. しのぶ より:

    P先生こんにちは。今回も大変分かりやすい記事ありがとうございます。
    情報収集と、あなたはそう思うんだねがコラボできるなんて理想的ですね!

    我が子はまだ幼いうえに言葉も遅れているので、私は今までたぶん推理が主だったのですが、パズル式で確実性も狙っていきたいと思います。慣れてないからメモを積み重ねようかな。
    また更新楽しみにしています^_^

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