親子関係

子どもがうまく育っているサイン

興味深い議題だ。

 

母
「今の所この子はうまくいっている」ってサインはありますか?

 

母
順調に育っている子の特徴って何かありますか?

 

親御さんや学校の先生に聞かれる。

興味深い。

 

うまくいっている子のサインを逆算する

親御さんは、不安なのだ。

今、不登校とか発達デコボコとかで、困り事を抱えている子。

この子が将来(具体的には思春期以降)、どうなっていくのか。

 

今のこの状態が、いいのか悪いのか。

今の対応で合っているのか。

まずいことをやっちゃってるんじゃないか。

 

目安がほしい。

安心したい。

その気持ちは非常にわかる。

 

 

僕、この分野の診療を始めて、結構な年月が経つんだけど。

初診時は幼児だった子に、高校受験の話をする例も出てきた。

大きくなったなぁ。

 

年月を経ると、当たり前だが状態が変わる。

発達段階や成長具合もそうだし、周囲の環境や本人に期待されることも変わってくる。

じゃあ、振り返ってどうだろう。

 

うまくいっている子たち、小さい頃に何か共通点があった?

こじれた子たち、共通のサインがあった?

 

逆算して考えてみた。

 

結論、「ない」

たくさんの子たちの顔を思い浮かべ、振り返ってみる。

 

……うん、「ない」な。

 

共通点やサイン、「ない」。

どう考えても「ない」のである。

 

 

小さかった頃の様子。

あの頃の、困った行動と、ステキな発言。

たくさんの子たちのそれを、特性の強さや種類を加味し、考えてみる。

 

こんなことを言っていた(またはこんな行動をとっていた)子は、思春期以降うまくいっている。

そんな共通点は…………ない。

ない、です。

 

 

長所が伸びた例もあるし、伸びなかった例もある。

短所がカバーされた人もいるし、されなかった人もいる。

 

特性が、環境にうまくハマった子がいる。

自分で特性をコントロールし、うまくハメに行った子もいる。

本人は非常に頑張ったけど、残念ながら環境に恵まれなかった子もいる。

概ねうまくいっていたのに、ある時特定の一人に振り回されて心が折れた子もいる。

 

いろいろなんだよ。

マジ、色々だ。

 

特性と予後

子どもたちはみんな、基本的に優しい。

いい子ですよ、みんな。

 

その優しさで、うまくいくこともある。

逆に、優しすぎるゆえにうまくいかないこともある。

 

僕の主観だが、「この子はうまくいってほしい」「うまくいきそうだな」と思う子がいる。

人当たりが良かったり、気持ちの言語化が上手だったり、周囲をよく見ていたり。

素直に人の話が聞け、また素直に自分を表現できる子は、応援したくなる。

でも、そんな子たちがスルッとうまくいくかというと、そうでもねぇ。

 

こんなにコミュ力が高いのになー。

理由は色々。

純粋に環境に恵まれない子もいれば、頑張りすぎて自分が疲れちゃう子も。

もちろん、その持ち前の性格で友達がたくさんでき、すごくうまく行く子もいる。

 

 

逆に、初診時は心配になる子。

乱暴、反抗的、トラブルが絶えない。

診察室でもほとんど受け答えができない。

これまでの経験から拗ねちゃってる子とか。

 

こんな調子だもんで学校からの締め付けも強く、本人はさらに反発する悪循環。

大丈夫かなーと思う。

 

こんな子が数年後、めっちゃうまくいっているケースがある。

あの頃の苦労は一体どこへ? ってなる。

素直で明るく、何の問題もなくなっている。

 

反抗的な子って、納得すればフットワークが軽い。

得意分野を持っていることも多い。

周囲に認められ、自信を持ち、友達がたくさんできている。

 

もちろん、反抗的で困るまま大きくなる子もいる。

警察沙汰とか。

その差はどこに?

少なくとも小さいとき(幼児期とか小学校低学年)の彼らの言動からは、僕は見て取れない。

 

一つだけ、言えること

 

なんだよっ。

結局わかんないんじゃん!

 

まぁまぁ、話は最後まで聞いてほしい。

 

 

正直、子ども本人の言動からは、僕には先が予想できない。

小さい時点で「こんなふうに育っていればOK」と言える指標はない。

 

ってことは同様に、思春期頃のその子の言動が、その先(社会に出てから)の指標にもならないってことだと思うし。

思春期は良くても、大人になったらつまずく可能性はあると思う。

思春期に荒れても、自立した大人になる可能性も高いし。

 

でも、僕が結構な精度で「これは」と思っている点があってですね。

今回はその話で締めたい。

 

 

子どもの予後の指標。

それは、

周囲の大人が話を聞いてくれたか

です。

 

周囲の大人、具体的には親御さんと学校の先生(あと近しい大人がいればその人も)だ。

この人たちが、話を聞いてくれたか。

自分の意見を尊重してもらう場があったか否か。

 

 

僕の外来に来る子は、なんらかの困りごとを抱えている。

困りごとの内容はさまざまだが、まぁ「社会的に困ること」が大半だ。

不登校とか対人トラブルもそうだし。

こだわりや過敏、または強すぎる不安とかもね。

「社会生活で困る」よね。

 

これを、『指導』されずに聞いてもらったか。

社会に適応するよう『矯正』するんじゃなくてさ。

  • 自分はこれがムカついた。
  • 絶対に学校には行きたくない。
  • とにかく無性に人の目が気になる。
  • 友達が悪口を言われると、自分がつらい。
  • もう今は、なにがわかんないのかわかんなくてとにかく不安。

↑こんな正直な気持ちをさ。

一回、聞いてもらえたか。

 

 

子どもの主張って、めちゃくちゃ(なことが多い)ですよね。

筋が通らないから、大人は『指導』して『矯正』しようとしがち。

 

でも、

頭ごなしに否定された子

と、

まずは主張を聞いてもらった子。

この両者間で、明らかな差が出るように、僕には思える。

 

 

ADHDタイプでわかりやすいよなー。

叱られ続けた子は、思春期にわかりやすく荒れる。

話を聞いてもらった子は、思いの外素直だ。

ADHDって良くも悪くも子どもっぽくてですね。

思春期でも素直に「お父さん・お母さん大好き!」ときたもんだ。

また理屈っぽいので、ある程度の年齢になれば理屈で話ができる。

 

小学生の荒れた(衝動的で反抗的な)ADHDが受診に来ると、

マジ、話きいたげて!

悪い事言わないから!!!

と思うもん。

 

 

その目で見ると、ASDやHSCもそうなんだよなー。

「そう感じるのはおかしくない」と肯定されてきた子は、予後がよい。

こだわりの折り合いがつき、不安は鳴りを潜める。

小さい頃はバツグンに不適応だった子が、中学生頃に自分で修正している姿は感動を覚える。

 

 

だから魔法の言葉は、

あなたはそう思うんだねー

なのだ。

 

合っている・間違っているに言及しない。

「その子はそう思った。」

この事実のみを肯定する。

 

軌道修正は、いったん受け入れたあとだ。

大人だもんで、大人が受け入れるのが先でしょう。

 

 

僕は、親御さんにもアドバイスするし、学校の先生にも伝えてもらう。

無茶苦茶な主張でも、まずは一回聞いてやってください。

 

実行してもらえると、子どもの言動が変わる。

すぐに少し変わる。

ちょっと素直になって、「おっ⁉︎」と思う。

 

時間とともに、もっともっと大きく変わる。

小さい頃に撒いた種が、数年後、思春期以降に、花開く。

 

まとめ

 

「うまく育っているサイン」は僕にはわからない。

でも、話を聞いてもらった子は予後が良いとは言える。

 

親御さんの不安はわかる。

 

今、これでいいの?

接し方は合ってる?

 

そう思う気持ちは非常によくわかる。

 

 

でも、正解かどうかは誰にもわからない。

正解は、子ども本人が決める。

大人になって、あの頃を振り返ったときに。

 

 

今できるのは、とにかく子どもの話を聞くこと。

否定しないでいったん受け入れること。

それだけだと思うし、それが一番大事な気がしている。

そこから先は、子どもが自分で切り開く。

その力があるハズだ。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です