あなたに思春期のお子さんがいるとする。
暴れたり大泣きしたり大爆発したり。
落ち着くと、憑き物が落ちたように穏やかに。
でもまたスイッチが入ると大暴れ。
こんな繰り返し。
ほとほと手を焼いている。
この子があるとき、神妙な面持ちでこう言った。
「死にたい……」
さて質問です。
あなたが親だったらどんなリアクションを取りますか?
子供が死にたいと言った時。
最愛の子供が、命に代えても守りたいと思った子供が、「死にたい」って言った。
まーーーーー、パニックになりますよね。
え? え? 死にたい?
今死にたいって言った?
なんで? どういうこと?
シチュエーションはいくつかあって、
こんなのもバリエーションですね。
どのシチュエーションでも問題の本質は同じ。
さぁどうする?
振っておいてなんだが、僕はこれには絶対的な答えってないと思っている。
子供の性格、その発言に至った経緯、親御さんとの関係なんかで満点の答えは変わる。
※一応、教科書的な答えは最後に書くが。
でも、これだけは避けて! というリアクションが二つある。
この二つだ。
説明する。
まず、叱りつけると何がまずいか。
「死ぬなんて絶対に言わないで! お母さん悲しい!
それだけは絶対に言っちゃダメ!!!」
とっさにこのようなリアクションをとる親御さんは多い。
気持ちはわかる。
それだけは言ってほしくない、一番悲しい発言だ。
お子さんをそれだけ大事に思っているということは、本人にも伝わるだろう。
でも。
子供がなぜ死にたいと言ったのか、考えてみてほしい。
「今すぐ死ぬ決心をしたので報告です。それでは死にますさようなら」
という意味ではない。
「死にたいくらい辛い!!!」
ってこと。
つまり、
すごくすごくすごーく辛い! お母さん分かって!
という心の叫びだ。
これを叱りつけて否定する。
すると子供は、「死にたい」と言うこともできなくなる。
「死にたい」という表現しかできないくらい最大級に辛いのに、「死にたい」とも言えない。
辛さを吐き出す方法を奪われてしまった。
実際こう言われたお子さんは、
「ごめんねお母さん、もう絶対に言わないよ」
と寂しそうに謝罪したという。
切ない……。
ふたつめ、そっとしておく。
最愛の我が子に死にたいなんて言われた。
なんて答えたらいいのか判断できない。
下手に刺激して本当に自殺されちゃったりしたらどうしよう!
とりあえずそっとして、様子を伺おう。
これも理解できる。
子供の「死にたい」がどこまで本気かわからない。
ノリで言ってるだけかもしれないし、本当に死んじゃうつもりなのかも。
今じゃなくても、もう少し大きくなったら本当にやっちゃうかも。
判断できない。
よく家で大暴れしているし、親子関係が良くないのは親も自覚している。
下手に口を出さず、そっとしておくのが一番じゃなかろうか。
わかる。
でも。
これの何がいけないって、子供がひどく傷つく。
上述の通り、死にたい発言の真意は、「死にたいくらい辛い」ってこと。
子供もそれなりの覚悟を持って発している。(ノリで言う言葉ではないだろう)
決死の心情吐露だ。
それを、スルーされる。
あぁ、ここまで言っても、向き合ってももらえないんだ。
僕なんてほんとに死んだほうがいいんだろうな……。
切ない。
切なすぎる。
親御さんはそんなつもりじゃなかったにせよ、子供は深く傷つくだろう。
じゃあどう答えればいいのかって?
上述の通り、僕は答えは持ち合わせない。
僕から言えることは、
「死にたい」ってつまり「生きたい」ってこと。
死にたい気持ちと同じくらい強く、生きたい気持ちを持っている。
なので、すぐに死んじゃうことはないので、まずは落ち着いて。
子供の話を聞いてあげてほしい。
「死にたいくらい辛かったんだね。
よかったら、あなたの気持ちを教えて?」
これが教科書的な正解。
死にたいほど辛かったという事実を、まず受け入れる。
その上で、なぜそう思ったのか、どんなことがあったのか。
子供の言葉で言ってもらう。
え、そんなナイーブな話、聞いていいの?
「死にたい」なんて強い拒絶の言葉に聞こえるが、そうではない。
死にたいくらい辛い気持ちを親御さんに分かってほしいのだ。
だから親にそう言った。
本気の拒絶なら、そんなこと言わないでひっそり自殺や失踪を遂げるはずだ。
でも、そうなっていない。
「死にたい」って言ってくれた。
大丈夫。
この親子関係は大丈夫だ。
子供の気持ちを聞いた上で、お子さんに伝えてあげてほしい。
「あなたは何より大事な子供だ」って。
だから死んでほしくないって、正面から向き合ってほしい。
子供に死にたいなんて言われたら、とにかくビックリすると思う。
でも大丈夫、死んじゃったりしない。
まずは落ち着いて、話を聞いてあげてほしい。
そしてお母さんは味方、自分には生きる価値があると思わせてあげてください。
死にたいくらい傷ついている、最愛の我が子に。