学校が再開してしばらく経つが、いかがお過ごしでしょうか。
休校で染み付いたダラけた生活リズム。
今までできていたルーチンすら忘却のカナタ。
しかも時間割が不規則な上に、今までになかった作業や持ち物が増えた。
「検温した?」
「マスク持った?」
「マスク袋(そんなのあるんですね)は持った?」
支度がままならず、イライラしたお母さんから相談を受けた。
子供にやらせた方がいい? 親が手伝っていいの?
小学生の娘さんはADHDタイプ。
見通しを持って物事を進めるのが苦手。
宿題が終わってから遊べばいいのに、途中でほっぽり投げている。
学校の支度も、あれこれ気が散って進まない。
診断レベルでなくても、『ADHDタイプ』の子はかなり多いはず。
子供なんて基本的に多動で衝動的で不注意だ。
小言ばかり言ってしまって。
親子関係が悪化して、よくないのは分かっているんですが……。
ADHDタイプは物事をやり遂げるのが苦手。
好きなことには驚異的な集中力を発揮するが、興味がないと驚異的に続かない。
明日の時間割を確認していたはずが、気づくとテレビを見ている。
作業途中のランドセルがポツンと放置……。
「明日の準備、やっちゃいなさい」
耳がなくなったかのように反応しない。
聞こえてない?
今度はもう少し大きい声で、
「明日の持ち物は? 体育はあるの? 給食は?」
うんともすんとも言わない。
Siriの方がよっぽど可愛げがある。
「こっちを見なさい! 明日の準備は⁉︎」
母、キレてテレビを消す。
自分でやり遂げる力をつけさせなくては!
少しずつでも練習させなきゃこの子のためにならないっ!
使命感から、母の頭にツノが生える。
「自分の学校の準備くらい、自分でしなさいっっっ!」
母だって夕方の時間は忙しい。
ただでさえ在宅ワークが進まずイライラしている。
あたしゃ子育てしながら仕事もしなくちゃいけないのに!
すると。
テレビを消された子供が大激怒。
「今見てたのに! 準備はあとでしようと思ったのに!
お母さんのタイミングで私を動かそうとしないで。
そんなに気になるならお母さんが自分でやったらいいじゃん!」
屁理屈がポンポン出てくる。
ホント、Siriの方がよっぽど可愛げがある。
娘のためを思って言ったのに!
私だって忙しいのに!
で、大げんかという顛末のようだ。
わかってるんです、良くないって。
でも、人格否定のようになってしまって……。
お母さんショボン。(´・ω・)
お子さんはというと、母と僕の大人の会話に飽き、診察室を出て待合室で飛び回っている。
聞いているだけでしんどい。
お母さん、大変でしたね……。
さてさて。
ADHDタイプの子の学校の準備、どこまでやらせてどこまで手伝います?
僕は大人がやって良いと思っている。
理由は、「できないから」。
能力的に「できない」。
もう、割り切ったほうが早いと思う。
もちろんいつかはできるようになる必要がある。
自立する頃にはなんとかなっていないと、困るのは本人だろう。
でもこの子たちが見通しを持って計画的に物事を進めるには、強い意志が必要となる。
「私は忘れ物が多いから、チェックリストを作ろう」
「大事な用事は確実にメモに残そう」
それまでの失敗経験から、自分でそんな解決策を立てて実行する。
苦手なところは人一倍、いや人の10倍くらい注意して、やっとなんとかなる。
小学生のこの子にそれができるか?
そんな決意は持っていないだろう。
マスクを忘れようがランドセルを忘れようが、その時はその時。
今は目の前のテレビが見たいのよっ!
無理や……。
この子にやらせるのは無理や……。
なので、お母さんがやってあげてくださいとお伝えした。
お互いの精神衛生上、「できない」ものとして、親がサッサと終わらせる方がいいだろう。
もしくは親は極力関与せず、子供本人に尻を拭かせるか。
二次障害を作らないためだ。
再三書いているが、怖いのは二次障害。
いつも怒られる、どうせ私が悪いんだ、どうせ自分はできないんだ……。
そんな風に思わせないこと。
ところで「ADHDはいくら言っても響いてない」ってホント?
そんなわけはない。
ADHDだって傷ついている。
そう見えないだけだ。
叱られている最中に、もうヨソに興味がうつってしまうだけ。
でも、傷ついてる。
傷つき体験を重ねているのだ。
これはADHDの特性によるもので、この子は悪くない。
お母さんを怒らせようとしているわけじゃない。
だけどイライラしますよね。
だから、「できない」。
そう思うのが手っ取り早いと思う。
「ヘイSiri、明日の準備をやっておいて!」
Siriに明日の準備はできない。
この子にも明日の準備はできない。
でも、この子はいつか自分でできるようになる。
自分で尻拭いできる日がくる。(Siriだけに)(やかましいわ)
その日まで、親御さんが手伝ってあげてください。