Categories: 発達障害HSC

インフルエンザ vs 感覚過敏

年末ですね。

みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 

インフルエンザ流行中

いやー。

なかなか更新できず、申し訳ない。

 

なぜってそりゃ、インフルエンザですよ。

大流行してますよね、きっとみなさんの周りでも。

 

いやー大変。

熱、咳、倦怠感、嘔吐、頭痛……つらいですよね。

 

え、僕?

うん、全然罹ってない。

病院が激混みしてるって話です。

僕は全然、ピンピンしてる。

 

 

僕、よく精神科医と間違えられるんだけど。

違って。

 

小児科医です。

 

フツーの。

普通の小児科。

発達外来だけやってるんじゃなくて。

普通に一般小児科外来やってます。

風邪とか風邪とか風邪とか便秘とか見てる。

むしろそっちが本業。

発達・メンタルの専属ではない。

勘違いしていた方、いるんじゃないでしょうか。

 

 

で。

ここ最近、外来が混みまくっておりまして。

インフルエンザA、インフルエンザA、インフルエンザA、たまにコロナ、おっとインフルエンザB。

外来が終わらねー。

それで更新できなかったと、こういうわけで御座います。

僕頑張ってる。

お歳暮待ってます。

 

例の鼻グリグリ検査

でね。

数多のインフルエンザおよびその他の発熱の子供達を診察していると、一定数、例の鼻グリグリ検査が嫌いな子と遭遇する。

 

あの、鼻に綿棒突っ込むヤツね。

なんて呼ぶの? インフル検査? 鼻検査? 鼻綿棒?

とにかく、発熱で病院に行くと必ずやられる、例のアレだ。

 

いや、子どもなんて大抵アレ、嫌いなんだけどさ。

中でも特に苦手意識の強い子がいるというのが今日の話で。

 

もうね。

言って聞かせてもだめ。

親御さんとスタッフとで時間をかけて説得し、本人も「うん、僕できるよ!」とか言うんだけども。

いざとなると、やっぱりダメ。

 

小さい子なら押さえつけて採取できる。

でも、ある程度大きくなるとそれも難しい。

その抵抗する力たるや、すさまじいもので。

僕のパワーでは太刀打ちできない。

どうしても本人の協力が必要となる。

じゃないと危険だ。

 

 

面白いのよ。

ちょっと脱線するけど、

  • ある程度年齢が大きく、
  • かつ例の検査がイヤな子。

この言い訳や行動が、非常に興味深い。

 

一定ラインより幼いと、

「ヤダヤダとにかくヤダ!」

なんだけど。

 

それより大きいと、「やらなきゃいけない」ってことは理解できる。

いや、理解できてしまう、と言うべきか。

 

頭では理解しているが、でも気持ちは追いつかない。

なので、非常に面白い興味深いゴタクを並べ立てることがある。

面白いので、いくつか紹介させてほしい。

 

 

 

 

その1:

ちょっとまって!

 

やろうとすると、「ちょっと待ってちょっとだけ待って落ち着くから!」。

おぉう、そうか。

で、落ち着いたタイミングで例のブツ(綿棒)を鼻の前まで持っていくと、再度「ちょっと待ってちょっとだけ待ってタイミングが!」。

この無限ループ。

 

 

 

その2:

自分で!

 

ラチが明かず、痺れを切らした親御さんが抱っこして押さえつけようとすると、「自分でできる!」。

じゃあってんで、自分で着席し鼻を差し出すよう指示すると、やっぱりできない。

なので抱っこしようとすると「自分で! できるから!!!」。

この無限ループ。

 

 

 

 

その3:

何秒かかる⁉︎

 

検査にかかる時間を聞いてくる子にもよく遭遇する。

5秒だよーと説明すると、「長すぎる!」。

じゃあ、オマケして4秒?

「長い! 1秒がいい!」

よし、じゃあ1秒にしようか、と提案に乗ったフリ。(実際は5秒かける気満々で。大人ってキタナイ。)

すると、「やっぱ1秒は長い! 0秒で!」

0秒……それはちょっと、どうしろと。(笑)

 

 

 

 

その4:

トイレ!!!

 

イヤだけど、検査しなきゃいけないよね。

説得し、本人も理解したようだ。

よし、じゃあ検査するよという段になると「トイレ!!!」。

いや5秒で終わるから、先に検s「トイレ!!!!!」。

 

じゃあってんで、トイレに行かせる。

まぁ生理現象なので、仕方ないか。

で、15分後に戻ってくる。(15分戻ってこないってことは、純粋なトイレじゃないことは明白なんだけど。排尿にそんなに時間かからん。)

よし、スッキリしたところでいざ検s「トイレ!!!!!!!!!!」

 

親御さんもスタッフも苦笑い。

今行ったでしょう?

「でもまたおしっこ!

 もれるもれるもれるぅぅぅ〜〜〜〜〜!!!」

 

 

 

 

笑っちゃうだろ?

でも、本当なんだぜ。

 

伝家の宝刀トイレ攻撃とか、これまでに会ったの一人二人じゃなくて。

結構いて。

みんな似たようなことを考えるものだ。

他にも、

  • 自分は検査したいんだけど、手が勝手に動く。(ガッチリ鼻を覆いながら)
  • 検査せず、一生高熱のままでも俺は構わないっ!

とか、笑ってしまう。

笑いながら、困ってしまうんだけども。

 

 

子どもって、子どもだ。

あの手この手でなんとか回避しようとする。

その手法が、あまりに理にかなわない。

非常に面白い興味深い。

診察は遅々として進まない。

※いや、実際は頑張って進めてますよ。外来パンクしてるんで。

 

感覚過敏

この子たち、おそらく感覚過敏があるのだろう。

 

ある程度の年齢になると、それまでの経験から、検査の痛みの度合いが推測できるようになる。

痛いけど、コレくらいなら耐えられる(耐えるしかない)

と判断する。

これが『定型発達』の感覚。

 

でも、そうじゃない子もいる。

そう、感覚過敏を持つ子たち。

 

痛いのは、とにかくめっっっっっちゃイヤ。

 

 

彼ら彼女らは痛みに敏感だ。

不安の強さを併せ持つことも多く、痛い検査なんてマジでめっちゃ無理。

過去にに綿棒を鼻に突っ込まれた経験、そして痛かった経験から、超絶怒涛の拒否反応を示す。

 

僕は、この子たちを責める気にはなれない。

 

痛みってその人個人のものだ。

特有のもの。

どの程度痛いと感じるかは、人による。

 

この子たちは、人よりもちょっと『痛い』のだ。

いや、かなり『痛い』のだろう。

いやいや相当『痛い』のだ。

 

みんな我慢してるんだから、とかそういう話ではない。

「その子には」我慢できない痛みなのだ。

 

 

不思議だが、多様性だ。

痛みってめっちゃ多様性があるなぁと思う。

全然平気な子もいるしね。

痛い子には、耐え難い痛み。

 

んだけど、インフルエンザの検査は現状、例の鼻グリグリである。

医学は進んでいるというのに、ずいぶんアナログな手法だ。

もうちょっと、こう、なんとかならないもんかなーと思う。

 

思いながら、僕は今日も子どもに鼻グリする。

今日もまた大泣きされ、嫌われる。

嫌われつつ薬を処方する、そんな仕事だ。

お大事に。

pediatrician-p

View Comments

  • うちの娘高1は感覚過敏に不安が強く生真面目なタイプで、病院系は本当に苦労してます。
    錠剤も飲めない、そしてそんな自分に苛立ち落胆し落ち込み泣いている、、
    フォローするのは私、、
    はぁ、、となります。
    だけど発達的には問題なく、発達年齢は実年齢より高いです。
    ややこしいです( ; ; )学校も行けません( ; ; )
    途方に暮れます。

  • 先生本当にお疲れ様です。まだまだこの忙しさは続きそうですね。
    今回の内容我が子の事言ってるのかと思って笑ってしまいました。さすがに小学6年生になったので、頑張れるようになりましたが。
    感覚過敏ですが、我が子には不思議な過敏がありまして、鉛筆だと書いた時のカサカサって感覚が気持ち悪くて書けないらしく、もともと学習障害で字を書く事がストレスなのに更にストレスに。なので学校でも特別にシャープペンシルで芯は4Bで対応してもらってます(小学校は基本鉛筆でないとダメなので)。予防注射関係も数日まえから必要性について説明して、当日も家でかなりの心構えしてから病院にむかう感じです。大変ですがなんか面白いですね。

  • うちの娘も5才位まで、インフルエンザ予防接種では院内を走り回って逃げてました。
    今でも小児科に行く前に、何をするのか、何分かかるのか等、詳細を聞いてきます。
    小児科スタッフ、本当に忍耐の連続ですよね…
    お疲れさまです!

    これも感覚過敏の一種なのでしょうか。
    その娘、非日常を感じるとすぐにトイレ(小の方)に行きたがります。
    その頻度が半端ないです…
    旅行で高速道路に乗れば、不安からかPA 毎にトイレ休憩要請。おまけに先日は、高速で飛び石くらってしまい、フロントガラスが割れ不安MAX。
    修理で台車に乗ろうものなら、トイレした直後に速攻トイレコール。

    でもこれ、前から変わってないかと聞かれたら
    前よりはマシになってきています。

    生きづらいですよね…
    年齢と共に少しずつ良くなるといいな…と願ってます。

  • 更新ありがとうございます。
    お年賀に、あったかいお部屋で美味しいハーゲンダッツ詰め合わせを、心の宅配便送っておきます。

    ほんと、リアルにお届けしたい…。今年もゆるっとよろしくお願いします。

  • 先のコメントにありました、
    「もういっかい!もういっかい!」と泣くお話、、
    私に聞かれた訳でもないのに恐縮ですが、うちの子も時々あるので、ついひと言、、。

    うちの場合は、自分の中に「泣かずにきちんと受けたかった」という思いがあって、騒いでしまったのが不本意で自分の出来に納得いってないので、もう一回やらせて欲しい、そうしたらちゃんとやるから〜〜〜!!!という感じかと思っています。
    もう一回、と騒いでいる時点で、既にちゃんとしてないのが笑えるな、と書きながら思いますが。
    (現場では、母ももちろん、半ギレです。。お恥ずかしい。)

  • あけましておめでとうございます!
    記事更新嬉しいです
    お鼻グリグリ大変ですよね(;_;)
    今回も勉強になりました。
    感覚過敏からもあるのですね。

    大きく話が脱線します、
    〝過敏〟から思いだして‥

    息子は発達凸凹グレーですが、そうわかるまで紆余曲折ありました。父子問題もあり、紹介からの紹介で最後に児童精神科に辿りつき今に至ります。

    最初の病院にかかったキッカケは、小3時でテレビの音が異様に大きく聞こえる、ということでした。
    (本人が、こんな大きな音出して近所にも迷惑だよ!!と騒いで‥)、

    もちろんテレビは普段通りの音量で家族は普通の音量で聞こえる中での息子の発言。。
    耳鼻科へ、小児科の発達外来→児童精神科に。
    その間にいつの間にか聴覚過敏?は収まりました。
    あれは発達凸凹に関わる聴覚過敏だったのか、、
    そうなら、一時的になることもあるのかなぁとか不思議に思った記憶が。。

    脱線の上に、関係ないただの体験談、失礼しました。。

    今年もよろしくお願いします(^^)

  • 現在高1の息子もそうでした。今は鼻グリも大丈夫、成長しました。
    今回の記事を読んで、3歳くらいまでの息子のリアクションを思い出しました。

    歯科健診や予防接種に連れて行くが嫌がる

    おさえつけ半ば無理矢理決行、当然ギャン泣き。親はやれやれと待合室に向かうも…

    (終わったらケロッという子が多いと思いますが)
    息子「もういっかい!もういっかい!」と泣きながら診察室に必死に戻ろうとする

    もう1回やってもらえる訳はなく、泣き叫ぶ息子を無理矢理連れて帰る

    こんな感じでした。
    これは何だったのでしょう?いま思えば、自分のタイミングでしたかったということなのかな…当時は本当に訳がわかりませんでした。
    P先生のご意見うかがいたいです!

  • 次女のインフルエンザの予防注射の様子がまったく同じで、うちだけちじゃないと少しだけ気持ちが楽になりました。
    1年生から逆不登校で、毎朝の戦いもかれこれ5年(幼稚園からいれると8年…)
    今年は注射で苦労するのはやめようと鼻からのワクチンを受けようとしました。
    注射よりも発熱の確率が高いかもと説明した所、学校は休みたくないから注射にするというので、ギリギリなんとか接種終了。
    次の日、元気でしたが、行きたくないけどお休みもしたくないの戦いの後、結局お休みに落ち着くという…
    せっかく注射頑張ったのにお休みするんかーい!!
    今年も戦いは続きそうですが、P先生のブログをはげみに頑張ります!

  • 予防接種のパート看護師をしていた頃、泣いて暴れる年長男児を抱っこしていて、噛みつかれた経験があります。
    腕にしっかりと歯型がついていたなぁ〜。
    結局、接種出来ずじまいでしたねぇ。
    我が子に怒り狂う母親に「こんなに抵抗する力があるなら、どんな感染症にも負けないよ」と、おおらかに笑ってくれた医師。
    もしかしてP先生だったのかも?

  • ウチの中学生の娘は、感覚過敏ではないですが、あの検査はムリです。トラウマです。そういう子もいます。

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