境界知能。
知的障害ではないんだけど、じゃあ普通にできるかというと、そういうわけにもいかない。
支援はなくて、自己責任になっちゃって。
生きづらい人たち。
ギリギリchopの人。
質問をいただいた。
娘が発達凸凹と境界知能です。
正直、発達障害だけだったら本人の強みに働きかければ将来的に仕事もできるし予後は良い感じがしますが(人によるとは思いますが)、境界知能だと、本人にとって得意なことでも、全体から見たら平均下・・・どまりな気がして、来年から就学だけど、どう支援していけばいいのかな、と悩んでいます。
二次障害をおこさないようにしたいのですが、学校でお友達よりも基本出来ない、という立ち位置でこれから過ごすようになりますよね(これ私だったらしんどい!)。
むりやり人の倍勉強時間を持つといっても無理があるし。
もっと境界知能のこともブログに書いていただけるととっても嬉しいです^^
境界知能。
IQでいうと、70〜85くらい。
これがね。
結構いるんですよ。
想像以上にかなり多いんです。
↓こんな感じ。(画像ネットから借りました)
視覚的に見ても、当該部分(オレンジ)の人ってかなり多くないですか?
フツーにたくさんいる。
統計的には14%だって。
35人クラスなら、5人いる計算だ。
日本人で、B型は20%、AB型は10%程度らしい。
境界知能は、AB型とB型の中間くらいの頻度で存在することになる。
それって全然多いじゃん。
全然レアじゃない、「普通のこと」のように思える。
一方、知的障害はというと。
実はこっちの方がだいぶ少数派なのだ。
視覚的にも(濃い青の部分)、だいぶ少ない。↓
全体の2%。
35人クラスだと、1人弱。(0.7人)
※知的障害は支援級や支援学校に行っていることが多いが、全員が通常級に在籍すると仮定して。
こっちには、支援がある。
手帳も取れる。
境界知能には、基本的に支援はない。
かなり多いのに、困っているのに、基本全部『自己責任』だ。
みんなと同じハズで、できないのは努力不足。
これが、境界知能の生きづらさ。
※知的障害の方がいいって話じゃ無いです、念の為。知的障害には知的障害の大変さがあります。
でね。
ここまでは一般論として。
以下に、僕の視点から見る境界知能の生きづらさを書く。
臨床で、ただ単純に「知能が境界域」ってだけじゃない生きづらさがあるよなーと思わされる。
一口に境界知能といっても、人によって得意な分野と不得意な分野がある。
WISCでは、4つの領域に分けてIQを算出するんだけど。
どの領域も平均って、あまり見ない。
境界知能の人、結構みなさんデコボコしている。
こんな感じ。↓
で、得意と不得意をトータルして、全体的なIQが境界域なのだ。
ってことはですよ。
わけです。
得意な分野は、平均くらいの力がある子も珍しくない。
その分、不得意な分野は知的障害レベルだ。
相殺して、総IQが境界域となる。
これが境界知能。
例えば、
得意:言語理解が平均域
不得意:それ以外はIQ70前後 (場合によっては60前後があったり)
って子がいたとする。
この子、実生活では知的なハンディがあることが、一見して分からなかったりする。
なぜなら、言語能力が高いから。
喋るんですよ。
ペラペラ普通によく喋る。
一見、分かっているように見えちゃう。
でも、言語の力が高いだけで、理解は全然できていない。
作業も苦手。
するとどうなるか。
サボっているように見える。
できるハズなのに、怠惰でやらないように見えちゃう。
↑コレ。
コレが、知的障害の生きづらさだと思う。
別の例だと。
例えば、
得意:処理速度が平均域
不得意:それ以外はIQ70前後 (場合によっては60前後があったり)
って子がいたとする。
この子も、ハンディがわかりづらかったりする。
なぜなら、処理能力が高いから。
やらせてみると、結構できる。
テストとか作業とか提出物とか、割とよくできている。
実際は全然分かっていないんだけど、やることさえハッキリしちゃえば、それなりにできる。
特に学校の勉強って、「作業」ができればそれなりに点数になったりするからさー。
するとどうなるか。
寡黙な(おとなしい、引っ込み思案な)子だと思われる。
喋らないだけで、フツーに理解していると勘違いされる。
↑コレね。
境界知能の生きづらさ。
ホントは全然わかってないのにね。
境界知能って、どの能力も平均して境界域ってわけじゃない。(ことが多い)
できるところはそれなりにできる。
するとその子は、得意な能力を積極的に使うようになる。
言葉が得意な子はよく喋るし。
作業が得意な子は積極的に作業する。
他にも、視覚情報は得意とか、丸暗記でなんとかゴリ押すとか。
不得手な部分は使わないので、不得手であることが見えづらい。
得意な部分があっても、その子は境界知能だ。
つまり、得意を相殺するだけの苦手を持つ。
苦手は、かなりの苦手であるはずだ。
その分野だけ見たら「知的障害レベル」であろう。
つまり、自力で頑張れってレベルではないのだ。
その領域だけでみると、知的障害レベル、支援が必要なレベルだ。
総合すると境界って話で、苦手な分野はめっちゃ苦手だ。
なんだけど、支援から漏れる。
これが境界知能のやりづらさだと思う。
まさにギリギリchopだ。
支援のはざま。
取れる選択肢をうまく組み合わせるしかないんだけど。
場合によっては、明らかに支援対象の人より、むしろギリギリの人の方がやりづらいケースもあるだろう。
境界知能に限らず、発達障害圏でもそうだ。
発達障害グレーゾーンとか。
「特性はあるけど、まぁねー」って人。
支援からは漏れ、でも自力でガンバレも難しい。
よく聞くのは、女子のASDとかさー。
女子は「擬態」するらしい。
男子よりずっと見つかりづらいのだ。
年齢と共にボロが出て、でも支援からは漏れる。
特性は「ある」。
でもそれなりに擬態している。
↑この人、ギリギリchopだ。
たまにやらかすけど、基本自己責任だ。
あとは、高知能もそうだよね。
境界知能は生きづらいけど、高知能もまた生きづらい。
境界知能(IQ70〜85くらい)と同程度、115〜130くらいの人もいるわけで。
今回は言及しないけど、この人たちも大概生きづらい。
でも、もちろん支援はない。
ギリギリchopは、やりづらい。
失敗は多い。
でも、支援はない。
頑張っても平均以下だったり。
努力が報われなかったり。
成功体験がないと、もう、どう努力していいのかもわからなくなり。
明らかに、自己肯定感が低下しやすい。
これが、ギリギリchopの実際だと思う。
じゃあどうするかって。
うまい案はないんだけどさー。
境界知能のラインを変えたり、支援を広げたりするのは手だ。
でも、別の場所に線を引くと、また新たなギリギリchopが発生するわけで。
線を引くと、ギリギリ漏れる人が必ず出る。
線を引くってそういうことだ。
これが悪いわけじゃないし、どこかで線を引くのはしかたないんだけど。
余談だけど、個人的には『境界・境界知能』の子のトラブルもよく聞く。
IQ85〜90くらいの、「境界域ではないんだけど、平均の中では低め」の人たち。
フツーにできるハズなんだけど、「おや?」って場面にちょくちょく出くわす。
だもんで、
知的障害とか発達障害とかの診断にこだわらず、その子の玉をよく見て
に帰結するんだけども。
まぁコレもフワッとしてるな。
とりあえず、
①ギリギリは生きにくい。
そして
②ギリギリは、ハッキリよりずっと人数が多い。
という2点を知っておいて損はないかと思う。
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IQ115~130って一番生きやすい層だったような
P先生!
こちらの質問をした者です!まさかお返事をいただけるとは!コメント書く事自体初めてで恥ずかしさからブログ開けれず今知りました(照)感謝です。
お礼に質問返しとなり恐縮ですが、「大器晩成」という言葉、境界知能やギリギリチョップの人にも当てはまるのでしょうか…?
夫は小学生のとき常にビリだったのに高校から頑張り理系院まで進みました。で、院でお試し?でうけたiqは、境界・境界知能という。そういう血を引いた娘も今後花開くのか開かないのか、期待してもいいのか、当たればラッキー位がいいのか…。夜分に失礼しました。
はじめまして。中2の息子がFIQ81の境界知能です。言語93PRIが77とPRIが断トツで低いです。
「すららをやったら、問題集を解くんだよ」と言っても全くやらず、怠けているんだと思っていました。が、境界知能の当事者の方(なんばさん)のYouTubeをみて、仲間同士の会話のテンポについていけず言いたいことがあっても言い損ねて人間関係を築きにくい、習ったその場では理解しても、30分後に同じことを聞かれてもわからない など、ほぼ息子にあてはまっていました。困っていたことは、やっと理解できたところです。
こちらのYouTuberさんも当事者さんで、それらの困りごとをどのように対処したのかは、語られていないこと、a型就労は知的障害者向けで、精神障害手帳持ちの境界知能の人には物足りない人もいるのが、悩みです。。 だけどまずは行きたい高校(定時制)に受かって、青春してほしいと願ってます
生きづらさ選手権ブッチギリっぽい‥ぽい感じでしょうか、やはり‥
小3あたりに強迫性障害やら父子間揉めごとなど開業の小児科発達外来受診してましたが、こちらの外来でできることはもうないので、と。最終的に児童精神科勧められ数ヶ月待ちで行き着きました。
高学年になって家庭内も壮絶な状況になり、主治医が息子との会話で年相応でないので『おや?』と思われ、心理検査しましょう、と。
受けたWISCで言語理解だけ平均の下、唯一平均の上と出た知覚推理と20以上差がありました。全検査100切り。。そりゃしんどかったやろうな。
グレーゾーンの中でも隠れグレーってくらい、見た感じごく普通、むしろ周囲ではお利口で通っていました。でも家族には分かる、白ではない。検査してやっと‥腑に落ちた次第です。ギリギリchopでした。
ギリギリ‥ほぼ救われへん社会システムになってるけど、定型さんに混じって‥まぁ頑張って生きていってな〜って‥
マジかー!!な国ですよね。いや、日本だけじゃないのかも知れないけど‥。
P先生おっしゃる通り線引もできませんもんね
ギリchopキャンペーンを日本中に広められたら、そんな人もいるんだねって、あの人も実は苦しい人なのかもって、目で見てくれる人も少しは増えたらいいのになぁ
中学校の成績が信じられないほど悪く、親が教えても塾に行かせてもその場では理解してるのに数日後に教えたこと全て忘れるので、この子は知能に問題があるのでは?とWISC検査をさせました。
結果まさかの上位に位置していて、ワーキングメモリだけ他より30低くADHDとのこと。成績悪いし学校行けないしで困っているのに、この結果では支援はないのかと途方にくれています。本人が生きていく力を身につける方法を模索中です。
先生、こんにちは。
今回は高IQの生き辛さについても少し言及して下さりありがとうございます。
数年前、息子が不登校引きこもり状態になったことをきっかけに、近隣のフリースクールや引きこもり家族会などを回り、色々な方々に会いました。
そこで出会う、生来の生き辛さのある子供たちの中には、高IQや発達凸凹を感じさせるお子さんも多く、ハッとさせられました。
幼少時から発達障害傾向が感じられた息子を育てながら、悩みつつ発達関連の書物を読むたびに、「あれ?これは息子のことというよりも、私自身のことでは?」と、ずっとモヤモヤしていたので、思い切って私自身が精神科で本格的な検査を受けてみました。
結果は思った通り、凸凹差34もある発達障害グレー。そして、意外なほどの高IQ。
高IQの生き辛さって何なんだろう?と疑問に思ったので、某高IQ者の親睦団体に入会し、会のイベントへ皆さんの話を聞きに行きました。
「クラスの皆が楽しそうに話している内容の、どこが面白いのか全然分からなかった」
「授業の内容が、易しすぎて苦痛だった」
などのお話が多く、不登校経験者がたくさんいらっしゃることに驚かされました。
IQ130超の皆さんは、人口の2%のマイノリティ。
おのずと理解者や共感者は少なく、集団の中では異端者としてはじかれ、孤独です。
同じように中央値から30以上離れたマイノリティであるIQ70以下の方には支援があっても、高IQ者には何の支援も配慮もありません。
その上、発達障害やグレーゾーンを併発しているいわゆる2Eのケースは、さらなる少数派。
私の息子達は不登校を脱してまた学校に通っていますが、優れた能力を持ちながら社会に居場所を見つけられず、引きこもりになるケースも散見されます。
自治体の福祉の現場に声を届けたくて、来月は引きこもり家族会のメンバーと共に、市長に会いに行くことにしました。
先生、高IQや2Eの生き辛さについてもまたぜひ考察発信して下さい。
まーさーにー!です。
我が子、言語能力高く、作文はクラスで1番早く書き終わります。
会話をしていても、自分の考えを言語化する能力に秀でているのを感じます。
しかし、算数数学がものすごく不得意です。
小学校高学年になり、算数がクラス内で「すらすら」と「じっくり」コースに分けられました。
「じっくり」チームは隣の教室で先生が丁寧に教えてくれます。
でも、丁寧に教えられても娘は理解できず。
危惧して低学年から公文に入れたけれど、方程式はやらないわけで。
「こうして、こうなるでしょ。わかった?」「わからない」
「どうしてわからないの?」
この会話が嫌でたまらなかったと思います。
数学得意な人って、「理解できないのが理解できない」ですよね。
「授業中寝ているような男子と同じ点しか取れないの。
私は一生懸命聞いているのに。」そう言ったことがあります。
そりゃー学校しんどくなるよなぁ。
「社会に出たら電卓使えば生きていける。国語得意だし、他の教科は暗記だから、数学捨てていいんじゃない?」と慰めてみても、人の目が気になる子なので。
丁寧にゆっくり教える、手厚い授業なのですが、わからんもんはわからんのじゃい!という人には残酷な取り組みです。
放課後に任意でやってくれるとありがたかったです。
まさにまさに我が子供達が当てはまります。
娘は処理速度が低く、言語理解は高めで、まさに擬態で幼い頃は困り感に気がつきませんでした。
もっと早くに気にかけてあげれたら
2次障害おこさずに居られたかな…などと思ってしまいます。
今、不安神経症でうつ状態としんどい状態です。
できる中で生きていく事はきっと辛かった事でしょう。
今回もとてもストンと腑に落ちるお話しありがとうございます。
まさしく私も擬態してこれまで人生何とかやって来ました。小6の娘も境界知能の凸凹激しめです。
私が育った昭和の時代には、大人は隅々まで目が届かず大雑把で、その隙に自分なりに擬態を覚えていったような感覚がありますが、今は一人一人にしっかり寄り添ってくださる先生方がいて、でも少しそれが窮屈さにつながっているように思います。
とても良く喋る、だから分かってる筈。と言う誤解は本当に様々な場面でおこります。でも、本人も何が分かってないのか分からないので誤解をとけない現状。
とても生きづらそうです。
来年には中学生。サドベリースクールの存在を知り検討していますが、そもそも知的に低いと向いていないのか探っているところです。