Categories: 心理学

忍耐強い人は、将来成功するか。 〜マシュマロテストより〜

この話から。↓

9月1日の「学校に行きたくない」新学期ですね。 一説によると、9月1日って子どもたちにとって一番キツい日だそうで。 そう。 学校に行きたくない...

 

努力とか忍耐とか我慢強さとか。

そういうのは、成功に必須な能力か。

忍耐強い人ほど、将来成功するのだろうか。

 

平たく言うと、

努力は裏切らない?

ってこと。

 

マシュマロテスト

こんな心理実験がある。

 

4歳の子どもたちの前に、マシュマロを1個ずつ置く。

検査者が言う。

 

そのマシュマロ、今すぐに食べてもいいよ。

でも、15分待てば2個あげるよ。

 

そう告げて、検査者は部屋を出ていく。

 

15分待てた子と、待てずに食べた子。

この2群について、その後を調べた実験だ。

 

 

結果、待てた子の方が明らかに能力が高かった

成人後も高収入だったらしい。

 

この実験から、こんな結論が導き出される。

 

忍耐力の高い子は、成功する。

我慢できない子は、成功しない。

 

マシュマロを我慢できる子。

勉強や課題においても、「将来のために、今はつらくても頑張ろう」と思える。

努力を重ねる。

結果、成功する。

 

我慢できない子は、他のシチュエーションでも目の前の欲求を優先する。

刹那的に判断し、後先考えない。

目の前の快楽に流される。

結果、成功しない。

 

つまり、

成功には忍耐力が大事

というわけだ。

童話アリとキリギリスについて、科学的に証明されたわけ。

 

 

よしっ。

忍耐は大事だ。

目の前のことに流されちゃいかん。

自制心を持って、イヤなことでも取り組む姿勢が非常に大切。

 

学校がイヤ?

勉強キライ?

 

ばっかもーーーーん!!!

 

そんなんじゃ、どこに行っても通用しないぞ。

歯ァ食いしばれっ。

 

続・マシュマロテスト

さてさて、このマシュマロテスト。

実は続きがあってですね。

 

その後の研究で分かったのだが、

我慢した子は、有意に家庭が裕福

だったらしいのだ。

 

お金持ちの家の子は、我慢した。

貧乏な家の子は、我慢しなかった。

ということが、追加の研究で分かったらしい。

 

 

つまり、こういうことだ。

裕福な家庭の子。

親御さんにも余裕があるだろう。

「我慢したらあとで報酬が増えるよー」という約束は、基本守られる。

 

男の子
大人は、約束したらちゃんと守ってくれる。

じゃああとで2個貰った方がおトク。

 

信頼感があるので、マシュマロを我慢する。

 

 

貧困家庭の子。

親御さんにも余裕がない。

約束を反故にされる可能性がめっちゃ高い。

 

女の子
そんな口約束、破られるかもしれない。

だったら今すぐに、確実に1個食べる。

 

早くしないと、目の前の1個すら取り上げられる可能性があるしね。

 

 

どちらの判断も、その子の置かれた環境では合理的だったのだ。

どちらも、理にかなった、妥当な判断をしている。

 

結局、

将来的な能力や所得は、忍耐力ではなく、親の経済力に依存していた

というワケである。

 

 

あれっ。

だいぶ毛色が変わっちゃった。

 

金持ちが成功するという、ミモフタモナイ結論になってしまった。

結局親ガチャかよ。

 

でも、実際そうだろう。

これの是非は置いておいて、親が裕福だと子どもも成功しやすく、裕福になりやすい。

これは事実だろう。

 

努力は裏切らない?

僕的には、「続・マシュマロテスト」の結果の方が納得できる。

最初の結論、「忍耐力が育っている子は成功しやすい」は、因果の逆転に思える。

成功しやすい素地のある子(=親が裕福な子)は、忍耐力が育ちやすい

が真な気がする。

 

 

大人になるとわかる。

努力は裏切る。

そんな場面を、何度も目にする。

経験もする。

努力すれば必ず報われるなんて、そんな都合のよい話はない。

 

大人になればなるほど、努力ではどうしようもなくなる。

結果を要求される。

能力差も目に見えてくる。

 

努力ですべてが許容されるとしたら、なんて楽な世界なのだろう。

めちゃ簡単。

だけど残念ながら、現在、世界はそうなってはいない。

 

 

発達デコボコの僕ら。(僕はASD)

闇雲な努力は効率が悪い。

ただ「頑張る」「努力する」では、にっちもさっちもいかない場面がたくさん出てくるのだ。

 

デコボコなもんで。

苦手な分野はトコトン苦手なもんで。

 

 

だからさ。

 

逃げ癖がつくから学校は休むな

という理論は、僕は反対。

 

全ての努力を否定するわけじゃないけどさ。

結果を出すには、努力しなきゃいけない場面って必ず出てくるけれど。

 

その上で、でも努力は

ちゃんと状況を理解して、ここぞというときに使べき

と思う。

 

 

発達デコボコの人って、基本的に努力に向かないからさー。

思い込みやすく突っ走りやすい上に、気が散りやすく、その上疲れやすいときている。

なんて努力に向かない性質。

 

だもんで、空回りして力尽きる。

これを避けたい。

やるなら、結果の出る場所で。

 

 

「頑張れ頑張れ戦法」は、分が悪いと思うんだよねー。

頑張るだけでは、定型発達に遠く及ばない。

「頑張る才能」が段違いだもの。

 

だから、

闇雲に頑張らせるのはやめよーぜ!

という提案です。

 

ゆるく、おいしいとこ取りでいきたいものだ。

 

頑張る場面

そうは言っても、頑張らなきゃどうしようもない場面がある?

やるしかないときがある?

 

オッケー、それは僕も同意。

 

ここで、マシュマロテストを思い出してほしい。

待てた子(≒頑張れた子)と待てなかった子(≒頑張れなかった子)、違いはなんだった?

 

そう、

周囲の環境

だ。

 

もちろん、環境がどうであれ頑張れない子もいる。

どれだけお膳立てしても、やっぱりやらない子、やれない子もいるけどさ。

 

基本的には、

「頑張ったらその分いいことがある」という経験を積んできた子は、頑張れる

わけだ。

周囲への信頼、そして自分への信頼のある子は、頑張れる。

 

 

 

頑張れ頑張れ言うよりも、ここを整えるのが先だろう。

大人は、ちゃんと約束を守る。

頑張った分の結果が出る環境なり手法なりを工夫する。

これをちゃんと押さえたい。

 

そして周囲にできることって、ここだ。

子どもをちゃんと見て、ちゃんとアドバイスし、ちゃんと褒める。

ちゃんとちゃんとの味の素だ。

 

これだけやって、あとは骨拾いに徹する作戦。

やるのは本人なので。

ドアノブは内側にしかないので。

 

やるだけやって、あとは野となれ山となれ大作戦。

本人の人生だ、本人に任せる。

骨は拾うスタンスで。

 

どうでしょうか。

pediatrician-p

View Comments

  • 先生があんなに一方的に頑張れと言わなければ、私の学生時代はもっと心穏やかに居られただろうな。
    進学校の先生は上を目指せと言う。収入や人生の豊かさなど頑張るメリットを並べ立てる。でも心に響いてこない。私そんなに欲張りじゃないという気持ちだった。

    心のザワザワをどうにかするのに毎日必死なのに、そっちの問題は置いといてとにかく学校を卒業して大学に行くことを目指すのって、自分の心のこと見て見ぬふりしてるのと同じよな(._.)

    心を置いてけぼりにしないで。大学には行ったけど、結局無理が溜まって心のバランスを崩したから。
    毎日の穏やかさを確保しながら特例子会社とかで働く方が、私の実感では幸せだ。
    n=1(私の場合)の話ですけどね。

  • 「頑張ったらその分いいことがある」の「いいこと」って難しいですね。
    普段の小さな約束はきちんと守って、親と子の信頼関係を築きたいです。
    でも、当たり前ですが、頑張ったらその分いいことがあるという環境は用意してあげられること(マシュマロやおもちゃなどご褒美の約束)と、
    用意してあげられないこと(受験合格や就職内定)があります。
    なので、「いいこと」っていうのは必ずしも成功することや叶うことだけを指すわけじゃなくて、ほかに本人が得られたものを実感できるように、過程を褒めたり認めたりする普段の言葉掛けをしたいと思いました。

  • 私はなんで頑張っていたのかわからなくなりました。自分がしんどいかどうかもよくわからなくて、頑張りたかったわけではなかったような気もします。みんなと同じことを頑張っていないと、この世界には居られない、そんな感覚だった気がします。小さい頃から頑張ったら褒められる、認められる、そんな経験が増えれば増えるほど、頑張らなければ価値がない、みたいなすり込みに変わっていったのかもしれません。本当は、頑張る頑張らない関係なく人にはきっと価値があるのに。

  • ASDにかなり近いタイプの息子に、頑張ってた分だけ良いことがあると教え続け、中学受験をめちゃくちゃ頑張り、中学受験をしましたが、ほぼ合格であろう学校にご縁がなく、別の学校へ進学。そこでは楽しい学校生活を願い、親友を作りたくて本人なりに頑張った。しかし敏感で傷つきやすい息子は行動を起こすにも大変で、疲れやすくいっぱいいっぱいでそれでも頑張り、実らずやがて不登校に。
    頑張ってもいいことなんかない。と心の扉を閉めてしまいました。あれから2年が経とうとしています。
    頑張った分の結果が出る環境なり手法なりを工夫する。
    子どもをちゃんと見て、ちゃんとアドバイスし、ちゃんと褒める。
    これが私にできていなかったのでしょう。
    私なりにやってきたつもりなのですが難しいですね。
    2年経ちようやく少しですが扉を開けようとしている気がします。。。
    人生まだまだ長い!ゆっくり進んで欲しいです。

  • 「頑張ったらその分いいことがあったから頑張れる」

    そうか、今まで「頑張りに頑張ってきたけど、いいこと以上に苦しかったから頑張れなくなって」不登校なんだとあらためて腑に落ちました。

    だから、「頑張る=苦しい」になっちゃってるんだな…
    (あ、完璧主義のHSCです)
    まずは前の記憶の払拭からですね。

    エネルギーが溜まって動きだそうとするとき、
    周囲の環境がものすごく大事なんだなと思いました。いつもありがとうございます。

  • ADHDとASD併合タイプの息子はまさしく、思い込みやすく突っ走りやすい上に、気が散りやすく、その上疲れやすい努力に向かない性質。しかし大学受験という努力なしではなしえない時期にきており、毎日塾から出されるタスクをこなしてはいますが、集中できないと言っては『ちょっとだけ』のゲームばかりしております。で結局睡眠時間を削って宿題をやってる感じです。心配でしかなく、周りで右往左往しつつ結局見守る事しかできない感じでしょうか。大学には行きたいみたいだし、合格したあかつきには旦那がなぜかバイクを買ってやるなどどいう私の了承を得ていないご褒美つきで頑張てますが…。頑張ってはいるみたいなんで褒めてあげたいのですが、絶対ゲーム時間の方が長い気がする!しかし、その事は言わないようにと思ってます。ゲームはしてますが塾のタスクはなんとかこなしてはいるみたいだし。褒めてあげないとですよね。はぁ~。親も我慢ばっかりですね。

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