Categories: ブログ

一番困っているのは、支援できない人。

今日は、僕のグチ。

救いのない話。

 

でも実際の現場では、本当に実感する。

同意いただける支援者の方も多いだろう。

 

僕は解決策を持ち合わせないんだけど、こんな話からヒントを得て、うまく支援につながる人が一人でも増えると嬉しく思う。

 

一番困っている人

発達特性とか愛着の問題とか家庭環境とか知的障害とか貧困とか非行とか精神疾患とか、理由はなんでもいいんだけど。

中でも「特に」困っている人。

どんな人だと思います?

 

僕は、『うまく支援につながれない人』だと思う。

 

 

思いの外、あちこちに様々な支援がある。

 

  • 福祉の施設や機関。
  • 地域の相談窓口。
  • 教育だと支援級や養護学校、支援コーディネーターとか。
  • 医療なら病院や診療所、学校巡回や講演会なんかもあったり。
  • 心理ならカウンセラーや心理相談、心理療法とか。
  • 経済面だと各種補助金や生活保護。

 

もっともっと身近に、学校や園の先生、親戚、知人友人、近所の人なんかでも良い。

 

 

とにかく、そういった人たちに「困ってます助けて!」がうまくできない人。

SOSが出せず、人知れず困っている人。

一人で、もしくは家庭という小さな単位で、出口を見失い沈み込んでいく人。

 

こんな人が、僕は「一番困っている人」だと思う。

 

助けを求めるスキル

支援に繋がれない理由は理解できる。

 

僕に経験があるのは、例えば健診未受診で自宅出産した妊婦さんは、「妊婦健診は(ほぼ)無料」と知らなかった。

補助があるのを知らず、お金がなくて受診できなかったと言っていた。

『無知』の結果だね。

 

生活保護も、生活保護を受給できる人はまだマシらしくて。

本当に困っている人は、自分が生活保護を受給できると知らなかったりするようだ。

 

子育ての分野で言うと、療育なんてシステムがあることを知らなかったり、「発達障害かもしれない」と思い至らなかったり。

知らなければ、当然選択肢にあがらない。

支援には繋がれない。

 

 

支援に繋がれない理由として、『無知』の他に『不信感』もあるだろう。

 

一度相談したら、邪険にされたとか。

望むアドバイスが得られなかったとか。

 

「行っても意味がない」

 

「さらに傷つくだけ」

 

そう思い、以降どこにも相談しなくなるケース。

これはあるだろう。

 

実際医療に対する不信感を持たせてしまったケースは僕にも経験があって。

そんなご家庭は、以降別の病院だけでなく、地域や学校への相談のハードルも上がってしまったのではないかと予想する。

申し訳ないことをした。

 

 

人と人だし、この分野には正解がない。

すれ違いは必ず起きる。

 

極端な例だと、専門家と相談者の認識の違いで、

「相談(、受診、検査)すれば原因がわかり、療育すれば病気は治る」

と思っている親御さんが一定数いる。

 

専門家に相談すれば一発で「原因はコレです」となり、自動的に療育が紹介され、プログラムに乗って数年で『治る』、つまり定型発達となると想定している親御さん。

もちろんそんなハズないんだけど、誤解されている方はいらっしゃって。

※責めてないです。専門家とそうじゃない人なので、知識も経験もまったく違います。誤解する気持ちもわかる。

 

こんな方が、

「受診しても治らない! 意味ないじゃないか!」

となるケースがある。

 

ここで誤解が解けると良いのだけれど、怒ってしまうと話ができなくなる。

聞く耳を持っていただけないと、それ以上の支援は難しい。

不信感だけ与えて、支援が切れてしまう。

こうなると、以降の関わりは非常に困難。

※もちろん患者さん側だけが悪いんじゃないです。人対人なので、僕ら医療者も同様に悪いです。うまく意思の疎通が図れていなかったわけで。

 

 

そしてこのようなケースで、別の支援機関にもうまく繋がれないことがある。

病院がダメでも、地域や学校でガツっと噛み合っているならそれで良い。

でも、どこにもうまく繋がれない家庭がある。

 

いくつかの機関に相談し、うまくいかず、そのうち相談自体を諦めてしまうケース。

または、そもそもどこにも相談に行かず、家庭で抱え込んでしまうケース。

 

ニュースで聞くような家庭は、きっとそんなケースなのだと思う。

しょっちゅう子ども虐待のニュースが流れている。

どこの家も「要支援」としてチェックされていて、でも実際にはうまく繋がれていなかったようだ。

 

支援者の介入方法がまずかったのか、はたまた保護者が介入を拒否したのか、それはわからないけれど。

結果的に、最も支援を必要とする家庭が、支援を受けられていなかったわけだ。

 

支援を求める力

こんな話が出ると、「児童相談所の権限を強めて強制保護し、被害児童を出さないようにするべきだ」みたいな話が出ると思うけど、僕はそこには興味なくて。

とりあえず保護すりゃいいってもんでもないと思うし。

 

そうなると、今の制度ではどうしたって取り溢れる子が出る。

それは承知の上で。

 

そんな中でどうやってSOSを出すかが、非常に、ひじょーーーーーに大事になってくると思うわけです。

 

SOSを出す力ね。

「困ってます、助けて!」

って言う力。

 

そのためには支援者を、いやもっと大きく『人』を信じていないといけないし。

期待した支援が得られなくても、腐らず切り替える力も必要。

 

そうやって、人に頼り、助けてもらいながら生きていく力

マジで大事よな。

人に迷惑をかけろ! 「あなたは人に迷惑をかけて生きているのだから、人のことも許してあげなさい」 え、これって有名じゃないの...
人の話を聞く力 〜愛されキャラのススメ〜ASD、もしくはADHDの子。 特性のせいでトラブルが起きることってあると思う。 ないに越したことはないんだけど、まぁあるよ...

 

僕自身、せっかく相談にきてもらったのにうまく繋がらないことがある。

受診しなくなっちゃう。

もちろんそれは僕の力不足なのだけれど、相談に来てくれないことには僕には何の手助けもできないわけだ。

マジ無力。

 

本当に本当に困っていそうなのに、今までどこの機関にもうまく繋がれず、案の定僕のところにも繋がらないケースがある。

きっと、めっちゃ困っている。

でも、誰も支援できない。

 

この子は困りごとを抱え、家族も困りごとを抱え、でも何の支援も受けられず希望を失っていくのかなと思う。

人を信じられなくなって、輪をかけてSOSを出さなくなって。

こんなケースでは、児童相談所がコンタクトをとっても門前払いなのだろうなと。

 

「子どもを取られる!」と、児童相談所の介入を拒否する家庭の話はよく聞く。(強制的に保護されることを恐れて)

子どもを守ろうとしての行動だから、責める気はないんだけど。

でも、

「まずちょっと相談。もしかしたら助けてくれるかも。」

のカードが切れないのは、もったいないと思う。

 

 

ここまでじゃなくても、本当に困っている人は、支援に繋がりづらい。

  • 問題が複雑すぎて、うまいアドバイスがなかなか得られなかったり。
  • 認知の歪みや理解力の問題でコミュニケーションが難しかったり。
  • 困ってるってことはエネルギーが枯渇しており、1回の相談で「ほらやっぱりうまくいかない」と諦めてしまったり。
  • 学校でも福祉でも医療でも、いわゆる「グレーゾーンの人」は支援を受けづらかったりするし。

 

 

僕個人の話でも、うまく受診が続かない人が一番困っているんだろうとは思いつつ、でも何もできない。

ここでもっと頑張る選択肢(こちらから積極的に連絡をとるとか)もあるけど、個人的には来ない時点で諦めてしまう。

他にも困っている患者さんはたくさんいるわけで。

好意的に話を聞いてくれ、アドバイスを素直に受け取ってくれる人を、どうしても優先してしまう。

 

精一杯アドバイスしても拒絶され、なんなら敵意を向けられると考えると、やっぱりしんどい。

支援者も『人』だから。

 

まとめ

 

支援に乗れない人が、一番困っている。

 

これは事実だと思う。

 

この人たちをどうするか、僕はその術を持たないし、介入する気もない。

そして、これを読んでいる人はこんなタイプじゃないだろうからこそ(なんらかの支援に繋がっているだろうから)、あえて言わせてください。

 

支援に乗れず孤立するのが一番しんどいです。

多少支援者がアレでも、思う支援が受けられなくても、腐らずにSOSを出し続けてください。

お子さんにも、SOSの出し方、そして困ったときには出していいことを教えてあげてください。

 

世界は、人は、とても優しい。

手を差し伸べてくれる人は、きっといる。

 

繰り返しになるが、支援を受けられず孤立するのが、一番しんどい。

pediatrician-p

View Comments

  • 息子の事を考えたくないから、最低限の義務だけして過ごしたい。
    積極的治療もしたくないから、受診も極力したくない。
    って伝えたら、それは無理だと思うと言われました。
    今、病院と縁を切ったら、後で絶対大変な事になると。
    無責任な人なら何も言わないが、何とかしてあげたいと言われ、診察室で泣いてしまいました。
    結果、私も受診することになりました。
    主治医は別の医師になるのが残念ではありますが・・・

    受診しない人には病院も何も出来ないですよね。

    結局ガッツリお世話になってます。

  • 中学1年の不登校の息子の母です。
    荒れる事が増え、親子で追い詰められています。
    このブログを拝見して、えっ、そこだったの?と言う気持ちです。
    支援を求める。

    どうしたら良いの?と言う問題が日々積み重なり、日々身動きが取れなくなっていました。
    スクールカウンセラーや心療内科等、繋がってはいますが、新たな相談先が思いつかず、子どもが荒れたりするので、相談の為に電話するのも、外出も一苦労。
    家族はそれぞれ仕事や学校をそうそう休めない。
    誰か助けて!と思っていたけれど、心の中で叫んでいてもだめですね。
    外に出て叫ばないと。
    先週いくつかの機関にアクセスした所、応えてくださり、何件か面談予定です。
    それでもこれからどうなってしまうのか、怖くて怖くてたまりません。

    今はカードゲーム依存と高額カードの購入欲求に困り果てています。
    中毒状態で怖いです。
    子どもの中毒の治療ってどんな方法があるのでしょうか?

  • まさに、私が悩んでいる内容そのものズバリな記事でびっくりしました!

    娘の友達はあきらかに危険な(突然飛び出したり、知らない人にも突然しがみついたりする、危険な行動をする)発達特性があるのですが、学校から支援が必要だと言われても、その子の両親は全く認めようとしないのです。

    「そんなはずはない!この子はまだ子供だからこれは子供らしい活発な行動であり、とてもフレンドリーな行動である!特別な支援?断固お断りだ!」

    と学校側の意見を却下し、でも毎日の生活は毎日怒鳴り、躾に手を焼き、お母さんが特にストレスで酷いことになっています。
    「私も子供の頃は全く同じような活発な子供だったのよ〜!だけど私はちゃんと普通に大人になれているから。問題ないのよ、アハハ」
    と、お酒や精神安定剤を飲みながら言うのです。
    アンガーマネジメントの本を読んだりして、この本は役に立つよ!とおすすめしてきたりするのですが、私からみると、娘さんを支援に繋げるのが1番良いと思うので、やんわりと勧めてみるのですが、拒否されます。

    最近は、どう接すれば良いかわからなくなってきて、とても残念な気持ちです。

  • 我が子も1年生頃からの不登校…今3年生ですがどこにどう助けを求めていいか分からず現実維持状態です。scさんや教育相談所等利用しましたがしっくりきてません。WISCで発達の凸凹はわかりましたがだからと言ってなんらかの支援があるわけでもありません。来年1年生になる下の子も幼稚園休んでます。なんか怖くなってきました。
    家族の問題もあるような気もしますが着手するのもなんか怖いです。
    放課後デイサービスや適応指導教室も本人が行きたがらないと行けないです。
    メンタルが不調にならないように気をつけるだけです。Twitterで仲間と呟けるのがまだ救いかもしれません。

  • 先生のブログが私にとっての支援だと感じています。
    先生いつもありがとうございます。
    日々悩んだ時、「骨拾いばばあ」や「玉は変えない」など先生の言葉がよみがえります。

    子ども2人が不登校、私も一緒に引きこもりの状態です。
    かつてあらゆる場所に相談に行ったり、親のか会に参加してみました。
    でも結局、不信感と自分自身を責めてしまい苦しくなってしまうことに。
    今はこんな田舎では無理もない、とあきらめしかありません。

    手を差しのべてくれる人は本当にいるのでしょうか。
    先生の言葉を信じていきたいと思います。

  • 私の兄は50歳になりますが、多分今ならASDと診断されたのでは?と思います。博識なので先生が例にあげて下さったような支援は知識としては知っていてもそれを自分に活かすという回路が繋がっていない?ように思います。子どもの頃から親があの手この手でいろいろわからせようとしているのを聞いていましたが「自分が困っている」という感覚がないことは本当にどうすればいいのだろうと思ってしまいます。

  • 本当にその通りだと思います。

    地域で不登校の親の会を主催していますが、親の会に参加できる方は、「支援に繋がる力を持っている」方かな、と思います。

    本当に届いて欲しいのは、親の会になんか参加できない、と感じている人なんだけれど、そこにはなかなかアプローチできないのが、歯がゆいなって感じます。

    今はそのタイミングではない、ってことになるのかもしれないけれど、一人で苦しむ時間は短い方がいいな、とも思うから。ネットでも、本でも、何か本当に支援が必要な方の心がほぐれるものに、たどり着いて欲しい、そう思います。

Recent Posts

鉢ごと移動しろ! 詳細

  合う場所で咲けば…

4週間 ago

ぼくのかんがえる「さいきょう」のはったつしょうがいりろん

結局この子には、発達障害がある…

1か月 ago

発達特性と山 〜特性は標高で考える〜

発達障害は、山に似ている とい…

2か月 ago

医者って、30分の診察で発達障害がわかるものんなの?

発達外来の初診。 これまでの経…

3か月 ago

子どもがうまく育っているサイン

興味深い議題だ。  …

3か月 ago