Categories: 親子関係

「相手がどう受け取るか」が全て

先日、こんなことがあった。

 

こんなことがありました。

金曜日の夜だった。

僕は、夜間当直をしていた。

 

あ、誰も興味ないかもだけど、僕一応『小児科医』なんですよ。

風邪や喘息、胃腸炎なんかの一般診察もするし、もちろん夜間救急も担当する。

メンタル専門じゃなければ、精神科医でも全くないんです。

ただの、二宮くん似の小児科医。(松潤から乗り換えた⁉︎)

 

 

でね。

金曜の夜に、発熱で受診された患者さん。

濃厚接触者でもあり、コロナ検査をしたのだけど。

※僕の病院は休日や夜間でも検査が出せる。でもやってない病院もある(きっとその方が多い)ので、受診前に確認してください。

 

週末なので、当院で検査を出すと、結果は週明けになる。

日中に近所のPCRセンターへ行ってもらった方が、きっと結果の判明が早い。

そう伝え、同意の上で検査をした。

 

すでに濃厚接触者で、どうせ自宅待機ですから。

それに熱のあるこの子をあちこち連れ回すのも(翌日検査に行くのも)負担になりますし。

 

そんな会話をして、何度も確認して、じゃあってんで検査をしたんだ。

 

なのに!!!

 

翌日、土曜日の日中よ。

その患者さん、また受診したのよ。

 

検査結果を聞きにきました。

 

ででででで出ないって言ったじゃん!

 

「今日結果が出るって夜に聞いたのでー」って、言ってないよ。

あんなに、週明け週明け繰り返し説明したやん。

 

 

結局、全然伝わってなかったわけだ。

僕がめっちゃ伝えた気になってただけで、フタを開けたらこうよ。

 

伝わってなければ、言ってないのと同じだ。

その人にとっては、その人の解釈が真実なのだ。

うん、そういうこと。

僕が悪い。

 

伝わってる?

こと左様に、コミュニケーションって難しい。

「言った」「言わない」の水掛け論はケンカの定番ですし。

意図と全く異なった形で解釈されるなんて、日常茶飯事だ。

 

特に、焦っているときや余裕がないとき。

コレはヤバい。

上記のコロナ検査の例だと、夜間帯に救急受診しているわけで、親御さんは慌てていたり不安が強かったりするのが明らかなシチュエーションだ。

深夜に救急車を呼んで受診してるわけだからね。

 

こういうときは、ことさら丁寧な説明が求められる。

かなりしつこく説明したつもりでも、1/3も伝わらない。

壊れるほど愛しても。

 

コミュニケーションは難しい。

特に、焦っているとき、余裕がないときは難易度が跳ね上がる。

分かっているようで、再度注意しようと思わされた出来事だった。

 

 

焦っているとき、余裕がないときのコミュニケーション。

発達関係とか不登校とか心身症とか、お子さんにトラブルが起きたときの受診も同様だ。

お子さん、親御さんとも余裕などないだろう。

 

思春期、反抗期とかね。

親子ともに全く余裕がなさそうだ。

 

「こんなことを言われて傷ついた」

「そんなことを言った記憶はない」

 

「否定ばかりで褒めてくれない」

「いや、たくさん褒めた」

 

診察室で、そんなやりとりをよく耳にする。

 

余裕がないとき、わーっとなったときほど、コミュニケーションエラーが起きやすい。

そしてそんな時ほど、コミュニケーションの重要性が増す。

トラブル時ほど、「わかってほしい」し「なんとかしてあげたい」ものね。

 

 

強く思う。

伝えたいときほど伝わらないのよ。

伝えたい伝えられない、もどかしい気持ちで。(ELT)

 

言葉って、必要なときほど届かない。

形のないものだから、いつも行方知れず。(ELT)

 

病院でも、焦っているとき、わーっとなっているときは、全然伝わらないんだ。

発達系の受診もそう。

1/3も伝わらない。

往年のJ-POPの歌詞みたいになっちゃったけど、とにかく気をつけようと思った。

 

情報量を減らす

でね。

コミュニケーションエラーって、「コミュニケーションエラーだった」って判明するケースはまだいいと思うのね。

「あぁそんな風に勘違いしてたのね」って分かるなら、再度説明できる。

でも実際は、コミュニケーションエラーがコミュニケーションエラーとして明るみに出ないことの方が多いように思う。

 

事務連絡やシステム的な内容なんかは、すれ違いが比較的わかりやすい。

でもこれが感情的な話になると、一気に分かりにくくなる。

 

お子さんから親御さんへの、「こう言われてこんなふうに感じた、ここが嫌だった」という訴えとか。

親御さんからお子さんへの、「ここは許可するがここは許可できない、なぜなら……」とか。

細部が伝わらず、「とりあえず全否定された」と受け取られることが、ままある。

 

否定された。

つまり、攻撃された。

やられたらやり返す、倍返しだ!

 

で、お互いヒートアップしていくことが予想される。

 

 

こんな時、コミュニケーションを取ろうとしても難しいんじゃないかと思う。

僕も、半ばパニック状態で病院に飛び込んでくる親御さんに、詳細な説明をする自信はない。

 

僕はこんなとき、「あえて情報量を減らす」という戦略をとることがある。

 

とりあえず、大丈夫ですよ

 

死なないから大丈夫、お子さんがおかしくなったわけじゃないから大丈夫と、とりあえず安心してもらう。

伝える情報を『大丈夫』のみに絞るってことね。

 

で、落ち着いたあと(次回受診時とか)に、なぜ大丈夫だと思うのか、そして今の状態の見立てや客観的データなどを説明する。

そっちの方が圧倒的に情報が入りやすいように感じる。

 

 

同様に、親子でわーっとなったとき(親子喧嘩とか、子のかんしゃくとか)、情報を絞るのは一つの手だと思う。

具体例はケースバイケースすぎてうまく出せないけど、「コレだけは!」ってことだけ伝える。

  • 親は絶対に味方だよ
  • 危ないことはしないでほしい
  • あなたの努力は見ている、分かっているよ
  • 他の部分については話を聞くが〇〇だけは絶対に許可できない

とか、そんな感じ?

 

細部は無視して、とりあえず一番大事なことだけ伝える。

で、落ち着いてから再度説明する。

その方が、コミュニケーションエラーが少ないかもしれない。

 

ADHDタイプとか特に、その場で説明しないと流れていっちゃうってのも分かるんだけどね。

忘れ去らない範囲で、落ち着くのを待ってから話したほうが良いかもしれません。

塩梅、難しいけど。

 

まとめ

 

情報は、相手の受け取り方が全て

 

そうなんだよね。

厳しいけど。

 

「自分が」伝えたいことばかりじゃなくて、「相手が」どう受け取ったかという視点を持つとよいかもしれません。

と、自分に言い聞かせる。

僕も苦手で、つい忘れちゃうんだよねー。

熱くなればなるほど。

 

熱くなるな! だわ。

アンチ大黒摩季だ。

pediatrician-p

View Comments

  • ワーキングメモリーがすさまじく低い息子が居ます。先生のお話いつもためになってます。
    うちの子、実行機能がとにかく低くて、やる気無い行動が多いです。そういう子は将来的にどうなっていくのか、どう対応していけば良いのか時間あれば教えてもらいたいです。
    押しても引いても、動かないのです。

  •  こういう会話、覚えがあります。
     子供にとって親の一言は重いので、親が言った事を自分で忘れても、子供は覚えているというのもありうる話だとは思います。子供も新しい事はどんどん覚える分、ちょっと前に言ったことを意外と忘れてても自覚できてなかったりするんですけどね。家族で偶然一緒に聞いていた人がいなければ、言った言わないは迷宮入りです。

     子供と派手にこじれた時、私はとりあえず、あなたが大切だと思っていたし、今も思ってる、という思いが伝わる事を最優先しました。
     
     ちゃんと相手にわかるようにあなたが大切という気持ちを伝えられていなかった事に対して、まず子供に謝った後で、具体的な事を伝えた方が伝わりやすかったかな。対等な関係であれば、伝わらなかったのはどちらか一方が悪いわけではないんですが、親と子の圧倒的な経験値の差を考えたら、その部分は親に責任がないとは言えないので。
     お子さんにもよりますが、かつて子供自身が夢中になってした事は、割と覚えている事が多い。その記憶を呼び起こして、その時に自分1人で楽しんでいたわけじゃない、周りの親が協力したり一緒に楽しんだりしていた事を反発なしで理解する。かつて自分がいた風景を、今の成長した自分の目で見直すことができれば、自分が愛されていた事がわかる一つの助けになるかなあ。...言った言わないの水掛論より、さりげなく、子供の記憶に残ってそうな、本当に子供が楽しかったエピソードの周辺の掘り起こしをして、喜んでいるあなたと一緒に過ごすのは、親の私にとっても大切な時間だった、と伝える方が建設的だと感じます。
     それでうまく行くためには、お子さん自身に、自分と他人を客観視できる、ある程度の能力が必要ですが。多分、完璧な親なんてどこにも存在しない事は、子供も内心わかってる。

     余裕がなくて、一緒にあれこれ体験する事ができなかったとしても、たくさんおしゃべりを聴いた積み重ねがあれば、それでいいと思います。
     必要もないのにする雑談って、相手が誰であろうと、あなたがここにいてくれて私は嬉しい、あなたと時間を共有できて嬉しいという気持ちを伝えるものだと、個人的に思ってます。人は、自分の言いたい事を微笑んで聞いてくれる人を、無意識に選んで雑談したがるし、おしゃべりしながら次も微笑んで聞いてくれそうかを無意識に観察している(はず)。
     自分が誰かにたくさんおしゃべりをしたこと、相手が微笑んで聴いてくれた事は、多分長い事記憶に残るんじゃないかと思ってます。内容がくだらない事であればあるほど、それをそのまま聞いてもらえる事は、今のあなたはそのままで価値があるというメッセージにもなるんじゃないかしら。
     親がしんどくならない範囲でしか無理だと思いますが。私も、この親にしゃべっても何も得るものが無いと思われるのは、もっとおばあちゃんになってからがいいので、自分の知りたい事を色々知っておきたいし。

    • 追記:宇宙人と比べたら、全日本人男性は全員日本の男性アイドルに似てるので、P先生がもしよろしければ、お好きなタイプにチェンジして、夢を見せてくださいね。私はジャニーズ誰が誰か、ほぼわかってないのですが、雰囲気は好きです。

  • キャーーー!←黄色い声!

    二宮くんに変身だなんて、最高です!(涙)

    いつも大きな心で受け止めてくださって、ありがとうございます。気の利いたコメントも書けず、申し訳ありません。ただただ、不登校息子のケアをここで学ばせていただきながら、time goes by…(ELT)

    いつもありがとうございます。

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