Categories: 発達障害

【リクエスト】よくデキる子への支援

リクエストをいただいた。

 

特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議も始まりましたが、認知度が低くひっそりしています。

こういう子について取り上げてください!

 

えっと……つまりどういうことだってばよ?

 

舌を噛みそうな名前のコレ。

つまり、

  • よくデキる子って置いていかれがちよね。
  • せっかくの才能、伸ばして行こうぜ!

って感じね。

 

 

余談だけど、お役所の文書ってどーしてこう難しいんだろう。

カタすぎる。

いや、医学用語も同じか。

 

いずれにしても、慣れない人には分かりにくいよね。

このブログは少しでもわかりやすく書けているんだろうか……と自分自身を振り返る。

どうでしょうか。

 

「デキる子」は放置されがち

学校教育は、集団指導が基本だ。

1クラス30人くらいを一斉に指導する。

 

そうなると、当たり前だけど人によって差が出てくる。

理解の速い子と遅い子、作業の上手な子と下手な子、課題の出来・不出来。

 

興味関心にも差が出る。

頑張る子と、やる気ない子。

放っておいていい子と、ほっといちゃダメな子。

 

 

でね。

人間の心理として、どーしても「デキない子」に目がいく。

特に義務教育は「みんなそれなりにできる」を目標に置いている様子で、それが顕著だ。

「デキない子」に目が行きがち。

 

先生も目をかけるし、抽出クラスとか個別の課題があったり。

苦手な子、できない子、ゆっくりな子へはそれなりの(あくまでそれなりの)フォローがある。

 

 

比較して、「デキる子」は放置されがち。

  • 君はよくデキるからどんどん先に進もう!

とはならず、

  • みんなが終わるまでちょっと待っててね。

になることが断然多い。

足並みを揃えて、みんなそれなりに出来るようにと、授業は進んでいく。

 

 

これね。

キツイよね。

 

授業、つまんないよね。

その子にとっては当たり前のこと、全て理解していることを、時間をかけてクドクド説明する。

「せんせー、それ知ってるしつまんなーい」なんて発言をしたら、教室の空気をぶち壊すことになる。

教科書と異なる解法を使うと、テストでバツになるし。

教科書以上の深い知識を身につけたり、発展した問題に言及したとて、評価はされない。

 

まー腐るね。

学校、イヤになるわな。

 

デキる子のしんどさ

不登校の子たちの中には、むしろよくデキる子も多い。

実際の臨床ではそう感じる。

授業についていけないだけじゃなくて、授業が簡単すぎて合わず、不登校になるケースもそれなりにあるのだ。

 

海外ではこのような子たちの教育機会は結構ある様子。

ギフテッド(gifted)と呼ばれたり。

 

でも、日本ではほぼほぼ無いに等しい。

ないのよね。

 

 

僕も正直、「デキない子」へのアドバイスの方が楽だ。

先生に配慮をお願いしたり、補助の先生、通級、支援級、個別指導……「使えるものはなんでも使ってください」と言える。

 

でも、「デキる子」へは、「使える制度が思い浮かびません。。。先生の力量次第でしょうか。」となってしまう。

「支援制度が思い浮かばないので……ご家庭で得意なことを伸ばしてあげてください」って。

 

そのくらい、「デキる子」は放置されがち。

デキるんだからいーじゃん、問題ないじゃんって。

 

よく考えると非常にもったいない。

せっかくの才能が!

 

 

で。

これじゃイカンってんで、日本でもこういった子たちの支援に向けて動き出したわけだ。

これが上記舌を噛みそうなアレね。

 

ホント、最近の日本の教育界は素晴らしい。

時代にそぐわない慣習に積極的にメスを入れているように感じる。

不登校の許容とか、ブラック校則の廃止とか、男女格差問題の是正(名簿を男女別から混合にしたり)とか。

今はちょうど過渡期で、十分な体勢が整っているとは言えないが、10年、20年たてば相当に変わっているものと期待する。

※ちなみに上記不登校についての法律は、【義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律】(通称「教育機会確保法」)というらしい。ちょwww長wwwww

 

ね。

せっかくの才能、伸ばしていこうぜ!

 

発達のデコボコ

でね。

よくデキる子も、せっかくの才能を伸ばしていこう!」ってのはみんな納得だと思う。

どの子もみんな、持っている才能や能力を存分に発揮し、生き生き過ごすのが望ましいよね。

うん、同意。

 

でも、そう簡単じゃない。

難しい部分があると、僕は思う。

 

デキる子って、なんでも平均してできるわけじゃないから。

 

デキる子というと、国語も算数も英語も体育も学級委員も、なんでもすごくできる! みたいなイメージがあるかもしれない。

でも実際は、そのようなことは少なくて。(あるのかもしれないけど、僕はあんまり見ない)

デコボコでデキるのよね。

 

噛みそうなアレ(特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議)にも書いてあった。

特定分野特異な才能を持つ

って。

 

 

コレ!って分野に、特異な才能を発揮するのよ。

他は全然キョーミなかったりする。

 

ちなみに高知能の人のWISCって、全体的に高いんじゃなくて、かなりデコボコしていることが多い。

デキる人って、なんでもまんべんなくデキるわけじゃない。

むしろ能力に偏りがあることが多いように思う。

【高知能】能力高すぎ問題【ギフテッド】このブログもそうだけど、発達系の支援って『ニガテ』にフォーカスしがち。 でも発達デコボコな子って、『ニガテ』と同時に『得意』も持っ...
ギフテッド 〜神様からの贈り物〜 IQが低い子は授業がしんどい、これは理解しやすいと思う。 ではIQが高い子は? これが、...

 

だから、「デキるなら飛び級すりゃいーじゃん」みたいな単純な話じゃないんだ。(それでうまくいく子もいるとは思うけど)

その子に合ったやり方を提供する必要がある。

 

 

ここが難しいところだ。

一筋縄じゃいかないところ。

「こうやって指導しましょう!」っていう雛形を作りづらい。

ケースによって正解が全然異なるから。

 

加えて、何を以て「デキる」とするのかって問題も。

成績なのか、強い興味なのか、独創性なのか。

この中のどれが強いのかによっても、接し方を変える必要があるだろう。

 

 

つまり、

その子の特性に合った支援を。(能力にデコボコがある子は特に)

ってことなんだ。

 

ひと昔前は発達障害が、最近だとギフテッドが注目されているけどさ。

結局ココ。

その子をよく観察し、その子に合った支援を。

に行き着く。

 

結局ココね。

難しいけどさ。

 

 

でもコレが実現すれば、発達障害とかギフテッドとか関係なく、みんなが過ごしやすい学校になる。

こんな学校、定型発達にもトラブルのない子にとっても過ごしやすいはずだ。

 

生産性も高そうだ。

いじめもなくなるかもしれない。

 

ひいては、「いろんな人がお互いを認め合いながら生き生きと力を発揮する社会」につながる。

理想的すぎて逆に違和感あるけど。

 

でもこんな絵空事みたいな未来が、少しずつ、ホントに近づいているのかもしれないと思う。

難しいけど。

難しいけどね。

 

問題意識を持って、やっと1歩歩き出したところだ。

pediatrician-p

View Comments

  • うちの息子は
    出来る子(世間から見て)には属さないけれど、
    高IQのASD。8歳男子です。

    世間から評価されやすそうな、
    勉強や運動に関する興味や、
    コミュ力・共感力は
    乏しく「出来る子」とは思われません。

    他人から見たら、
    娯楽・覚えても無意味、と思われそうな事で
    とんでもなく「出来る」力をもっている子です。

    年齢が上がるにつれて、
    「分からない人にこんな専門的用語や知識を
    ひけ散らかしてもスネ夫やん」
    という技を取得したらしく、
    ますます「出来ない子」だけが
    表面化しています。

    もちろん不登校です。
    幼稚園もNGでした。幼稚園時代から
    先生や子供たちの矛盾や理不尽が許せなく、
    彼にとっては
    怒りが湧いてくる場所だったようです。

    学校からは問題児、
    身内からも劣等生扱い。
    他の子が容易く出来る事は
    彼にとっては難しいのだけど、
    彼の魅力はそんなところじゃなくて、
    底無しに素直で無垢で変人で真面目で
    かわいいかわいいいい子なのです。

    「出来る子」の部分は
    ママ友や周囲に伝えづらいです。
    つくづく、自分は「ザ・日本人」だな〜と
    嫌になっちゃいます。

    「うちのスネちゃまはね♪」
    と胸を張って言えるスネ夫のママって
    最高のお母さんだな〜と思います。

    スネ夫のママのように
    言えない情け無い母なので、
    このコメント欄をお借りしましたw

    P先生
    いつもありがとうございます!
    面白くて勉強になり、
    気持ちがラクになる
    P先生のブログが大好きです!

  • まさに今うちの子が小学校でそのような感じで困っていました。ギフテットではないが、そこそこ出来るため授業がつまらなく苦痛の様です。一方で長女は境界知的で不登校児。
    ただ支援はないです。中途半端なところにいるんだと思います。通級も使わせてもらえませんでた。診断もつかないし、日常生活に問題なく、ただ学校が合わないんだと思います。親としては学校以外で興味がありそうな事を探してあげるくらいしかできません。

  • 我が家の凸凹さんは、全くデキる子には該当しませんが、
    「その子をよく観察し、その子に合った支援を。」
    本当にそうだなぁ、と思います。
    専門的な知識の多さより、むしろ観察と分析とトライアンドエラーをしてくれる先生が、結局最強&最高と思います。

    そして、先生の文章は、ものすごく分かりやすいです。
    飛び抜けた才能と思います(^^)
    これからも、楽しみにしています。

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