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思ったことは、言わないと分からない。

読書感想文へのコメント。↓

感想:特になし。 〜読書感想文が書けない〜夏休みですねー。 夏休み中のストレスといったら、『宿題』か『家』と相場が決まっているので、受診した子たちに聞くんだけど。 ...

 

たくさんいただきました。

 

夏休みの宿題をどう考え、どう扱うか。

みなさん、思うところがあるようで。

すごく参考になるので、コメント欄をぜひ読んでみてください。

とても具体的な、生きた声です!

 

 

その中で、個人的になるほどなーと思った意見。(抜粋してます)

 

作文、素直な子ほど書けない印象もありますよね。

本に書かれたこの状況で、自分だったら登場人物と同じ様には振る舞わないとか考えない。

物語の世界を素直に楽しんで、「面白かった」で終わり。

 

宿題の対応方法じゃなくて、書けない子の分析の話ね。

僕は「どう対応するか」より「どうしてそうなったか」に興味があるので、そこに食いついたわけです。

 

確かに確かに。

個人的に納得というか、その通りだなと。

 

素直な子は、そのまま素直に解釈する。

感想文とか上手に書けちゃうのは、僕みたいな、小汚くいやらしい偽装をするタイプだ。

 

素直な子は主張しないことがある

上記は作文についてのコメントなんだけど、外来診療でも同じように感じる。

自分の意見が言えない子のなかに、結構な割合で「素直な子」がいるのだ。

 

例えば。

彼は明らかに被害者なんだけど、トラブルの現場を見ていなかった先生から主犯格と誤解されて叱られたとする。

診察室で聞くと、彼には明らかに非がない。

だもんで、自分で言語化させるべく、本人に振ってみる。

 

先生に叱られて、どう思った?

この後どうしたい?

 

男の子
確かに僕が悪い。

怒られて納得。

 

うおーい!

 

悪くないし、納得しなさんな。

 

 

そこ、言いくるめられちゃダメなところでしょう。

先生は状況を誤解してるんだから、

僕のせいじゃありませんっ!(キリッ)

でしょう。

 

 

客観的に見ると明らかに悪くないんだけど、先生に「キミが悪い」って言われたら、「そうか僕が悪いんだ」で納得しちゃう。

素直といえば聞こえがいいけど、素直すぎるというか。

 

言われたことを、そのまま素直に受け入れる。

いい子なんだけどね……。

 

 

こういう素直な子で、

意見:特になし。

になるケースが、確かにあると感じる。

 

何が困る?

どうしたい?

 

そんな質問に、「……ん?」ってなる。

 

一般的なルールは理解している。

状況や相手の意見も分かっている。

でも、「あなたの」意見は? と聞くと、小田和正。(言葉にできない)

 

確かに確かに、こんな子は本を読んでも、ストーリーの通りに楽しみそうだ。

 

メロスは激怒した。

→激怒したんだな。

 

いちばん大切なことは、目に見えない

→いちばん大切なことは、目に見えないんだな

 

吾輩は猫である。

→猫である。

 

エクスペクト・パトローナム

→エクスペクト・パトローナム!

 

素直に、そのまま受け止める。

そりゃ

感想:たのしいおはなしでした。

になるわ。

 

ストーリーに沿って楽しんで、「楽しかった!」で終わり。

そうなってくると、感想文は確かにしんどい。

 

でも、これって悪いことなのかな。

素直にそのまま、エクスペクト・パトローナム。

読書の方法としてすごく真っ当だと、個人的には思うけど。

まぁ今日の話とは関係ないんで、それは置いといて。

 

主張の強い子と、主張しない子

でね。

実は僕は、こういう「主張がない子」が比較的苦手で。

前回書いたみたいな、四の五の屁理屈をこねる子の方が、個人的には接しやすかったりする。

 

どっちがいい・悪いじゃないよ!

外来での接しやすさの話。

どっちもいい子だよ。

僕の個人的な得意・不得意の話。

 

その前提で聞いてほしいんだけど。

 

 

主張が強い子は、その子の主張がよくわかる。

ここを気にしてるんだな、確かに理にかなっている、じゃあもう一回先生に言いなよ! とかアドバイスしやすい。

 

これはちょっと大人には理解されない主張だなーと思えば、じゃあどこを落とし所にするか、考えることができる。

 

だから比較的接しやすい。

何考えてるかわかるから。

 

 

僕が苦手なのは、主張しない子。

 

困ること:特になし。

どうしたいか:わかんない。

 

このタイプが難しくって。

何考えてるか分かんないんだもん。

 

言ってくれなきゃ分かんない。

表現してくれないと、何に困っててどうしたいか分からないのよ。

支援しようがなくなっちゃう。

 

言葉にする

でね。

この

困りごと:特になし。

のタイプ。

 

2通りあると思っていて。

  1. 困りごと:特になし。
  2. 困りごと:あるけど表現できない。

↑この2つ。

 

①の、「意見は特にない」ってタイプ。

ASDに多いでしょうか。

彼らは「自分」に興味が薄いから、自分のことがわかっていない。

あと知的にゆっくりで、目先のことしか見えておらず、先のことは「はて?」って子も。

 

この子達のことは、また別の機会に考えるとして。

 

 

今日議題にしたいのは、

②の、「意見はあるけど表現できない」タイプね。

表現する語彙を持たないとか、他人の言うことを素直に鵜呑みにしちゃうとか、大人に忖度して自己主張できないとか、空気を読みすぎて我慢するとか、「正解」じゃないと言えないとか。

そんな子。

言葉にできない。

小田和正タイプね。

 

この小田和正たちには、主張させようぜ! っていう提案。

 

本当に、ガチで、本気と書いてマジで、素直にそう思ったならそれでいい。

そのまま表現してほしい。

 

でも、「こう思う」と「こう思うべき」の区別がついていない子。

この子たちは、「こう思う」をちゃんと主張する練習をしてほしいなと思う。

 

女の子
困ってること……特にないなぁ?

 

それ、本当?

 

男の子
悪いのは僕です。

納得してます。

 

本当?

 

 

その嘘、ほんと?

↑昔カウボーイ・ビバップってアニメでこのセリフを聞いて、なんて深い言葉なんだと感動した。

 

 

思いはある。

でも小田和正。(言葉にできない)

 

この子たちは、少しずつ自己主張の練習をしてほしいと思う。

言わなきゃ分かんない。

正解・不正解じゃなくて、まず言ってみてほしい。

 

いいところなんだよ。

素直なのは長所なんだけど、でもそれだけでは損をすることもあると思うんだ。

 

ちゃんと言っていい、むしろ言わなきゃ伝わらないよ。

「あなたがそう思った」

それは事実であって、そのまま肯定されるべき。

 

それをどう捉え、どう対応するか。

それは受け取り手の課題だ。

切り離して考えよう。

 

少しずつ伝えていけたらと思う。

 

 

同様に、だからこそ口八丁のADHDタイプの屁理屈は、聞いてあげてほしいと思うし。

言わなきゃ分かんない。

この子たちは言ってくれてるんだから、分かる。

なんとありがたいことか。

 

その子の主張はその子の真実として、そのまま受け取る。

どう対応するかは、大人の課題だ。

pediatrician-p

View Comments

  • うちの息子、ぶつかって謝ったそうです。
    でも先生に謝った?と何度も言われ、この度に謝ったと言ったそうです。(本人の主張による)

    その事をうちに溜めたまま、別のことで行動をせず、しかも眠たいからと癇癪。

    眠たいから、その行動をしなかったのかと思えば、後々になってから、昼その事がありイライラしてたから行動しなかったと。

    そんなの理解出来ません!!

  • あまりにも息子=小田和正なので初めてコメントしようと思いました。
    怒られても、そう、悪いことした。それ以上の話が聞けず言い訳せず男らしい、と思いつつ正当化した意見とか聞きたいと思ってました。
    案の定中3息子中2から不登校になってしまいました。
    先生との会話も「はい」しか言わず、正論で責められ意見を言えない息子は電話も出るのをやめてしまいました。
    正しいこと(間違ったことを言うのが恥ずかしい)を言わないといけないと思っているようです。
    意見を言える環境を作りたいですが中々話すチャンスがないです。

  • 私も子ども時代は言葉にできない小田和正タイプでした。周りの思惑を察して考え過ぎて、結局何も言えなくなっちゃうんです。
    でもなぜか読書感想文を書くのが好きでした。本の世界に没頭してるといつの間にか主人公になりきって泣いたり笑ったり、その時感じたことをそのまんま文章に表すという手法で、あんまり考えずに書いてましたが、なぜか時々表彰されたりしてました。

    ADHDの屁理屈満載な小学生の息子は読書感想文が苦手なようで読後の感想は「面白かった」としか言いません。
    でも先生のこの記事読んでヒントを得ました。得意の屁理屈で主人公にツッコミを入れてみる、ってのも有りかなと。これで宿題が1つ片付くかもしれません。ありがとうございました。

  • 感想、特になし☆
    感想、面白い話でした☆

    まるで過去の自分です(T-T)
    割と大きくなるまで、「本は知識を貯めるための道具でしょ?」と思ってました。したがって、「面白いか面白くないか、役に立ったか役に立たないか」以上の感想がなく…
    P先生のご推察通り、人から言われたことも「そうなのか…」と無批判でそのまんま受け取ってました。
    何を考えていたか?というと…本の内容は、脳内で映像化してアニメを観るように何度も楽しむことに脳のメモリを全振りしていました。先生に誤解された場合、「自分が悪くない可能性」に思考が向かず、自分の悪かった点を探していました。
    横断的な思考ができなかったんだろうと、大人になった今は思います。
    幼稚園児のこどもも私と似た部分があるので、こちらの記事を拝読して、読書感想文は適当にお茶を濁させようと決意しました(笑)ありがとうございました!

  • 感想文が書ける子もP先生も、素直ですよ。

    いろんな汲み取る力の差はあるかもしれないけど、それだけ心に響いたってことかなと思いました。

    興味や関心が持てるから、感動する。

    頭で理解するか、心で感動するタイプの違いと言いますか。

    それによっても、自己主張は変わってきそうだなと思いました。

    話を聞いて、受け止めて、その子に合った手助けを、こどもと一緒に探っていく。それしかないですね。

  • すごいわかります!うちの息子はまさに小田和正だと思います。
    私が「こうだと思うんですけど」と代弁したことをあたかも自分がそう思うように言うようになる。「本当に?」って私は首をかしげちゃう。
    でもだからと言って本人の言葉を待つと「うーーーーん」「わからんーーーー」となっちゃう。
    どう本人の気持ちを引き出したらよいか悩みます。

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