「あなた(親)が優しいから、甘えてそうなるのよ。
うちの子も最初はゴネたけど、厳しく言ったら今では問題なく〇〇できるよ。」
↑ママ友や親類縁者なんかにこんなことを言われ、いたく傷ついたとおっしゃる親御さんがいた。
つまり「親が甘やかすからこうなった」って暗に言われたってこと。
私の育て方が悪かったのでしょうか。
こんな話を聞くと、僕はいつも思うんだ。
卵が先か、鶏が先か。
つまりこういうこと。
甘やかしたから → こういう子になった のか。
こういう子だから → 甘やかした のか。
どっちなんだろう。
例を出すと。
幼児が、洋服にこだわって大爆発しているとする。
あの服じゃなきゃイヤッッッ!
でもあの服はお気に入りで、昨日も着たのだ。
洗濯して、まだ乾いていない。
母は手を替え品を替え、提案してみる。
この服がイヤなら、その服は?
その服もカワイイよ〜。
あの服しかイヤッ!
じゃああの服着る?
濡れてるけど。
洗濯したママのせいだ!!!
さてこの子。
母が甘いからつけ上がって、ワガママに育ったのでしょうか。
それとも、元々こういう子だから母は付き合わざるを得ないのでしょうか。
この問題、証明することはできない。
卵が先か鶏が先か、誰にも断言できないのだ。
科学的にちゃんと論じようと思ったら、かなりの数の乳児を集めた上で2群に分け、「厳しいしつけ」と「優しい対応」に無作為に割つけ、幼児期以降(可能なら成人期以降)まで観察して統計的に処理して……って、つまりムリだ。
倫理的に許されないだろうし、現実的じゃない。
だから、結論は分からない。
誰にも断言はできないのだけど。
でも僕は、上記のケースだときっと卵が先なんだろうなと思う。
多分だけど、感覚過敏じゃね?
服のタグとか素材がチクチクするとか、この服とその服を着たくない理由があるんだよきっと。
多分ね、怒鳴りつけて無理やり着させたら、もう大パニック!
かんしゃくを起こして手がつけられなくなる。
しかも数日、数週間、数ヶ月引きずり、なんなら不信感から二次災害を起こしてさらにひどいことに。
このお母さんは経験からそれが分かっているから、下から下からなんとかなだめようとしているのではないでしょうか。
もしそうなら、冒頭の指摘は真逆ということになる。
親が甘いからワガママになったんじゃない。
もともと過敏のある子だから、親は尊重せざるを得なかった。
HSCやASD、ADHDなんかの子育てでは、こういったことが往々にして起こる。
特性のない子にはうまくいく方法が、特性のある子ではうまくいかない。
それだけの話。
甘いのは原因じゃなくて結果。
原因と結果が逆なのだ。
同様のことってよくあって。
例えば、スーパーでひっくり返って泣いている子は、こだわりやかんしゃくがあるのだろうし。
不登校は、そもそも学校が合わない子だったのだろう。
親のしつけや甘やかしの問題ではないと、僕は思っている。
この原因と結果を取り違えると、悲惨な結果につながったりする。
スーパーでひっくり返っている子を強制退去させたら、大激怒して商品をズザーーーッと落として破壊して回った。
そのままゲロを吐くまで泣いて泣いて泣いて、手がつけられなくなった。
という話を聞いた。
だったらひっくり返って泣いているほうが全然よかった、と。
物事がそうなっているのには、何か理由がある。
でもその理由を、「コレ!」と特定するのは非常に困難だ。
大抵の場合、いくつもの要素が重なり合っている。
スーパーの子だと、
かんしゃく持ち + こだわり + 寝不足 + 偶然のアクシデント + 空腹 + その時の親の精神状態(余裕がなかった)
とかね。
だから、「AだからBになったのだ」みたいなシンプルな話は、話半分。
わかりやすいし飛びつきたくなるけど、それで必ずしもうまく行くわけじゃない。
特に「親が甘いから」とか、個人を追いつめるような内容は。
それを言っても意味がないし、多分その親の行動は、子どもに合わせて最適化した結果であって。
その親御さんだって、甘いだけじゃなくて場面によっては厳しく接することもあるだろうし。
今まで試行錯誤してきただろうし。
いつも言っているように、「AすればBになる」みたいな、みんなに最適な『正解』って存在しないと思う。
そんな単純な話じゃない。
ケースバイケースで、対応策を考える必要がある。
けど、
とかね。
じゃあその境目はどこなのか(グレーな子はどうか)、とか。
だから例えば、
就寝時間がバラバラな子は、多動や友達とのトラブルが多い。
という研究結果を聞いたからといって、
「じゃあウチの子も、毎日9時に寝かせれば、多動やトラブルが減る!」
とは限らないってことね。
もともと多動や衝動性があるから、寝る時間がバラバラになるのかもしれない。
もともとそういう子だから就寝時間が乱れがちとなる可能性。
寝る時間は『原因』じゃなくて『結果』かもしれないってこと。
この研究は確かで、間違っていない。
就寝時刻が乱れる子は多動やトラブルが多い、それはそうだと思う。
でも、それが『原因』なのか『結果』なのかは、よく考える必要がある。
だから、
をやっても効果のほどは不明だし、親子関係を悪化させるリスクと天秤にかけるべきだ。
みんなに当てはまる『正解』は存在しないと、僕は考える。
それらしい話に飛びつく前に、卵が先か鶏が先か、つまり原因なのか結果なのか考える。
そうやって試行錯誤することは、絶対に良い方向に向かうと信じている。
あとはお子さんをよく見て、お子さんの話を聞いていただければ。
親御さんご自身の感性、そして何よりお子さんの力を信じていただければ。
思った通りに、いろいろやってみてください!
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今回もとても参考になりました。
不登校関連の書籍やブログにあふれる「親が変われば子も変わります」「これまでの過保護、過干渉の結果が不登校です」などなどの言葉‥。
そう言われれば心あたりがあるような気もする。私はやっぱりだめな母親なんだ(涙)。この性格、今更変えられるのかな‥。でも子どものために変えなきゃ!(涙)
このように、母の自己肯定感は下がりまくるのです。その一方で「お母さんはいつも笑顔でいましょう」です。いやムリやん!!
もちろん過保護や過干渉は改める必要はあるけれど、子どもの特性や気質を理解することも同じくらい大切と思います。不登校がなかったらそれに気付いていなかったかもしれません。
気質、衝動性の強さ、癇癪の強さが違うと当たり前ですがAの子は少し強く嗜めただけで言う事を聞くけどBの子は身振り手振りで一生懸命優しく説明してもぶち切れて床を転げ回るってありますね。実体験です
1番上の子は、3〜6歳までガチャガチャでお年玉使い果たし、お金くれ!と言って大癇癪!
ガチャガチャがあれば必ず走って行って何があるか確認。別に大事に管理する訳でも無い小さいおもちゃが家に溢れてました。
色々な方法で、自分のお年玉の範囲内でとか
昨日も買ったからダメ!とか突っぱねてみたけど癇癪が酷くて負けて買ってました
「あー自分は、子どもにお金の大切さを教えられて無いダメな親だ、甘やかしすぎだ」とか毎回モヤモヤ後悔。
現在、13歳の上の子は喉が渇いてもペットボトルの飲み物は買わない、ガチャガチャなんて金の無駄!!ゲーム課金も滅多にしない人になりました。衝動性が落ち着いたんです!!
逆に下の子は2歳頃からオモチャ屋に行っても
魅力的なガチャガチャがずらっと並んでいても
癇癪起こして買って!買って攻撃しなかった。
私が下の子タイプの子だけを育てていた場合は
絶対に上の子の様な激しい気性の子を理解できなかったと思います。つまりは、親が甘やかすから子どもが調子に乗るんだよ!って考えになってたと思う
親が甘やかしたから・・・
以前はそう周囲に思われたくなかったです。
だからそう思われないように厳しくしました。
結果娘は不登校引きこもり。
色々学びや気づきがありました。
そして周囲に親が甘やかしたからと思われたくないんじゃなかった。
本当は「そんな子供にした。」と自分の母親に思われたくなかった。
私は母親に褒められたかった。
誰よりなにより、私は母親の目を気にしていた自分に気づきました。
気づいた日から視点が180度変わりました。
見える世界が変わりました。
娘が自分を犠牲にして私に私らしく生きることを気づかせてくれました。
(^^)
以前SNSで不登校だった子供がコロナ禍で父親が在宅ワークになったら学校へ行った的な事が書いてありました。
それに対するコメントの多くは母親が甘やかしていたから不登校になったんだ!でした。
そのご家庭の事はあまり分からないけど世間的には母親が甘やかしていたからと思われているのが何だかもやもやしました。