僕、考えたこともなかったんだけど。
私立中学って不登校が少ないそうだ。
公立の方が多いんだって。
へー、そうなんだ。
ってことは、私立の方が優れている?
良い教育の賜物?
考えてみる。
診察で、こんなことを言われた。
私立は不登校が少ないです。
つまり、いじめや落ちこぼれなどが起きにくい環境なのだと思います。
へー、そうなんだ。
私立って不登校が少ないんだ。
知らんかった。
僕の患者さんでは、私立中の不登校の子も結構いるけどなぁ。
調べてみる。
ホントだ!
確かに、私立は不登校が少ない!
ちなみに私立小学校も少ないらしい。
不登校の割合
(小学生全体 1.7%)
へー。
やっぱ私立は不登校が少ないんだなぁ。
勉強になった。
では、公立と私立でなぜ差が出るのか。
考えてみる。
お母さんの言う通り、私立の教育が優れているのか?
外来で話を聞く限り、そうとも言い切れないように思うけどなー。
公立も私立も一長一短あるように思うけれど。
公立ならではの合わなさ、私立ならではの合わなさ、どっちも聞く。
そりゃそうだ。
どんな場所も、人によって合う合わないはあるハズだ。
じゃあなぜ不登校率に大きな差が出るのか、考えてみた。
まず、私立の特徴として、「受験している」という事実がある。
公立中は、受験がない。
私立中は、受験が必要。
ここで不登校率に差が出るんじゃないかと。
受験してるってことは、入るまでに努力してるってことだ。
私立中の子は、小学校時代、それぞれ頑張って勉強したハズ。
その上で入った中学。
行かないの、ハードル高い。
その観点で言うと、公立は、ノー勉で入れる。
義務教育だもんで、自動的に全員入れる。
特に努力していない。
行かないの、ハードル低い。
過去の努力がもったいなくて、不登校に踏み切れない子は一定数いるだろう。
あれだけ頑張ったんだからもうちょっとがんばろうと考えてしまいがち。
サンクコストってヤツだ。
サンクコスト
すでに支払ってしまい、取り返すことのできない金銭的・時間的・労力的なコストのこと。
トラブルがあっても「これだけ費用、時間、労力をかけて立ち上げたんだから、簡単に引き下がれない。追加でがんばろう」と考えがち。
また、私立中学はその性質上、生徒は絶対にその学校を選択している。
私立に進んだ子。
第一希望の子もいるだろう。
希望する学校に落ちて、不本意ながらそこに進学した子もいるだろう。
でも、その子にだって公立中の選択肢はあった。
志望校に落ちた子だって、公立とその私立を天秤にかけた。
その上で私立を選んだのだ。
だから、絶対に選んでいる。
その学校を、自分(および親)で選択しているのだ。
かたや公立中。
もちろん、選択してそこの中学に行った子もいる。
でも、選択の余地なしで進学した子も大勢いる。
むしろそっちが多数派。
「家庭的に中学受験の選択肢がなくて」って子が大半だろう。
公立中は、特に選んでいない子が大半なのだ。
自動的に決まってた。
そこの学区だから。
なんか勝手に振り分けられてた。
僕はそうだったし(地元の公立中学出身)、周囲もたいていそうだった。
特に選んでない。
そこ一択だった。
この差はありそうだ。
人間、自分で選ぶって大事。
自分で選んだ場所なら、トラブルがあっても納得できたりする。
でも特に選んでいないのなら、ブーイングだ。
選んでいない人ほど文句を言う。
これは学校に限らず、様々な物事に当てはまる。
なので、少なからず自分で選択した私立中の方が、不登校率が低そうだ。
上記2つの理由から、私立中は不登校が少ないものと考える。
教育内容の良し悪しとは関係なく、
の2点から不登校を踏みとどまる子はいると思う。
でも。
一番大きい理由は、きっとコレ。
転校するから。
……ねぇ?
考えてみたらそうでしょ?
私立中の子が、不登校になりました。
全然学校に行けていません。
出席日数が足りず、内部進学も絶望的です。
どうしますか?
公立中に転校するわなー。
学費高いもん。
続ける意味ないじゃん。
実際、私立中で不登校になり、公立に転籍する子は多い。
行ってないんだもん。
学費の安い公立にする。
すると当然私立の不登校率は下がるし、公立のそれは上がる。
考えてみたら当然じゃね?
そしてコレって、教育内容の良し悪しと全く関係がない。
学費とシステムの問題だ。
そう考えると、私立の中でも不登校率の高い学校って、むしろ良い学校なのかもしれないと思う。
不登校になっても籍を置き続ける子が多いってことだ。
よっぽど魅力があるのだろう。
「今は行けていないけど学費を払い続け(籍を置き続け)、将来的にぜひこの学校に戻りたい」と思わせる何かがあるってこと。
よほどステキな学校なんじゃないかと。
私立中学の不登校率は低い。
でもそれは、イコール私立が優れているってわけではないと思う。
仕組み上、どうしても私立の不登校率は低くなりがちだ。
公立の不登校は増えがち。
転校するから。
やっぱり、私立にも公立にも一長一短ある。
全員に最適な学校なんて、存在しない。
「不登校が少ない環境はみんなに合う」ってわけじゃない
その子にはどんな環境が合うか、でしかない。
当然の話だ。
不登校率が低い=良い学校
なんて安易な話ではないように思う。
もちろん、公立が良いわけでもない。
私立の中でも、不登校率が高い方がなんだ、低いとどうだって話でもない。
その子には、何が合うか
でしかない。
目先の数字に振り回されず、きちんと見極めていきたい。
ってことで冒頭のお母さん。
学校説明会なり学校見学に行って、実際に見てくることを僕はお勧めしますヨ。
View Comments
経験談がたくさん集まるものだと感心しています。
うちも進学校ではない幼稚園から大学まである私立中に進学しましたが、担任が独善的熱血系で、感覚過敏気味の子どもは言動が耐えられず、管理職に改善を求めたらほぼ対策取られずに逆に排除されました。中1の9月で退学です。
すぐ排除するから、不登校カウントされないようです。
そもそも発表される不登校の数には、私立中は入りませんし。
不登校の数を公表する学校なんてほぼないでしょうけど、不登校が在籍できる私立はかなり手厚いのではと思います。
しかし、学業不振ではないのに、学校に楯突くとけっこう簡単にキレる私立学校を見極めるのは難しすぎです。
灘や開成のような偏差値の高い学校には自閉スペクトラム傾向のある生徒さんが多いと聞いたことがあるのですが、本当でしょうか?
同類さんが多いから友達作りやすいし、先生方も発達凸凹くん達の扱い方をよく分かっているのだとか‥?
普通レベルの私立でも、高い学費を払える良いお家の子が集まるから、公立よりいじめも少ないのかな〜と勝手に思ってましたが、そうでもないのかな?
発達障害当事者の自伝とか読むと、学校で壮絶ないじめに遭うケースが多いので‥
発達障害のある子や、不登校の子を積極的に受け入れてる学校もありますよね。
うちの息子は公立高校から通信制高校に転校しましたが、「何を話しても分かってもらえる」って、すごく喜んでました。通信制の先生方も凸凹くんたちのこと分かっていて、SSTを取り入れてる学校も近所にあります。
まさにのお話しでした。
何度も見学に通い、自分で選んだ私立中学。
クラス内でのイジメに声を上げて先生に相談したところ、なかったことのように処理をされました。
公立なら教育委員会にも相談できますが、私立は相談先が学内しかありません。
不信感からの不登校。
私立中学校からは、心配よりも出席日数や中間期末の点数によっては高校に進学できないとの説明。
公立への転校。
退学届の理由項目には一身上の都合と書くように言われました。いじめの為とは書かせてくれませんでした。からの公立中学へ。
中学に限らず、私立幼稚園をそっと追い出された園児が行き場をなくして公立幼稚園へ転園してくる子達が多々います。
私立が良いは数字マジック、学校説明会マジック、学校パンフレットマジック、SNSマジックもありますよね。
まあ、どこだから!より
どうしたい?が一番であれば
私立でも公立でも関係ない気はします。
視野はひろーく、心もひろーく
P先生のようにそんなニンゲンでありたいです。
転校してしまう、という要因は大きいですよね。
私立は学校法人なので、儲からなければ経営できません。少子化の昨今は財政的に厳しいところが増えているとも聞きます。
入学後も通学できる(転校せずに学費を払い続ける)子どもを望むので、そのあたりは入試で選別するでしょうし、入学後の不登校なら学校の評判や進学率にも響いてくるので、転校を勧める。と想像します。世知辛いですね‥
私立の中学から転校者数と、公立の不登校数の差も気になります!では高校では私立と公立どうなのか?も・・また私立の小中はやはり裕福な家庭なイメージもあり、母親の余裕なども関係するのかなとも思いました。いつも為になるお話をありがとうございます。
当事者ですが、通勤電車バス、三人以上の会議、集団行動はいまだに強いストレスです。避けまくっています。我が子もADHDで、勉強はとてもよくできますか、私立中学は選択肢にないです。その三つのストレスがとてつもないことを知っているので。学区内の情緒支援級ですくすく育っています。
小学校から大学までエスカレーターの私立に入学しました。
小学校高学年で不登校になり、中学に上がる前にやんわりと、それでいてしつこく(笑)転校を勧められました。
もともとそのつもりだったので気にはしませんでしたけど。
私立で不登校になると、親には行かない学校に高額な学費を納め続けるという生き地獄が待ってます。
すぐに公立に籍を移すのも、子供を傷つける事になりそうで難しいですから。タイミングを待つことになります。
そして我が家も公立中の不登校率上昇に貢献(?)しました。
先生のおっしゃる通りですね。
発達障害、グレーゾーンの子の進路選びは難しい。特に都市部は私立も多く選択肢があるので。
受験に臨むならば、どうなってもジタバタしないで受け入れる覚悟を持つしかないです
以前、公立の学校の先生に聞いた話です。
その先生曰く、中学2年生の時に 公立に転校してくる子は、私立を追い出された子だ、と言っていました。
学業不振で 進学できないとなったときに、退学 or 転校を進められると。
それを聞いたとき、なるほど!と思いました。
(すべての私立がそうだとは思いませんが)成績の悪い子が追い出され、成績優秀な子が残っていくのであれば、そりゃあ、私立の学力の方が 公立より高いよね!と、腑に落ちた記憶があります。
今まさに私立中の受験で二月の勝者的な世界にどっぷりいる凸凹親子です。公立を秀頼するわけでなく、選択肢が増えればと10校以上見学して少しでも子供が過ごしやすい環境を探していますが、どれだけ見学や個別相談をしても本当にそこが合うかは入ってみないとわからないなと賭けのような覚悟でいます^^;
また、小学生にとって過酷な受験生活は、サンクコストをかなり上げてしまうように思います。「こんなに勉強してるのにまた高校受験したくない」とはよく聞く言葉です。合わない環境だったときに、休んでも良い、他にも選択肢はある、と受け入れるのは、もしかしたら公立にそのまま進んだ子より難しい部分もあるのかなと思いました。
とはいえ、小学校で不登校だった子が私立中で楽しそうに通っている子もいて、また塾生活することでうちの場合は学校以外の居場所ができて良かったので、本当に正解はない問題ですね。
どう転んだとしても、我が子とってどうか?を考えて寄り添っていきたいです(色んな意味で胃が痛い…汗)
我が子が通ったのは、受験して入学した公立の中高一貫校です。みんな大学を目指すよね?が前提の学校でした。
よって優秀な子供達が集まった環境だったと思います。
けれどいろいろあって不登校になり、この春に高校課程に上がるタイミングで転学しました。
公立なのでそのまま高校生にはなれますが、そこから先は無理だろうなという本人の判断です。
入学してから知った数字ですが、どの年度も、入学から6年後の卒業時には1割の生徒がいなくなっていました。
志高く、希望に燃えて入学したはずの学校でこの数字は、正直驚きました。
実際通ってみると、親の想像以上の学力と学習習慣を求められる学校でした。
こればかりは入学前に察することはできません。
入学前に説明するのは「研修旅行は海外です」「大学から講師を招いて模擬講義を行います」「中3の後半にはもう高校の学習をします」そんなアピールしやすいところです。
毎週の課題がどれくらいあるか、定期考査の難易度はどれほどのものか、そういうのは分かりません。
不登校の生徒に配慮のある様子もなかったので、フリースクールや通信制高校も自分で調べました。
本当に、入ってみないと分からない、我が子がついていけるかどうかはもっと分かりませんね…。つらい思いをするのは子ども、申し訳なかったと思います。
では地元の公立中に進んでいたらこうはならなかったか?という検証はできないので、もう過ぎた過去として片付けるだけです。
幸い、我が子は次の進路に前向きです。