Categories: 心理学

50回!

僕が外来でよくするアドバイスに、こんなものがある。

 

50回繰り返せばできるようになります。

50回繰り返さないと、できません。

 

今日はその話を書く。

 

生活で困ること

発達に特性がある子は特に、日常生活で困ることが出てくる。

 

時間が守れない。

持ち物の管理ができない。

宿題が終わらない。

切り替えができない。

↑こんな内容ね。

 

ある程度のことは目をつぶるにしてもさ。

例えば「朝、準備が終わらず出発できない」とかは、超困るじゃん?

親も仕事があるわけだし。

 

「ゲームの時間が守れない」とかもさ。

寝る時間が遅くなると翌朝起きないわけで。

翌朝起こすのも親なわけで。

 

生活が回らないじゃん?

超困るじゃん?

 

わかる。

わかりみ。

 

 

この手の相談をされたとき、僕はこう答えている。

 

50回繰り返せばできるようになります。

 

逆に言うと、50回繰り返さないと、できません。

親御さんは「えぇっ、50回ですか⁉︎」と言うけど。

50回です。

それくらい腰を据えて粘り強く言い続ける必要があると、僕は思っていて。

 

50回

数回、気が長い人でも10回程度同じ失敗を繰り返されると、イライラしてくるのが普通だろう。

わかる。

 

何回も言ってるでしょゴルァ!

 

大人だって忙しいのに、これもまでの繰り返しによる相乗効果もあり、イライラがエスカレート。

親御さん、大爆発!

お子さん、逆ギレ!

 

些細なことから大ゲンカに。

超わかる。

 

 

でも、できません。

これまでも複数回同じことを繰り返してますが、全然できていません。

 

ましてや、まだ3回目ですって?

まずできません。

 

 

50回です。

50回繰り返すと思っておいてください。

すると、もしかしたら30回くらいでできるようになるかもしれません。

 

例外なく毅然と

しかもですね。

この50回の間、一切の例外なしです。

 

 

朝8時に家を出ると決めましたね?

じゃあ、絶対に8時です。

 

間に合わなくても交渉の余地なし。

子どもを置いて、親は家を出てしまってください。

 

 

ゲームは21時までですね?

オッケー、じゃあ絶対に21時です。

 

「今日は親も野球中継見たいからー」とか、例外的に時間を延ばすのはナシです。

決めたら、親子とも絶対の絶対で守ってください。

 

 

これで50回。

毎日愚直に50回です。

 

これ、ルーチン化と呼ぶ。

ADHDタイプでもASDタイプでも、効果的なことが多い。

「絶対そう」と決まっていることは、子どもは守る。(ことが多い)

何度も繰り返すと、できるようになる。

 

現実的に、できる?

で、ですよ。

 

例外ナシ、愚直に50回。

 

↑ですよ。

できます?

 

親の方が「今日はまぁいっか〜」な気分になることもあると思います。

でも、ダメです。

心を鬼にして愚直に継続です。

 

そう。

相当キツイわけです。

 

 

朝8時に間に合わなければ子どもを置いて家を出る、とは言うものの。

現実問題、安全とか大丈夫ですか?

一人にさせられない環境なら、なんだかんだ結局親が待っていてくれることになる。

すると、意味ないわけです。

 

男の子
こう言ってるけど、どーせ親は待ってくれるし。

 

そんな学習をされちゃ、ルーチン化はできないわけです。

 

 

それどころか、

「間に合わないよ!」

ダラダラ

「あと5分よ!」

ダラダラ

「もうっ、行くよ!」

それでもダラダラ

「もう10分も遅れてるじゃない。

毎日毎日、アンタはなんでこうなの!」

↑このお小言までマルッとセットでルーチン化しちゃったりするから怖い。

 

「言われて、できなくて、小言から激おこ、大ゲンカに至る。」

ここまでがワンセットでルーチン化。

 

……なんて恐ろしい。

 

絞って実行

だもんで、やらせることはできる限り絞るべきだと思う。

 

例えば、

宿題は、やらなきゃ本人が怒られるだけ。

じゃあ、もういいや。

それより出かける時間は守ってくれないと親的にもマジ困る。

長時間のゲームは、普段学校で疲れてるだろうし許容しよう。

でも、食事の時間と寝る時間には絶対にゲームをやめてもらいたい。

ウチの教育理念的に、そこは譲れない。

↑こんな感じで。

 

50回、愚直に繰り返す内容。

そこまでして絶対に守ってもらいたい内容。

数はできる限り絞った方が、親御さんの精神衛生上(もちろんお子さんの精神衛生上も)よいと思われる。

 

 

一方、日々ふんわり出てくる種々の不安。

 

この子、これができないわ。

 

このままで大丈夫かしら。

 

何度も言えば、少しは耳に残るはず。

 

↑こういった類のものは、まず入りません。

これ、経験上マジでそう。

全然入らねぇ。

 

それどころか、

 

女の子
親はいつもガミガミうるさい。

内容は知らん。

 

になる。

効果ないどころか、逆効果。

「ここぞ」という場面のお説教が入りづらくなるのだ。

 

 

まぁ、上記ふんわりしたのは「親の不安」だしね。

「親の不安」を子に押し付けてもまずうまくいかないのは、そうだよね。

「この子に絶対に必要」もしくは「親が絶対に困る」ことだけに内容を絞ってほしい。

『親の不安』と『子の不安』 外来を受診される方は何かに困って受診するわけだが、何に困っているか、すなわち主訴をまとめてきてくれると非常に助かる。 ...

 

あと、今できないから一生できないって決まったわけじゃないし。

早けりゃいいってもんじゃない先日、都立小児総合医療センターから、早すぎるトイレトレーニングに警鐘が鳴らされた。 トイレトレーニングを1歳半から2歳頃を開始...

 

まとめ

 

絶対に困ることは、50回繰り返せばできるようになります。

ただし、数は絞ってください。

 

なにを守らせるかは、家庭による。

状況や価値観で変わってくると思うけど。

 

でも、「絶対に困る」って内容に絞ってほしい。

あれこれ言って全部が中途半端になるのが、一番よくない。

親の機嫌や不安の強さで言うことが変わるのが、最悪だ。

 

 

そして。

50回ですよ。

50回。

そう思って接してほしい。

この覚悟で接すると、30回くらいで済むかもしれませんし、済まないかもしれません。

 

数回目でイライラする気持ちも分かるけどさ。

まぁ、ムリですわ。

ゆっくりいきましょ。

pediatrician-p

View Comments

  • この記事、すごくハッキリわかりやすかったです!!
    何度も立ち止まって、親の不安と子の不安を確かめて自分のすべきことを確認しながら、一般的なスピードからは遅い我々のペースを自信を持って堂々と守っていく次第であります。キリッ。

  • 今回の記事、読んでて過去の自分思い出してニヤニヤしちゃいました。笑
    最初「ぇ、50回でいいん!?」て思ったけれど、他人とは言え子供は適応能力高めだからこそ自分の希望した事ではない内容でも可能なんでしょうかね(っ´ω`c)
    ゴルフショップの店員さんに「皆一ヶ月、30日で諦めちゃうんですよ。そこを越えて40日やると習慣になるんですよ、もったいないですよねー」と言われ、たしかし!と今も心のバイブルにしまっております…自分事でもそんなもんですよね。
    細々した日々の希望って究極的にはどーでもよくて『あわよくば』はマジで不要だし邪魔にしかならんと最近しみじみ思いました。
    これだけはどーしても!以外はもぅいいやーと思うと、すごく自由になれました。し、日々が非常に気持ちよく回ります。どーしても!は勝手に絶対叶えるし、50回なんて考えもせずやり続けられますよね(*´▽`*)
    子供の見抜く目はハンパなくて、あわよくばなんてきっちり見抜かれてスルーされて、日々勉強させて頂いてます。笑

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