Categories: 発達障害

切り替えができない子

うちの子、切り替えが苦手です。

見ている親がイライラします。

無理やりやめさせるとかんしゃくを起こして余計手がつけられなくなるし。

 

そんな訴えをよく聞く。

 

 

 

切り替えが苦手な子。

 

今やっていることをやめて次の行動に移ることができないとか。

一旦怒るとなかなか気持ちがリセットできないとか。

 

いますよね、そういう子。

 

 

 

苦手とは言っても、切り替えてくれないと周りが(特に親が)困るわけで。

 

朝、いつまでもご飯を食べていたら遅刻しちゃうし。

テレビを見続けて宿題をやらないし。

テレビを消したら大激怒、いつまでも大泣きしてるし。

 

 

親は子供のお世話をしないといけないわけで。

子供が動いてくれないと非常に困るわけで。

 

「もうっ、いい加減にして!」

 

その気持ちはよく分かる。

 

 

どうしたらいいかと言うと、『切り替え』を要する場面を減らすことだと思う。

 

切り替えのスムーズさには個人差がある。

一回言えばすぐに切り替えられる子から、何回言っても全然ダメな子まで。

個人差がとても大きい。

 

ASDやADHDタイプでは特に苦手だろうか。

ASDは分かるけど、ADHDも?

ADHDはベース気が散りやすいが、過集中と呼ばれる状態に入ると切り替えできなくなる。

 

 

何度言ってもまったく耳に入らない。

もしくは四の五の言い訳をして、一向に進まない。

 

こんな子には、切り替えは最低限にして、出来るだけ本人のペースを尊重する方がよい。

 

 

 

僕自身ASDタイプなので分かるのだが、マジで切り替えできないのだ。

 

よく覚えている。

子供の頃、お風呂に入るのはめんどくさいが、入ったら入ったで出たくない。

図工の授業、2時間で一区切りとし「残りは来週」がホントに気持ち悪い。

やったら最後までやりきりたい。

中途半端前提なら、そもそもやりたくないのだ。

 

 

大人になってこの特性は薄まったが、でもまだ残っている。

別の業務をしている途中にPHSが鳴ると、すごく嫌。

患者さんに病状説明している途中、点滴や注射の処置の最中、カルテを書いている途中。

電話が鳴ると、今やっていることを中断せざるを得ない。

マジで嫌。

やっている作業を終わらせてから次に移りたいのだ。

 

 

子供の頃からこの自覚はあって、勝手に

『慣性の法則』

と呼んでいた。

 

知ってます? 慣性の法則。

僕は理科が好きだったので覚えているのだが、物体には同じ運動を続ける性質がある。

僕も同様で、動いていたら動き続けたいし、止まっているときは止まり続けたかった。

つまり何かしているときはやり遂げたいし、ダラダラしているときは思っきしダラダラしたいのだ。

 

切り替えが苦手な子って、この『慣性の法則』が強く働く子なんだと思う。

今の状態を続けたい、だから切り替えできない。

※物理用語です。本来の意味とは異なります。

 

 

もうこれは仕方ないと思う。

物理法則だと思って、諦めていただけると嬉しい。

 

 

でも切り替えができないって、裏を返せば集中力があるってこと。

集中しているなら、途切れさせない方がいいと思う。

その卓越した集中力は、将来の武器になるはずだ。

 

 

だから切り替えは最低限にする。

でも全ての場面で慣性の法則を発揮されてしまうと、生活が回らない。

 

なので、

「8時には家を出る」

「22時に寝る」

「○時までにこれをしないとあとはお母さん知らない(自分でなんとかしてちょうだい)」

といった具合に、生活に必須の「ここだけは!」という部分のみ守らせる。

それ以外は、彼らのペースに任せるのがいいと思う。

 

 

彼らが集中しているときに、

「もう1時間もゲームしてるわよー」

「先に宿題やっちゃいなさい」

などの小言は、非常にストレスだ。

 

僕が切り替えできないので分かるのだが、彼らも今やっていることを完遂させたいのだ。

やっちゃいたいことをやっちゃいたいだけなのだ。

 

 

なので、お小言は最小限にしてあげるのがいいと思う。

できるだけ少ない指示を、短い言葉で、見通しを持って。

 

「8時には学校に出発する」

 

これだけ。

これだけを愚直に守らせる。

「8時に家を出るためには、7時に起きて、7時20分にご飯を食べて、それから……」なんてごちゃごちゃ言わない。

お子さんにやらせる。

8時に出発と決めたら、お子さんがどんな状態だろうと8時に出発する。

「今日は特別」とイレギュラーを作ってはいけない。

愚直に守らせる。

 

すると、何回か(何十回か)失敗し、その後はできるようになる。

親が手を貸すとズルズルいくので、子供の力で達成させるのがコツだ。

 

 

 

子供も学んでいく。

そのうち自分で段取りが組めるようになるはずだ。

 

僕も学んだ。

自分は慣性の法則が強い自覚があるので、やるべきことはさっさと終わらせるように心がけている。

ゆっくり休むために、キビキビ働く。

どうしても今日やる必要があることだけこなし、明日できることは明日に回す。

 

あ、どうでもいいけど僕の座右の銘は

『明日できることは今日やらない』

だ。

ハイどーでもいい。

 

 

ちなみに気持ちの切り替えも同じ。

かんしゃくを起こすような場面を可能な限り避けることだ。

 

 

 

どうでしょう。

慣性の法則が強いお子さんにお困りの方。

その子はそういう子なのでもう諦めていただき、お母さんのイライラを減らす方がいい。

小言が減ればそれだけお子さんのクエストが減るので、達成難易度が下がる。

「これだけ!」に絞ってもらうのが良いと思う。

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