学校生活において、担任の先生のチカラは大きい。
先生が変わった途端うまくいかなくなる子がいる。
先生と、壊滅的に『合わない』。
よく聞く。発達外来あるあるだ。
もともと学校生活があまり得意でない子。
落ち着きがない、こだわりが強い、集団行動が苦手、衝動的に手が出る、などの特性を持った子。
問題はちょこちょこ見え隠れするものの、先生の対応が上手で、許容範囲内でここまで来た。
のだが。
進級して担任が替わり、圧倒的にうまく行かなくなった。
今までにないようなトラブルを起こす。
こんな感じ。
それまでさほど困る子ではなかった。
なんとか適応できていた。
その子が、急に爆発する。
親御さんは困って学校と連絡を取るだろう。
でも先生と我が子の主張が食い違っており、どちらを信じていいかわからない。
学校も学校で困っていて、家庭での指導や、付き添い登校を求めたりする。
親御さんがさらに困って何度も問い合わせ、モンスターペアレントのレッテルを貼られたり。
そうこうしているうちに、親御さんは学校不信に。
学校側も『問題児』として扱い、あからさまではなくても排除するような態度を取る。
子供も自分が厄介者扱いされていることを察し、余計に荒れる。
これ、どんなときに起きるかと言うと、先生が『熱血タイプ』のときに多い気がする。
僕はたまに、業務の一環で学校巡回に行く。
そこで知ったのだが、教員は基本的に『指導』しようとするそうだ。
問題児がいたら『指導』し、理解させるのが基本姿勢らしい。(数校しか見ていないので全てがその限りではないと思うが)
なるほどと思った。
医療には、『指導』という概念はあまりない。
原因をつきとめ改善しようとする『診断と治療』の姿勢が元となる。
基本姿勢が全然違うのは、職業の役割が違うので考えてみたら当然だけど。
でも非常に興味深い。
そっか。
『指導』するのか。
多くの場合でそれが最善のやり方なのだろう。
むしろ個々をみて「この子の傾向と対策は……」とかやってたら授業なんて進まないし、30人もいるクラスを回していくことは不可能だろう。
『指導』を否定するつもりが毛頭ないことはここに明言しておきたい。
その上で、『指導』ではうまくいかない子もいる。
上記の、もともと学校生活が得意じゃないタイプの子。
『指導』されればされるほど、不信感を覚え、反発する。
※二次障害とか、反抗挑戦性障害とかいう。
で。
子供に反発されたとき、解決しようと重ねて『指導』してしまう、熱血タイプの先生。
教育熱心ないい先生なのだが、こんな先生とは特に相性が悪いようだ。
そもそも上記の子たちは、自分の意見を飲み込んで流されて行くことができない。
納得しないと納得しないタイプ、というか。
ADHD、ASD、HSC、学習障害、あとはギフテッドなんかに多い。
彼らの名誉のために付け加えると、この子たちはすこぶる頭が良い。
知的に高いからこそ自分の意見を持ち、主張できる。
IQ的にも高い。(IQ低めの子は、その場に流され反発しないことが多い。ぼーっとして授業についていけない感じで、大きな問題になることは少ない。)
彼らは、納得しないとテコでも動かない。
彼らなりの主張があるのに、『指導』される、つまり上から叩き潰される(と感じる)。
まぁ耐えられない。
知的に高く、プライドを持った子たちだ。
こんな子たちの接し方の正攻法は、
彼らの主張をよく聞き(納得いく理屈を持っていることが大半だ)、まず肯定。
その上で改善点を理論的に説明することだ。
「相手が先に手を出したのに、あなただけ怒られたら納得いかないよね。
でも、あなたの方が力が強いから、どうしても目立っちゃうの。
ぐっと我慢して口で言い返す方がうまくいきそうよ。
でも怒る気持ち、わかるよ。当然だよね。」
こんな感じ。
本人に、自分の気持ちを説明させること。
それを大人が肯定し、表現を捕捉すること。
もともと頭の良い子だ。
近い将来言葉で上手に伝えられるようになり、問題行動は減るだろう。
なんだけど、熱血先生は、これが苦手。
当該児が相手をボコボコにしたという事実(これが悪いことなのは疑いようがないのだが)だけをみて、矯正しようと『指導』してしまう。
これが『合わない』原因。
子供と先生、どちらも悪くない。
でも壊滅的に『合わない』。
親御さんは、お子さんの特性を先生に伝えてほしい。
「叱る前に、この子の言い分を聞いてあげてください。
納得すれば素直に反省します。」
このワンクッションで、幾分か楽になることは多いようだ。
それでもダメなとき。
どうしても『指導』してしまう熱ーーーい先生だったとき。
もう、仕方がない。
相性が悪すぎた。
学年主任など担任以外の先生に相談したり、補助の先生に入ってもらったり、場合によっては別室登校も手だと思う。
先生と子供が接する機会を減らす。
なんとか分かってもらおうと思っても、無理なことってある。
お互い人間なので、相性はある。
なので、壁を壊すより、迂回する方が早い。
目的は、二次障害を作らないこと。
先生と『合わず』、傷つき体験を重ねる。
すると自暴自棄になり、本来の気質以上に問題行動を起こすようになる。
これが最も避けたいところだ。
すこぶる頭のよい、自立心旺盛な子だ。
この子の良さを潰さないことが、現状とれる最善の手だと僕は思う。